報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「戦いの後」

2019-09-06 19:25:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日05:00.天候:晴 宮城県大崎市 某総合病院]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 クライアントの斉藤社長の依頼で、娘さんを温泉旅行に連れて行ったのだが、そこでバイオハザードに巻き込まれてしまった。
 そこでボスキャラとも言える餓鬼を倒した私達は、民間軍事会社アンブレラの手引きで市内の医療機関へ向かった。
 特に大ケガしたわけではないのだが、それでもかすり傷くらいは負っているもので、絆創膏が何枚か必要なほどではあった。
 一応、ウィルスなどに感染していないかの検査も受けたが、全員が陰性。
 但し、斉藤絵恋さんの精神的ダメージは少し大きいようだった。
 いきなりのボスキャラの襲撃、それを持ち前の空手技でピヨらせた猛者なのだが、そこはまだ中学生。
 ホテルの火災に見舞われた恐怖、おぞましい餓鬼に襲われた恐怖、そしてその周辺に転がっていた惨殺死体の数々を見てしまった恐怖で嘔吐してしまったほどだ。
 私は早朝ではあるが、斉藤社長に連絡を取った。

 斉藤秀樹:「ああ、愛原さん。今、テレビを点けました。ホテルが惨状に見舞われたのは本当のようですね」

 電話の向こうでヘリコプターの音と、緊迫したリポーターの音声が聞こえる。
 こういう時、ベタな法則でマスコミはヘリを飛ばして上空からの映像をお送りするものだ。

 愛原:「大変でしたよ。色々と化け物に襲われて……」
 斉藤:「色々な化け物に襲われて『大変』の一言で済ませる愛原さんは、さすがは歴戦の猛者だ。ということは、娘も無事なんですね?」
 愛原:「ええ。どこもケガしていません」
 斉藤:「娘を守って頂けたようでありがとうございます。報酬は弾ませてもらいますよ」
 愛原:「それは大変助かります。ただ、怖い目に遭ったという事実は消せなくてですね、娘さん、今、処置室で寝込んでいます」
 斉藤:「でしょうなぁ……」
 愛原:「でも勇敢な娘さんです。実は化け物が娘さんに襲い掛かったのですが、持ち前の空手技で朦朧状態にさせたんですよ。おかげで私達、その化け物を倒すことができました」
 斉藤:「おぉ、娘が役に立ちましたか!知り合いの空手家に預けて正解でした!」
 愛原:「もしかして社長、娘さんに空手を習わせたのはこれを想定してのことでは?」
 斉藤:「はっはははは!さすがの私も、そこまで予知能力はありませんよ。娘には、ボディガード無しで歩けるほどの護身能力を身に付けてもらいたかっただけです」
 愛原:「とにかくホテルから貴重品は持ち出せましたが、それ以外のものは置いて来てしまいました。娘さんもああいう状態ですし、旅行は中止にして、なるべく早く帰京を……」
 斉藤:「いえ、旅行は続けてください」
 愛原:「は?」
 斉藤:「娘や皆さんにケガが無いのなら、旅行は続けてください。もちろん、今のホテルに宿泊を続けることは不可能でしょう。仙台市内に新たな宿泊先を探しておきますので、落ち着いたら仙台に向かってください」
 愛原:「社長!?」
 斉藤:「ニュースの映像から見る限り、7階は延焼していないようです。もしかしたら、荷物を運び出すことができるかもしれませんね。それでは、よろしくお願いしますよ」

 そう言って斉藤社長は電話を切った。
 全く。大企業家の名前を張るには、これくらいでないといけないのだろうか。
 私も経営者であるが、何だかついて行けそうにない。
 今度は政府エージェントの善場氏に電話を掛けた。

 善場:「愛原さん、お疲れさまです。愛原さんのことですから、恐らく巻き込まれているだろうと思っていましたよ」
 愛原:「やっばりか。これは何かの策略ですかな?」
 善場:「運命でしょう。愛原さんも、既にこっち側の人間ということです。そしてこっち側に巻き込まれたら、もう戻ることはできないということなんですよ」
 愛原:「温泉旅行くらい、ゆっくりしたいものですな!善場さん達も現場に?」
 善場:「いえ。BSAAが向かっておりますので、そちらに任せています。どうやら、青いアンブレラがかつての自分達の研究施設の『片付け』をしている最中、ミスをしたようですね」
 愛原:「あいつらが何かやらかしたんですか?」
 善場:「ダム側と温泉街側で施設を2つに分けていたそうですが、本来なら同時進行しなければならないところ、ダム側の施設を先に片付けようとして、温泉街側の施設が何らかの誤作動を起こしたようです。そのせいで、そこで保管されていたBOWを脱走させてしまうという事態に……」
 愛原:「恐ろしいヤツらだ。とんでもねぇ……!」
 善場:「こういうのは民間でなく、官主導の方がいいんですが、『民業圧迫ニダ』と叫ぶ……コホン。とにかく、色々と反対意見があるようでして……」
 愛原:「斉藤社長からは旅行を続行しろと言われてるんですよ」
 善場:「相変わらずな社長さんですねぇ……。いいじゃないですか。旅行代金は全部社長持ちなんでしょう?」
 愛原:「まあ、それはそうなんだが……。問題は荷物なんですよ。貴重品は持ち出せたんだけど、その他の荷物がねぇ……。どうやら俺達の泊まる予定だった部屋は無事だったみたいなんだが、何とか荷物を出せないもんかね?」
 善場:「分かりました。こちらで何とかしてみます」
 愛原:「ありがとう。始発列車で向かうから、それまでに話を付けてもらえると助かる」
 善場:「分かりました。……あの、愛原さんはそろそろお気づきですか?」
 愛原:「何が?」
 善場:「本当の話、どうして愛原さんが旅行先でああいったトラブルに巻き込まれるかの理由……」
 愛原:「運命なんでしょう?霧生市のバイオハザードで生き残った者の宿命だってんなら、それもしょうがない」
 善場:「そうですか」
 愛原:「ま、とにかくもう一度現場に向かってみる。まさか、温泉街そのものが封鎖されてるなんてことは無いよね?」
 善場:「それは無いようです。表向きには鳴子中央ホテルがテロに巻き込まれ、それで火災が発生し、それを鎮圧する為に民間軍事会社アンブレラと自衛隊が出動したということになっています」
 愛原:「警察を超えて軍隊が出動してる時点で、よく街が封鎖されないもんだよ!」

 私はリサと高野君に斉藤さんを見ているように頼むと、高橋を連れてもう一度あのホテルに向かうことにした。
 リサは斉藤の手をガッチリ握っている。
 リサの献身的な看護で、斉藤さんの傷が回復するといいが……。
 さすがのグリーンハーブや救急スプレーも、心のケガまでは回復させられない。
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“私立探偵 愛原学” 「バイオハザードシリーズではロリキャラが物語の鍵を握っていたりする」

2019-09-06 15:16:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日02:00.天候:晴 宮城県大崎市鳴子温泉 鳴子中央ホテル7F]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 せっかくの温泉旅行なのに、1日目の深夜にしてバイオハザードに巻き込まれたようだ。
 別にウィルスや特異菌がばら撒かれたわけではなく、それでもって造られたBOWが襲って来ただけなのだが、一体どうしてこんなことになったのか。

 

 餓鬼:「ンーッ!!」

 最初に私達の前に現れ、宿泊先のホテルを惨状に陥れたモノがついに私達と対峙することとなった。
 ガリガリに痩せた5〜6歳くらいの男の子で、土気色の肌に何より全裸だ。
 そして、手には鋭い爪を生やしている。
 それを見た時、私は地獄にいるとされる餓鬼の姿を思い浮かべた。
 正式名称は知らないので、あれを私は便宜上『餓鬼』と呼んでいる。

 高野:「リサちゃん!!」

 客室から出てきたリサと斉藤さんを目ざとく見つけた餓鬼は彼女達に狙いを定め、鋭い爪を立てて向かっていった。
 このまま発砲したら、流れ弾が彼女達に当たってしまうかもしれない。
 リサは第0形態という完全に人間の姿をしているので、とても太刀打ちできそうにない。
 どうしたらいい?
 その時、私は閃いた。

 愛原:「斉藤さん!頑張れ!!」

 私はこのメンバーの中では一番戦闘力が弱いと思われる斉藤絵恋さんに声を掛けた。
 私達にこの旅行を依頼した国内有数の大製薬会社の社長の娘で、普段は富豪の令嬢なのだが、彼女にはもう1つの顔があることを思い出したのだ。

 斉藤:「いやーっ!!」

 ボコッ!

 餓鬼:「!?」
 斉藤:「はーっ!」

 ガッ!

 餓鬼:「!!!」

 斉藤さんは見事に餓鬼の頭に拳と足を入れた。
 あの動きは完全に空手技。
 そう、彼女は女子中学生にして空手の黒帯でもあったのだ。
 社長と懇意にしている空手道場に通う為に、わざわざ埼玉の実家から都内のマンションにメイドと2人暮らしをしているほどだ。
 令嬢ならもっと茶道や華道を習わせるべきだと思うのだが、何故か斉藤社長は娘さんに空手を習わせ、段まで取らせるに至った。
 その理由を私は今知ったような気がした。

 餓鬼:(@_@;)〜☆

 一番戦闘力が弱そうな少女に、思わぬ抵抗を食らった餓鬼は目を回してフラフラした。
 いわゆる、『ピヨった』状態である。

 愛原:「今だ!」

 リサが斉藤さんに覆い被さるような体制になった。
 私は手持ちのショットガンを餓鬼に向かって発砲した。

 餓鬼:「ギャアアアアアアッ!!」

 ガッシャーン!

 愛原:「ああっ!?」

 発砲したのは私の他に高橋も。
 しかし高橋のマグナムは威力が強過ぎて、餓鬼を窓の外に弾き飛ばしてしまった。
 ガラスをブチ破り、7階から下に落ちて行く。
 窓の外を見ると、そこは正面エントランスの車寄せがあった。
 だが、そこに止まっていた特殊車両や展開している特殊部隊員の姿を見て、私はこれでこの戦いは終わったと確信した。
 そして、そこで気づいた。
 その特殊部隊というのは、餓鬼が現れる直前、鳴子ダム付近に展開していた者達であり、それは自衛隊でも米軍でもなく、かといってBSAAでもない。
 民間軍事会社アンブレラ(通称、『青いアンブレラ』。ロゴマークが青白の雨傘であることから)の者達だと。

 高橋:「! 先生!火事が迫って来ています!」
 愛原:「急いで避難するぞ!」
 リサ:「ちょっと待って!サイトーが……」

 斉藤さんは私達に背を向けて嘔吐していた。
 いきなりのBOWとの対峙、そして廊下に転がっている死屍累々の惨殺死体は見るに耐えられないものだったろう。

 高橋:「しっかりしろ!まだ終わっちゃいねーぞ!」

 高橋は斉藤さんを半ば強引に立たせた。

 高橋:「まだここは危険だぜ!吐いてる場合じゃねぇ!」
 高野:「ちょっとマサ!斉藤さんは普通のコなんだからね!」

 さすがに高野君が注意する。
 と、その時だった。
 バァンと非常口の扉が破られ音がした。
 突入してきたのはフルフェイスのヘルメットを被り、私達のとは違う軍事用の銃火器で武装した特殊部隊だった。

 愛原:「待て、撃つな!俺達は普通の人間だ!」

 リサだけは別だが、もしかしてそれを狙って来たのか?
 最近のBSAAや青いアンブレラの装備に、BOWが放つ特殊な波長をキャッチしてその存在をいち早く確認する機械が発明されたと聞いたが……。
 リサはまだ第0形態の姿をしているから、見た目では分からない。

 愛原:「俺達は愛原学探偵事務所の者だ!」

 すると部隊を指揮していると思われる隊長らしき者が、銃を構えている隊員達に銃を下ろせと合図した。
 そして、ヘルメットを取る。
 その下にある顔は、日本人のようだった。

 隊長:「愛原学探偵事務所の方達ですか。話は聞いています。詳しい話を聞きたいのですが、まずは避難しましょう。こっちです」
 愛原:「ああ、すまない。皆、行くぞ!」

 私達は青いアンブレラの隊員達について、非常階段を下りていった。
 館内は思ったよりハンターを始めとするBOWが侵入しており、警察も消防も進入できなかったという。
 青いアンブレラは鳴子ダム近辺に現れたBOWの掃討作戦を行っていたそうだが、それがこちらにも飛び火したのだろうか。
 宮城県の山中にも旧アンブレラ(悪の製薬企業だった頃のアンブレラのこと。ロゴマークが紅白の雨傘なので、『赤いアンブレラ』と今では呼ばれることもある)が使用していた研究施設跡があり、それを探索していたとのことだ。
 日本の大きな温泉場には企業の保養所もあり、日本アンブレラも例外ではなかった。
 他の企業と違うのは、それにかこつけて秘密の研究施設を持っていたことである。

 隊長:「一応、応急手当などを行いますので、ヘリコプターまでどうぞ。それで市内の病院まで行きますので」
 愛原:「分かりました」

 何はともあれ、今回も生き延びれたな。
 それにしても、おちおち旅行もできなくなってしまったなぁ……。
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