報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「JR仙石線(『せんごくせん』じゃないヨ)」

2019-09-10 19:23:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日11:05.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JRあおば通駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 クライアントの斉藤社長の指示で、私達は取りあえず仙台市へと向かった。
 その市街地でJRバスを降りた私に、社長からメールがあった。
 そして、急いで社長に電話した。

 愛原:「も、もしもし?」
 斉藤秀樹:「ああ、愛原さん、お疲れさんです。仙台に着きましたか?」
 愛原:「はい、今しがたバスで到着しました」
 秀樹:「ああ、バスに乗っちゃいましたか」
 愛原:「! 何か、マズかったですか?」
 秀樹:「いえ、この後JRに乗って頂こうと思っていたんですが、まあいいでしょう」
 愛原:「今度はどこへ行けと?」
 秀樹:「いや、なに……。昨日は山に行って頂きましたから、今度は海なんかいかがでしょう?という話ですね」
 愛原:「海ですか。悪くないですね」
 秀樹:「そうでしょう。そこなら電車でのアクセスも可能です。もし何でしたら、今から向かってください」
 愛原:「それにしても、よくそんな有名な観光地の宿が取れましたね?まあ、鳴子温泉もそうでしたが……」
 秀樹:「だからこそ、早めに予約しておきながらキャンセルも出たりするんですよ。そこは私のネットワークを使わせて頂きましたので。ちょうどグループ客のキャンセルが出た所がありましてね、そこを急いで押さえたというわけです」
 愛原:「なるほど。それで宿はどこに?……ああ、なるほど。また、社長の名前を出せばいいんですね?……分かりました。はい、それでは失礼します」

 私は電話を切った。

 高橋:「先生、次のミッションはどこに?」
 愛原:「松島だってさ。仙台市内ではないな」
 高野:「さすが大企業家。会社の保養所か何かですかね?」
 愛原:「かもしれないな」

 私が聞いたホテルは普通の一般的な観光ホテルのようだったが、大企業などはそういう所に福利厚生として社員専用の割引プランを設けていることがある。

 愛原:「電車で行けるから、そこへ行こう」
 高橋:「はい」

 私達はバスが到着した青葉通り沿いにあるJR仙石線の駅、あおば通駅に移動した。
 ここなら始発駅だから、悠々と着席して現地に向かえる。
 もっとも……。

 リサ:「ドアが閉まってるよ」
 愛原:「陸羽東線みたいに半自動ドアなんだよ。ボタンを押して」
 リサ:「ん!」

 ポロロロン♪バッ、ガラガラガラガラ……(ドアチャイム&開扉音)

 リサ:「おー!」

 JR仙石線で運転されている電車は元々埼京線や山手線で運転されていた通勤電車の成れの果て。
 インドネシアのジャカルタ国電に飛ばされたもの以外に、地方では内需に応えている。
 仙石線では半自動ドアに改造したり、先頭車にトイレを付けたりしている。
 私達が乗ったのは最後尾で、トイレの無い車両だったが。
 それ以外は殆ど埼京線・山手線時代と変わらない為(運転室は209系っぽくなった)、まるでそれに乗っているかのような錯覚に陥る。

 高橋:「先生が暑がるから早く閉めろ」
 リサ:「ん!」

 ポロロロン♪プシューッ、ガラガラガラガラ……バン!(ドアチャイム&閉扉音)

 愛原:「いや、仙台はやっぱり涼しいよ。東京と比べれば」
 高野:「そうですね。今、都内は35度ですが、仙台は30度です。で、カラッとしていて日陰に入ったり、あと風が涼しいですよね」
 愛原:「ましてや、これから海に行くんだからな」
 斉藤絵恋:「愛原先生、海に行くということは水着要りますよね?」
 愛原:「いや、海水浴はせんよ。てか、水着無いし」
 絵恋:「何だぁ、残念」
 リサ:「後でサイトーの家のプール入りに行く」
 絵恋:「家に言って、準備してもらうからね!」
 高橋:「自分ちにプールあるんだったら、別にプールのあるホテルじゃなくてもいいじゃねーか」

 高橋は呆れたように言った。

[同日11:20.天候:晴 JRあおば通駅→仙石線1121S電車最後尾車内]

〔まもなく2番線から、電車が発車致します。ご注意ください〕

 ホームに盛大な発車メロディが流れる。
 地下ホームなだけに、それがよく響く。

〔「11時20分発、仙石線下り、各駅停車の石巻行き、まもなく発車致します」〕

 発車メロディが鳴り終わると、車掌が笛を吹いてドアを閉めた。
 もっとも、半自動ドアで殆どの車両のドアが最初から閉まっていただろうが。
 JR上野駅低いホームに停車している中距離電車みたいに、発車1分前になったら全てのドアを一斉に開けるというようなことはしないようである。
 そして、電車は定刻通りに発車した。

 愛原:「何か、以前乗った埼京線の幽霊電車に似てるなぁ……」
 高橋:「先生、次の駅を通過したら、急いで先頭車に向かうんですね!?」
 愛原:「まあ、そういうことになるな」

 あの時会った『芸能事務所の社長』や『銀髪の剣豪』、そして『魔法使いの青年』の正体を私達は知らない。

〔「お待たせ致しました。この電車は仙石線下り、各駅停車の石巻行きです。まもなく仙台、仙台です。新幹線、東北本線、常磐線、仙山線と仙台空港アクセス線はお乗り換えです。終点石巻へは、この電車が先に到着致します」〕

 隣の仙台駅まではたったの500メートルしか離れていない。
 これは都内で言えば、山手線・京浜東北線の日暮里〜西日暮里間と同じである。
 仙台駅からの乗車は多かった。
 緑色の座席が全て埋まり、吊り革を掴む者が目立って出て来たほどである。
 たったの4両編成で本当に大丈夫かと思ったが、恐らく仙台市を出ると途端に空くのだろうな。
 ましてや、仙石東北ラインという快速線もできたことだし。

〔10番線から、電車が発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 仙台駅の地上ホームや新幹線ホームでは発車メロディが流れるのだが、地下の仙石線ホームではただのベルしか流れない。
 またもや、車掌が笛を吹いてからドアを閉める。
 まあ、ちゃんと隣の駅にも停車したことだし、あの幽霊電車みたいなことは無いのだろう。

〔「本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。仙石線下り、各駅停車の石巻行きです。終点、石巻へはこの電車が先に到着致します。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です。お出口は、右側です」〕

 仙石線内では快速列車の役回りを果たす仙石東北ラインも、この時間帯は本数が少ないのだろう。
 その為、仙石線内をひたすら走る各駅停車が何だかんだ言って早いということか。
 もっとも、所要時間は1時間半近くあるみたいだ。
 トイレが無いとキツいな。
 因みに松島海岸駅までは40分ほどである。
 まあ、通勤電車でも大丈夫なくらいの所要時間か。
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“私立探偵 愛原学” 「JRバス東北・古川仙台線」

2019-09-10 15:23:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日10:00.天候:晴 宮城県大崎市 JR古川駅前→JRバス東北・高速バス車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨夜は大変な目に遭った。
 何とか全員無事だったのだが、私達をこの旅行に行かせた斉藤社長は旅行の続行を私達に命じて来た。
 もちろんクライアントの依頼とあらば拒否するつもりは無いが、娘さんが1番痛手を受けたのに、随分とシビアな社長だ。
 社長は今から仙台に向かえと言う。
 もちろん、それは吝かではない。
 その前に私は高橋を連れて、例のホテルから荷物を運び出した。
 荷物は1度誰かに開けられた痕があった。
 私は一応、消防隊にそのことについて聞いてみた。
 やはり客室のドアは中の状況を確認する為、こじ開けていたそうだが、金庫までは開けていないという。
 となると、一体誰が?
 あの餓鬼か?
 因みに盗られたものは無かった。
 それは高野君やJC2人の荷物もそうだった。
 斉藤絵恋さんは餓鬼に襲われた恐怖や、ホテル火災に遭った恐怖などで気を失っていたが、私達がホテルに荷物を取りに行っている間に意識を回復した。
 如何にクライアントの依頼とはいえ、この旅行の主役として持ち上げる対象が旅行の継続を嫌がれば、中止にせざるを得ない。
 私は彼女にそう申し入れたのだが、リサの献身的な看護(?)に継続を決めた。

〔「お待たせ致しました。10時ちょうど発、仙台駅前行きです」〕

 古川駅前のバスプールにJRバスがやってくる。
 青と白の塗装に、側面のツバメのマークが特徴的だ。

 愛原:「取りあえず、これで仙台に向かうぞ」

 そのことについて、特に異論は出なかった。

 愛原:「斉藤さん、本当に大丈夫かい?無理しなくていいんだよ?」
 斉藤:「いいえ、大丈夫です。リサさんがいてくれたおかげです」
 リサ:「サイトー、今度は私がサイトーを守ってあげる」
 斉藤:「も、萌えぇぇぇぇぇっ!

 どうやら大丈夫みたいだな。
 もしもリサがいなかったら、間違いなく旅行は中止になっていたことだろう。
 リサの言葉と手繋ぎに、斉藤さんは顔を真っ赤にして悶えた。
 そのことに対し、高橋が私に耳打ち。

 高橋:「先生。別の意味で危ないですよ」
 愛原:「そんなことは分かっている。だが、あれくらいなら確かに旅行は続けても大丈夫だろう」

 むしろ旅行中止にしたら、思いっ切り顔中クシャクシャにして錯乱するほど泣き出すのではないかと心配になった。

 高橋:「まあ、俺もどっちかというと先生と旅行したいですが」
 愛原:「だろうな」

 私達はバスに乗り込んだ。
 片道1時間くらいの近距離路線のせいか、貸切観光バスに毛を生やしたような内装だ。
 4列シートでトイレは付いていない。
 それでもWi-Fiは導入されているもよう。
 ちょうどいいので、1番後ろの席に5人並んで座った。
 また、高速バスなので、床下の荷物室に荷物は積める。
 運転手が荷物室のハッチを開けて、荷物を積み込んでいた。
 尚、運賃の支払いはSuicaやPasmoでできる。

 高橋:「先生、仙台のどこへ行けって話なんですか?」
 愛原:「まだ連絡は無い。一応、俺達が仙台に着くまでに決めてくれるらしいが……」
 高橋:「行き当たりばったりですね」
 愛原:「あのバイオハザード自体が突発的だったからな。しょうがない」

 半分くらいの座席が埋まって、バスが発車した。
 もちろんこの先にもバス停はあるので、更に乗車率は上がることだろう。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 本日はJRバス東北、仙台行きをご利用くださいまして、ありがとうございます。この先、古川台町、古川十日町、古川警察署前、上古川、水道事業所前、石名坂に止まり、東北自動車道を経由して電力ビル前、仙台駅前まで参ります。……〕

 愛原:「どれ……」

 私は座席を倒した。

 愛原:「昨夜はロクに寝れなかったからな。俺は着くまで寝てる。着いたら起こしてくれ」
 高橋:「分かりました」

 幸い1番後ろの席は広く、足が伸ばせる。
 また、1番後ろなので後ろの人に気兼ねすることなく、座席を倒すことができる。
 私はフルにリクライニングすると、カーテンを閉めてアイマスクを装着した。
 探偵の仕事は、ヘタすりゃ不眠不休の戦いになることだってある。
 寝れる時に寝るという習慣を身に付けておかなくてはならない。
 それは以前、高橋にも言っているのだが、高橋は寝ないようである。
 ま、そこは人それぞれだからな。
 

[同日11:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅前]

 高橋:「先生、先生」

 高橋が私を揺り起こした。
 何とか上手く寝れたようだ。

 愛原:「ん……?」
 高橋:「先生、まもなく到着です」
 愛原:「おっ、そうか。ありがとう」

 私はアイマスクを外すと、閉めていたカーテンを開けた。
 バスは既に高速道路を降り、明らかに都会の道路と思われる場所を走行していた。
 時計を見ると、どうやらだいたいダイヤ通りに走れているようだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、仙台駅前、仙台駅前に到着致します。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意ください。下りの古川方面行きは、仙台駅西口バスプール1番乗り場から発車致します。本日もJRバス東北をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 愛原:「ううーん……!」

 私は手足を伸ばすと、座席のリクライニングを戻した。

 愛原:「高橋は寝なくて大丈夫なのか?」
 高橋:「いえ、俺も少しは寝落ちしましたよ」
 愛原:「そうなのか。その程度なのに、随分と元気だな」
 高橋:「いつものことですよ」
 愛原:「若いっていいねぇ……」

 バスが停車してドアが開くと、乗客達がぞろぞろと前の方に向かって歩いた。

 高野:「先生、斉藤社長から連絡は?」

 私はスマホを取り出した。

 愛原:「ああ……。あ、何かメール来てる」

 それは斉藤社長からで、電話が欲しいというものだ。
 バスを降りたら掛けてみることにしよう。
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