報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「松島観光」

2019-09-12 21:04:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日13:00.天候:晴 宮城県宮城郡松島町 松島湾遊覧船]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 日本三景の1つ、松島に到着した私達は昼食を終えると遊覧船に乗ることにした。
 300人か400人は乗れる、湾内を航行する遊覧船の中では大型船に部類するタイプだ。
 1階と2階の二層構造になっており、2階席はグリーン席になっているという。
 私達は1階席になったが、2階席は団体さんが乗るようだな。
 やはり、金のある年配者の団体か。

 愛原:「大丈夫か?プロムナードの倉庫から、『メーデー、メーデー』言いながらドアをドンドン叩いていたら要注意だぞ?」

 2005年に起きたクイーン・ゼノビア号のバイオハザード事件のネタを私は言ったつもりだったが……。

 高野:「先生!記憶が戻られたんですか!?」
 愛原:「えっ?いや、別に……。2005年に地中海で起きた豪華客船クイーン・ゼノビア号に、そういうクリーチャーが現れたって言うじゃないか。愛称は『メーデーさん』」

 その船の通信長が船内に蔓延したウィルスに感染したのだが、ヘタに抵抗力を持っていたせいで素直にゾンビになれず、別の化け物に変化したもの。
 正式名称は『スキャグデッド』という。
 素直にゾンビになった部下を何匹も呼び寄せて、突入したBSAAの職員を翻弄したという。

 高野:「顕正号にも出たんですよ、それ」
 愛原:「そうなの!?」
 高橋:「アネゴが何発もライフルぶっ放しても、なかなか死んでくれなかったんです。先生は意識を無くしてるもんだから、なかなか戦えなくてですね……」

 誰かを守りながらの戦いは至極不利だ。
 これは私も知っている。
 本当に大きな迷惑を掛けてしまったな。

 高橋:「取りあえず近くにあったガスボンベ爆発させて、ようやくブッ殺しましたよ」
 愛原:「相変わらず無茶するなぁ……」
 斉藤:「本当に時々難しい話をする先生達だね」
 リサ:「探偵さんだから」

 そんなことを客席で話しているうちに、遊覧船は出航した。
 だいたい所要時間は50分くらいだという。

 愛原:「船尾甲板に出てもいいらしいぞ」
 リサ:「おー」
 愛原:「2階はグリーン席だから、2階には行くなよ」
 リサ:「はーい」

 JC達は初めて乗る遊覧船に大盛り上がり。

 愛原:「ちょっとトイレ行ってくる」
 高野:「もう酔いましたか?」
 愛原:「違う違う。昼飯ん時に飲んだビールで、トイレが近くなっただけだ」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「せんでいい」

 調子に乗ってビールを一杯だけ飲んだのだが、それだけでトイレに行くほど私は酒が弱いのか。
 それとも、ただ単に歳を取ってトイレが近くなっただけか?

 愛原:「ん?」

 用を足してトイレから出た私は船尾甲板の方を見た。
 直接潮風に当たる乗客達の姿があり、その中にリサ達の姿もある。
 だが、そこから上空を見ると、まるでこの船を監視するかのように飛んでいるヘリコプターが1機飛んでいるのが分かった。

 愛原:「高橋、高橋!」
 高橋:「どうしました、先生?」

 私は急いで船室に戻った。

 高橋:「まさかウーズでも出ましたか?」

 ウーズとはクイーン・ゼノビア号に跋扈したゾンビの名前である。
 あの船に蔓延したウィルスに感染し、素直にゾンビ化するとウーズになる。
 普通のゾンビと違うのは、普通のゾンビが腐乱死体のようになり、生きている人間の肉を食い求めるのに対し、ウーズは水死体のようになって、生きている人間の血を求めるというものだ。
 そして、まるで蛭のような触手を伸ばし、生きている人間の体に噛みついて生き血を啜るのである。
 もっとも、『メーデーさん』は肉を欲したようだが。

 愛原:「違う!ちょっと双眼鏡貸してくれ」
 高橋:「あっ、いいアイディアですね!うん、いいアイディアだ」
 愛原:「別に景色を見るんじゃない」

 私は高橋から双眼鏡を借りると、再び船尾甲板に出た。
 そして、それでヘリコプターを見た。

 愛原:「! BSAAだ!どういうことだ?」

 そのヘリコプターは対国際バイオテロ組織BSAAのものだった。
 発足当初はただの民間NGO団体だったが、度重なる功績が称えられ、今では国連直轄団体になっている。
 要は国連軍の一派ということだな。
 『青い』アンブレラも似たような仕事をしているが、あれは民間企業なので。
 日本で言えば青いアンブレラは警備会社で、BSAAは警察のようなもの。

 愛原:「高橋!BSAAがこの船を追尾しているぞ!?」
 高橋:「何ですって!?」
 高野:「今更リサちゃんが狙われてるわけじゃないですよね?」

 リサのことはBSAAも把握済みのはずだ。
 日本政府が責任を持って監視するからと、今は『退治』しないように申し入れているはずだ。
 もっとも、最近のBSAAの権限は強くなってきている。
 その政府が国家ぐるみでバイオテロを起こそうとしていると判断した場合、国会議事堂や総理官邸に遠慮無く突入するくらいのことはするらしいからな。
 ということは、北朝鮮は今のところその気は無いということになる。

 愛原:「善場さんに連絡してみよう」

 私がスマホを取り出した時だった。

 高橋:「あ、先生。ヘリが離脱して行きました」
 愛原:「マジか」

 確かにヘリが遠ざかっていった。
 一体、何だったんだろう?
 JC2人はそんな私達のことなど露知らず、ヘリとは別にこの船を追尾しているウミネコなどに歓声を上げていた。

 斉藤:「しっかりついて来ちゃって、可愛いね!」
 リサ:「うん。あのプクッとしたお肉、美味しそう……」
 斉藤:「えっ?」

 リサはじゅるっと涎が出るのを我慢していたが、口からは牙が覗いていた。

 愛原:「リサ、BSAAに誤解されるから船室に入りなさい」
 リサ:「えー?」
 高橋:「リサ、先生の言う通りにしろ!マジでこの船、拿捕されるところだったぞ!」
 リサ:「はーい……」
 斉藤:「何かあったんですか?」
 愛原:「いや、何でもない」

 まさか、たまたまリサが食欲を出していたのを見つけたから追尾したってわけじゃ……ないよなぁ……。

[同日同時刻 天候:晴 松島湾上空・BSAAヘリ機内]

 パイロット:「αチームからHQ!松島湾上空を検索するも、タイラントの姿確認できず!」
 HQ:「了解。HQよりαチーム、他に気づいたことがあれば報告せよ」
 パイロット:「了解。松島湾内を航行中の船舶にて、微弱なBOWの反応あり!地上部隊に至急確認願う!」
 HQ:「了解。αチームの捕捉した反応は、現在日本政府の監視下にある『リサ・トレヴァー』のものと思われる。危険度は低いので、αチームは引き続きタイラントの検索に当たれ」
 パイロット:「了解!」
 βチーム:「βチームよりHQ、仙台湾において第三のBOW反応を捕捉。これより直ちに調査に入る」
 HQ:「了解。βチームの捕捉した反応はHQにおいてもアンノンである為、調査は細心の注意を払え」
 βチーム:「了解」

 ザバァッ!(海の中から顔だけ出すタイラント。その目は遊覧船の走り去った方向を見ている)

 タイラント:「御嬢……様……!」
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“私立探偵 愛原学” 「松島遊覧」

2019-09-12 15:09:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日12:00.天候:晴 宮城県宮城郡松島町 JR松島海岸駅→松島玉手箱館]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は一転して山から海へと移動した。
 トンネルをいくつも通って、やっと車窓に海が見えて来る。
 座席が通勤電車のロングシートであるのが残念だ。

〔「まもなく松島海岸、松島海岸です。お出口は、右側です」〕

 トンネルを抜けると、電車は1面2線のホームに滑り込んだ。
 この辺りはもう単線区間である。

 高橋:「先生、そろそろですよ」
 愛原:「ん、そうか……」

 またもや寝落ちし掛かっていたらしい。
 何しろ、長閑な海辺の町を走っているからなぁ……。
 もっとも、ここで降りたのは私達だけではない。
 過半数の乗客がここで降りて行った。
 その風体は、私達と同じ観光客である。

 高野:「風が気持ちいいですね」
 愛原:「さすがは快速“うみかぜ”が走っていた所だな。さて、ここからどうしよう?ホテルへのチェックインにはまだ時間があるが……」
 高野:「ちょうどお昼の時間ですし、食べてから考えるというのはどうでしょう?」
 愛原:「そうするか」

 私は高野君の意見を採用することにした。

 愛原:「とはいうものの、松島観光なんて初めてだからなぁ……。どこへ行けばいいのやら……」
 リサ:「先生、あれ乗ってみたい」

 リサは駅の広告看板を指さした。

 愛原:「おお、そうだ!松島観光と言えば、松島湾の遊覧船だったな!よし、昼食べたらこれに乗ろう!」
 高野:「リサちゃんは船酔いとか大丈夫なの?」
 リサ:「うん、大丈夫!」
 斉藤:「私もバカンスでよくクルーザーに乗るので大丈夫です」
 高橋:「オマエんち、クルーザーまで持ってんのかよ!どんだけセレブだ!」
 愛原:「海の無い埼玉県に実家があるのに、どうしてるんだい?」
 斉藤:「それはお父さんに聞きませんと……」
 高橋:「先生、そういうのはちゃんと預ける場所があるんですよ。そういう手間も含めてセレブだっつってるんです」
 愛原:「そうなのか」

 この辺は私より高橋の方が詳しそうだな。
 恐らく10代の頃、シャバにいた時はよく海に遊びに行ったりしたのだろう。

 高野:「国道沿いに、色々とお店があるみたいです。もちろん、食べ物屋さんも」
 愛原:「そうか。適当に見繕って食べておこう」

 日差しは暑いが海風は涼しい。
 海水浴には絶好の日和だと思われるが、あいにくとそんな予定は無い。

 愛原:「取りあえず遊覧船に乗ることは決まったから、その乗り場の近くがいいな。変な所に行って、迷子になっても困る」
 高野:「分かりました」

 高野君は手持ちのスマホで国道45号線沿いを進んだ。
 センターラインにオレンジ色が使われた道路で、道幅はそんなに広くない。
 そういう所を団体客を乗せた観光バスがバンバン行き交うものだから、そりゃ観光シーズンの時は渋滞の1つでも起こるというものだ。

 高野:「この辺りなんかいかがでしょう?」

 高野君が指定した場所は、遊覧船の乗り場が本当に目と鼻の先だった。

 愛原:「よし、ここにしよう」

 こういう海辺の観光地で食べられる物といったら海鮮系に決まっている。
 ホテルの夕食もそういうものが出て来るだろうから、今日は海鮮三昧だな。
 ……鳴子温泉の時も、川魚が出て来たような気がするのだが。

 愛原:「観光地の観光客向けの店なだけに、いい値段するな」
 高橋:「先生、予算大丈夫ですか?」
 斉藤:「何でしたら父に言って、もっと出してもらいますよ?」
 愛原:「あ、いや、大丈夫。というか、子供はそういう心配しないように」

 注文し終わった後で、私は高橋に話題を振ってみた。

 愛原:「高橋、そう言えばさっきのクルーザーの話なんだが……」
 高橋:「はい、何でしょう?」
 愛原:「俺より詳しいってことは、お前も乗ったことあるの?」
 高橋:「そうっスね。パイセンが色んな悪どい……ゲフンゲフン!色んな仕事してたもんで、金持ってたんスよ。それに何度か乗せてもらいました」
 愛原:「ほー、それは羨ましい。俺はまだ乗ったことが無いんだ」
 高橋:「パイセンが出所したら、頼んであげますね」
 愛原:「やっぱり服役中かーい!」
 高橋:「上手く行けば、今年の暮れくらいには仮釈放になるみたいなんで」
 愛原:「いや、要らねーだろ、そんな仮釈の情報!何やらかしたんだよ!?」
 高橋:「海でナンパした女をクルーザーに乗せて、『遊んだ』だけです」
 愛原:「あーっ、もういいよ」
 高橋:「俺も誘われてたんですが、その頃にはバカ女の相手するのもアホらしくなって来てたんでドタキャンしました。ヤるだけなら、何もわざわざクルーザー乗る必要無いんで」
 愛原:「良かったな、参加しなくて!先輩さんに、今度はもっと合法的に女遊びをするように言っとけ!」
 高橋:「分かりました」
 斉藤:「先生達、時々難しい話をするね?」
 リサ:「うん。探偵さんだから」

 私は話題の振り先をJC達に変えた。

 愛原:「斉藤さんは遊覧船に乗るのは初めてかな?」
 斉藤:「はい。今度乗るのはどういったものですか?」
 愛原:「さっきボンヤリ調べた所によると、松島湾を一周するクルーズのようだ。リサは?」
 リサ:「……覚えてないけど、船に乗った記憶はある」
 愛原:「あっと……今のは無かったことにしてくれ」

 リサは小学生の頃、『赤い』アンブレラに捕まり、壮絶な人体実験をさせられたという所までは分かっている。
 様々な生物兵器ウィルスを投与された結果、他の少女達は死亡したり、おぞましい化け物に変化する中、リサだけがその力を制御できた『完成品』だと。
 政治というのは残酷なもので、赤いアンブレラが潰れてリサが元気に残ったと見るや、政府はそれを兵器にしようとしている。
 表向きには政府エージェントとして雇用することにしておいて。
 ただ、アメリカ政府にも同じような者(シェリー・バーキン氏)がいるということから、政府高官職に就く者の考えることは同じなのかもしれない。
 それにしても、リサは船に乗った記憶はあるという。
 もちろんそれはバイオハザード豪華客船“顕正号”のことではない。
 赤いアンブレラに捕まる前、まだごく普通の少女だった頃の話なのか、或いは正に赤いアンブレラに捕まり、どこかへ連れて行かれる際に乗せられた船なのか、それは不明だ。

 店員:「お待たせしましたー」

 そこへ注文した料理が運ばれてくる。

 店員:「こちら海鮮丼になりまーす」
 愛原:「おっ、ありがとう」

 ま、とにかく今は観光で来てるんだから、今は観光を楽しむこととしよう。
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