[2月3日09:30.天候:晴 羽田空港第2ターミナル]
敷島はアリスが入店したというカフェで朝食を取っていた。
敷島:「アリスのヤツ、随分食いやがるなぁ……」
エミリー:「アリス博士の体付きの良さがよく分かりますね」
敷島:「俺が毎日こんなに食ったら、すぐ太っちゃうよ」
エミリー:「それはそれで、社長らしくなって良いと思いますよ」
敷島:「悪かったな。今は全然社長らしくなくて。財団が崩壊して行き場を失ったミク達が可哀想になったから、事務所を立ち上げることにしたんだよ。危うく、皆バラバラに売られる所だったんだからな」
エミリー:「御英断だと思います。ボーカロイド達は社長にばかり感謝しているようですが、本当はもっと敷島エージェンシーの立ち上げと運営に協力して下さった方々にも報恩感謝するべきだと思います」
敷島:「いや、うちの面々はそこまで求めてないよ。せいぜい、もし報恩感謝するつもりなら、売り上げて応えてくれってところだろう。俺から言わせれば、皆それができてると思うよ。……ああ、MEGAbyteとかはまた事情が違うからな」
エミリー:「朝食が終わりましたら、私を荷物として詰め込んでください」
敷島:「あいつはどこでシンディを詰めたんだ?」
エミリー:「多目的トイレです」
敷島:「ああ、なるほど」
[同日10:00.天候:晴 同場所]
エミリーと萌の電源を切ってキャリーケースに詰め込んだものの、その重量はとても重いものだった。
マルチタイプ姉妹はだいぶ軽量化が進んだとはいえ、その体重はまだ3ケタあったはずである。
敷島:「なるほど。それで電動アシスト付きキャリーケースなんてあるんだ」
因みにDCJのロゴマーク入り。
もしかして、製作したロボットをこれに入れて密輸出するつもりだったりするのか?
敷島は預ける荷物として、そのスーツケースを出した。
因みに品名は精密機械としたが、何と重量オーバーで預け入れを拒否されてしまった!
敷島:「しょうがない。萌だけ手荷物だ」
敷島は手荷物として電源の切れた萌を移し替えた。
それにしても、エミリーの重さだと特別料金がハンパ無い。
敷島:(これ、手荷物検査の無い新幹線の方が楽なんじゃないのか?)
因みに今、北海道新幹線で北海道上陸は可能である。
萌に関しては、パソコン周辺機器を収納する袋に入れた。
警備員A:「お客様、これは?」
敷島:「あ、それは試作品のロボットです。あ、もう電源は切ってありますんで」
敷島は嘘はついていない。
萌は妖精型ロイドの試作品である。
因みに設計図はあるのだが、未だにどういうわけだか、増産の予定も商品化の予定も無かった。
敷島の説明に、手荷物検査係の警備員はX線検査機に萌を通した。
警備員A:「OKです」
警備員B:「はい。お客様、どうぞ通りください」
敷島:「はい」
ピー!(金属探知機に引っ掛かった音)
敷島:「ありゃ!?」
警備員B:「失礼します。お客様、こちらへ」
敷島:「マジで?」
萌は大丈夫だったが、敷島はダメだった。
警備員B:「お客様、腕時計は外してください」
敷島:「あっ、いっけね!こりゃ失礼!」
そして、どうにか手荷物検査を終えた敷島だった。
[同日11:00.天候:晴 ANA61便機内]
搭乗手続きが始まり、敷島はやっと機上の人となった。
尚、ツアー客が乗ったのはエコノミーである為、敷島もエコノミークラスだ。
敷島:(お、窓側席だ)
敷島は3人席の窓側に座った。
見ると、そんなに空いているわけではない。
恐らく、たまたまキャンセルか何か出たところをそのタイミングで押さえることができたのだろう。
女性客:「すいません」
男性客A:「はい」
すぐ前の席では、そこそこ美人の女性客が通路側に座る男性客のすぐ前を通過して敷島の前の席に座った。
敷島:(おおっ?いいなー)
今なら敷島の浮つきを咎める者はいない。
今のところ、敷島の隣の席に来る者はいないが……。
男性客B:「お隣よろしいですかな?」
敷島:「はい……?」
敷島のすぐ隣に、ゴツい男の声がした。
振り向いて見ると……。
敷島:「げっ!?鷲田警視と村中課長!?」
村中:「よお」
ドッカリと座る鷲田。
鷲田:「なにもそんなに驚くことはあるまい?」
敷島:「いや、驚くでしょ!?どうして鷲田警視達が!?捕まえた犯人達の尋問で忙しいんじゃ!?」
鷲田:「それは部下達に任せる。それより今回の件がKR団が絡んでいるとあれば、そうのんびりもできないんじゃないかと思ったのだ。だから敷島社長、キミに同行することにした」
敷島:「私はただアリス達の軌跡を辿るだけですよ」
鷲田:「分かっている。だが、何か分かるかもしれんぞ」
敷島:「そうですかね……」
〔「……シートベルトの御着用をお願い致します。……」〕
敷島達はシートベルトを締めた。
鷲田:「1つ分かったことがある。いや、まだ確証は無いのだが……」
敷島:「何ですか?」
鷲田:「どうもDCJのツアー客は、ホテルになど入っていないようだぞ?」
敷島:「えっ?でも、ホテルのスタッフは入ってるって……」
村中:「おかしいだろ?だから調べてみたんだよ。これを見てくれ」
敷島は通路側席に座る村中から、1枚のプリントを受け取った。
それはPCの画面をコピーして印刷したものだった。
敷島:「ツアー募集の広告ですか?」
村中:「うん。ちょっとよく見てもらえないかな?」
そのツアーはDCJ観光という観光会社が企画した、北海道2泊3日のツアーだった。
日程などを見ると、これがまたDCJロボット未来科学館の慰安旅行とほぼ同じだ。
違うのは新千歳までの航空便。
DCJ観光とやらは成田出発になっていた。
だが、そこから先の行程は科学館の方のツアーと全く一緒なのである。
新千歳空港からバスで向かうのも、東急REIホテルにチェックインする時間も全く同じであった。
敷島:「これは……!?」
鷲田:「調べてみたのだが、旅行業としてのDCJ観光という観光会社は存在しない。全く登録がされていないんだ」
敷島:「ええっ!?」
村中:「我々が思うに、これは本物のDCJさんが行方不明になったとしても、捜索の手をかく乱する為に、わざと偽のツアーを仕立てて、それでカムフラージュする目的があったんだと思うね」
鷲田:「だから恐らく、偽のツアー参加者は容疑者でも何でも無いだろう。偽ツアーと知らずに、ただ純粋に北海道旅行を楽しんだだけだと思う」
敷島:「じゃあ、本物のDCJさん達……アリス達は?」
村中:「恐らく、北海道の別の場所に誘拐されたんだと思う。ただ、今のところ犯行声明が出ていないのが気になるところだ」
鷲田:「とにかく、件のホテルに行ってみよう。既に、捜査協力依頼書は持っているからな。何とかホテル側から詳しい話が聞ければいいのだが……」
既に飛行機は離陸体制に入っており、機内安全ビデオが流れていた。
英訳担当はイケメンの白人男性であったが、少なくともこのビデオはアリス達も見ていたはずだった。
敷島達を乗せた飛行機はジェットエンジンを吹かし、北海道へ向かって離陸した。
敷島はアリスが入店したというカフェで朝食を取っていた。
敷島:「アリスのヤツ、随分食いやがるなぁ……」
エミリー:「アリス博士の体付きの良さがよく分かりますね」
敷島:「俺が毎日こんなに食ったら、すぐ太っちゃうよ」
エミリー:「それはそれで、社長らしくなって良いと思いますよ」
敷島:「悪かったな。今は全然社長らしくなくて。財団が崩壊して行き場を失ったミク達が可哀想になったから、事務所を立ち上げることにしたんだよ。危うく、皆バラバラに売られる所だったんだからな」
エミリー:「御英断だと思います。ボーカロイド達は社長にばかり感謝しているようですが、本当はもっと敷島エージェンシーの立ち上げと運営に協力して下さった方々にも報恩感謝するべきだと思います」
敷島:「いや、うちの面々はそこまで求めてないよ。せいぜい、もし報恩感謝するつもりなら、売り上げて応えてくれってところだろう。俺から言わせれば、皆それができてると思うよ。……ああ、MEGAbyteとかはまた事情が違うからな」
エミリー:「朝食が終わりましたら、私を荷物として詰め込んでください」
敷島:「あいつはどこでシンディを詰めたんだ?」
エミリー:「多目的トイレです」
敷島:「ああ、なるほど」
[同日10:00.天候:晴 同場所]
エミリーと萌の電源を切ってキャリーケースに詰め込んだものの、その重量はとても重いものだった。
マルチタイプ姉妹はだいぶ軽量化が進んだとはいえ、その体重はまだ3ケタあったはずである。
敷島:「なるほど。それで電動アシスト付きキャリーケースなんてあるんだ」
因みにDCJのロゴマーク入り。
もしかして、製作したロボットをこれに入れて密輸出するつもりだったりするのか?
敷島は預ける荷物として、そのスーツケースを出した。
因みに品名は精密機械としたが、何と重量オーバーで預け入れを拒否されてしまった!
敷島:「しょうがない。萌だけ手荷物だ」
敷島は手荷物として電源の切れた萌を移し替えた。
それにしても、エミリーの重さだと特別料金がハンパ無い。
敷島:(これ、手荷物検査の無い新幹線の方が楽なんじゃないのか?)
因みに今、北海道新幹線で北海道上陸は可能である。
萌に関しては、パソコン周辺機器を収納する袋に入れた。
警備員A:「お客様、これは?」
敷島:「あ、それは試作品のロボットです。あ、もう電源は切ってありますんで」
敷島は嘘はついていない。
萌は妖精型ロイドの試作品である。
因みに設計図はあるのだが、未だにどういうわけだか、増産の予定も商品化の予定も無かった。
敷島の説明に、手荷物検査係の警備員はX線検査機に萌を通した。
警備員A:「OKです」
警備員B:「はい。お客様、どうぞ通りください」
敷島:「はい」
ピー!(金属探知機に引っ掛かった音)
敷島:「ありゃ!?」
警備員B:「失礼します。お客様、こちらへ」
敷島:「マジで?」
萌は大丈夫だったが、敷島はダメだった。
警備員B:「お客様、腕時計は外してください」
敷島:「あっ、いっけね!こりゃ失礼!」
そして、どうにか手荷物検査を終えた敷島だった。
[同日11:00.天候:晴 ANA61便機内]
搭乗手続きが始まり、敷島はやっと機上の人となった。
尚、ツアー客が乗ったのはエコノミーである為、敷島もエコノミークラスだ。
敷島:(お、窓側席だ)
敷島は3人席の窓側に座った。
見ると、そんなに空いているわけではない。
恐らく、たまたまキャンセルか何か出たところをそのタイミングで押さえることができたのだろう。
女性客:「すいません」
男性客A:「はい」
すぐ前の席では、そこそこ美人の女性客が通路側に座る男性客のすぐ前を通過して敷島の前の席に座った。
敷島:(おおっ?いいなー)
今なら敷島の浮つきを咎める者はいない。
今のところ、敷島の隣の席に来る者はいないが……。
男性客B:「お隣よろしいですかな?」
敷島:「はい……?」
敷島のすぐ隣に、ゴツい男の声がした。
振り向いて見ると……。
敷島:「げっ!?鷲田警視と村中課長!?」
村中:「よお」
ドッカリと座る鷲田。
鷲田:「なにもそんなに驚くことはあるまい?」
敷島:「いや、驚くでしょ!?どうして鷲田警視達が!?捕まえた犯人達の尋問で忙しいんじゃ!?」
鷲田:「それは部下達に任せる。それより今回の件がKR団が絡んでいるとあれば、そうのんびりもできないんじゃないかと思ったのだ。だから敷島社長、キミに同行することにした」
敷島:「私はただアリス達の軌跡を辿るだけですよ」
鷲田:「分かっている。だが、何か分かるかもしれんぞ」
敷島:「そうですかね……」
〔「……シートベルトの御着用をお願い致します。……」〕
敷島達はシートベルトを締めた。
鷲田:「1つ分かったことがある。いや、まだ確証は無いのだが……」
敷島:「何ですか?」
鷲田:「どうもDCJのツアー客は、ホテルになど入っていないようだぞ?」
敷島:「えっ?でも、ホテルのスタッフは入ってるって……」
村中:「おかしいだろ?だから調べてみたんだよ。これを見てくれ」
敷島は通路側席に座る村中から、1枚のプリントを受け取った。
それはPCの画面をコピーして印刷したものだった。
敷島:「ツアー募集の広告ですか?」
村中:「うん。ちょっとよく見てもらえないかな?」
そのツアーはDCJ観光という観光会社が企画した、北海道2泊3日のツアーだった。
日程などを見ると、これがまたDCJロボット未来科学館の慰安旅行とほぼ同じだ。
違うのは新千歳までの航空便。
DCJ観光とやらは成田出発になっていた。
だが、そこから先の行程は科学館の方のツアーと全く一緒なのである。
新千歳空港からバスで向かうのも、東急REIホテルにチェックインする時間も全く同じであった。
敷島:「これは……!?」
鷲田:「調べてみたのだが、旅行業としてのDCJ観光という観光会社は存在しない。全く登録がされていないんだ」
敷島:「ええっ!?」
村中:「我々が思うに、これは本物のDCJさんが行方不明になったとしても、捜索の手をかく乱する為に、わざと偽のツアーを仕立てて、それでカムフラージュする目的があったんだと思うね」
鷲田:「だから恐らく、偽のツアー参加者は容疑者でも何でも無いだろう。偽ツアーと知らずに、ただ純粋に北海道旅行を楽しんだだけだと思う」
敷島:「じゃあ、本物のDCJさん達……アリス達は?」
村中:「恐らく、北海道の別の場所に誘拐されたんだと思う。ただ、今のところ犯行声明が出ていないのが気になるところだ」
鷲田:「とにかく、件のホテルに行ってみよう。既に、捜査協力依頼書は持っているからな。何とかホテル側から詳しい話が聞ければいいのだが……」
既に飛行機は離陸体制に入っており、機内安全ビデオが流れていた。
英訳担当はイケメンの白人男性であったが、少なくともこのビデオはアリス達も見ていたはずだった。
敷島達を乗せた飛行機はジェットエンジンを吹かし、北海道へ向かって離陸した。