[2月3日17:00.天候:曇 北海道札幌市 東京REIホテル]
敷島は初音ミクの専属マネージャーである篠里に電話を掛けた。
篠里:「はい、篠里です」
敷島:「あ、篠里君。私だけど、今電話大丈夫かな?」
篠里:「社長!……奥様方の行方は分かりましたか?」
敷島:「いや、あいにくとまだだ。それより今、ミクは仕事中かな?」
篠里:「はい。テレビの収録です。まもなく終了しますが」
敷島:「会社にはいつ戻る?」
篠里:「そうですね……。私はこの収録が終わったら戻りますが」
敷島:「キミじゃない。ミクはいつ戻る?」
篠里:「恐らく、日付が変わる頃かと」
敷島:「なにぃ?どういうことだ?」
篠里:「社長、お忘れですか?ミクはオールナイトニッポンの特別ゲストとして呼ばれることになったんですよ」
敷島:「あ……!なに?それが今日だって!?」
篠里:「そうなんです。ですので、夜中過ぎになると思いますよ。まあ、ミクは人間じゃないので、深夜労働とかは無関係なので何の心配も……」
敷島:「くそっ!こんな時に……!とにかく、ミクが会社に戻ったら、すぐに俺のケータイに連絡するように伝えてくれないか?」
篠里:「えっ!?ですが、時間帯が……」
敷島:「何時でもいいから!」
篠里:「わ、分かりました」
敷島は電話を切った。
村中:「敷島社長、私と警視は一旦ここを出る。警視は今から道警本部に向かうところだし、私は北国観光バスの本社へ向かう。あなたはどうする?」
敷島:「取りあえず、私は市内のホテルに泊まります」
村中:「このホテルに泊まったらどうだい?ここなら街中だしね」
敷島:「村中課長と鷲田警視は?」
村中:「私達もこのホテルに泊まるよ。もしかしたら、犯人がここに戻って来る可能性も無きにしもあらずだからね」
敷島:「分かりました。部屋、空いてるのかな……?」
村中:「さっき聞いたら、ツインとダブルなら1つずつ空いてるってさ」
敷島:「なるほど」
鷲田:「おい、村中君。そろそろいいかな?」
村中:「はい。それじゃ、そっちで分かったことがあったらすぐに教えてよ?」
敷島:「分かりました」
敷島は大きく頷いた。
エミリー:「社長、ミクに何をやらせる気ですか?」
敷島:「社長室に、お前やシンディの通信機があるだろう?」
エミリー:「はい」
遠くにいるマルチタイプと交信する際に使用する。
放送用の卓上マイクを改造したものだ。
ミクにはそれの通信機を使ってシンディに歌を送信する。
その歌が電気信号となって、シンディを遠隔で再起動できるかもしれないということだ。
[2月4日時間不明(恐らく夜間) 天候:不明 場所不明]
シンディ:「う……」
シンディが再起動した。
起き上がると、真っ暗な部屋にいるのが分かった。
すぐに暗視カメラに切り替える。
これでライトが無くても、暗闇での行動が可能。
この機能はボーカロイドにも付いているが、使用中は目がオレンジ色または赤色にボウッと光るので不気味だと人間達からは不評である。
シンディ:「ここは……?」
どこかの廃屋のようだった。
古い木張りの床があり、応接室だったのか、埃かぶった皮張りの茶色のソファが置かれている。
シンディ:(マスター達の泊まっているホテル?いや、それにしては汚い部屋だね……)
場所を特定しようとGPSを作動させようとしたが、何故か動かない。
シンディ:(とにかくここを出ましょう)
ドアを開けると、すぐに廊下になっていた。
だがその廊下も、古い木張りの床になっている。
壁も所々剥がれ落ちていて、まるでこれでは廃屋だ。
シンディ:(一体何なのここは?どうして私はここにいるの?)
廊下に置かれたスタンドは点灯しているので、停電しているわけではないようだ。
つまり、見た目は廃屋同然であるものの、本当の廃墟というわけではない。
2階に上がる階段があるようだが、シンディはそこではなく、もっと奥へ向かうことにした。
もっとも、ここが1階だとも限らないが。
少し進むと、キッチンがあった。
どうやら、ここは普通の家らしい。
造りが洋風なので、洋館か何かだろうか。
しかし、人の気配は全くない。
引っ越した後というよりは、それまで人が住んでいたのが、急にいなくなってしまって何年もそのままといった感じだ。
何故なら家財道具はそのままだし、キッチンの鍋や腐った食材もそのままだからである。
シンディ:(こんな所にマスターがいるとは思えない。マスターは一体、どこに?)
キッチンを通り抜けて、また廊下に出る。
随分と変わった構造の家だ。
ようやく、外に出られそうなドアを見つけた。
だが、カギが掛かっている。
シンディ:「こんなもの……!」
シンディはマルチタイプならではの力でドアを蹴破った。
そして、外灯が照らす外へと出ようとした時だった。
ガシッ!(シンディの右肩を何者かが掴む)
シンディ:「!?」
そして振り向かされると、そこにいたのは……。
???:「お前も『家族』だ」
シンディ:「ぅあああああああああっ!!」
シンディの体に高圧電流が走る。
そこでシンディの電源は再び切れてしまった。
[同日03:00.天候:雪 北海道札幌市 東急REIホテル・客室]
エミリー:「シンディ?シンディ!応答して!」
エミリーは再びシンディの電源が切れたことを察知した。
萌:「うるさいよ、エミリー。社長さんが起きちゃうよ」
エミリー:「そうだった。だが、シンディの居場所が分かった」
萌:「そうなの?」
エミリー:「恐らく一瞬でも、電波が入る所に行ったんだろう。それを社長達に報告する」
萌:「う、うん」
1人の女性型ロイドともう1人の妖精型ロイドは、ベッドに横たわる人間の男を見た。
萌:「社長さん、寝てるね」
エミリー:「無理もない。奥様のことが心配で、ろくに眠れなかったのだ。だから初音ミクとの連絡は、勝手ながら私が代行させてもらった」
萌:「怒られるんじゃない?」
エミリー:「それでもいい。後でお役に立てたとなれば、私はそれでいい」
萌:「そういうものかぁ……。ボクも井辺さんのお役に立てるといいな」
エミリー:「朝になって社長が起床されたら、すぐに報告しよう」
萌:「うん」
敷島は初音ミクの専属マネージャーである篠里に電話を掛けた。
篠里:「はい、篠里です」
敷島:「あ、篠里君。私だけど、今電話大丈夫かな?」
篠里:「社長!……奥様方の行方は分かりましたか?」
敷島:「いや、あいにくとまだだ。それより今、ミクは仕事中かな?」
篠里:「はい。テレビの収録です。まもなく終了しますが」
敷島:「会社にはいつ戻る?」
篠里:「そうですね……。私はこの収録が終わったら戻りますが」
敷島:「キミじゃない。ミクはいつ戻る?」
篠里:「恐らく、日付が変わる頃かと」
敷島:「なにぃ?どういうことだ?」
篠里:「社長、お忘れですか?ミクはオールナイトニッポンの特別ゲストとして呼ばれることになったんですよ」
敷島:「あ……!なに?それが今日だって!?」
篠里:「そうなんです。ですので、夜中過ぎになると思いますよ。まあ、ミクは人間じゃないので、深夜労働とかは無関係なので何の心配も……」
敷島:「くそっ!こんな時に……!とにかく、ミクが会社に戻ったら、すぐに俺のケータイに連絡するように伝えてくれないか?」
篠里:「えっ!?ですが、時間帯が……」
敷島:「何時でもいいから!」
篠里:「わ、分かりました」
敷島は電話を切った。
村中:「敷島社長、私と警視は一旦ここを出る。警視は今から道警本部に向かうところだし、私は北国観光バスの本社へ向かう。あなたはどうする?」
敷島:「取りあえず、私は市内のホテルに泊まります」
村中:「このホテルに泊まったらどうだい?ここなら街中だしね」
敷島:「村中課長と鷲田警視は?」
村中:「私達もこのホテルに泊まるよ。もしかしたら、犯人がここに戻って来る可能性も無きにしもあらずだからね」
敷島:「分かりました。部屋、空いてるのかな……?」
村中:「さっき聞いたら、ツインとダブルなら1つずつ空いてるってさ」
敷島:「なるほど」
鷲田:「おい、村中君。そろそろいいかな?」
村中:「はい。それじゃ、そっちで分かったことがあったらすぐに教えてよ?」
敷島:「分かりました」
敷島は大きく頷いた。
エミリー:「社長、ミクに何をやらせる気ですか?」
敷島:「社長室に、お前やシンディの通信機があるだろう?」
エミリー:「はい」
遠くにいるマルチタイプと交信する際に使用する。
放送用の卓上マイクを改造したものだ。
ミクにはそれの通信機を使ってシンディに歌を送信する。
その歌が電気信号となって、シンディを遠隔で再起動できるかもしれないということだ。
[2月4日時間不明(恐らく夜間) 天候:不明 場所不明]
シンディ:「う……」
シンディが再起動した。
起き上がると、真っ暗な部屋にいるのが分かった。
すぐに暗視カメラに切り替える。
これでライトが無くても、暗闇での行動が可能。
この機能はボーカロイドにも付いているが、使用中は目がオレンジ色または赤色にボウッと光るので不気味だと人間達からは不評である。
シンディ:「ここは……?」
どこかの廃屋のようだった。
古い木張りの床があり、応接室だったのか、埃かぶった皮張りの茶色のソファが置かれている。
シンディ:(マスター達の泊まっているホテル?いや、それにしては汚い部屋だね……)
場所を特定しようとGPSを作動させようとしたが、何故か動かない。
シンディ:(とにかくここを出ましょう)
ドアを開けると、すぐに廊下になっていた。
だがその廊下も、古い木張りの床になっている。
壁も所々剥がれ落ちていて、まるでこれでは廃屋だ。
シンディ:(一体何なのここは?どうして私はここにいるの?)
廊下に置かれたスタンドは点灯しているので、停電しているわけではないようだ。
つまり、見た目は廃屋同然であるものの、本当の廃墟というわけではない。
2階に上がる階段があるようだが、シンディはそこではなく、もっと奥へ向かうことにした。
もっとも、ここが1階だとも限らないが。
少し進むと、キッチンがあった。
どうやら、ここは普通の家らしい。
造りが洋風なので、洋館か何かだろうか。
しかし、人の気配は全くない。
引っ越した後というよりは、それまで人が住んでいたのが、急にいなくなってしまって何年もそのままといった感じだ。
何故なら家財道具はそのままだし、キッチンの鍋や腐った食材もそのままだからである。
シンディ:(こんな所にマスターがいるとは思えない。マスターは一体、どこに?)
キッチンを通り抜けて、また廊下に出る。
随分と変わった構造の家だ。
ようやく、外に出られそうなドアを見つけた。
だが、カギが掛かっている。
シンディ:「こんなもの……!」
シンディはマルチタイプならではの力でドアを蹴破った。
そして、外灯が照らす外へと出ようとした時だった。
ガシッ!(シンディの右肩を何者かが掴む)
シンディ:「!?」
そして振り向かされると、そこにいたのは……。
???:「お前も『家族』だ」
シンディ:「ぅあああああああああっ!!」
シンディの体に高圧電流が走る。
そこでシンディの電源は再び切れてしまった。
[同日03:00.天候:雪 北海道札幌市 東急REIホテル・客室]
エミリー:「シンディ?シンディ!応答して!」
エミリーは再びシンディの電源が切れたことを察知した。
萌:「うるさいよ、エミリー。社長さんが起きちゃうよ」
エミリー:「そうだった。だが、シンディの居場所が分かった」
萌:「そうなの?」
エミリー:「恐らく一瞬でも、電波が入る所に行ったんだろう。それを社長達に報告する」
萌:「う、うん」
1人の女性型ロイドともう1人の妖精型ロイドは、ベッドに横たわる人間の男を見た。
萌:「社長さん、寝てるね」
エミリー:「無理もない。奥様のことが心配で、ろくに眠れなかったのだ。だから初音ミクとの連絡は、勝手ながら私が代行させてもらった」
萌:「怒られるんじゃない?」
エミリー:「それでもいい。後でお役に立てたとなれば、私はそれでいい」
萌:「そういうものかぁ……。ボクも井辺さんのお役に立てるといいな」
エミリー:「朝になって社長が起床されたら、すぐに報告しよう」
萌:「うん」