[8月23日11:02.天候:晴 JR東北新幹線47B列車8号車内]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、宇都宮に止まります〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
東北新幹線の東京から大宮までは、およそ新幹線らしからぬ低速走行区間だ。
これは線形の悪さも去ることながら、新幹線開通前に起きた反対運動(騒音問題)によるものの名残らしい。
いざ開通してみれば、開業当時の200系もこのE5系と比べればなかなか賑やかな走行音だったようだが、当時の国鉄は並走する埼京線にあえてもっとうるさい103系を導入してプチ復讐しをたという逸話が残っている。
103系が廃車になったら、次にうるさい205系をしばらく使い続けた。
反対の為の反対は、地域の為にならないということだな。
リサ:「サイトー、ここから乗って来る!?」
愛原:「そうだよ。ちゃんと席空けてあげるんだよ?」
リサ:「分かってる!」
列車がホームに入線した。
私達は8号車でも、だいぶ前よりの座席に座っている。
特に私はホームに接する方の窓側席に座っている為、ホームの様子がすぐに分かった。
列車は速度を落として行き、そして所定の停止位置に停車した……。
愛原:「! 斉藤さんがいないぞ!?」
高野:「ええっ!?」
高橋:「ほほう……先生とのお約束をドタキャンするとは、いい度胸ですねぇ……」
高野:「リサちゃん!早く斉藤さんに連絡して!」
愛原:「停車時間は1分だけだぞ!?」
リサ:「こ、こうなったら……新幹線止める……!」
愛原:「こら、やめなさい!!」
危うくリサがBOW(Bio Organic Weaponの略。『生物兵器』と訳されることが多い)に変化するところだった。
今は完全に人間態の姿をしており、角も鋭い爪も触手も隠れている。
赤銅色の肌や八重歯のような牙は生えているが、まだ許容範囲であろう。
高野:「先生、こいつは契約不履行ですよ?斉藤社長をそれで訴えて違約金をせしめることが……」
ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
〔17番線から、“やまびこ”47号、盛岡行きが発車致します。次は、宇都宮に止まります。黄色いブロックまで、お下がりください〕
と、そこへ!
斉藤:「ごめんなさい!」
デッキのドアが開いたと思うと、そこから斉藤さんが飛び込んで来た。
と、同時に車両のドアが閉まる。
ん?ホームから乗り込んで来た様子は無かったぞ?一体どうした?
リサ:「サイトー、来たー!何があった?」
リサは斉藤さんの両手を握った。
斉藤:「ごめんなさい!いつもグリーン車だったから、いつもの感じでそっちに乗っちゃって……」
高橋:「けっ、金持ちはいいなぁ、おい!」
愛原:「高橋。……とにかく、無事に合流できて良かったよ。斉藤さんの席はそっちだ。まあ、グリーン車より狭い席だけと我慢してくれ」
斉藤:「大丈夫です。狭いということは、それだけリサさんと密着できるということですから」
高野:「あらあら。仲がよろしいこと」
高橋:「うむ。その通りだな」
高橋はそこは禿同という感じだった。
いつもなら、『けっ、キモいレズビアンが!』とか言うくせに。
高橋:「じゃ、先生。俺達も密着しましょう」
愛原:「オマエもさらっとキモいこと言ってんじゃねー!」
高橋:「先生のツンデレも素敵です」
愛原:「ちゃうわ!」
〔「大宮からご乗車のお客様、お待たせ致しました。本日も東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。これから先止まります駅の到着時刻をご案内致します。次の宇都宮には11時25分、【中略】古川には12時51分、くりこま高原には13時1分、【中略】」〕
斉藤:「リサさん、シンカンセンスゴイカタイアイスって知ってる?」
リサ:「知らない。何それ?」
斉藤:「車内販売で売られているカップアイスのことよ。とても美味しいんだけど、買ってすぐには硬くて食べられないの。スプーンが折れてしまうくらいよ」
リサ:「何それ!?食べてみたい!」
斉藤:「言うと思ったわ。私が勝ってあげる」
〔「……尚、この列車には車内販売の営業はございません。予めご了承ください。次は宇都宮、宇都宮です」〕
斉藤:「はあ!?何それ!?予めご了承なんかないわよ!どうなってんの!?」
高橋:「おーおー、出た出た。ワガママ御嬢様様トーク!」
愛原:「“なすの”号に続いて、“やまびこ”号でも車内販売が廃止されたんだよ」
斉藤:「そんなぁ……!」
愛原:「飲み物だったら、次の駅で買いに行けるよ。宇都宮駅で“はやぶさ”の通過待ちがあるから」
高橋:「さすがは先生です」
愛原:「俺は関係無いだろ」
高野:「斉藤さん、もしかしたらね、ホームの売店で買えるかもしれないよ?何も車内販売だけで売ってるわけじゃないみたいだから」
斉藤:「そ、そうですか」
高野:「停車時間は6分。コンコースのNEWDAYSも探せばあるかもね」
斉藤:「行ってきます!」
高橋:「で、タッチの差で乗り遅れると。そこで俺達の本編と、レズビアン共のリベレーションズ・シリーズが始まるわけだ」
愛原:「何の話だ?」
リサ:「私、レズビアンじゃないよ?」
斉藤:「もえっ!?」
高橋:「あー、悪ィ悪ィ。バイセクだったな」
リサ:「自転車?が、どうしたの?」
高橋:「バイセクォル(Bicycle)とは言ってねぇ!」
私はリサとは親子のように見られるが、高橋とは兄妹みたいな感じだな。
リサがボケ役、高橋がツッコミ役だが、時たまそれが逆転する時がある。
高橋が私にデレてる時とかだ。
もっとも、かくいう私が高橋とは、私がツッコミ役、高橋がボケ役なわけだが……。
お笑いの世界において、ボケ役とツッコミ役、両方できる芸人は優秀だと言われるが、高橋が正にそうだとすると……。
愛原:「ま、とにかく宇都宮駅で買って来るといい。乗り遅れの無いように」
斉藤:「分かりました」
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、宇都宮に止まります〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
東北新幹線の東京から大宮までは、およそ新幹線らしからぬ低速走行区間だ。
これは線形の悪さも去ることながら、新幹線開通前に起きた反対運動(騒音問題)によるものの名残らしい。
いざ開通してみれば、開業当時の200系もこのE5系と比べればなかなか賑やかな走行音だったようだが、当時の国鉄は並走する埼京線にあえてもっとうるさい103系を導入してプチ復讐しをたという逸話が残っている。
103系が廃車になったら、次にうるさい205系をしばらく使い続けた。
反対の為の反対は、地域の為にならないということだな。
リサ:「サイトー、ここから乗って来る!?」
愛原:「そうだよ。ちゃんと席空けてあげるんだよ?」
リサ:「分かってる!」
列車がホームに入線した。
私達は8号車でも、だいぶ前よりの座席に座っている。
特に私はホームに接する方の窓側席に座っている為、ホームの様子がすぐに分かった。
列車は速度を落として行き、そして所定の停止位置に停車した……。
愛原:「! 斉藤さんがいないぞ!?」
高野:「ええっ!?」
高橋:「ほほう……先生とのお約束をドタキャンするとは、いい度胸ですねぇ……」
高野:「リサちゃん!早く斉藤さんに連絡して!」
愛原:「停車時間は1分だけだぞ!?」
リサ:「こ、こうなったら……新幹線止める……!」
愛原:「こら、やめなさい!!」
危うくリサがBOW(Bio Organic Weaponの略。『生物兵器』と訳されることが多い)に変化するところだった。
今は完全に人間態の姿をしており、角も鋭い爪も触手も隠れている。
赤銅色の肌や八重歯のような牙は生えているが、まだ許容範囲であろう。
高野:「先生、こいつは契約不履行ですよ?斉藤社長をそれで訴えて違約金をせしめることが……」
ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
〔17番線から、“やまびこ”47号、盛岡行きが発車致します。次は、宇都宮に止まります。黄色いブロックまで、お下がりください〕
と、そこへ!
斉藤:「ごめんなさい!」
デッキのドアが開いたと思うと、そこから斉藤さんが飛び込んで来た。
と、同時に車両のドアが閉まる。
ん?ホームから乗り込んで来た様子は無かったぞ?一体どうした?
リサ:「サイトー、来たー!何があった?」
リサは斉藤さんの両手を握った。
斉藤:「ごめんなさい!いつもグリーン車だったから、いつもの感じでそっちに乗っちゃって……」
高橋:「けっ、金持ちはいいなぁ、おい!」
愛原:「高橋。……とにかく、無事に合流できて良かったよ。斉藤さんの席はそっちだ。まあ、グリーン車より狭い席だけと我慢してくれ」
斉藤:「大丈夫です。狭いということは、それだけリサさんと密着できるということですから」
高野:「あらあら。仲がよろしいこと」
高橋:「うむ。その通りだな」
高橋はそこは禿同という感じだった。
いつもなら、『けっ、キモいレズビアンが!』とか言うくせに。
高橋:「じゃ、先生。俺達も密着しましょう」
愛原:「オマエもさらっとキモいこと言ってんじゃねー!」
高橋:「先生のツンデレも素敵です」
愛原:「ちゃうわ!」
〔「大宮からご乗車のお客様、お待たせ致しました。本日も東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。これから先止まります駅の到着時刻をご案内致します。次の宇都宮には11時25分、【中略】古川には12時51分、くりこま高原には13時1分、【中略】」〕
斉藤:「リサさん、シンカンセンスゴイカタイアイスって知ってる?」
リサ:「知らない。何それ?」
斉藤:「車内販売で売られているカップアイスのことよ。とても美味しいんだけど、買ってすぐには硬くて食べられないの。スプーンが折れてしまうくらいよ」
リサ:「何それ!?食べてみたい!」
斉藤:「言うと思ったわ。私が勝ってあげる」
〔「……尚、この列車には車内販売の営業はございません。予めご了承ください。次は宇都宮、宇都宮です」〕
斉藤:「はあ!?何それ!?予めご了承なんかないわよ!どうなってんの!?」
高橋:「おーおー、出た出た。ワガママ御嬢様様トーク!」
愛原:「“なすの”号に続いて、“やまびこ”号でも車内販売が廃止されたんだよ」
斉藤:「そんなぁ……!」
愛原:「飲み物だったら、次の駅で買いに行けるよ。宇都宮駅で“はやぶさ”の通過待ちがあるから」
高橋:「さすがは先生です」
愛原:「俺は関係無いだろ」
高野:「斉藤さん、もしかしたらね、ホームの売店で買えるかもしれないよ?何も車内販売だけで売ってるわけじゃないみたいだから」
斉藤:「そ、そうですか」
高野:「停車時間は6分。コンコースのNEWDAYSも探せばあるかもね」
斉藤:「行ってきます!」
高橋:「で、タッチの差で乗り遅れると。そこで俺達の本編と、レズビアン共のリベレーションズ・シリーズが始まるわけだ」
愛原:「何の話だ?」
リサ:「私、レズビアンじゃないよ?」
斉藤:「もえっ!?」
高橋:「あー、悪ィ悪ィ。バイセクだったな」
リサ:「自転車?が、どうしたの?」
高橋:「バイセクォル(Bicycle)とは言ってねぇ!」
私はリサとは親子のように見られるが、高橋とは兄妹みたいな感じだな。
リサがボケ役、高橋がツッコミ役だが、時たまそれが逆転する時がある。
高橋が私にデレてる時とかだ。
もっとも、かくいう私が高橋とは、私がツッコミ役、高橋がボケ役なわけだが……。
お笑いの世界において、ボケ役とツッコミ役、両方できる芸人は優秀だと言われるが、高橋が正にそうだとすると……。
愛原:「ま、とにかく宇都宮駅で買って来るといい。乗り遅れの無いように」
斉藤:「分かりました」