[1月8日07:00.天候:雨 埼玉県さいたま市 敷島孝夫とアリスの住むマンション]
アリス:「……!!」
アリスはワケの分からない夢を見て目が覚めた。
アリス:(何か最近、変な夢ばかり見てる。何なの……?)
と、そこへ夫婦の寝室のドアが開けられた。
入って来たのはシンディ。
シンディ:「マスター、起床のお時間ですよ。社長も」
敷島:「何だ、まだ7時じゃないか。日曜日なんだから、もう少しゆっくり……」
シンディ:「今日は姉さんと平賀博士が来るんでしょう?駅まで迎えに行くから、起こしてくれって言ったじゃない」
敷島:「……っと!そうだった。アリス、お前も」
アリス:「うん……」
敷島とアリスは互いのベッドから起き出した。
敷島:「平賀先生達は何時の新幹線で来るって?」
シンディ:「9時過ぎよ。“やまびこ”122号」
敷島:「山形新幹線連結の、仙台駅始発の新幹線か。平賀先生、狙ったな」
シンディ:「二海が朝食の用意をしているので、早く朝の支度をしてください」
敷島:「ああ、分かった」
敷島は寝ぼけた頭を振りながら、洗面台に向かった。
シンディ:「マスター?マスターもお早く……」
アリス:「シンディ、私、もう少し寝てる」
シンディ:「どうかなさったのですか?」
アリス:「うん……ちょっと具合悪い」
[同日07:30.天候:雨 敷島のマンション]
敷島:「なに?アリスが?」
シンディ:「ええ。具合が悪いので、休みたいと」
敷島:「元々研究員は土日休みだろう?科学館はどちらかというと、ガイド(案内係の職員)がメインだからな。バックグラウンドの研究員は、平日だけの勤務だし、本来は」
シンディ:「きっと、昨日の『敷島家の新年会』でお疲れになったのでしょうね」
敷島:「うん、あるな、それ。アリスも俺と結婚して、敷島家の一員になったわけだが、疲れることばかりだろう。いいや、そういうことなら。お前、今日はアリスの面倒見てやってくれ。平賀先生への挨拶は俺1人でいい」
シンディ:「分かりました」
敷島は二海の焼いたトーストに齧りついた。
朝食が終わって、敷島は再び寝室に向かったのだが……。
アリス:「シンディは、タカオに付いて行って」
シンディ:「かしこまりました」
敷島:「おい、まさか、風邪でも引いたのか?ただでさえ白人で肌が白いのに、もっと青白くなってるぞ?」
シンディ:「うん……。頭が痛い……」
敷島:「今日は日曜日で病院は開いてないし……」
シンディ:「救急箱に頭痛薬があります」
アリス:「ここには二海がいるから、大丈夫。アンタ、平賀教授とエミリーに会ってきて。シンディも、エミリーに会いたいでしょ?」
シンディ:「……はい。でも、マスターのことが最優先ですから」
敷島:「そうだよ。お前が病気になるなんて……。だから、今日は雨なのか」
アリス:「いいから、シンディを連れてけっ」
敷島:「分かった分かった」
敷島とシンディが外出した後、アリスは起き上がってトイレに向かった。
そして、その戸棚にある生理用ナプキンを取り出したのだった。
アリス:「変な夢見たせいで、今回は早めか……。ってか、トニーの弟か妹産んであげたいのに……。あんにゃろめ、また無精子になりやがったかな……。またシンディに電気ショック与えてもらおうかな……」
[同日09:10.天候:雨 JR大宮駅・新幹線ホーム]
敷島:「……ックシュ!」(大きなクシャミをする)
シンディ:「大丈夫ですか、社長?」
敷島:「ああ。どうせアリスが俺に対して、何か愚痴でも言ってんだろ」
シンディ:「二海からはそんな報告は無いですが……。今日は雨で、気温も低いですから」
敷島:「よくよく考えてみたら、昨日の今日だから二日酔いなだけかもな。今から思えば、若干あいつ、まだ酒が残っていたような気がする」
シンディ:「マスターにはアルコールチェックをしていないので、何とも言えません」
〔14番線に、“やまびこ”“つばさ”122号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は途中、上野に止まります。……〕
ホームに自動接近放送が響き渡る。
敷島:「おっ、来たな」
シンディ:「ええ……」
何故かシンディは両手を前に組んで、俯いていた。
まるで、何かに怯えているようにも見えた。
敷島:「どうした、シンディ?お前もどこか調子が悪いのか?」
シンディ:「いえ、そんなことは……ないです」
敷島:「エミリーが怖いのか?」
シンディ:「め、滅相も無いです。元々姉さんは、私達マルチタイプの中では1番厳しいロイドでしたから」
〔「14番線、ご注意ください。“やまびこ”“つばさ”122号、東京行きの到着です。お下がりください」〕
東北新幹線では最古参のE2系を先頭に、長大編成の列車が入線してきた。
平賀達はグリーン車に乗ってやってくるはずなので、9号車の位置で待っている。
〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
ドアが開いて、乗客が降りてくる。
その中に平賀とエミリーがいた。
敷島:「平賀先生!」
平賀:「おー、敷島さん。明けまして、おめでとうございます」
敷島:「こちらこそ、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
エミリー:「敷島・社長。明けまして・おめでとう・ございます。今年も・よろしく・お願い・致します」
敷島:「あ、ああ。よろしく」
平賀の荷物を持ったエミリーが恭しく敷島に挨拶してきた。
その喋り方は表情は、いつものエミリーである。
赤み掛かったショートボブも、いつもの通り。
同型の姉妹機だからか、顔はシンディによく似ている。
服のデザインもまた一緒で、シンディが青色に対し、エミリーは濃紺である。
因みにレイチェルは、白いプラグスーツを着ていた。
平賀:「10時半から科学館で、自分が特別講演をすれば良いわけですね」
敷島:「そのようです。科学館に行けば、担当職員が詳細を説明してくれるはずです。行きましょう」
平賀:「よろしくお願い致します」
[同日10:30.天候:晴 さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]
大宮駅からは敷島の車で向かった。
敷島が運転して向かったわけだが、ルームミラーには終始笑顔を向けるエミリーが映っていた。
敷島との契約を楽しみしているといった顔だった。
いつもなら無表情か、笑っても微笑程度しか浮かべない彼女。
前期型からの贖罪の為、笑ってはいけないと笑顔を自ら封印したはずである。
それが最近は、シンディのように笑い声は上げないものの、微笑では収まらない笑顔を見せるようになった。
それはもう贖罪が終わったと見ているのか、それとも……。
平賀:「えー、皆さん、こんにちは。本日は足元が悪い中、お集まり頂いて恐れ入ります。本日は私の講演を聴いて頂けるということで、ありがとうございます。それでは早速始めたいと思いますが、まず今回のお題であります、『アンドロイドと人間の関わりについて』の……」
平賀の講演が無事に始まった。
傍らにはエミリーが立っている。
敷島:「うん、普通だな」
シンディ:「多分姉さんのことだから、後で社長に契約を迫って来ると思うわ。どうするの?」
敷島:「現在のオーナーは平賀先生なんだから、平賀先生の御意向が最優先だ。それを理解できないエミリーじゃないだろう」
シンディ:「たまに姉さん、そういう理解も断固拒絶したり、軽々と超越したりすることもあるからね」
敷島:「講演は45分だ。あとは先生に任せて、俺達は別の場所にいよう。アリスの具合も心配だし」
シンディ:「二海の報告によれば、今のところ、部屋で大人しく休まれているそうよ」
敷島:「それは何よりだ」
敷島とシンディはシアターホールを出ると、アルエットや萌が展示されているエリアに向かった。
アリス:「……!!」
アリスはワケの分からない夢を見て目が覚めた。
アリス:(何か最近、変な夢ばかり見てる。何なの……?)
と、そこへ夫婦の寝室のドアが開けられた。
入って来たのはシンディ。
シンディ:「マスター、起床のお時間ですよ。社長も」
敷島:「何だ、まだ7時じゃないか。日曜日なんだから、もう少しゆっくり……」
シンディ:「今日は姉さんと平賀博士が来るんでしょう?駅まで迎えに行くから、起こしてくれって言ったじゃない」
敷島:「……っと!そうだった。アリス、お前も」
アリス:「うん……」
敷島とアリスは互いのベッドから起き出した。
敷島:「平賀先生達は何時の新幹線で来るって?」
シンディ:「9時過ぎよ。“やまびこ”122号」
敷島:「山形新幹線連結の、仙台駅始発の新幹線か。平賀先生、狙ったな」
シンディ:「二海が朝食の用意をしているので、早く朝の支度をしてください」
敷島:「ああ、分かった」
敷島は寝ぼけた頭を振りながら、洗面台に向かった。
シンディ:「マスター?マスターもお早く……」
アリス:「シンディ、私、もう少し寝てる」
シンディ:「どうかなさったのですか?」
アリス:「うん……ちょっと具合悪い」
[同日07:30.天候:雨 敷島のマンション]
敷島:「なに?アリスが?」
シンディ:「ええ。具合が悪いので、休みたいと」
敷島:「元々研究員は土日休みだろう?科学館はどちらかというと、ガイド(案内係の職員)がメインだからな。バックグラウンドの研究員は、平日だけの勤務だし、本来は」
シンディ:「きっと、昨日の『敷島家の新年会』でお疲れになったのでしょうね」
敷島:「うん、あるな、それ。アリスも俺と結婚して、敷島家の一員になったわけだが、疲れることばかりだろう。いいや、そういうことなら。お前、今日はアリスの面倒見てやってくれ。平賀先生への挨拶は俺1人でいい」
シンディ:「分かりました」
敷島は二海の焼いたトーストに齧りついた。
朝食が終わって、敷島は再び寝室に向かったのだが……。
アリス:「シンディは、タカオに付いて行って」
シンディ:「かしこまりました」
敷島:「おい、まさか、風邪でも引いたのか?ただでさえ白人で肌が白いのに、もっと青白くなってるぞ?」
シンディ:「うん……。頭が痛い……」
敷島:「今日は日曜日で病院は開いてないし……」
シンディ:「救急箱に頭痛薬があります」
アリス:「ここには二海がいるから、大丈夫。アンタ、平賀教授とエミリーに会ってきて。シンディも、エミリーに会いたいでしょ?」
シンディ:「……はい。でも、マスターのことが最優先ですから」
敷島:「そうだよ。お前が病気になるなんて……。だから、今日は雨なのか」
アリス:「いいから、シンディを連れてけっ」
敷島:「分かった分かった」
敷島とシンディが外出した後、アリスは起き上がってトイレに向かった。
そして、その戸棚にある生理用ナプキンを取り出したのだった。
アリス:「変な夢見たせいで、今回は早めか……。ってか、トニーの弟か妹産んであげたいのに……。あんにゃろめ、また無精子になりやがったかな……。またシンディに電気ショック与えてもらおうかな……」
[同日09:10.天候:雨 JR大宮駅・新幹線ホーム]
敷島:「……ックシュ!」(大きなクシャミをする)
シンディ:「大丈夫ですか、社長?」
敷島:「ああ。どうせアリスが俺に対して、何か愚痴でも言ってんだろ」
シンディ:「二海からはそんな報告は無いですが……。今日は雨で、気温も低いですから」
敷島:「よくよく考えてみたら、昨日の今日だから二日酔いなだけかもな。今から思えば、若干あいつ、まだ酒が残っていたような気がする」
シンディ:「マスターにはアルコールチェックをしていないので、何とも言えません」
〔14番線に、“やまびこ”“つばさ”122号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は途中、上野に止まります。……〕
ホームに自動接近放送が響き渡る。
敷島:「おっ、来たな」
シンディ:「ええ……」
何故かシンディは両手を前に組んで、俯いていた。
まるで、何かに怯えているようにも見えた。
敷島:「どうした、シンディ?お前もどこか調子が悪いのか?」
シンディ:「いえ、そんなことは……ないです」
敷島:「エミリーが怖いのか?」
シンディ:「め、滅相も無いです。元々姉さんは、私達マルチタイプの中では1番厳しいロイドでしたから」
〔「14番線、ご注意ください。“やまびこ”“つばさ”122号、東京行きの到着です。お下がりください」〕
東北新幹線では最古参のE2系を先頭に、長大編成の列車が入線してきた。
平賀達はグリーン車に乗ってやってくるはずなので、9号車の位置で待っている。
〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
ドアが開いて、乗客が降りてくる。
その中に平賀とエミリーがいた。
敷島:「平賀先生!」
平賀:「おー、敷島さん。明けまして、おめでとうございます」
敷島:「こちらこそ、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
エミリー:「敷島・社長。明けまして・おめでとう・ございます。今年も・よろしく・お願い・致します」
敷島:「あ、ああ。よろしく」
平賀の荷物を持ったエミリーが恭しく敷島に挨拶してきた。
その喋り方は表情は、いつものエミリーである。
赤み掛かったショートボブも、いつもの通り。
同型の姉妹機だからか、顔はシンディによく似ている。
服のデザインもまた一緒で、シンディが青色に対し、エミリーは濃紺である。
因みにレイチェルは、白いプラグスーツを着ていた。
平賀:「10時半から科学館で、自分が特別講演をすれば良いわけですね」
敷島:「そのようです。科学館に行けば、担当職員が詳細を説明してくれるはずです。行きましょう」
平賀:「よろしくお願い致します」
[同日10:30.天候:晴 さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]
大宮駅からは敷島の車で向かった。
敷島が運転して向かったわけだが、ルームミラーには終始笑顔を向けるエミリーが映っていた。
敷島との契約を楽しみしているといった顔だった。
いつもなら無表情か、笑っても微笑程度しか浮かべない彼女。
前期型からの贖罪の為、笑ってはいけないと笑顔を自ら封印したはずである。
それが最近は、シンディのように笑い声は上げないものの、微笑では収まらない笑顔を見せるようになった。
それはもう贖罪が終わったと見ているのか、それとも……。
平賀:「えー、皆さん、こんにちは。本日は足元が悪い中、お集まり頂いて恐れ入ります。本日は私の講演を聴いて頂けるということで、ありがとうございます。それでは早速始めたいと思いますが、まず今回のお題であります、『アンドロイドと人間の関わりについて』の……」
平賀の講演が無事に始まった。
傍らにはエミリーが立っている。
敷島:「うん、普通だな」
シンディ:「多分姉さんのことだから、後で社長に契約を迫って来ると思うわ。どうするの?」
敷島:「現在のオーナーは平賀先生なんだから、平賀先生の御意向が最優先だ。それを理解できないエミリーじゃないだろう」
シンディ:「たまに姉さん、そういう理解も断固拒絶したり、軽々と超越したりすることもあるからね」
敷島:「講演は45分だ。あとは先生に任せて、俺達は別の場所にいよう。アリスの具合も心配だし」
シンディ:「二海の報告によれば、今のところ、部屋で大人しく休まれているそうよ」
敷島:「それは何よりだ」
敷島とシンディはシアターホールを出ると、アルエットや萌が展示されているエリアに向かった。