

Dave Bailey Quintet / Reaching Out ( Jazz Time JT 003 )
現代欧州の優秀な演奏ばかりを1週間聴いていると感心はするものの、やはり聴き疲れするものです。 なので、週末家にいる時はもっとのんびりとした
演奏を聴きたくなりますが、そういう時はアメリカの古いブルース形式のジャズが一番です。
でも、うちにはそういう気分の時にピッタリのレコードがあまりなくて、もうちょっと真剣に探して買わなきゃいけないんだろうなあ、と思うのですが、
いつもそう思ってばかりで終わってしまい、一向にレコードは増えていきません。 ブルーノートはどれも立派な演奏ですが立派過ぎて耳障りだし、
もっと刺激が少なくてそれでいて上質なものを、ということになるとほとんど選択肢が無くなってきます。
このレコードが有り難がられるのは、そういう誰もが日常的に求めるものが全て備わっているからなんだろうと思います。 稀少性だけなら、
ここまで褒められることはないでしょう。
1曲のあまり出来のよくないスタンダードを除いて全編ブルース大会で、フランク・ヘインズのワンホーンが朗々と鳴るのですが、この人の音色は
ズートとモブレーを混ぜたような柔らかさがあるので耳障りがいいし、グラント・グリーンのギターはブルーノートで聴くような深みのある音ではなく
もっと乾いて小粒な音で、普通なら録音が悪いと文句を言うところなのに、この穏やかな音楽には逆にそれが似合っています。
ビリー・ガードナーのピアノもソロになると指がもつれ気味ですが音はきれいで抑制が効いている。
名演・名盤と言われてどんなにすごい演奏なんだろうと見当違いな期待を煽られることが多いのではと危惧しますが、実際は尖ったところが
どこにもなく、全体が均一的に地味でかなり隙間の多い演奏です。 これを聴けば、Epic盤は随分メリハリの効いた音楽に思えてくる。
でも、そういうゆるくてあっさりしたところが他にはない貴重な魅力になっているのだと思います。
オリジナル盤といっても音はマイルドで、ヴォリュームを上げてもあまりうるさく感じることもないところもこのレコードには似つかわしい。
デューク・ピアソン盤で感じたオーディオ的な不満感はこの盤にはありません。 不思議ですね。