報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「新型マルチタイプ修理中」

2015-07-08 22:14:13 | アンドロイドマスターシリーズ
 ※マウスぶっ壊れやがった!赤いレーザーポインターが点灯しなくなったからだと思うが、おかげで使いにくくてしょうがない。幸い明日は休みなので、安いマウス買いに行くか。

[6月21日14:00.天候:晴 埼玉県秩父市・和名倉山登山口 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ、アルエット]

「さすがはアリスだな。応急手当がスムーズに行くとは……」
「アタシって天才!」
「さすがです。ドクター」
 しかしアルエットは動かないままだった。
 アリスの応急処置により、漏油や漏電を止めることに成功した。
 あくまでも応急なので、再起動させるわけにはいかない。
 では、これからどうするのか?
 敷島達がここに来たきっかけは、果たして何だったか覚えているだろうか?
 デイライト・コーポレーションの社員が、この町でバージョン4.0の集団を見かけたからである。
 ではその社員達は、どうしてここにいたのだろうか?
 アリスが通勤しているさいたま市の研究所は、実はそんなに秘密の研究所というわけでもない。
 日本法人としては、むしろさいたま市の研究所をロボット研究のパビリオン会場として、一般公開したいくらいだそうだ。
 その代わり、秘密の研究所はもっと山奥の町に移す。
 そう。それこそ、“バイオハザード”におけるラクーンシティみたいに。
 この秩父市に、正しくその研究所があるというのだ。
 アリスは同じ研究職の立場を利用し、その研究所にてアルエットの本格修理を行う旨を通達した。
「あ、タクシー来ました」
「よーし!領収証取っていて良かったぜ」
 往路と同じタクシー会社、そして運転手。
「毎度どうも!ありがとうございます」
「ちょっと大きな荷物があるから、トランク開けてくれる?」
「はい」
 トランクに詰み込むのは、元から持参してきた道具と……。
「ええっ?何ですか、このコは……」
「心配無いですよ。人間じゃないですから」
 と、敷島。
「ええっ?でも……」
 敷島はアルエットをうつ伏せにした。
 背中の蓋は剥き出しになっていて(普段は人工皮膚に隠されているのだが、アリスが修理しやすようにわざと剥き出しになっていた)、開けるとメカだらけだ。
「はあ……」
「というわけで、いいですかね?大きなお人形さんみたいだと思ってもらえれば……」
「ど、どうぞ……」
「社長、アタシもトランク?」
「いや、お前は往路と同じ、助手席だ!」
 敷島はシンディのかましたボケにツッコんだ。
 南里研究所時代は、どちらかというと敷島がボケ役で南里がツッコミ役だったのだが、今ではもうツッコミ専門である。
「で、また三峰口駅ですか?」
「アリス」
「秩父の街までお願いシマス」
「かしこまりました」
(何で最後だけ片言?)
 敷島は運転席の後ろに座りながら、心の中で突っ込んだ。
 さすがにそこまでツッコむ気にはなれない。

 車が秩父市の市街地に向かって走る。
「レイチェルはもう襲って来ないかな?」
「だいぶ損傷したからね、しばらくは襲ってこないと思うよ」
「シンディ。アルエットの修理が終わったら、あなたも直すから」
「ありがとうございます」
 実はシンディの損傷は、まず左腕がブラブラしていた。
 人間で言う骨折である。
 これにより、マルチタイプの自慢の機能の1つである有線ロケットパンチが使用不可になっている。
 配線のショートに関しては、シンディが自分でショートした部分を引きちぎったり、切り落としたりするなど自己手当てをした。
 あとは右足。
 びっこを引くような感じになっている。
 そこも損傷しているのが分かった。
 同じく、自己応急手当で火花が飛び散ったり、オイル漏れしていたりすることは今のところは無い。
 しかしこれにより、ブースターが使用不可になった為、大ジャンプができなくなっている。
 アリスは秩父市内の研究所に連絡を入れ、今から向かう旨を伝えた。

[同日15:30.秩父市街地 上記メンバー]

 国道140号線をひたすら行くと、秩父の市街地に入る。
 西武秩父駅にも程近い場所に、それはあった。
「これよ!」
「えっ!?」
 それはごく普通の3階建ての小さなビルだった。
 ビル全てを専有しているのか、『(株)デイライト・コーポレーション・ジャパン 秩父営業所』という看板しか見当たらなかった。
「研究所じゃなく、営業所だぞ?」
 敷島がツッコミを入れると、
「シッ。いいの」
 アリスが眉を潜めた。
 日曜日なので、当然、普通の正面入口は閉鎖されている。
 通用口の前で止まった。
 そこでシンディがタクシーチケットに記入している間、敷島夫妻がトランクから荷物を下ろしている。
「あ、ちょっと待て」
「何よ?」
「アリスは別の研究所所属とはいえ、一応社員で、しかも研究職だからいいとして、俺は部外者だから入れないだろ?」
「アタシ、頼んで来る」
「いや、いいよ。100パー断られるのがオチだ。秘密の研究所なんだろ?表向きは営業所ってことにしておいて、実態は研究所という……」
「でも、アタシの腕でも1日掛かるよ?」
「いいさ。俺はこの近くのホテルでも取ってる。日曜の月曜なら、部屋も空いてるだろ」
「何か、心配だねぇ……」
「シンディも損傷している以上、見張りには付けそうにないな」
「嬉しそうに……!」
 敷島の笑みに、あからさまに不快な顔をするアリスだった。
「勝手に変な遊びに行ったりしたら、後で蜂の巣だからね?」
「へいへい」
 シンディは左腕は損傷しているが、損傷していない右手でアルエットを抱えた。
 損傷している右足のせいで、少しそれを引きずる感じで歩いているが……。
 その様子を見送った後、敷島は営業所という名の研究所の外に出た。
(なるほど。まさか、秘密の研究所が街中にあるとは誰も思わない。『灯台下暗し』作戦か)
 そう思い、取り急ぎ、西武秩父駅や御花畑駅の近くにあるビジネスホテルに当たってみた。
 アリスは恐らくこのまま研究所泊まり込みになるだろうから、シングルだけにしておいた。
(あいつも朝早くから動き回っているというのに大変だな……)
 ロボットいじりが大好きなアリスだから、別に苦ではないのだろうが……。
(あとは井辺君に電話だ)
 敷島は手持ちのスマホを手にした。
(8号機のアルエットをこちらの手中にできたんだから、一応はこっちの勝利ってことになるのかな)
 小型・軽量化したということもあって、見た目が7号機までの成人女性タイプから、10代半ばの少女タイプに変わっている。
(あれで歌でも歌えたら、うちの事務所でデビューさせてもいいんだがな)
 マルチタイプは基本、歌が歌えない。
 その代わり、楽器ができるのが特徴だ。

「あー、もしもし。井辺君かい?お疲れさん。いや、実はさ、ちょっと今日中に東京に戻れなくなった。別に、こっちが不利になったわけじゃないんだが……。そう」
 井辺は相変わらず抑揚の無い声で受け答えしていた。
 ただ、7号機のレイチェルの特徴をはっきり答えていたことに違和感があったが。
(何で井辺君が、レイチェルの特徴を知ってるんだ?)
 と。
コメント (2)
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