Norman Simmons / Norman Simmons Trio ( 米 Argo Records LP-607 )
ノーマン・シモンズはシカゴのローカル・ミュージシャンで、かの地を訪れたミュージシャンの受け皿として共演したり、著名な歌手の歌伴を
務めたりしていた。野心を持ってニューヨークへ出て、ということはしなかったようで、そのため50年代のリーダー作はこの1枚しか残っていない。
これと言って特徴のあるピアノが聴けるわけではなく、ごくごく普通に小気味よく明るい演奏に終始している。他の名の知れた歌伴ピアニストたち
なんかと共通するところが感じられる。フレーズが平易でわかりやすく、タッチも柔らかく、穏やかな表情だ。他のアーティストたちと熾烈な
競争して生き残っていくというような生活とは無縁の、地に足のついた演奏活動をしていたのだろうなと想像することができる。
ARGOには似たようなタイプにジョン・ヤングなんかがいて、あちらは複数枚のリーダー作が残っているのに、このシモンズは1枚のみという
何とも控えめな足跡で、このレーベルであれば言えばいくらでもアルバムは出してくれただろうに、何とももったいないことである。
私は知らなかったのだが、80年代以降になるとポツリポツリとリーダー作が出ているようなので、機会があれば聴いてみたい。
ARGOというレーベルにはこういう地元シカゴ中心で活動していた演奏家のアルバムが数多くある。彼らはいわゆるビッグネームではなく、
日本ではマイナーとかB級とかの形容詞で語られるけれど、別に本人たちはそういうのはどうでもよかったのではないか。
彼らの演奏をレコードを通して聴く限りでは、迷いなく自分の信じる音楽を心地良さそうに演奏している。その中から彼らの見ていた風景や
暮らしていた日々の生活の様子などが透けて見えるような気がする。街のざわめきや風の匂いや交わしていた会話などを感じるような気がする。
ARGOレーベルはそういう当時のシカゴの雰囲気を上手く切り取ってくれたと思う。このレーベルはそこがいい。
ブログを開設された時からいつも楽しく拝読しております。
ノーマン・シモンズのこのレコードは「私にとっての懸案盤」の一枚です。
昔発売された日本盤を購入してから Argo盤を探していますが、残念なことにいまだに出会えません。
シカゴを訪れたチャーリー・パーカーと共演したり、ジョニー・グリフィン、カーメン・マクレー、ベティ・カーター等々のレコードで趣味の良い演奏をしていて大好きなピアニストです。
一度ライブで会って少しだけ会話をしたことがあるのですが、謙虚で穏和な人だなぁ、という印象でした。
70年代以降のリーダー作もなかなか良いアルバムだと思います。
Argo盤、なんとか探し出したいとは思っていますが、どうなりますことやら。
これからも楽しく励みになる記事、よろしくお願いいたします。
実際にお会いになられたとは、すごいですね。穏和な印象というのは演奏からも感じられます。
我々のようにレコードを聴いている人間は、もしその演奏家に幸運にも会うことができても、前からの知り合いのような
感情で会話できるんだろうなあと思います。
このレコードはコロナ禍の何年か前に4千円くらいで拾ったものです。今思うと、あの頃はもっとレコードが流通していて、
値段も今の半値以下だった。それでもレコードがないとか高いとか文句を言ってたんですから・・・
どんなレコードも時間さえかければいつか触れる機会がやってくると思います。見つかることをお祈りしています。