[6月21日09:17.天候:晴 秩父鉄道本線・三峰口駅 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ]
快速急行列車も埼玉県に入って、西北に進む度に景色が変わっていった。
西武秩父線内は単線。
対向列車との行き違いで数分停車とかとなると、旅情が出て来るのである。
横瀬駅で1台が切り離され、4両編成となるが、ワンマン運転にはならない。
秩父鉄道において4両編成は長大編成だからなのか、そもそも西武4000系電車に搭載されたワンマン運転装置が秩父鉄道には対応していないからのか分からない。
「くわー……。随分、山奥まで来たなぁ……。一応は開けた場所があった藤野以上だぞー……」
電車を降りた敷島は目を丸くした。
藤野駅も小さな駅だが、一応は自動改札機があった。
三峰口駅は……有人駅ではあるが、自動改札機など無い。
しかも木造駅舎だ。
「とにかくシンディ、周囲をスキャンしてみてくれ」
「了解」
駅の外に出て牧歌的な風景が広がる中、シンディは左目をオレンジ色に光らせ、川の上流の方を向いた。
「……遠すぎてスキャンできない物があるね」
「マジか!」
「それはつまり、近づけばスキャンできるってことね」
「そう。方向はあっち」
シンディは西の方を指さした。
「正しく荒川の上流だな」
「やっぱり源流域かもね」
「よっしゃ!タクシーで向かおう!」
3人は駅前に止まっていたタクシーに乗り込んだ。
「荒川の源流までお願いします」
乗り込んだ敷島が開口一番、運転手に言った。
「荒川の源流ですか?秩父湖の先の方になりますが……」
「そこでいいです」
「分かりました」
シンディが助手席に座り、敷島夫妻はリアシートに座る。
タクシーは駅前を出発した。
[同日10:12.埼玉県秩父市・秩父湖付近 上記メンバー]
日曜日で天気も良いということもあって、秩父湖へ向かう国道140号線は混雑していた。
荒川を辿る必要のある敷島達、大滝温泉の道の駅を過ぎると新道である大滝道路と旧道である秩父往還の分岐点では、迷わず旧道を通ることにした。
というか、秩父湖に行きたければ秩父往還を通るしかない。
この秩父往還を三峰側から向かって、秩父湖に差し掛かる頃、1つのトンネルが現れる。
どういうわけだか、トンネルの入口に信号機がある。
無論、高速道路などにある長いトンネル(日本坂トンネルなど)では、入口に事故発生の有無を知らせる信号機が設置されていることもある。
しかしここは一般国道であり、しかも曲がりくねった道が続いて、そんなにスピードが出せるような場所ではないが……。
「狭っ!」
信号が青になって、タクシーは先行の車に続いて発進する。
何の為の信号機かと思いきや、洞内は1車線しかなく、要は片側交互通行の為の信号機だった!
道路工事現場にあるような簡易的なものではなく、本格的な信号機である。
驚いたことに、
「!?」
トンネル内に丁字路まである!
丁字路を曲がった先にも信号機があるのだろうか。
……あるんだろうな。
国道が優先道路だろうから、丁字路を左折する方の道の赤信号の待ち時間はどのくらいなのだろうと気になってしまった。
「この道路をバスも通るの?」
敷島が後部座席から頭を覗かせて運転手に聞くと、
「そうですよ」
と、運転手はあっけらかんと答えた。
その通り、トンネルを抜けると、反対車線に路線バスが信号が変わるのを待っていた。
見た感じ、都心部を走るような大型路線バスではないようなので、ぎりぎりあの狭いトンネルを通れるのか。
「凄い所に来たなぁ……」
「!」
秩父湖とはダム湖である。
敷島がダム湖の光景に見取れていると、シンディが反応した。
「山の方!山の方に何かいる!」
「マジか!運転手さん、山の方に何とか行けませんか?」
「ええっ、山ですか!?いや、車は入れませんよ……」
「車は?てことは、人は入れるの?」
と、アリスも聞く。
「ええ、この先に登山道が。しかし、あまり初心者向きではない所なので、お客さん達のような軽装では……」
「大丈夫だ。その登山道の入口の所で止めてください」
敷島達はタクシーのトランクに積んだ荷物を下ろした。
この中には、もし8号機のアルエットを見つけ出しても、何かあった時の為の道具が沢山入っている。
「……あの、お戻りになるまで待ちましょうか?」
と、運転手。
「いや、大丈夫。バスが走ってたらそれで帰るし、バスに間に合わなかったら、電話で呼ぶから」
その為に敷島は料金を払う際に、領収書を所望した。
最初アリスは、敷島がタクシー代を会社の経費で落とそうと企んでいたと誤解したらしい。
そうではなく、タクシーを呼ぶことになった際、電話番号を知っておく為であった。
領収書には、必ずそのタクシー会社の電話番号が書いてある。
敷島達は早速、登山道の中に入っていった。
「って、登山道あるんじゃないか!」
「和名倉山の埼玉県側からは登山道も整備されるようになり、そこを歩く分には『テントは要らない』そうです」
と、シンディが話した。
「! つまり、登山道から外れたら、即行で遭難する山なのか……」
「まあ、GPSはあるから大丈夫ですよ。いつでも車を降りた場所、もしくは国道へ復帰することは可能です。それに、いざとなったら、お2人を抱えて飛びますから」
シンディは笑みを浮かべて言う。
「そうか。頼むぞ」
「スキャンで反応したのは、あっちなんだけど……」
登山道をしばらく進むと、シンディが登山道から外れた所を指さした。
「マジか!……うーん……」
登山に関しては素人の敷島夫妻。
「登山道からそんなに外れない所まで付き合いましょう」
と、アリス。
「あの岩の所はどうでしょう?あそこなら、遠くから狙撃されても大丈夫です」
「さらっと縁起でも無いこと言うなぁ……」
敷島はボヤいた。
大きな岩の所まで行くと、
「じゃ、ここからは私パートですね」
と、シンディはウィンクした。
「ムリはしないでよ。危険だと思ったら、すぐ引き返して」
「分かりました」
シンディは敷島夫妻のいる大岩の場所を、自身の地図機能にマークした。
[同日11:00.埼玉県秩父市・和名倉山中 シンディ]
シンディが藪を突き進んでいく。
その時、彼女のスキャンに掛かる者がいた。
「誰だ!?」
シンディは右手をショットガンを変形させて、反応のあった場所に向けた。
そこにいたのは……。
快速急行列車も埼玉県に入って、西北に進む度に景色が変わっていった。
西武秩父線内は単線。
対向列車との行き違いで数分停車とかとなると、旅情が出て来るのである。
横瀬駅で1台が切り離され、4両編成となるが、ワンマン運転にはならない。
秩父鉄道において4両編成は長大編成だからなのか、そもそも西武4000系電車に搭載されたワンマン運転装置が秩父鉄道には対応していないからのか分からない。
「くわー……。随分、山奥まで来たなぁ……。一応は開けた場所があった藤野以上だぞー……」
電車を降りた敷島は目を丸くした。
藤野駅も小さな駅だが、一応は自動改札機があった。
三峰口駅は……有人駅ではあるが、自動改札機など無い。
しかも木造駅舎だ。
「とにかくシンディ、周囲をスキャンしてみてくれ」
「了解」
駅の外に出て牧歌的な風景が広がる中、シンディは左目をオレンジ色に光らせ、川の上流の方を向いた。
「……遠すぎてスキャンできない物があるね」
「マジか!」
「それはつまり、近づけばスキャンできるってことね」
「そう。方向はあっち」
シンディは西の方を指さした。
「正しく荒川の上流だな」
「やっぱり源流域かもね」
「よっしゃ!タクシーで向かおう!」
3人は駅前に止まっていたタクシーに乗り込んだ。
「荒川の源流までお願いします」
乗り込んだ敷島が開口一番、運転手に言った。
「荒川の源流ですか?秩父湖の先の方になりますが……」
「そこでいいです」
「分かりました」
シンディが助手席に座り、敷島夫妻はリアシートに座る。
タクシーは駅前を出発した。
[同日10:12.埼玉県秩父市・秩父湖付近 上記メンバー]
日曜日で天気も良いということもあって、秩父湖へ向かう国道140号線は混雑していた。
荒川を辿る必要のある敷島達、大滝温泉の道の駅を過ぎると新道である大滝道路と旧道である秩父往還の分岐点では、迷わず旧道を通ることにした。
というか、秩父湖に行きたければ秩父往還を通るしかない。
この秩父往還を三峰側から向かって、秩父湖に差し掛かる頃、1つのトンネルが現れる。
どういうわけだか、トンネルの入口に信号機がある。
無論、高速道路などにある長いトンネル(日本坂トンネルなど)では、入口に事故発生の有無を知らせる信号機が設置されていることもある。
しかしここは一般国道であり、しかも曲がりくねった道が続いて、そんなにスピードが出せるような場所ではないが……。
「狭っ!」
信号が青になって、タクシーは先行の車に続いて発進する。
何の為の信号機かと思いきや、洞内は1車線しかなく、要は片側交互通行の為の信号機だった!
道路工事現場にあるような簡易的なものではなく、本格的な信号機である。
驚いたことに、
「!?」
トンネル内に丁字路まである!
丁字路を曲がった先にも信号機があるのだろうか。
……あるんだろうな。
国道が優先道路だろうから、丁字路を左折する方の道の赤信号の待ち時間はどのくらいなのだろうと気になってしまった。
「この道路をバスも通るの?」
敷島が後部座席から頭を覗かせて運転手に聞くと、
「そうですよ」
と、運転手はあっけらかんと答えた。
その通り、トンネルを抜けると、反対車線に路線バスが信号が変わるのを待っていた。
見た感じ、都心部を走るような大型路線バスではないようなので、ぎりぎりあの狭いトンネルを通れるのか。
「凄い所に来たなぁ……」
「!」
秩父湖とはダム湖である。
敷島がダム湖の光景に見取れていると、シンディが反応した。
「山の方!山の方に何かいる!」
「マジか!運転手さん、山の方に何とか行けませんか?」
「ええっ、山ですか!?いや、車は入れませんよ……」
「車は?てことは、人は入れるの?」
と、アリスも聞く。
「ええ、この先に登山道が。しかし、あまり初心者向きではない所なので、お客さん達のような軽装では……」
「大丈夫だ。その登山道の入口の所で止めてください」
敷島達はタクシーのトランクに積んだ荷物を下ろした。
この中には、もし8号機のアルエットを見つけ出しても、何かあった時の為の道具が沢山入っている。
「……あの、お戻りになるまで待ちましょうか?」
と、運転手。
「いや、大丈夫。バスが走ってたらそれで帰るし、バスに間に合わなかったら、電話で呼ぶから」
その為に敷島は料金を払う際に、領収書を所望した。
最初アリスは、敷島がタクシー代を会社の経費で落とそうと企んでいたと誤解したらしい。
そうではなく、タクシーを呼ぶことになった際、電話番号を知っておく為であった。
領収書には、必ずそのタクシー会社の電話番号が書いてある。
敷島達は早速、登山道の中に入っていった。
「って、登山道あるんじゃないか!」
「和名倉山の埼玉県側からは登山道も整備されるようになり、そこを歩く分には『テントは要らない』そうです」
と、シンディが話した。
「! つまり、登山道から外れたら、即行で遭難する山なのか……」
「まあ、GPSはあるから大丈夫ですよ。いつでも車を降りた場所、もしくは国道へ復帰することは可能です。それに、いざとなったら、お2人を抱えて飛びますから」
シンディは笑みを浮かべて言う。
「そうか。頼むぞ」
「スキャンで反応したのは、あっちなんだけど……」
登山道をしばらく進むと、シンディが登山道から外れた所を指さした。
「マジか!……うーん……」
登山に関しては素人の敷島夫妻。
「登山道からそんなに外れない所まで付き合いましょう」
と、アリス。
「あの岩の所はどうでしょう?あそこなら、遠くから狙撃されても大丈夫です」
「さらっと縁起でも無いこと言うなぁ……」
敷島はボヤいた。
大きな岩の所まで行くと、
「じゃ、ここからは私パートですね」
と、シンディはウィンクした。
「ムリはしないでよ。危険だと思ったら、すぐ引き返して」
「分かりました」
シンディは敷島夫妻のいる大岩の場所を、自身の地図機能にマークした。
[同日11:00.埼玉県秩父市・和名倉山中 シンディ]
シンディが藪を突き進んでいく。
その時、彼女のスキャンに掛かる者がいた。
「誰だ!?」
シンディは右手をショットガンを変形させて、反応のあった場所に向けた。
そこにいたのは……。