

Max Roach / Max ( 米 Argo LP 623 )
何とも図々しいタイトルである。 そして、例によって、間抜けなジャケットデザイン。 当然、35年間ガン無視で来たわけだけど、よく調べて見ると
このアルバムはフロントがケニー・ドーハム、ハンク・モブレーという興味を引く顔ぶれであることがわかり、これは1度聴かねばということになった。
名前を見ただけでどういう演奏なのかは簡単に想像できて、実際に聴いてみるとまさにそのまんまの演奏だが、これがなかなか渋みが効いた良い内容だ。
ドーハムは抜けのいい音で抑制したフレーズを吹き、モブレーはいつものマイルドな音色で音楽の全景を淡く染めていく。 この2人は相性がいい。
ゆったりとした曲の印象が強く残り、全体を通してとてもいい雰囲気が溢れている。 アップテンポの曲では相変わらずローチ君の自己主張がウザいけど、
それを除けばこのアルバムは上質でマイルドな質感が素晴らしい。 ちょっと悔しいが、これは気に入ってしまった。
ローチ君のドラムの特徴である音量の大きめなハイハットが刻む正確なリズムも、よくよく考えればタイムキーパーとしてのドラマーとしては優れている
ということだ。 おかずが多くて技をひけらかすようなところが癇に障るし、ソロパートでの味気無さは観賞上の必要性のなさを増々助長するものでしか
ないけれど、どうもこの男は共演者に助けられて良いアルバムを作ることに長けていたようだ。 だから、嫌い嫌いと言いながらも、こうやって聴いて
しまうことになるのである。
更に厄介なことに、変に気に入ってしまったものだからレーベルデザインが2種類あることにも気付いてしまい、気になって両方聴いてしまうという
愚行を冒してしまう。

この2つの盤のデッドワックス部のマトリクスの記載には違いがある。 Side-1を例にとると、
写真1枚目 : J08P_1147_1(機械打ち) A1(機械打ち)Ⅰ(機械打ち)
写真2枚名 : J08P_1147_1(機械打ち)△848(手書き)A2(機械打ち)Ⅰ(機械打ち)
ジャケットも盤のプレス形状も同じなのでどちらも同時期の生産だと思うが、音質は2枚目のほうが全体的に残響感が効いていて、この音楽の特質が
より強調されているような印象を受ける。 それに比べて1枚目のほうは残響感が微妙に弱い分、楽器の音の輪郭がくっきりしているような感じだ。
こうして聴き比べると、直感的にマスタリング自体が違うような印象を受ける。 音の鮮度はどちらも同じなので、後先の問題ではなさそうだ。
Argoの場合は、経験的に言って、レーベルのデザインや形状が違うとマスタリングも違っているんじゃないかというのが個人的な印象である。
どちらもそれぞれに良さがあるので、結局このアルバムは2枚ともレコード棚の中に仲良く並んで収まっている。 ここまで手間をかけさせるくらい、
私はこのレコードが気に入っているということなんだろう。