

Miles Davis / And The Modern Jazz Giants ( 米 Prestige PRLP 7150 )
別の意味で、ジャズの世界ではこれもクリスマス・アルバムと言ってもいいだろうと思うけれど、でもこの作品を語る際に例の裏話だけで終わってしまう
ことの何と多いことか。 だから、もっと別の話をしよう。
私はマイルスがプレスティッジに残したアルバムの中では、これが一番好きだ。 なぜなら、これは深夜の暗い闇の中で鳴っている音楽だからだ。
ジャズという音楽は、本質的に夜の音楽。 昼間の野外でぎらつく太陽の下で汗を吹いてビールを飲みながら聴く音楽ではない。 月並みな偏ったイメージだと
笑われても、事実は変わらない。 仕事が終わり、1日が終わるまでの僅かに残された自由な時間に、失いかけた自分を取り戻すために聴く音楽ではないだろうか。
灯りの落ちた深夜の暗いスタジオの寒々とした空気の中、冷たいシリンダーから憂いに満ちた音色が放たれ、トランペットの伸びやかで起伏の少ない旋律が
朗々と響き、単音でポツリと呟くようにピアノが鳴る。 音数の少ない広々とした空間の中、孤独なウォーキング・ベースの重い音色が音楽の骨格となり、
曲を前へ前へと進めていく。 テンポ設定は速めなのに、まるで深夜のバラードを聴いたかのような深い余韻が残る。
この演奏には単なるスタジオセッションでは終わらぬ、何かがある。 そして、それは大きな手で聴いている私の心を鷲掴みする。 プレスティッジの
RVG録音の中でも最も素晴らしい音響が聴けるものの1つとして、音楽が迫って来る。 あまりに叙情的で感傷的な音楽で、言葉もなく感動しか残らないのだ。
深夜の音楽、まったくもってして、同感です。
ジャズとはそうした音楽ですね。つい、忘れがちです。
クリスマスとジャズの相性、今まで考えてみたこともなかったのですが、長い歴史のなかでつながって、今日、あるのかも知れませんね。
クリスマスとジャズには何か共通して持っている、重要な秘密があるような気がします。
だから、ジャズにはクリスマスアルバムが多いんだと思います。 ロックなんかよりはるかに数が多いですもんね。