[8月25日17:13.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 ミヤコーバス鶴巻停留所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
3日目は仙台市東部にあるアミューズメント施設で過ごした。
高橋のお勧めで、目的の温泉施設もあれば、パチンコ屋もゲームセンターもある。
2夜連続のBOW退治で疲れた私は、高橋と合流すると、早々に休憩コーナーに入って仮眠モードに入ってしまった。
その間、JC達は元気なもので、ゲーセンに行ってたらしい。
一応、付き添いは高野君で。
高橋は高橋で私に付き添い、温泉にサッとだけ入ると、後は休憩コーナーにある漫画を読み漁っていたという。
で、夕方になってそろそろ帰る時間だ。
高橋:「先生、バス来ましたよ」
愛原:「おう」
大型トラックも行き交う片側三車線の産業道路の左車線を、紅白色の路線バスがやってくる。
〔「荒井駅前行きです」〕
往路と同じ中型バスだったが、今度は乗客が7〜8人ほど乗っており、先客がいたので1番後ろの座席ではなく、2人席と1人席に別れて座った。
〔発車します。ご注意ください〕
バスが走り出す。
時速60キロ以上で走行する他車の間を出発するのだから大変だ。
因みにバス停車帯は存在しない。
まあ、それは都内では珍しいことではないが(川越街道とか、新大橋通りとか、青梅街道とか)。
〔ピンポーン♪ 次は岡田西町、岡田西町でございます〕
高橋:「先生があまりにもよく寝ていらしたので、起こすのを躊躇うところでしたよ」
愛原:「そういう時は遠慮せず起こしてくれていいんだよ」
高野君が電話してくれなかったら、私達は本数の少ないバスに乗り遅れたことだろう。
そして地下鉄にも乗り遅れ、最終的には乗車予定の新幹線にも乗り遅れるということだ。
高橋:「大丈夫っスよ。バスに乗り遅れたら、俺が佐藤に頼んで車出してもらいますから」
愛原:「5人だぞ?佐藤君とやらを入れたら6人だが、大丈夫なのか?」
高橋:「あいつの車、エスティマなんで、余裕で8人乗れます」
愛原:「そいつも確か、イニシャルDに出て来た車だな。マジかよ……」
高橋:「体型に合って、デカい車が好きなんですよ。エスティマがオシャカになったら、ハイエースにするとか言ってますし」
愛原:「それも、思いっ切り改造するんだろうなぁ……」
高橋:「車好きの車は、カスタムしてナンボなもんで」
高橋は軽くウィンクした。
愛原:「てか、ヴェルファイアとかにはしないんだ?カッコ良さで言うなら、そっちじゃないの?」
高橋:「俺もセダンが好きなんで、ワンボ好きのヤツがどういうこだわりなんだか、実はあんまりよく知らないんスよ」
愛原:「まあ、荷物はよく運べるけどね」
リサが私のマンションに引っ越してくる際、リサが使うベッドや机は、高橋の都内の走り屋友達のワンボックスで運ばせてもらったことがあるけど……。
高橋:「ま、そんなところです。バスに比べたら、ちゃっちぃですがね」
愛原:「そりゃそうだろ」
[同日17:30.天候:晴 仙台市宮城野区 仙台市地下鉄荒井駅→東西線電車先頭車内]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、荒井駅前、荒井駅前でございます。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意ください」〕
バスはマンションなどの宅地建設が行われている区域に入ると、その中心部にある地下鉄荒井駅前のロータリーに入った。
緑色の仙台市営バスが停車している中、紅白のバスは目立つ。
……何だか一瞬、『赤いきつねと緑のたぬき』というフレーズが頭に浮かんだ。
愛原:「おい、キミ達、降りるよ」
私は2人席に寄り添うようにして座るリサと斉藤さんに言った。
さすがに疲れて寝てしまうくらいにはなったかな。
運転手:「ありがとうございましたー」
バスを降りて駅構内に入る。
愛原:「さすがに疲れたかい?」
斉藤:「少しだけ……」
リサ:「私は大丈夫。でも、サイトーが気持ち良さそうに寝てたから、私も釣られた」
愛原:「はは、そうか。地下鉄でも途中で降りるから、ちゃんと起きてくれよ?」
バスに乗車した時と同じように、地下鉄もPasmoで乗れる。
ピピッとタッチしてコンコースに入り、そのまま地下に下りるとすぐホームである。
いくら新しい地下鉄は深い所を通るとはいえ、それは都心や市街地部分のことであり、郊外部分はそれほどでもないようだ。
始発駅ということもあってか、電車は既にホームに停車しており、4両編成の電車全ての車両が閑散としている。
〔お知らせ致します。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
〔「17時37分発、仙台方面、八木山動物公園行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
先頭車に乗り込み、ブルーの座席に腰掛ける。
座ると何だか眠くなるのは、私も同じか。
愛原:「リサ、ゲーセンでも斉藤さんと盛り上がったの?」
リサ:「うん。またエアホッケーやった」
愛原:「おー、そうか。それは良かったな」
リサ:「高野お姉ちゃんは、レーシングゲームで盛り上がってたけど」
愛原:「マジか!?」
高橋:「アネゴもやんのか?」
高野:「ちょっとだけ」
リサ:「物凄く上手かった」
愛原:「へえ、意外だね。確か、イニシャルDをモチーフにしたゲームがあったな?」
高橋:「アネゴも峠攻めすんのか?」
高野:「ちょっとだけね」
愛原:「そりゃあいい。今度、高橋と勝負してみてくれよ」
高橋:「ふっ、望む所です」
高野:「吠え面かくのがオチだから、やめときなさい」
高橋:「ンだコラ!?」
愛原:「はーいはい。ケンカはダメだよ。とにかく、今は帰ることに集中だ。勝負は東京に帰ってからな?」
高橋:「先生がそう仰るのなら……」
高野:「しょうがないですね」
〔「お待たせ致しました。17時37分発、仙台方面、八木山動物公園行き、まもなく発車致します」〕
〔2番線から、八木山動物公園行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
各駅共通の短い発車サイン音が鳴って、ドアが閉まった。
閑散とした駅では駆け込み乗車する乗客も少ないのか、再開閉することもなく、すぐに発車する。
〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前です〕
〔The next stop is Rokuchonome station.〕
私は途中で寝過ごさないよう、なるべく会話を繋いでおくことにした。
幸いうちの事務所のメンバーらは、そんな私の気持ちに応えてくれたのである。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
3日目は仙台市東部にあるアミューズメント施設で過ごした。
高橋のお勧めで、目的の温泉施設もあれば、パチンコ屋もゲームセンターもある。
2夜連続のBOW退治で疲れた私は、高橋と合流すると、早々に休憩コーナーに入って仮眠モードに入ってしまった。
その間、JC達は元気なもので、ゲーセンに行ってたらしい。
一応、付き添いは高野君で。
高橋は高橋で私に付き添い、温泉にサッとだけ入ると、後は休憩コーナーにある漫画を読み漁っていたという。
で、夕方になってそろそろ帰る時間だ。
高橋:「先生、バス来ましたよ」
愛原:「おう」
大型トラックも行き交う片側三車線の産業道路の左車線を、紅白色の路線バスがやってくる。
〔「荒井駅前行きです」〕
往路と同じ中型バスだったが、今度は乗客が7〜8人ほど乗っており、先客がいたので1番後ろの座席ではなく、2人席と1人席に別れて座った。
〔発車します。ご注意ください〕
バスが走り出す。
時速60キロ以上で走行する他車の間を出発するのだから大変だ。
因みにバス停車帯は存在しない。
まあ、それは都内では珍しいことではないが(川越街道とか、新大橋通りとか、青梅街道とか)。
〔ピンポーン♪ 次は岡田西町、岡田西町でございます〕
高橋:「先生があまりにもよく寝ていらしたので、起こすのを躊躇うところでしたよ」
愛原:「そういう時は遠慮せず起こしてくれていいんだよ」
高野君が電話してくれなかったら、私達は本数の少ないバスに乗り遅れたことだろう。
そして地下鉄にも乗り遅れ、最終的には乗車予定の新幹線にも乗り遅れるということだ。
高橋:「大丈夫っスよ。バスに乗り遅れたら、俺が佐藤に頼んで車出してもらいますから」
愛原:「5人だぞ?佐藤君とやらを入れたら6人だが、大丈夫なのか?」
高橋:「あいつの車、エスティマなんで、余裕で8人乗れます」
愛原:「そいつも確か、イニシャルDに出て来た車だな。マジかよ……」
高橋:「体型に合って、デカい車が好きなんですよ。エスティマがオシャカになったら、ハイエースにするとか言ってますし」
愛原:「それも、思いっ切り改造するんだろうなぁ……」
高橋:「車好きの車は、カスタムしてナンボなもんで」
高橋は軽くウィンクした。
愛原:「てか、ヴェルファイアとかにはしないんだ?カッコ良さで言うなら、そっちじゃないの?」
高橋:「俺もセダンが好きなんで、ワンボ好きのヤツがどういうこだわりなんだか、実はあんまりよく知らないんスよ」
愛原:「まあ、荷物はよく運べるけどね」
リサが私のマンションに引っ越してくる際、リサが使うベッドや机は、高橋の都内の走り屋友達のワンボックスで運ばせてもらったことがあるけど……。
高橋:「ま、そんなところです。バスに比べたら、ちゃっちぃですがね」
愛原:「そりゃそうだろ」
[同日17:30.天候:晴 仙台市宮城野区 仙台市地下鉄荒井駅→東西線電車先頭車内]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、荒井駅前、荒井駅前でございます。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意ください」〕
バスはマンションなどの宅地建設が行われている区域に入ると、その中心部にある地下鉄荒井駅前のロータリーに入った。
緑色の仙台市営バスが停車している中、紅白のバスは目立つ。
……何だか一瞬、『赤いきつねと緑のたぬき』というフレーズが頭に浮かんだ。
愛原:「おい、キミ達、降りるよ」
私は2人席に寄り添うようにして座るリサと斉藤さんに言った。
さすがに疲れて寝てしまうくらいにはなったかな。
運転手:「ありがとうございましたー」
バスを降りて駅構内に入る。
愛原:「さすがに疲れたかい?」
斉藤:「少しだけ……」
リサ:「私は大丈夫。でも、サイトーが気持ち良さそうに寝てたから、私も釣られた」
愛原:「はは、そうか。地下鉄でも途中で降りるから、ちゃんと起きてくれよ?」
バスに乗車した時と同じように、地下鉄もPasmoで乗れる。
ピピッとタッチしてコンコースに入り、そのまま地下に下りるとすぐホームである。
いくら新しい地下鉄は深い所を通るとはいえ、それは都心や市街地部分のことであり、郊外部分はそれほどでもないようだ。
始発駅ということもあってか、電車は既にホームに停車しており、4両編成の電車全ての車両が閑散としている。
〔お知らせ致します。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
〔「17時37分発、仙台方面、八木山動物公園行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
先頭車に乗り込み、ブルーの座席に腰掛ける。
座ると何だか眠くなるのは、私も同じか。
愛原:「リサ、ゲーセンでも斉藤さんと盛り上がったの?」
リサ:「うん。またエアホッケーやった」
愛原:「おー、そうか。それは良かったな」
リサ:「高野お姉ちゃんは、レーシングゲームで盛り上がってたけど」
愛原:「マジか!?」
高橋:「アネゴもやんのか?」
高野:「ちょっとだけ」
リサ:「物凄く上手かった」
愛原:「へえ、意外だね。確か、イニシャルDをモチーフにしたゲームがあったな?」
高橋:「アネゴも峠攻めすんのか?」
高野:「ちょっとだけね」
愛原:「そりゃあいい。今度、高橋と勝負してみてくれよ」
高橋:「ふっ、望む所です」
高野:「吠え面かくのがオチだから、やめときなさい」
高橋:「ンだコラ!?」
愛原:「はーいはい。ケンカはダメだよ。とにかく、今は帰ることに集中だ。勝負は東京に帰ってからな?」
高橋:「先生がそう仰るのなら……」
高野:「しょうがないですね」
〔「お待たせ致しました。17時37分発、仙台方面、八木山動物公園行き、まもなく発車致します」〕
〔2番線から、八木山動物公園行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
各駅共通の短い発車サイン音が鳴って、ドアが閉まった。
閑散とした駅では駆け込み乗車する乗客も少ないのか、再開閉することもなく、すぐに発車する。
〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前です〕
〔The next stop is Rokuchonome station.〕
私は途中で寝過ごさないよう、なるべく会話を繋いでおくことにした。
幸いうちの事務所のメンバーらは、そんな私の気持ちに応えてくれたのである。