報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「秋田入り」

2021-04-19 20:56:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日10:30.天候:晴 秋田県北秋田市上空 全日本空輸719便機内→大館能代空港(あきた北空港)]

 私達を乗せたANA機は北へ向かって飛んだ。
 因みに空席が多いのは、何も地方ローカル空港へ向かうからだとか、コロナ禍だからとかいうわけではない。
 突然、団体客がキャンセルしたとのことである。
 それも外国の。
 しかしここまで聞けば、やっぱりコロナ禍だからということで納得もできるが、どうもその団体客はドタキャンしたらしい。
 私の脳裏に、ふと羽田空港の保安検査場であった大捕り物の記憶が蘇った。
 名前からして外国人、そして団体客……。
 その客達がもしそうだとあれば、乗り合わせなくて良かった。
 危うくハイジャックされるところだった。
 何だかんだ言って、日本の治安はまだまだ良好である。
 さて、ハイジャックの脅威から逃れることができた719便は、途中で気流による揺れを受けながらも順調に進んだ。
 電車の揺れなら、どうして揺れるのかが分かるからいいが、飛行機だとそれが分からないから怖い所がある。
 まるで列車が、ポイントを速度制限ギリギリで通過したかのような揺れだったのだが。
 横揺れはそんな感じで、縦揺れとしては、列車がポイント部分を直進するのだが、それでも速度を出しているとガタガタ揺れるだろう?
 あれに似た揺れだった。
 すまない。
 ちょっとマニアックな例えだったかな。
 まもなく着陸態勢に入るとのとで、再びシートベルト着用サインが点灯した。

 リサ:「あ、あんまり見ないで」

 リサがポッコリお腹を隠すような仕草をしながらシートベルトを締めた。
 それまで自分の体型や恰好など全く気にもしなかったリサが、ついに自分の体型を気にするようになった。
 これでまた、人間の女の子に一歩戻ったな。
 リサの前進を喜ぶ私がいると同時に、どこか寂しい気がするのは気のせいだろうか?

 愛原:「おっと!」

 機内のモニターには機外の様子が映し出されている。
 これから着陸する大館能代空港の滑走路が近づいて来た。
 これが夜間だと、美しい夜景が見えるのだろう。
 ズシンという音がして、飛行機は滑走路に着陸した。
 そして、ギギギという大きな音がして、大きな重圧と共に強いブレーキが掛かるのが分かる。
 どうやら、無事に着陸できたようだ。
 航空事故で1番多いのは、離陸直後と着陸直前だというからな。
 実はJALの御巣鷹山墜落事故や、逆噴射機長の暴走事件は非常に稀である。
 分かっているのだが、やっぱりズシンというのも慣れないとびっくりするねぇ……。
 そして機体は地上の誘導員に誘導されながら、ターミナルへと向かう。
 明るいので誘導灯ではなく、パドルで誘導している。
 尚、作者の同僚は社員旅行の時、そのパドルを見て、『しゃもじのようだ』と言ったという。

 リサ:「これ、面白そう」
 愛原:「そうか?そうかもな」

 モニタに映し出される誘導員を見てリサが言った。
 こんな派手な色に塗られたしゃもじみたいな道具2つで、飛行機が誘導できるんだから凄いもんだ。
 最後に誘導員が2つのパドルを高く交差する。
 これが『止まれ』の合図らしい。
 完全に飛行機が止まると、ポーンという音がしてシートベルト着用サインが消えた。
 放送が流れて、飛行機を降りることができると分かる。
 私達はシートベルトを外して、席を立った。

 愛原:「忘れ物するなよ」
 高橋:「うっス」

 通路側に座っていた高橋が立ち上がって、ハットラックのハッチを開ける。

 高橋:「先生、鞄を」
 愛原:「ありがとう」
 高橋:「リサのリュックっス」
 愛原:「おう。ほら、リサ。……ってリサ、機内誌以外は持って行けないからな?」

 新幹線の網ポケットにある冊子は持ち帰り自由であり、それは飛行機の冊子もそうである。
 リサはそれ以外にも、ヘッドホンを持ち出そうとしていた。

 リサ:「てへてへ♪」
 高橋:「てへてへじゃねぇ。先生のお手を煩わせるな」
 愛原:「ヘッドホンが欲しかったら、入学祝にあげたクオカードで買えるだろう?」
 リサ:「あっ、そうか。電気屋さんで使える?」
 愛原:「電気屋じゃなくても、HMVでヘッドホン売ってるよな?」
 高橋:「売ってますね」
 愛原:「帰京したらお前、リサにヘッドホン見繕ってやれ」
 高橋:「マジっスか?」
 愛原:「お前が使ってるヘッドホン、何だ?」
 高橋:「BOSEです」
 愛原:「オマエ、いきなりいいの使ってるな!?」
 高橋:「奮発しました。おかげでヒマな時は、いい音質で聴けてます」

 私なんか2000円くらいで買ったパナソニックのイヤホンだけどね。

 愛原:「リサの小遣いじゃ、BOSEのヘッドホン買えないぞ?」
 高橋:「分かってます。リサの小遣いで買えるくらいのヤツを探してやりますよ」
 愛原:「頼んだぞ」

 因みに善場主任からも入学祝は届いたが、やはりというべきか、図書カードであったという。
 これで新しい英和辞典または広辞苑でも買ってくれということだろうか。
 そういえば、大型書店に行けば、電子辞書も売ってたりするが、それも書店内ということで、図書カードで買えるのだろうか?
 東京中央学園には大学は無いので、もしもリサが大学に行くのなら、初めて受験を経験しなくてはならない。

 CA:「御搭乗ありがとうございました」
 愛原:「お世話様でした」
 高橋:「うっス」
 リサ:「和尚様でした?」
 愛原:「『お世話様でした』だよ」

 日蓮正宗では『和尚』という呼称は使わない。
 寺院の管理運営を総本山より預かり賜る僧侶のことは、一貫して『住職』である。

 高橋:「先生、ここからレンタカーでしたね?」
 愛原:「そうだ。ちょっとトイレに行ってからな」
 高橋:「あ、そうだ。俺も吸って来ていいっスか?」
 愛原:「いいとも」

 到着ロビーを出た私達はトイレに行く私とリサ、そして喫煙所に向かう高橋とに分かれた。

 リサ:「先生、一緒に入ろ?」

 リサは私を多目的トイレに誘った。
 どこぞの芸能人みたいなことをさせる気か。
 因みにリサはグレーのパーカーの下にはTシャツを着ているのだが、下は迷彩柄のプリーツスカートだった。
 どうも、霧崎さんに勧められたらしい。
 霧崎さんは普段からメイド服姿だが、私服の時は上下どちらか、或いは小物などに必ず迷彩柄が入っているのだ。
 リサのスカートの丈は短く動き易いが、気を付けないとパンチラしてしまう。

 愛原:「よく言うよ。こんなぷにぷにお腹で!」

 私はリサの腹の肉を掴んで言った。

 リサ:「きゃはっ!……もうっ!気にしてるんだからぁ!夜になったら変化して、スリムになるんだから!」

 ま、少しからかい過ぎたか。
コメント
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