報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「最高顧問宅へ向かう」

2017-02-05 21:08:30 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日16:20.天候:晴 JR大宮駅・埼京線ホーム]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。22番線に停車中の電車は、16時22分発、各駅停車、新宿行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 敷島とアリスは『敷島家の新年会』に参加する為、電車に乗り込んだ。

 敷島:「酒が入ってドンチャン騒ぎになるだろうから、トニーは置いて来た。こういう時、二海とかいると楽だなー」
 アリス:「メイドロイドの方が需要ありそうね。さすがは平賀教授だわ」
 敷島:「まあな。しかし、平賀先生は営業センスは無い。そこは、俺の出番だがな」

 シンディはしっかり護衛としてついて来ている。
 アリスと敷島は着席しているが、シンディは彼らの脇に立っていた。

〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Shinjyku.〕

 敷島:「ところでアリス」
 アリス:「なに?」
 敷島:「俺がシンディに拉致……もとい、強制帰還させられた時、何か寝ぼけてたみたいだけど、変な夢でも見た?」
 アリス:「あー、あれね……。ま、そんなとこ」
 敷島:「ふーん……?」
 アリス:「ねぇ、それより、『敷島家の新年会』って何やるの?」
 敷島:「それはだな……」

〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 敷島が答えていると、ホームに発車メロディが響き渡る。
 地下ホームなので、尚更だ。
 ドアが閉まると、電車はゆっくり加速した。
 ポイントを2ヶ所ほど渡って、上り線に入るまでの間は速度制限が掛かる。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側です〕

 大宮駅を出ると、電車は地上に出る為に一気に坂を登る。
 地上に出た後も、高架線に上がる為、上昇は止まらない。
 車内の自動放送が終わった後も、車掌による肉声放送が流れていて、この電車は各駅停車でも、後からやってくる快速電車の追い抜きはせず、そのまま新宿駅に向かう旨の内容が放送されていた。

 シンディ:「社長、ちょっとよろしいですか?」

 シンディが敷島の前に立った。
 座っている敷島の前なので、シンディは前屈みになる状態になる。

 敷島:「何だ」

 敷島の眼前には、持ち主のアリスと負けず劣らずの巨乳がある。
 姉のエミリーと同じデザインの服で隠されているが、その大きさは主張されている。

 シンディ:「姉さんから通信です。平賀教授が明日上京するので、新年の挨拶をしたいと……」
 敷島:「平賀先生からは年賀状をもらっているから、新年のご挨拶はそれで十分だと思うんだが……」
 シンディ:「いえ。平賀教授もなんですが、姉さん自身が社長に御挨拶したいと」
 敷島:「改めて挨拶をされる理由というのは……」
 シンディ:「まあ、是非ともオーナー登録をということでしょうね」
 敷島:「エミリーは南里所長亡き後、遺言に従って、平賀先生が相続されたものだ。俺が頂くわけにはいかんよ」

 拡大解釈として、今のエミリーのボディは平賀が造ったもの。
 使用期限の切れた前期型ボディは部品取りとして保管されているが、実際は殆ど部品を取られることなく、平賀の大学敷地内にある南里志郎記念館に展示されている。
 南里の遺言はその前期型ボディのことを言っているのであって、平賀が新造した後期型ボディ(デザインは前期型とほぼ同一)のことは当てはまらないというものだ。
 しかし、実際はメモリーや何やらソフト面も全部含めてのことと解釈されている。

 アリス:「平賀博士は『ユーザー登録ならいい』と言ってるんでしょう?南里博士は、相続後のエミリーの扱いについては何も遺さなかったって話じゃない」
 敷島:「それはそうなんだが……」
 シンディ:「元々姉さんは、南里博士に仕えつつ、社長に使われるのを喜んでいました。それが再開されるのですから、姉さんもそこは妥協してくれると思いますよ」
 敷島:「考えておこう」

 敷島は腕組みをして、本当に考える素振りをした。

[同日16:47.天候:晴 JR赤羽駅→赤羽駅西口バスプール]

 電車が北赤羽駅を出ると、ぐんぐん加速する。
 そして埼京線唯一の地上トンネルに入る。
 赤羽台トンネルと言う。

〔まもなく赤羽、赤羽。お出口は、右側です。宇都宮線、京浜東北線、上野東京ライン、湘南新宿ラインはお乗り換えです〕

 トンネルを出ると、到着放送が流れる。
 電車がホームに滑り込むと、多くの乗客が電車を待っていた。

〔あかばね、赤羽。ご乗車、ありがとうございます〕

 ホームで待つ乗客が多ければ、降車客も多い。

 敷島:「シンディ、赤羽駅でいいんだな?」
 シンディ:「はい。検索によりますと、この駅から常盤台までのバスが出ています。本数も多数です」
 敷島:「それなら楽だな」

 敷島は案内状を見た。

 敷島:「新年会は18時からになってるが、バスで間に合うか?」
 シンディ:「大丈夫ですよ。所要時間は25分です」
 敷島:「余裕を見ても……あー、大丈夫か」
 アリス:「こういう時、検索機能搭載のロイドがいると楽だね」
 シンディ:「恐れ入ります」

 西口に出てバス停に向かうと、確かに土曜日であっても7分おきに出ているほどだった。

 敷島:「思わず、後ろから乗りそうになるな」

 バス会社は国際興業。
 埼玉でも営業しているが、都内とは乗り方が違う。

 アリス:「タカオ、またバス特攻はやめてよ」
 敷島:「はははっ!それはロボットテロが発生していて、どうしてもそいつらに突っ込まなきゃダメな時限定だよ」

 敷島は都合3回、バス特攻を行っている。
 1回目は東京決戦の時、2回目はDCJ埼玉研究所、3回目はアメリカのDCI研究所だ。
 バスを待っている間、他の行き先のバスの発着風景を眺めていると、ついついそんなことを思い出してしまうのだ。

 アリス:「タカオは大型自動車免許を持っているのね」
 敷島:「一種だけどね。よく取ったもんだ」

 敷島は遠くを眺めるような目になって、そう答えた。
コメント
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