[2月4日16:45.天候:曇 北海道日高地方 廃ペンション]
エミリーと萌は、ペンションの敷地に近づいた。
ペンション自体は廃業してから1年ほどしか経っていないものの、元々老朽化していた建物だった為、廃業してからの荒れ方は激しいものだった。
敷地に入る為に近づいた洋風の鉄の門は、固く閉ざされていた。
エミリー:「施錠されている」
観音開きの門は内側から閂がされ、更にチェーンが巻かれて南京錠で固定されていた。
エミリーの力でもってすれば、こじ開けることなど造作も無い。
だが……。
敷島:「エミリー、他の入口を探せ。星警部補が、『今大きな音を立てて、中の犯人達に気づかれるのはマズい』とのことだ」
RV車の覆面パトカーに乗った敷島が、端末越しにエミリーに指示を出した。
エミリー:「かしこまりました」
エミリーは敷地を回り込むように走った。
建物が老朽化しているならば、敷地を囲う門も老朽化している。
どこからか侵入できるはずだ。
除雪は全くされておらず、エミリーはズボズボと雪深い所を進む。
だが逆にうず高く積もった雪が、上手い具合にエミリーや萌の姿を建物から見えなくなるようにしてくれている。
エミリー:「!?」
その時、一瞬だけだが人影が見えた。
黄色っぽいジャンパーを羽織った初老の男が、スッと先の道を進んだのだった。
一瞬だけだった為、エミリーがスキャンするヒマも無かった。
萌:「今、人がいたよね?」
エミリー:「うむ」
敷島:「エミリー、今さっき人が通らなかったか?」
エミリー:「はい。私も見ました」
敷島:「テロリストのメンバーかもしれない。見つからないようにしろ」
エミリー:「かしこまりました」
覆面パトカーの中では敷島と地元の警察署に所属する私服刑事の星警部補と矢ヶ崎巡査部長が、エミリーや萌の目から送信されてくる画像を見つめている。
敷島:「警部補、もし良かったら、このペンションに関するデータをこちらに送ってもらうように依頼できますか?」
星:「データですって?」
敷島:「ええ。内部構造とか、それが分かるだけでも捜索はしやすいかと」
矢ヶ崎:「それはいいアイディアですね。本署に問い合わせてみましょう」
矢ヶ崎は自分のケータイを出すと、それで連絡した。
そうしている間に、エミリー達はペンションの敷地内に入れたようだ。
敷島:「これがペンション?」
敷島は首を傾げた。
確かに老朽化してはいるものの、洋風建築な所はペンションだろう。
だが、何と言うか……欧米などにある酪農家の建物に見えなくもない。
いや、確かにこの地方は、特に競走馬を育てる牧場があることで有名だ。
ペンションは言わば、洋風の民宿のようなもの。
農家がその片手間にペンションを経営することは、何ら不思議ではない。
そのはずなのだが、何故か敷島は違和感を禁じ得なかった。
その理由は分からない。
酪農家がその片手間で洋風の民宿を経営していた。
しかし老齢化と利用客の減少、そして建物や施設の老朽化で廃業した。
よくある話だ。
たまたまそこをアリス達を誘拐した犯人一味が目をつけ、アジトとして利用している。
恐らくそういうことだと思う。
星:「どうかしましたか?」
敷島:「あれ、何ですかね?」
星:「馬小屋か牛小屋だと思いますよ。元々、酪農家だったんでしょうね。多分、この建物はペンションではなく、馬小屋や牛小屋でしょう」
もちろん廃業している為、馬や牛の姿は無い。
そして、その小屋への入口のドアは開いていた。
エミリー:「敷島社長!」
敷島:「何だ?」
エミリー:「ここはシンディが捕らわれていた建物と一致します」
敷島:「何だって!?」
エミリーは開いている小屋の入口を背にしてみた。
エミリー:「ここです!ここでシンディは襲われたんです!」
エミリーはシンディが最後に送信した画像を出した。
星:「さっきの黄色いジャンパーの男と似てますね!」
シンディの肩を掴んで振り向かせ、高圧電流でもってシャットダウンさせた初老の男と、先ほど一瞬だけ通り過ぎた黄色いジャンパーの男がよく似ていた。
敷島:「高い確率で、ここにシンディが捕まっている可能性がありますね。そして、アリスも……」
エミリー:「潜入します」
敷島:「頼むぞ。くれぐれも慎重にな」
エミリー:「はい」
敷島:「もしテロリスト達が襲って来たら、遠慮なく応戦しろ。但し、すぐには殺さず、シンディやアリスの居場所を締め上げて吐かせるんだ」
エミリー:「了解です」
エミリーと萌は小屋の中に入った。
するとまるでエミリー達の進入を待っていたかのように開いていたドアは、また自動で閉まった。
中は暗い為、ロイド達は暗視機能を作動させた。
これで暗闇でも、中の様子が分かる。
あえてライトは点灯しなかった。
それでテロリスト達に居場所がバレる恐れがあったからである。
廊下を進んで突き当りを右に入ると、朽ちたキッチンがあった。
単なる馬小屋か牛小屋ではなく、ここが農場経営者達の住まいだったのだろうか。
敷島:「普通に廃業した割には、随分と散らかってますね」
星:「これではまるで、事件に巻き込まれて行方不明になった家族……って感じですね」
矢ヶ崎:「もしかして、しばらくの間、犯人達はここで生活していたのかもしれませんね」
星:「うむ……」
エミリーはテーブルの上に乗っている鍋の蓋を開けた。
すると中には腐った料理が入っており、死んだゴキブリやハエが大量に紛れ込んでいた。
多分、冬の寒さで死んだのだろうが、もしこれが冬以外の季節だったとしたら、開けた瞬間……【お察しください】。
敷島:「犯人達は本当にここで生活していたんですかね?料理が腐り過ぎてますよ」
星:「そうですねぇ……」
エミリーは犯人達に繋がる何か痕跡が無いかとキッチン内を探索してみたが、何も見つからなかった。
ただ、古い新聞を見つけることはできた。
『東京都心で大規模ロボットテロ!』『国際指名手配犯ウィリアム・フォレスト容疑者、死亡!』『大手町の高層ビル大崩壊!』
敷島:「これは東京決戦の時の新聞記事!」
星:「何でそんなものが?」
矢ヶ崎:「その頃からもうこの建物は無人だったってことですか?」
敷島:「でも、ペンションとしては去年まで営業していたんですよね?」
星:「一応、そういうことにはなってます」
敷島:「エミリー、そこはもういいから先へ進んでくれ」
エミリー:「了解しました」
エミリーはキッチンを抜けた。
また右に曲がるようになっており、2階に上がる階段と1階の奥へ進む廊下があった。
さて、どうしようか?
①2階へ上がる。
➁1階の奥へ進む。
③引き返す。
④もう少しキッチンを調べる。
エミリーと萌は、ペンションの敷地に近づいた。
ペンション自体は廃業してから1年ほどしか経っていないものの、元々老朽化していた建物だった為、廃業してからの荒れ方は激しいものだった。
敷地に入る為に近づいた洋風の鉄の門は、固く閉ざされていた。
エミリー:「施錠されている」
観音開きの門は内側から閂がされ、更にチェーンが巻かれて南京錠で固定されていた。
エミリーの力でもってすれば、こじ開けることなど造作も無い。
だが……。
敷島:「エミリー、他の入口を探せ。星警部補が、『今大きな音を立てて、中の犯人達に気づかれるのはマズい』とのことだ」
RV車の覆面パトカーに乗った敷島が、端末越しにエミリーに指示を出した。
エミリー:「かしこまりました」
エミリーは敷地を回り込むように走った。
建物が老朽化しているならば、敷地を囲う門も老朽化している。
どこからか侵入できるはずだ。
除雪は全くされておらず、エミリーはズボズボと雪深い所を進む。
だが逆にうず高く積もった雪が、上手い具合にエミリーや萌の姿を建物から見えなくなるようにしてくれている。
エミリー:「!?」
その時、一瞬だけだが人影が見えた。
黄色っぽいジャンパーを羽織った初老の男が、スッと先の道を進んだのだった。
一瞬だけだった為、エミリーがスキャンするヒマも無かった。
萌:「今、人がいたよね?」
エミリー:「うむ」
敷島:「エミリー、今さっき人が通らなかったか?」
エミリー:「はい。私も見ました」
敷島:「テロリストのメンバーかもしれない。見つからないようにしろ」
エミリー:「かしこまりました」
覆面パトカーの中では敷島と地元の警察署に所属する私服刑事の星警部補と矢ヶ崎巡査部長が、エミリーや萌の目から送信されてくる画像を見つめている。
敷島:「警部補、もし良かったら、このペンションに関するデータをこちらに送ってもらうように依頼できますか?」
星:「データですって?」
敷島:「ええ。内部構造とか、それが分かるだけでも捜索はしやすいかと」
矢ヶ崎:「それはいいアイディアですね。本署に問い合わせてみましょう」
矢ヶ崎は自分のケータイを出すと、それで連絡した。
そうしている間に、エミリー達はペンションの敷地内に入れたようだ。
敷島:「これがペンション?」
敷島は首を傾げた。
確かに老朽化してはいるものの、洋風建築な所はペンションだろう。
だが、何と言うか……欧米などにある酪農家の建物に見えなくもない。
いや、確かにこの地方は、特に競走馬を育てる牧場があることで有名だ。
ペンションは言わば、洋風の民宿のようなもの。
農家がその片手間にペンションを経営することは、何ら不思議ではない。
そのはずなのだが、何故か敷島は違和感を禁じ得なかった。
その理由は分からない。
酪農家がその片手間で洋風の民宿を経営していた。
しかし老齢化と利用客の減少、そして建物や施設の老朽化で廃業した。
よくある話だ。
たまたまそこをアリス達を誘拐した犯人一味が目をつけ、アジトとして利用している。
恐らくそういうことだと思う。
星:「どうかしましたか?」
敷島:「あれ、何ですかね?」
星:「馬小屋か牛小屋だと思いますよ。元々、酪農家だったんでしょうね。多分、この建物はペンションではなく、馬小屋や牛小屋でしょう」
もちろん廃業している為、馬や牛の姿は無い。
そして、その小屋への入口のドアは開いていた。
エミリー:「敷島社長!」
敷島:「何だ?」
エミリー:「ここはシンディが捕らわれていた建物と一致します」
敷島:「何だって!?」
エミリーは開いている小屋の入口を背にしてみた。
エミリー:「ここです!ここでシンディは襲われたんです!」
エミリーはシンディが最後に送信した画像を出した。
星:「さっきの黄色いジャンパーの男と似てますね!」
シンディの肩を掴んで振り向かせ、高圧電流でもってシャットダウンさせた初老の男と、先ほど一瞬だけ通り過ぎた黄色いジャンパーの男がよく似ていた。
敷島:「高い確率で、ここにシンディが捕まっている可能性がありますね。そして、アリスも……」
エミリー:「潜入します」
敷島:「頼むぞ。くれぐれも慎重にな」
エミリー:「はい」
敷島:「もしテロリスト達が襲って来たら、遠慮なく応戦しろ。但し、すぐには殺さず、シンディやアリスの居場所を締め上げて吐かせるんだ」
エミリー:「了解です」
エミリーと萌は小屋の中に入った。
するとまるでエミリー達の進入を待っていたかのように開いていたドアは、また自動で閉まった。
中は暗い為、ロイド達は暗視機能を作動させた。
これで暗闇でも、中の様子が分かる。
あえてライトは点灯しなかった。
それでテロリスト達に居場所がバレる恐れがあったからである。
廊下を進んで突き当りを右に入ると、朽ちたキッチンがあった。
単なる馬小屋か牛小屋ではなく、ここが農場経営者達の住まいだったのだろうか。
敷島:「普通に廃業した割には、随分と散らかってますね」
星:「これではまるで、事件に巻き込まれて行方不明になった家族……って感じですね」
矢ヶ崎:「もしかして、しばらくの間、犯人達はここで生活していたのかもしれませんね」
星:「うむ……」
エミリーはテーブルの上に乗っている鍋の蓋を開けた。
すると中には腐った料理が入っており、死んだゴキブリやハエが大量に紛れ込んでいた。
多分、冬の寒さで死んだのだろうが、もしこれが冬以外の季節だったとしたら、開けた瞬間……【お察しください】。
敷島:「犯人達は本当にここで生活していたんですかね?料理が腐り過ぎてますよ」
星:「そうですねぇ……」
エミリーは犯人達に繋がる何か痕跡が無いかとキッチン内を探索してみたが、何も見つからなかった。
ただ、古い新聞を見つけることはできた。
『東京都心で大規模ロボットテロ!』『国際指名手配犯ウィリアム・フォレスト容疑者、死亡!』『大手町の高層ビル大崩壊!』
敷島:「これは東京決戦の時の新聞記事!」
星:「何でそんなものが?」
矢ヶ崎:「その頃からもうこの建物は無人だったってことですか?」
敷島:「でも、ペンションとしては去年まで営業していたんですよね?」
星:「一応、そういうことにはなってます」
敷島:「エミリー、そこはもういいから先へ進んでくれ」
エミリー:「了解しました」
エミリーはキッチンを抜けた。
また右に曲がるようになっており、2階に上がる階段と1階の奥へ進む廊下があった。
さて、どうしようか?
①2階へ上がる。
➁1階の奥へ進む。
③引き返す。
④もう少しキッチンを調べる。