[8月24日13:00.天候:晴 宮城県宮城郡松島町 松島湾遊覧船]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
日本三景の1つ、松島に到着した私達は昼食を終えると遊覧船に乗ることにした。
300人か400人は乗れる、湾内を航行する遊覧船の中では大型船に部類するタイプだ。
1階と2階の二層構造になっており、2階席はグリーン席になっているという。
私達は1階席になったが、2階席は団体さんが乗るようだな。
やはり、金のある年配者の団体か。
愛原:「大丈夫か?プロムナードの倉庫から、『メーデー、メーデー』言いながらドアをドンドン叩いていたら要注意だぞ?」
2005年に起きたクイーン・ゼノビア号のバイオハザード事件のネタを私は言ったつもりだったが……。
高野:「先生!記憶が戻られたんですか!?」
愛原:「えっ?いや、別に……。2005年に地中海で起きた豪華客船クイーン・ゼノビア号に、そういうクリーチャーが現れたって言うじゃないか。愛称は『メーデーさん』」
その船の通信長が船内に蔓延したウィルスに感染したのだが、ヘタに抵抗力を持っていたせいで素直にゾンビになれず、別の化け物に変化したもの。
正式名称は『スキャグデッド』という。
素直にゾンビになった部下を何匹も呼び寄せて、突入したBSAAの職員を翻弄したという。
高野:「顕正号にも出たんですよ、それ」
愛原:「そうなの!?」
高橋:「アネゴが何発もライフルぶっ放しても、なかなか死んでくれなかったんです。先生は意識を無くしてるもんだから、なかなか戦えなくてですね……」
誰かを守りながらの戦いは至極不利だ。
これは私も知っている。
本当に大きな迷惑を掛けてしまったな。
高橋:「取りあえず近くにあったガスボンベ爆発させて、ようやくブッ殺しましたよ」
愛原:「相変わらず無茶するなぁ……」
斉藤:「本当に時々難しい話をする先生達だね」
リサ:「探偵さんだから」
そんなことを客席で話しているうちに、遊覧船は出航した。
だいたい所要時間は50分くらいだという。
愛原:「船尾甲板に出てもいいらしいぞ」
リサ:「おー」
愛原:「2階はグリーン席だから、2階には行くなよ」
リサ:「はーい」
JC達は初めて乗る遊覧船に大盛り上がり。
愛原:「ちょっとトイレ行ってくる」
高野:「もう酔いましたか?」
愛原:「違う違う。昼飯ん時に飲んだビールで、トイレが近くなっただけだ」
高橋:「お供します!」
愛原:「せんでいい」
調子に乗ってビールを一杯だけ飲んだのだが、それだけでトイレに行くほど私は酒が弱いのか。
それとも、ただ単に歳を取ってトイレが近くなっただけか?
愛原:「ん?」
用を足してトイレから出た私は船尾甲板の方を見た。
直接潮風に当たる乗客達の姿があり、その中にリサ達の姿もある。
だが、そこから上空を見ると、まるでこの船を監視するかのように飛んでいるヘリコプターが1機飛んでいるのが分かった。
愛原:「高橋、高橋!」
高橋:「どうしました、先生?」
私は急いで船室に戻った。
高橋:「まさかウーズでも出ましたか?」
ウーズとはクイーン・ゼノビア号に跋扈したゾンビの名前である。
あの船に蔓延したウィルスに感染し、素直にゾンビ化するとウーズになる。
普通のゾンビと違うのは、普通のゾンビが腐乱死体のようになり、生きている人間の肉を食い求めるのに対し、ウーズは水死体のようになって、生きている人間の血を求めるというものだ。
そして、まるで蛭のような触手を伸ばし、生きている人間の体に噛みついて生き血を啜るのである。
もっとも、『メーデーさん』は肉を欲したようだが。
愛原:「違う!ちょっと双眼鏡貸してくれ」
高橋:「あっ、いいアイディアですね!うん、いいアイディアだ」
愛原:「別に景色を見るんじゃない」
私は高橋から双眼鏡を借りると、再び船尾甲板に出た。
そして、それでヘリコプターを見た。
愛原:「! BSAAだ!どういうことだ?」
そのヘリコプターは対国際バイオテロ組織BSAAのものだった。
発足当初はただの民間NGO団体だったが、度重なる功績が称えられ、今では国連直轄団体になっている。
要は国連軍の一派ということだな。
『青い』アンブレラも似たような仕事をしているが、あれは民間企業なので。
日本で言えば青いアンブレラは警備会社で、BSAAは警察のようなもの。
愛原:「高橋!BSAAがこの船を追尾しているぞ!?」
高橋:「何ですって!?」
高野:「今更リサちゃんが狙われてるわけじゃないですよね?」
リサのことはBSAAも把握済みのはずだ。
日本政府が責任を持って監視するからと、今は『退治』しないように申し入れているはずだ。
もっとも、最近のBSAAの権限は強くなってきている。
その政府が国家ぐるみでバイオテロを起こそうとしていると判断した場合、国会議事堂や総理官邸に遠慮無く突入するくらいのことはするらしいからな。
ということは、北朝鮮は今のところその気は無いということになる。
愛原:「善場さんに連絡してみよう」
私がスマホを取り出した時だった。
高橋:「あ、先生。ヘリが離脱して行きました」
愛原:「マジか」
確かにヘリが遠ざかっていった。
一体、何だったんだろう?
JC2人はそんな私達のことなど露知らず、ヘリとは別にこの船を追尾しているウミネコなどに歓声を上げていた。
斉藤:「しっかりついて来ちゃって、可愛いね!」
リサ:「うん。あのプクッとしたお肉、美味しそう……」
斉藤:「えっ?」
リサはじゅるっと涎が出るのを我慢していたが、口からは牙が覗いていた。
愛原:「リサ、BSAAに誤解されるから船室に入りなさい」
リサ:「えー?」
高橋:「リサ、先生の言う通りにしろ!マジでこの船、拿捕されるところだったぞ!」
リサ:「はーい……」
斉藤:「何かあったんですか?」
愛原:「いや、何でもない」
まさか、たまたまリサが食欲を出していたのを見つけたから追尾したってわけじゃ……ないよなぁ……。
[同日同時刻 天候:晴 松島湾上空・BSAAヘリ機内]
パイロット:「αチームからHQ!松島湾上空を検索するも、タイラントの姿確認できず!」
HQ:「了解。HQよりαチーム、他に気づいたことがあれば報告せよ」
パイロット:「了解。松島湾内を航行中の船舶にて、微弱なBOWの反応あり!地上部隊に至急確認願う!」
HQ:「了解。αチームの捕捉した反応は、現在日本政府の監視下にある『リサ・トレヴァー』のものと思われる。危険度は低いので、αチームは引き続きタイラントの検索に当たれ」
パイロット:「了解!」
βチーム:「βチームよりHQ、仙台湾において第三のBOW反応を捕捉。これより直ちに調査に入る」
HQ:「了解。βチームの捕捉した反応はHQにおいてもアンノンである為、調査は細心の注意を払え」
βチーム:「了解」
ザバァッ!(海の中から顔だけ出すタイラント。その目は遊覧船の走り去った方向を見ている)
タイラント:「御嬢……様……!」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
日本三景の1つ、松島に到着した私達は昼食を終えると遊覧船に乗ることにした。
300人か400人は乗れる、湾内を航行する遊覧船の中では大型船に部類するタイプだ。
1階と2階の二層構造になっており、2階席はグリーン席になっているという。
私達は1階席になったが、2階席は団体さんが乗るようだな。
やはり、金のある年配者の団体か。
愛原:「大丈夫か?プロムナードの倉庫から、『メーデー、メーデー』言いながらドアをドンドン叩いていたら要注意だぞ?」
2005年に起きたクイーン・ゼノビア号のバイオハザード事件のネタを私は言ったつもりだったが……。
高野:「先生!記憶が戻られたんですか!?」
愛原:「えっ?いや、別に……。2005年に地中海で起きた豪華客船クイーン・ゼノビア号に、そういうクリーチャーが現れたって言うじゃないか。愛称は『メーデーさん』」
その船の通信長が船内に蔓延したウィルスに感染したのだが、ヘタに抵抗力を持っていたせいで素直にゾンビになれず、別の化け物に変化したもの。
正式名称は『スキャグデッド』という。
素直にゾンビになった部下を何匹も呼び寄せて、突入したBSAAの職員を翻弄したという。
高野:「顕正号にも出たんですよ、それ」
愛原:「そうなの!?」
高橋:「アネゴが何発もライフルぶっ放しても、なかなか死んでくれなかったんです。先生は意識を無くしてるもんだから、なかなか戦えなくてですね……」
誰かを守りながらの戦いは至極不利だ。
これは私も知っている。
本当に大きな迷惑を掛けてしまったな。
高橋:「取りあえず近くにあったガスボンベ爆発させて、ようやくブッ殺しましたよ」
愛原:「相変わらず無茶するなぁ……」
斉藤:「本当に時々難しい話をする先生達だね」
リサ:「探偵さんだから」
そんなことを客席で話しているうちに、遊覧船は出航した。
だいたい所要時間は50分くらいだという。
愛原:「船尾甲板に出てもいいらしいぞ」
リサ:「おー」
愛原:「2階はグリーン席だから、2階には行くなよ」
リサ:「はーい」
JC達は初めて乗る遊覧船に大盛り上がり。
愛原:「ちょっとトイレ行ってくる」
高野:「もう酔いましたか?」
愛原:「違う違う。昼飯ん時に飲んだビールで、トイレが近くなっただけだ」
高橋:「お供します!」
愛原:「せんでいい」
調子に乗ってビールを一杯だけ飲んだのだが、それだけでトイレに行くほど私は酒が弱いのか。
それとも、ただ単に歳を取ってトイレが近くなっただけか?
愛原:「ん?」
用を足してトイレから出た私は船尾甲板の方を見た。
直接潮風に当たる乗客達の姿があり、その中にリサ達の姿もある。
だが、そこから上空を見ると、まるでこの船を監視するかのように飛んでいるヘリコプターが1機飛んでいるのが分かった。
愛原:「高橋、高橋!」
高橋:「どうしました、先生?」
私は急いで船室に戻った。
高橋:「まさかウーズでも出ましたか?」
ウーズとはクイーン・ゼノビア号に跋扈したゾンビの名前である。
あの船に蔓延したウィルスに感染し、素直にゾンビ化するとウーズになる。
普通のゾンビと違うのは、普通のゾンビが腐乱死体のようになり、生きている人間の肉を食い求めるのに対し、ウーズは水死体のようになって、生きている人間の血を求めるというものだ。
そして、まるで蛭のような触手を伸ばし、生きている人間の体に噛みついて生き血を啜るのである。
もっとも、『メーデーさん』は肉を欲したようだが。
愛原:「違う!ちょっと双眼鏡貸してくれ」
高橋:「あっ、いいアイディアですね!うん、いいアイディアだ」
愛原:「別に景色を見るんじゃない」
私は高橋から双眼鏡を借りると、再び船尾甲板に出た。
そして、それでヘリコプターを見た。
愛原:「! BSAAだ!どういうことだ?」
そのヘリコプターは対国際バイオテロ組織BSAAのものだった。
発足当初はただの民間NGO団体だったが、度重なる功績が称えられ、今では国連直轄団体になっている。
要は国連軍の一派ということだな。
『青い』アンブレラも似たような仕事をしているが、あれは民間企業なので。
日本で言えば青いアンブレラは警備会社で、BSAAは警察のようなもの。
愛原:「高橋!BSAAがこの船を追尾しているぞ!?」
高橋:「何ですって!?」
高野:「今更リサちゃんが狙われてるわけじゃないですよね?」
リサのことはBSAAも把握済みのはずだ。
日本政府が責任を持って監視するからと、今は『退治』しないように申し入れているはずだ。
もっとも、最近のBSAAの権限は強くなってきている。
その政府が国家ぐるみでバイオテロを起こそうとしていると判断した場合、国会議事堂や総理官邸に遠慮無く突入するくらいのことはするらしいからな。
愛原:「善場さんに連絡してみよう」
私がスマホを取り出した時だった。
高橋:「あ、先生。ヘリが離脱して行きました」
愛原:「マジか」
確かにヘリが遠ざかっていった。
一体、何だったんだろう?
JC2人はそんな私達のことなど露知らず、ヘリとは別にこの船を追尾しているウミネコなどに歓声を上げていた。
斉藤:「しっかりついて来ちゃって、可愛いね!」
リサ:「うん。あのプクッとしたお肉、美味しそう……」
斉藤:「えっ?」
リサはじゅるっと涎が出るのを我慢していたが、口からは牙が覗いていた。
愛原:「リサ、BSAAに誤解されるから船室に入りなさい」
リサ:「えー?」
高橋:「リサ、先生の言う通りにしろ!マジでこの船、拿捕されるところだったぞ!」
リサ:「はーい……」
斉藤:「何かあったんですか?」
愛原:「いや、何でもない」
まさか、たまたまリサが食欲を出していたのを見つけたから追尾したってわけじゃ……ないよなぁ……。
[同日同時刻 天候:晴 松島湾上空・BSAAヘリ機内]
パイロット:「αチームからHQ!松島湾上空を検索するも、タイラントの姿確認できず!」
HQ:「了解。HQよりαチーム、他に気づいたことがあれば報告せよ」
パイロット:「了解。松島湾内を航行中の船舶にて、微弱なBOWの反応あり!地上部隊に至急確認願う!」
HQ:「了解。αチームの捕捉した反応は、現在日本政府の監視下にある『リサ・トレヴァー』のものと思われる。危険度は低いので、αチームは引き続きタイラントの検索に当たれ」
パイロット:「了解!」
βチーム:「βチームよりHQ、仙台湾において第三のBOW反応を捕捉。これより直ちに調査に入る」
HQ:「了解。βチームの捕捉した反応はHQにおいてもアンノンである為、調査は細心の注意を払え」
βチーム:「了解」
ザバァッ!(海の中から顔だけ出すタイラント。その目は遊覧船の走り去った方向を見ている)
タイラント:「御嬢……様……!」