[2月4日17:45.天候:曇 北海道日高地方某所 廃ペンション・別館]
エミリーと萌は廃ペンション内を捜索している。
2階に上がる階段を見つけたエミリーは、その階段を上がってみることにした。
ギシギシとエミリーの重さにギリギリ耐えているような音が響く。
これではすぐ近くにテロリストがいようものなら、すぐに気づかれてしまうだろう。
もっとも、エミリーの体はマシンガンを食らっても平気なのだが。
エミリー:「何だこれ?」
階段を上がって2階に着くと、何かのスイッチが目に付いた。
『Stairs』と書かれていた。
英語で階段のことである。
今登ってきた階段の照明か何かのスイッチだろうか?
スイッチというより、赤いボタンだ。
エミリーはそのボタンを押してみたが、何も起こらない。
萌:「エミリー、多分通電してないよ、これ」
エミリー:「なにっ?」
萌は赤いボタンの上にあるランプを指さした。
萌:「これが点いてないってことは、通電してないってことなんじゃないかなぁ……」
エミリー:「どこかに電源があるのかもしれないな」
しかし、館内は停電しているわけではないようだ。
2階には机があって、そこに置かれているスタンドは点灯している。
机の上には写真が置かれていた。
それは何かのヘリコプターの写真。
何故だか白黒の写真であった。
エミリー:「デイライトコーポレーション!」
そのヘリコプターの機体には、デイライトコーポレーションのロゴマークが入っていた。
具体的には略称であるDCのアルファベットを半分ずつ重ね合わせ、その上からスパナとトライバーを交差させたものである。
何故かそのヘリが下から撮影されていた。
その写真をひっくり返してみると、白地の部分に英語で何かが書いてあった。
それを和訳すると、こうなる。
『いつものヘリ。監視されてる?』
敷島:「DCJさんがここを監視していた?」
星:「DCJさんというのは、誘拐されていた人達の会社ですね?」
敷島:「そうです。てことは、今回の事件はDCJさんを狙ったものだということになりますかね」
矢ヶ崎:「しかし、我々より先にテロリストのアジトを一民間企業がヘリで監視してるなんて……」
敷島:「そうですねぇ……。(DCJさん……いや、大元のDCI自体が怪しげな会社だからな。『ロボット企業版アンブレラ』とはよく言ったものだ)」
エミリーは2階の探索を終え、再び1階に下りた。
そして廊下の奥に進む。
途中のチェストの上に置かれたスタンドは、やはり点灯している。
停電しているわけではないというのは明らかだ。
廃屋なのに通電しているということは、これ如何に?
廊下の突き当りに行くと、ドアがあった。
そして、その右側にもドアがある。
エミリー:「んっ!」
エミリーはまず突き当りのドアをスキャンした。
ドアは木製で、これならその向こう側をスキャンすることができる。
もし向こうにテロリストが待ち伏せしていたとしても、予め確認することができるというわけだ。
そのような反応は無かった。
それを確認したエミリーは、突き当りのドアを開けようとしたが、鍵が掛かっていた。
萌:「閉まってるけど、これならエミリーは簡単にこじ開けできるね」
エミリー:「だが、大きな音が出る。今はテロリストに見つからないようにしろという御命令だ。こっちのドアにしよう」
エミリーは向かって右側のドアをスキャンした。
ここも人の気配は無かった。
そして、ドアを開けようとした時だった。
エミリー:「!?」
そのドアの向こうから、何か大きな音がした。
何か……大きなモノが倒れるような音。
それは端末で監視している敷島達にも聞こえたくらいだ。
敷島:「注意しろ。人間はいないかもしれないが、テロ・ロボットが配置されている恐れがある」
エミリー:「金属反応はありませんでしたが……了解です」
エミリーは右手をレーザーガンに変形させてドアノブを回した。
こちらは鍵は掛かっていなかった。
慎重にドアを開けて、エミリー達は部屋の中に入った。
どうやら、ここは応接室か何かだったらしい。
萌:「暖炉があるよ?」
エミリー:「昔は使用されていたのだろう」
そして壁際には、アップライトピアノがあった。
敷島:「エミリー。こういう探索モノだと、暖炉の奥に何か仕掛けられていることがある。暖炉の奥を調べてみてくれ」
エミリー:「了解です」
エミリーはしゃがんで、暖炉の中を覗いてみた。
暖炉の奥はレンガが積み上げられている。
エミリーは軽く叩いてみたが、それが崩れて隠し部屋が現れるなんてことはなかった。
星:「敷島さん?」
敷島:「ゲームの通りには行かないか……」
と、敷島は萌の視点で何かを見つけた。
すぐに萌の視点に切り替える。
敷島:「萌、今お前の右前方に映ってるものは何だ?」
萌:「これですか?」
萌が見ているのは分電盤らしきもの。
敷島:「ちょっと開けてみてくれ」
エミリー:「はい」
エミリーが代わりに開けた。
するとそこは、ヒューズボックスになっていた。
で、一本だけ抜けているものがあった。
エミリー:「Stairsとあります」
敷島:「なるほど。さっきの階段のスイッチが作動しなかったのは、そのヒューズが抜けているからだな。他のヒューズはちゃんとあって、それで通電してるんだ。そこのヒューズだけどうして無いんだろう?」
エミリー:「探してみます」
敷島:「ああ。あと、できれば鍵だな。どうやらこの建物には、テロリストはいないみたいだ。いや、まあ、鍵の掛かっている部屋の向こうにはいるのかもしれないけど……」
エミリーは壁に掛かっている絵を見た。
30代くらいの白人の夫婦に挟まれた、3〜4歳くらいの幼女の写真があった。
ここに住んでいた住民の写真だろうか?
それとも、ここがペンションとして機能していた頃に撮られた外国人観光客の写真とか?
エミリー:「ドクター・ウィリー……!」
その近くには若かりし頃のウィリアム・フォレスト博士の写真もあった。
敷島:「マジか!やっぱりここはただのペンション、酪農家の家じゃないな」
エミリーはウィリーの写真を外した。
するとその裏に、何かメモが挟まっていた。
英文だが、それを和訳するとこうなる。
『月の光を奏でる時、新たな道は開けん』
萌:「うわあ、謎解きだぁ……」
敷島:「……エミリー。お前、“月光”は弾けるか?ベートーヴェン作曲のピアノソナタだ」
エミリー:「はい、弾けます」
敷島:「よし。そこのピアノで“月光”を弾いてみろ」
エミリー:「分かりました」
エミリーの特技の1つはピアノを弾けることである。
南里研究所にいた時から記念館暮らしをしていた頃まで、17時になるとピアノをよく弾いていた。
エミリーは古めかしいピアノの前に座り、鍵盤に手を置いた。
そして、“月光”を弾き始める。
古くて埃被ったピアノなのに、調律はズレておらず、ちゃんとした戦慄を奏でる。
萌:「あっ!」
エミリーがピアノを弾いて1分ほどしたところで、萌が声を上げた。
ウィリーの写真が掛かっていた場所の壁が、向こう側に半開きになった。
やはり隠し扉があったのだ。
エミリーは弾くのを止めて、隠し扉の奥へと向かった。
そこは3帖程度の小部屋になっていたが、地下に下りる梯子があったのを見つけた。
だが、どうもエミリーの重さに耐えられるかどうか分からない。
エミリー:「萌、お前行け」
萌:「ええっ!?」
エミリー:「私じゃこの梯子は古過ぎて、耐えられるかどうか分からない。だから……先に行け。この下がどうなってるか見てきてほしい」
萌:「う、うん」
萌はゆっくりと梯子の下に降りて行った。
こんな時、妖精型ロイドは役に立つ。
敷島も視点をエミリーから萌に切り替えた。
どうやら、地下室になっているのは間違い無いようだ。
敷島:「ん?」
地下室には更に奥に続く通路があるようだった。
だが、その入口の脇に背中を向けて佇む人影があった。
人間の男性のようだった。
テロリストだろうか?
萌がその様子を見る為、男の前に回り込もうとした時だった。
男が急に倒れて来た。
萌:「わああああああああっ!!」
敷島:「!!!」
その男は死んでいた。
顔中血だらけなので、鈍器のようなもので殴られたりしたのか。
萌は倒れて来た男の死体の下敷きになり、身動きが取れなくなった。
敷島:「エミリー!お前は……」
①萌を助けに行け!
➁萌を置いて戻ってこい!
エミリーと萌は廃ペンション内を捜索している。
2階に上がる階段を見つけたエミリーは、その階段を上がってみることにした。
ギシギシとエミリーの重さにギリギリ耐えているような音が響く。
これではすぐ近くにテロリストがいようものなら、すぐに気づかれてしまうだろう。
もっとも、エミリーの体はマシンガンを食らっても平気なのだが。
エミリー:「何だこれ?」
階段を上がって2階に着くと、何かのスイッチが目に付いた。
『Stairs』と書かれていた。
英語で階段のことである。
今登ってきた階段の照明か何かのスイッチだろうか?
スイッチというより、赤いボタンだ。
エミリーはそのボタンを押してみたが、何も起こらない。
萌:「エミリー、多分通電してないよ、これ」
エミリー:「なにっ?」
萌は赤いボタンの上にあるランプを指さした。
萌:「これが点いてないってことは、通電してないってことなんじゃないかなぁ……」
エミリー:「どこかに電源があるのかもしれないな」
しかし、館内は停電しているわけではないようだ。
2階には机があって、そこに置かれているスタンドは点灯している。
机の上には写真が置かれていた。
それは何かのヘリコプターの写真。
何故だか白黒の写真であった。
エミリー:「デイライトコーポレーション!」
そのヘリコプターの機体には、デイライトコーポレーションのロゴマークが入っていた。
具体的には略称であるDCのアルファベットを半分ずつ重ね合わせ、その上からスパナとトライバーを交差させたものである。
何故かそのヘリが下から撮影されていた。
その写真をひっくり返してみると、白地の部分に英語で何かが書いてあった。
それを和訳すると、こうなる。
『いつものヘリ。監視されてる?』
敷島:「DCJさんがここを監視していた?」
星:「DCJさんというのは、誘拐されていた人達の会社ですね?」
敷島:「そうです。てことは、今回の事件はDCJさんを狙ったものだということになりますかね」
矢ヶ崎:「しかし、我々より先にテロリストのアジトを一民間企業がヘリで監視してるなんて……」
敷島:「そうですねぇ……。(DCJさん……いや、大元のDCI自体が怪しげな会社だからな。『ロボット企業版アンブレラ』とはよく言ったものだ)」
エミリーは2階の探索を終え、再び1階に下りた。
そして廊下の奥に進む。
途中のチェストの上に置かれたスタンドは、やはり点灯している。
停電しているわけではないというのは明らかだ。
廃屋なのに通電しているということは、これ如何に?
廊下の突き当りに行くと、ドアがあった。
そして、その右側にもドアがある。
エミリー:「んっ!」
エミリーはまず突き当りのドアをスキャンした。
ドアは木製で、これならその向こう側をスキャンすることができる。
もし向こうにテロリストが待ち伏せしていたとしても、予め確認することができるというわけだ。
そのような反応は無かった。
それを確認したエミリーは、突き当りのドアを開けようとしたが、鍵が掛かっていた。
萌:「閉まってるけど、これならエミリーは簡単にこじ開けできるね」
エミリー:「だが、大きな音が出る。今はテロリストに見つからないようにしろという御命令だ。こっちのドアにしよう」
エミリーは向かって右側のドアをスキャンした。
ここも人の気配は無かった。
そして、ドアを開けようとした時だった。
エミリー:「!?」
そのドアの向こうから、何か大きな音がした。
何か……大きなモノが倒れるような音。
それは端末で監視している敷島達にも聞こえたくらいだ。
敷島:「注意しろ。人間はいないかもしれないが、テロ・ロボットが配置されている恐れがある」
エミリー:「金属反応はありませんでしたが……了解です」
エミリーは右手をレーザーガンに変形させてドアノブを回した。
こちらは鍵は掛かっていなかった。
慎重にドアを開けて、エミリー達は部屋の中に入った。
どうやら、ここは応接室か何かだったらしい。
萌:「暖炉があるよ?」
エミリー:「昔は使用されていたのだろう」
そして壁際には、アップライトピアノがあった。
敷島:「エミリー。こういう探索モノだと、暖炉の奥に何か仕掛けられていることがある。暖炉の奥を調べてみてくれ」
エミリー:「了解です」
エミリーはしゃがんで、暖炉の中を覗いてみた。
暖炉の奥はレンガが積み上げられている。
エミリーは軽く叩いてみたが、それが崩れて隠し部屋が現れるなんてことはなかった。
星:「敷島さん?」
敷島:「ゲームの通りには行かないか……」
と、敷島は萌の視点で何かを見つけた。
すぐに萌の視点に切り替える。
敷島:「萌、今お前の右前方に映ってるものは何だ?」
萌:「これですか?」
萌が見ているのは分電盤らしきもの。
敷島:「ちょっと開けてみてくれ」
エミリー:「はい」
エミリーが代わりに開けた。
するとそこは、ヒューズボックスになっていた。
で、一本だけ抜けているものがあった。
エミリー:「Stairsとあります」
敷島:「なるほど。さっきの階段のスイッチが作動しなかったのは、そのヒューズが抜けているからだな。他のヒューズはちゃんとあって、それで通電してるんだ。そこのヒューズだけどうして無いんだろう?」
エミリー:「探してみます」
敷島:「ああ。あと、できれば鍵だな。どうやらこの建物には、テロリストはいないみたいだ。いや、まあ、鍵の掛かっている部屋の向こうにはいるのかもしれないけど……」
エミリーは壁に掛かっている絵を見た。
30代くらいの白人の夫婦に挟まれた、3〜4歳くらいの幼女の写真があった。
ここに住んでいた住民の写真だろうか?
それとも、ここがペンションとして機能していた頃に撮られた外国人観光客の写真とか?
エミリー:「ドクター・ウィリー……!」
その近くには若かりし頃のウィリアム・フォレスト博士の写真もあった。
敷島:「マジか!やっぱりここはただのペンション、酪農家の家じゃないな」
エミリーはウィリーの写真を外した。
するとその裏に、何かメモが挟まっていた。
英文だが、それを和訳するとこうなる。
『月の光を奏でる時、新たな道は開けん』
萌:「うわあ、謎解きだぁ……」
敷島:「……エミリー。お前、“月光”は弾けるか?ベートーヴェン作曲のピアノソナタだ」
エミリー:「はい、弾けます」
敷島:「よし。そこのピアノで“月光”を弾いてみろ」
エミリー:「分かりました」
エミリーの特技の1つはピアノを弾けることである。
南里研究所にいた時から記念館暮らしをしていた頃まで、17時になるとピアノをよく弾いていた。
エミリーは古めかしいピアノの前に座り、鍵盤に手を置いた。
そして、“月光”を弾き始める。
古くて埃被ったピアノなのに、調律はズレておらず、ちゃんとした戦慄を奏でる。
萌:「あっ!」
エミリーがピアノを弾いて1分ほどしたところで、萌が声を上げた。
ウィリーの写真が掛かっていた場所の壁が、向こう側に半開きになった。
やはり隠し扉があったのだ。
エミリーは弾くのを止めて、隠し扉の奥へと向かった。
そこは3帖程度の小部屋になっていたが、地下に下りる梯子があったのを見つけた。
だが、どうもエミリーの重さに耐えられるかどうか分からない。
エミリー:「萌、お前行け」
萌:「ええっ!?」
エミリー:「私じゃこの梯子は古過ぎて、耐えられるかどうか分からない。だから……先に行け。この下がどうなってるか見てきてほしい」
萌:「う、うん」
萌はゆっくりと梯子の下に降りて行った。
こんな時、妖精型ロイドは役に立つ。
敷島も視点をエミリーから萌に切り替えた。
どうやら、地下室になっているのは間違い無いようだ。
敷島:「ん?」
地下室には更に奥に続く通路があるようだった。
だが、その入口の脇に背中を向けて佇む人影があった。
人間の男性のようだった。
テロリストだろうか?
萌がその様子を見る為、男の前に回り込もうとした時だった。
男が急に倒れて来た。
萌:「わああああああああっ!!」
敷島:「!!!」
その男は死んでいた。
顔中血だらけなので、鈍器のようなもので殴られたりしたのか。
萌は倒れて来た男の死体の下敷きになり、身動きが取れなくなった。
敷島:「エミリー!お前は……」
①萌を助けに行け!
➁萌を置いて戻ってこい!