報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「3日目も温泉」

2019-09-23 19:08:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日12:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 コロナワールド仙台]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 3日目は仙台市東部の郊外までやってきた。
 最寄り駅から路線バスに揺られること約15分。
 私達は目的の場所に着いた。
 地元では『産業道路』と呼ばれる幹線道路。
 それは片側三車線あり、頭上には仙台東部道路という高速道路も通っている(都市高速ではない)。
 名前の通り、休日の今日も大型トラックの行き交う幹線道路だ。
 恐らく夜は走り屋がかっ飛ばす道路なのだろうと推測する。
 それで高橋は知っているのだろう。
 この沿道に、大きなアミューズメント施設があることを。
 実際に駐車場を覗いてみると、もしかしてもう高橋が到着しているのかと思うような走り屋仕様の車がチラホラ見かけた。
 さすがに『宮城』や『仙台』などの地元ナンバーが多い。

 リサ:「愛原先生、お腹空いた」
 愛原:「ああ、分かった。温泉の前にお昼にしよう」

 メインホールに入ると、そこから各施設に別れているようだ。
 目的の大江戸温泉物語もある。
 その前に、リサの大要望で昼食にすることにした。
 リサにとっては空腹の度合いが過ぎると、私達も食事の対象となる。

 愛原:「えーと……先に食券を買うタイプのようだな」
 斉藤:「食券ですか?」
 愛原:「そう。……ん?もしかして、斉藤さんは……?」
 斉藤:「先に券を買うタイプの店は初めてです」
 愛原:「そうなのか!」

 そこはやはり大富豪の御嬢様なんだな。

 愛原:「もしも東京中央学園の高等部に上がるつもりなら、覚えておいた方がいいよ。高等部の校舎には学食があって、そこも食券方式らしいから」
 斉藤:「あ、はい」
 愛原:「遠慮しないで好きなもん頼んでいいからな。よし、俺はカレーでいいや」
 斉藤:「……カレーで」
 リサ:「ずーん……。カレーで」
 愛原:「ちょっと待て!遠慮しなくていいと言っただろ!」
 高野:「マサに『先生より高い物を頼むとは何事だ!』と言われたのを覚えているんですよ」
 愛原:「そうなのか。いや、今ここに高橋はいないから気にするな。いざとなったら俺から言っておくし、高野君も言ってくれるよな?」
 高野:「ええ、もちろんです」
 愛原:「というわけだ。改めて何がいい?」
 リサ:「トンカツ定食、ご飯大盛り!」
 斉藤:「私もリサさんと同じので!」

 斉藤さんは御嬢様でありながら空手の有段者でもある為、体力などを維持する為に食欲も大きいのだろう。

 高野:「私はカツカレーでお願いします」
 愛原:「へいへい。皆してカツ頼むな」
 リサ:「テキにカツってサイトーに言われた」
 斉藤:「『敵に勝つ』のゲン担ぎです、先生」
 愛原:「本当はそれ、栄養学的にNGらしいからな?」

 どちらかというと、運動には自信の無い私が言うのも何だが。

〔「……宮城県内で二晩続いて起きましたバイオハザード事件ですが、現在も尚、県内2つの現場では事件の後始末に追われており……」〕

 店内ではテレビが設置されていて、それでニュースをやっていた。
 テレビで観ると、改めて凄い事件に2夜連続で巻き込まれたものだと思う。

 愛原:「それにしても斉藤さん、今後はもう少し動きやすい服装で旅行した方がいいかもね。御嬢様っぽくていいんだけど」
 リサ:「私みたいに動きやすい服装」
 斉藤:「ええ。お父さんに言って、今度はそうしてもらいます」
 リサ:「サイトー、スカートだから今、足技使ったらパンツ見えちゃう?」
 斉藤:「思いっ切り見えちゃうよ」
 リサ:「今度やって。私にセーラー服着せるんだから、それくらいいいでしょ?」
 斉藤:「ええ〜?リサさんの頼みなら、嫌とは言えないけどぉ〜?」
 リサ:「むふー」

 これは……。
 リサの表情から察するに、リサはSっ気があり、斉藤さんにはMっ気がある。
 リサはラスボスを張るくらいの存在なのでそれは分かるが、斉藤さんは……。
 学校ではワガママS女王で通っているらしいが……。

 しばらくして、注文した定食やカレーができる。

 リサ:「いただきまーす」
 斉藤:「いただきます」
 高野:「先生、御馳走になります」
 愛原:「ああ」

 子供と大人の食事前挨拶の違い。

[同日13:45.天候:晴 同場所 大江戸温泉物語店内]

 昼食を終えた私達は早速、温泉に入ることにした。
 露天風呂の方が天然温泉らしいので、私は率先してそこに入る。
 何となく寂しいのは、高橋がいないからか。
 しかし、全く高橋が来る様子が無い。
 温泉から出た私は痺れを切らしたわけではないが、高橋に電話してみることにした。
 繋がってコールするが、なかなか出ない。
 まさか、半グレとのケンカに負けてボコされて監禁されているとか、或いは警察の御厄介になっているとか、そんなオチじゃあるまいな?

 男:「はい、もしもし?」
 愛原:「あ、誰だ?」

 やっと電話に出たと思ったら、聞き慣れない声だった。

 男:「愛原先生っスか?」
 愛原:「そ、そうだが、キミは誰だ?」

 声の感じからして、高橋と大して歳の変わらぬ青年といった感じだった。
 あまりガラの良い感じではないので、警察関係者というわけではなさそうだ。
 まさか、ガチで半グレ!?

 男:「マサのダチの佐藤って言います。今、マサは手が離せないんで、代わりに電話に出ろって言われたんで」
 愛原:「な、何だ、そうなのか。手が離せないってどういうことだ?まさか、ケンカ?」
 佐藤:「いや、そんなカッコいいもんじゃないっス。ちょっと遊びに夢中になってるだけで」
 愛原:「まさか、女と?」
 佐藤:「いえ、そんな羨ましいもんじゃないっス。マサは今、確変が止まらなくて……」
 愛原:「パチンコしてんのか!何やってんだ、あいつ!」
 佐藤:「あいつだけウハウハで、マジパネェっす」
 愛原:「色んな意味ではな!早くこっちに来いって言っといてくれ!」
 佐藤:「了解っス。もうすぐ俺、代打ちしますんで」
 愛原:「何の台やってるんだよ!?」
 佐藤:「CR顕正会っス」
 愛原:「意外だね!?意外なのやってるね!?」
 佐藤:「今、ケンショレンジャーモードで16回転目に入ってますんで」
 愛原:「何だよ、ケンショーレンジャーって!最近見かけないと思ってたら、パチンコに出てんのかよ……」
 佐藤:「しかも4円パチっス」
 愛原:「4円パチで確変何回も出してんの!?あいつ、凄ェな!」
 佐藤:「CR創価学会にしようかと思ったんですが、『んっ?さんからクレームから来るからダメだ』と言ってました」
 愛原:「やめろよ、そんなメタ発言……。てか、出そうに無いな、その台は……」
 佐藤:「とにかく、『愛原先生がお怒りだ』とだけ伝えておきますんで」
 愛原:「いや、怒ってはいないよ?ただ、あまり遊び惚け過ぎても困ると言ってるんだ。というか、キミ達はどこのパチ屋にいるの?」
 佐藤:「あ、コロナワールドのD’STATIONです」
 愛原:「1つ屋根の下かーい!」

 ども、ありがとうございましたー。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「地下鉄荒井駅→ミヤコーバス」

2019-09-23 10:17:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日11:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 仙台市地下鉄荒井駅→ミヤコーバス荒井多賀城線車内]

〔荒井、荒井、大成ハウジング本店前、終点です。お出口は、右側です。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意ください〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 2泊3日の温泉旅行最終日。
 初日も中日も夜は全くゆっくりできずに、ついに最終日を迎えた。
 いずれも昼間は普通に観光できただけに、今夜もとても心配だ。

 ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン♪(東西線2000系のドアチャイムは4回鳴る)

〔荒井、荒井、終点です。1番線の電車は、回送電車です。ご乗車になりませんよう、お願い致します〕

 私達は電車から降りた。
 この駅は閑散としていて、降りた乗客も僅かだった。
 恐らく西側の終点、八木山動物公園駅とやらは賑わっているのだろう。
 この旅行が平和なものであったならば、むしろ私達は2人の少女の為にそちらに行ったかもしれない。
 だが、引率者の私としては、さすがに二晩続きのバイオハザードはこたえていた。
 それは今回のメンバーのメインでもある斉藤さんも同じ。
 霧生市のバイオハザードを潜り抜け、もしくはバイオハザードのラスボス的な地位にいたわけでもない斉藤絵恋さんには恐怖の二夜以外の何物でもなかったはずだ。
 リサがいなかったら、とっくに入院していただろう。
 で、この旅行は中止、私達も報酬もらえずといったところか。

 愛原:「ここからバスに乗れということらしいが……?」
 高野:「そうですね。駅前のロータリーから出ているバスに乗っていいそうです」
 愛原:「本数少ないだろう?」
 高野:「そうですね。お世辞にも多いとは言えませんが、でも接続いいですよ。あと10分で発車します」
 愛原:「おお!」

 高野君はスマホ片手に乗り換え案内を見てくれている。

 愛原:「せめて最終日くらい、『終わり良ければ総て良し』になってもらいたいものだな」
 高野:「最終日は泊まりませんから、大丈夫だと思いますけど……」

 改札口を出て駅の外に出る。
 晩夏の暑い日差しが駅前のロータリーに降り注いでいるのが分かった。
 暗い地下トンネルから来た身としては、思わず目を細めるところだ。

 愛原:「どうせあれだろ?夕方の新幹線で帰るんだから、もうバイオハザードに巻き込まれることはないはずだ」
 高野:「だと思いますけど……」

 バイオハザードといっても、いきなりボスクラスのBOWが襲って来たというだけで、その前にウィルスだの特異菌だのがバラ撒かれて、周辺の人々がゾンビ化したというわけではない。
 そこが今回のバイオハザードの大きな特徴だ。
 もっとも、2000年代に地中海の海上都市テラグリジアで起きたバイオハザードも似たようなものだったと聞く。

 リサ:「愛原先生、あの赤いバス?」
 愛原:「高野君?」
 高野:「ミヤコーバスですか?そうですよ」
 愛原:「よし、あれに乗るぞ」

 私達はバス停に停車していた中型の路線バスに乗り込んだ。
 あまり乗客はおらず、先客は2〜3人だけ。
 バスに乗り込むと、1番後ろの席に乗り込んだ。

 愛原:「こういう所でもPasmoが使えるのがいいな」
 高野:「便利になりましたね」
 愛原:「発車まで、まだ時間あるかい?」
 高野:「40分発ですよ?」
 愛原:「まだ数分あるな。ちょっと高橋に電話してくる」
 高野:「はい」

 私は中扉から一旦バスを降りると、高橋に電話した。

 高橋:「あ、先生!お疲れーっス!!」

 電話の向こうから、バオオオン!ポヒュュッ!という明らかに改造車の走行音が耳に響いて来る。

 愛原:「エンジン音がうるせーな!」
 高橋:「サーセン!ダチのマシン、俺の知らない間にかなりカスタムされてて……」
 愛原:「知らんわ!今、荒井駅にいるんだ。これから、お前の教えてくれた所にバスで向かうから」
 高橋:「マジっすか!俺の意見、採用してくれたんスね!あざーっす!!」
 愛原:「鶴巻って所で降りればいいんだな?」
 高橋:「そうっス!バス停から見える位置にありますんで、すぐに分かると思います!」
 愛原:「分かったよ」
 高橋:「俺も後から行きますんで!」
 愛原:「分かったから、くれぐれも警察の御厄介になるようことはするなよ?」
 高橋:「大丈夫っス!今のケンカ相手、地元の半グレなんで!」
 愛原:「もっと厄介だな、おい!」

 その時、私の背後でバスがエンジンを掛けるのが分かった。

 高野:「先生、そろそろ発車ですよ!」
 愛原:「ああ!……というわけだ。遊びも程々にして、さっさと合流しろよ?」
 高橋:「了解でヤンス!」

 私は電話を切り、急いでバスに戻った。

 愛原:「高橋のヤツ、思いっ切り楽しんでやがる」
 高野:「まだ20代の遊びたい盛りですから。車も女もね」
 愛原:「結局あいつゲイじゃないのかよ……」

 私は呆れた様子で1番後ろの座席に座った。
 と、同時に中扉が閉まる。

〔発車します。ご注意ください〕

 

 こうして、私達を乗せたバスは荒井駅前を定刻通りに発車した。

〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。本日もミヤコーバスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは若林体育館前、うみの杜水族館前経由、多賀城駅前行きです。次は荒井六丁目、荒井六丁目でございます。……〕

 高野:「えっ、半グレとケンカ?」
 愛原:「冗談っぽく言ってたから、どこまで本気か分からないよ?」
 高野:「あいつもフザけてますねぇ、今度説教しておきます」
 愛原:「程々によろしくな」

 と、そこへ……。

 斉藤:「愛原先生、リサさんがお腹空いたらしいです」
 愛原:「もう!?」
 高野:「お昼の時間まで我慢しなさい」
 愛原:「バスのダイヤだと、昼前には着くはずなんだ。高橋の話じゃ、飯食う所もあるらしいから、着いたら食べよう」
 斉藤:「……だって。大丈夫?」
 リサ:「うん、がんばる」

 朝飯、あれだけの量で腹八分目とか言ってたもんなぁ……。
 こりゃ、昼飯代も思いやられそうだ……。
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