[1月7日02:00.天候:曇 埼玉県さいたま市上空]
何故か真夜中の埼玉上空を飛ぶシンディ。
両足には鉄腕アトムばりの超小型ジェットエンジンを装着している。
アトムは標準装備であるのだが、こっちは後付けの着脱式。
あくまでも緊急脱出用としての用途なので、飛行時間は短く、距離もまた短い。
敷島エージェンシーのある東京都江東区から、現住所のさいたま市大宮区内までの片道がせいぜいである。
シンディは無表情であった。
そしてその両手には、まるで荷物のように何かを抱き抱えている。
敷島:「あの……シンディさん?」
シンディ:「何ですか、社長?」
敷島:「そろそろ降ろしてもらいたいんスけど……?」
シンディ:「まだ家じゃありませんわ。あいにくとこれはタクシーでもバスでも無いので、途中下車……もとい、途中降機はできませんことよ」
シンディは敷島の両脇を抱えて飛んでいた!
敷島:「いい加減にしろよ、シンディ!俺が何したってんだ!?」
シンディ:「だまらっしゃい!マスターから今日中に帰って来るように言われてたのに、もう日付が変わってしまったのよ!?アタシもマスターに怒られる……」
敷島:「会社の新年会が思いのほか盛り上がったんだから、しょうがないだろ!」
シンディ:「ほら、もうすぐ家よ!朝帰りの言い訳は思いついた!?」
その時、敷島はエミリーだったらこんなことはしないだろうと思った。
シンディは敷島のマンションの屋上に着陸した。
敷島:「静かに着陸しろよ!近所迷惑になるぞ!」
シンディ:「うるさいわね!早く部屋まで歩きなさい!」
因みにシンディが敷島に対してタメ口を叩く時は、アリスの命令で何か動いている時である。
アリスの命令が最優先になるので、敷島の意向がアリスの意向とぶつかる時はアリスの方が優先になる。
敷島の秘書として動いている時は、通常アリスの命令が受信されることが無いため、敬語で態度も比較的柔和なものである。
どうにかシンディは、敷島を家まで連行することに成功した。
シンディ:「ほら、早く入って!」
敷島:「始発電車で明るい時に帰って来るはずが……」
シンディ:「そんなことは許されないんだからねっ!……マスター、シンディです。只今、戻りました。申し訳ありません。私がついていながら、こんな時間になってしまって……」
ところが、奥から出て来たのはアリスではなかった。
トニー:「ぱーぱ、シンヂー……」
ヨチヨチ歩いてはコテッ膝をついてハイハイをし、また立ち上がってはコテッの繰り返しのトニーだった。
敷島:「トニー?」
シンディ:「お坊ちゃま!?」
トニー:「シンヂー、だっこだっこ」
シンディ:「あ、はい。抱っこでございますね」
シンディはトニーを抱き抱えた。
シンディ:「いけませんわ。こんな時間に起きられたら……。さ、早くベッドに行きましょう」
敷島:「てか、アリスはどうしたんだ?」
シンディ:「二海は……充電中か」
敷島とシンディは暗い寝室に入った。
敷島:「何だ、寝てるじゃないか。だったら俺、無理に今帰って来なくても良かったじゃないか」
シンディ:「そういう問題じゃない!!」
トニー:「ふえっ……!うえええ……!」
シンディ:「あぁあ!申し訳ありません!驚かせてしまいまして!」
敷島:「何やってんだよ、シンディ」
シンディ:「あんたのせいでしょ!」
アリス:「うう……」
敷島:「ほら、アリスまで起きちゃったぞ。じゃ、俺は風呂入って寝る」
シンディ:「ちょ、ちょっと……!」
アリス:「パパ……ママ……行っちゃダメ……」
アリスはシンディのロングスカートの裾を掴んだ。
シンディ:「な、何でしょうか?」
アリス:「あれ……?ここは……?」
シンディ:「大丈夫ですか、マスター?」
シンディはアリスの顔を覗き込んだ。
アリス:「……あれ?シンディ?じー様に直してもらったの……?」
シンディ:「はい?何のことでしょうか?」
アリス:「あ……夢か」
シンディ:「仰せの通り、社長を連れ帰りましたよ。ただ……日付が変わってしまって、申し訳ありませんでした」
アリス:「……もういいよ。タカオの説教はまた今度ね。取りあえず、シンディ……」
シンディ:「はい」
アリス:「トニーを寝かしつけるのが最優先よ」
シンディ:「か、かしこまりました!」
アリスとシンディは夜泣き同然に泣きじゃくるトニーの元へ駆け寄った。
[同日10:00.天候:曇 埼玉県さいたま市 敷島家]
敷島:「……であるからして、ああなったのであると……。アンダースタン?」
アリス:「分かったわ。じゃあ、取りあえず判決を言い渡す!……シンディによる電気ショックの刑!執行即時!」
シンディ:「ははっ!」
シンディは左手を挙げた。
そこからパチッと火花が飛び散る。
敷島:「ギャオッ!」
アリス:「トニーがずっと帰りを待っていたというのに……!」
敷島:「カンベンしろよー。今日は『敷島家の新年会』があるんだから。お前も来ていいことになってるんだ」
アリス:「そうなの?」
敷島:「そうだよ。お前も敷島家の一員なんだからな。伯父さんに言われただろ?『Welcome to the family,daughter.』ってさ」
直訳すれば『ようこそ家族へ、娘よ』になるが、実際はもっとくだけた訳になり、『キミも家族だ』となる。
アリス:「なるほど。そういうことならいいわ。で、どこでやるの?インペリアル・ホテル(帝国ホテル)?」
敷島:「いやいや。今日はさすがにそこじゃない。最高顧問のお歳に合わせて、最高顧問の豪邸でやるってさ」
アリス:「そうなの」
敷島:「そういうわけだから、午後になったら行く準備をするぞ」
アリス:「分かった」
敷島:「特別ゲストとして、ルカとMEIKOも呼ばれてるんだが、これ絶対、コンパニオン要員だろうな。歌って踊ってナンボのボーカロイドに何させるつもりだよ……」
シンディ:「私もお手伝いしましょうか?」
敷島:「お前は屋敷の警護でもしてりゃいいよ」
アリス:「不審者が来たら、即行捕まえるのよ」
シンディ:「かしこまりました」
何故か真夜中の埼玉上空を飛ぶシンディ。
両足には鉄腕アトムばりの超小型ジェットエンジンを装着している。
アトムは標準装備であるのだが、こっちは後付けの着脱式。
あくまでも緊急脱出用としての用途なので、飛行時間は短く、距離もまた短い。
敷島エージェンシーのある東京都江東区から、現住所のさいたま市大宮区内までの片道がせいぜいである。
シンディは無表情であった。
そしてその両手には、まるで荷物のように何かを抱き抱えている。
敷島:「あの……シンディさん?」
シンディ:「何ですか、社長?」
敷島:「そろそろ降ろしてもらいたいんスけど……?」
シンディ:「まだ家じゃありませんわ。あいにくとこれはタクシーでもバスでも無いので、途中下車……もとい、途中降機はできませんことよ」
シンディは敷島の両脇を抱えて飛んでいた!
敷島:「いい加減にしろよ、シンディ!俺が何したってんだ!?」
シンディ:「だまらっしゃい!マスターから今日中に帰って来るように言われてたのに、もう日付が変わってしまったのよ!?アタシもマスターに怒られる……」
敷島:「会社の新年会が思いのほか盛り上がったんだから、しょうがないだろ!」
シンディ:「ほら、もうすぐ家よ!朝帰りの言い訳は思いついた!?」
その時、敷島はエミリーだったらこんなことはしないだろうと思った。
シンディは敷島のマンションの屋上に着陸した。
敷島:「静かに着陸しろよ!近所迷惑になるぞ!」
シンディ:「うるさいわね!早く部屋まで歩きなさい!」
因みにシンディが敷島に対してタメ口を叩く時は、アリスの命令で何か動いている時である。
アリスの命令が最優先になるので、敷島の意向がアリスの意向とぶつかる時はアリスの方が優先になる。
敷島の秘書として動いている時は、通常アリスの命令が受信されることが無いため、敬語で態度も比較的柔和なものである。
どうにかシンディは、敷島を家まで連行することに成功した。
シンディ:「ほら、早く入って!」
敷島:「始発電車で明るい時に帰って来るはずが……」
シンディ:「そんなことは許されないんだからねっ!……マスター、シンディです。只今、戻りました。申し訳ありません。私がついていながら、こんな時間になってしまって……」
ところが、奥から出て来たのはアリスではなかった。
トニー:「ぱーぱ、シンヂー……」
ヨチヨチ歩いてはコテッ膝をついてハイハイをし、また立ち上がってはコテッの繰り返しのトニーだった。
敷島:「トニー?」
シンディ:「お坊ちゃま!?」
トニー:「シンヂー、だっこだっこ」
シンディ:「あ、はい。抱っこでございますね」
シンディはトニーを抱き抱えた。
シンディ:「いけませんわ。こんな時間に起きられたら……。さ、早くベッドに行きましょう」
敷島:「てか、アリスはどうしたんだ?」
シンディ:「二海は……充電中か」
敷島とシンディは暗い寝室に入った。
敷島:「何だ、寝てるじゃないか。だったら俺、無理に今帰って来なくても良かったじゃないか」
シンディ:「そういう問題じゃない!!」
トニー:「ふえっ……!うえええ……!」
シンディ:「あぁあ!申し訳ありません!驚かせてしまいまして!」
敷島:「何やってんだよ、シンディ」
シンディ:「あんたのせいでしょ!」
アリス:「うう……」
敷島:「ほら、アリスまで起きちゃったぞ。じゃ、俺は風呂入って寝る」
シンディ:「ちょ、ちょっと……!」
アリス:「パパ……ママ……行っちゃダメ……」
アリスはシンディのロングスカートの裾を掴んだ。
シンディ:「な、何でしょうか?」
アリス:「あれ……?ここは……?」
シンディ:「大丈夫ですか、マスター?」
シンディはアリスの顔を覗き込んだ。
アリス:「……あれ?シンディ?じー様に直してもらったの……?」
シンディ:「はい?何のことでしょうか?」
アリス:「あ……夢か」
シンディ:「仰せの通り、社長を連れ帰りましたよ。ただ……日付が変わってしまって、申し訳ありませんでした」
アリス:「……もういいよ。タカオの説教はまた今度ね。取りあえず、シンディ……」
シンディ:「はい」
アリス:「トニーを寝かしつけるのが最優先よ」
シンディ:「か、かしこまりました!」
アリスとシンディは夜泣き同然に泣きじゃくるトニーの元へ駆け寄った。
[同日10:00.天候:曇 埼玉県さいたま市 敷島家]
敷島:「……であるからして、ああなったのであると……。アンダースタン?」
アリス:「分かったわ。じゃあ、取りあえず判決を言い渡す!……シンディによる電気ショックの刑!執行即時!」
シンディ:「ははっ!」
シンディは左手を挙げた。
そこからパチッと火花が飛び散る。
敷島:「ギャオッ!」
アリス:「トニーがずっと帰りを待っていたというのに……!」
敷島:「カンベンしろよー。今日は『敷島家の新年会』があるんだから。お前も来ていいことになってるんだ」
アリス:「そうなの?」
敷島:「そうだよ。お前も敷島家の一員なんだからな。伯父さんに言われただろ?『Welcome to the family,daughter.』ってさ」
直訳すれば『ようこそ家族へ、娘よ』になるが、実際はもっとくだけた訳になり、『キミも家族だ』となる。
アリス:「なるほど。そういうことならいいわ。で、どこでやるの?インペリアル・ホテル(帝国ホテル)?」
敷島:「いやいや。今日はさすがにそこじゃない。最高顧問のお歳に合わせて、最高顧問の豪邸でやるってさ」
アリス:「そうなの」
敷島:「そういうわけだから、午後になったら行く準備をするぞ」
アリス:「分かった」
敷島:「特別ゲストとして、ルカとMEIKOも呼ばれてるんだが、これ絶対、コンパニオン要員だろうな。歌って踊ってナンボのボーカロイドに何させるつもりだよ……」
シンディ:「私もお手伝いしましょうか?」
敷島:「お前は屋敷の警護でもしてりゃいいよ」
アリス:「不審者が来たら、即行捕まえるのよ」
シンディ:「かしこまりました」