報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「作戦決行前の過ごし方」

2021-04-22 20:00:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日15:00.天候:曇 秋田県大館市 大館矢立ハイツ]

 チェックインの時間になり、私達は臨時の宿泊先にチェックインした。
 鍵をもらってエレベーターに乗り込む。

 愛原:「飛び込みの宿泊だから、夕食は付かないそうだ」
 リサ:「えーっ!?夕食抜きぃーっ!?」
 愛原:「違う違う。あくまで夕食の付かないプランというだけで、レストランで食べればいいってことだよ。レストランの営業時間、何時までだった?」
 高橋:「確か、20時までっスね」
 愛原:「20時か。あのラーメン屋と同じだな。だったら18時ぐらいに食べに行けばいい。『腹が減っては戦はできぬ』、夕食を食べてから作戦決行だ」
 リサ:「おー!」
 高橋:「はいっ!」

 4階でエレベーターを降り、客室フロアへと向かう。
 そして渡された鍵番号と部屋番号を確認して、確保した部屋へと入った。

 愛原:「うん、イメージ通りの和室だな。取りあえず、荷物置こう」
 高橋:「温泉行きますか?」
 愛原:「行こう行こう。浴衣ある?」
 高橋:「そっちに入ってるみたいですね」
 愛原:「そうか」

 私は浴衣を受け取った。

 愛原:「ストーップ!リサ、ここで着替えない!」
 リサ:「ん?」
 愛原:「仮にも15歳の女の子なんだから、大の男達の前で着替えない!」
 リサ:「研究所にいた頃は、マジックミラーやカメラで盗撮のオンパレードだったよ?」

 あのロリコンどもめ!

 愛原:「悪いがリサは、そっちの洗面所で着替えてくれ」
 リサ:「んー、分かったよ」

 リサは面倒臭そうに、浴衣を持って洗面所に行った。
 この部屋、洗面所とトイレは付いているようだ。
 浴衣に着替えた私達は、バスタオルとフェイスタオルを手に部屋を出た。
 部屋の近くに温泉があるのは良い。

 愛原:「それじゃリサ、またな」
 リサ:「えー?一緒に入りたい~」
 愛原:「ダメダメ。それじゃ、またな」
 リサ:「はーい」

 私と高橋は男湯に入る。

 愛原:「入口にマッサージチェアがあったな。さすがに、機械以外のマッサージは無いか」
 高橋:「俺がしましょうか?」
 愛原:「いや、いいよ。オマエも長旅で疲れただろうし」
 高橋:「俺は大丈夫っスよ」
 愛原:「若いっていいねぇ……」

 私は感心しながら脱衣所で浴衣を脱いだ。

 愛原:「結構いい旅だ。またボスや斉藤社長にお土産買って行かないとなー」
 高橋:「仕事なのに、いいんスかね?」
 愛原:「いいのいいの」

 営業中のラーメン屋が逃げるとは思えないからな。
 むしろリサの見立てでは同じBOWではないかと思われる女性店員が追ってきやしないかと心配したが、杞憂のようである。

 高橋:「先生!不肖この高橋が、先生のお背中を、お、お流しして差し上げたいと思いつかまつり候~也~!」
 愛原:「オマエ、日本語おかしいぞ。てか、何で歌舞伎調?市川海老蔵か」
 高橋:「先生!お背中を!お背中を!」

 まるでワンコが飼い主におやつをねだるかのようである。

 愛原:「分かった分かった。そう、せっつくなよ。よろしく頼む」
 高橋:「はいっ!」

 いつも大浴場に一緒に入るとこんな感じだな。
 以前、ユニットバスのビジネスホテルに止まった時も迫られたことがあったが、さすがに狭いので断った。
 マンションの風呂はセパレートタイプだが、さすがに家では三助を断っている。
 で、その分の不満がこういう所で爆発するのだ。

 高橋:「ハッとして~♪グッとして~♪Hey♪」
 愛原:「何だその歌……」

 因みにこいつ、家事能力は高めだし、車の運転もまあまあ上手い。
 だが、歌唱力に関しては壊滅的なのである。

 地元のオヤジ:「おい、兄ちゃんよ。歌がうるせーから静かにしてくれ」
 高橋:「あぁッ!?」
 愛原:「すいませんすいません!静かにさせますんで!高橋、歌は歌うな!」
 高橋:「は、はい」

 このように、近隣の方々から苦情が来るほど。
 高橋が暴走族時代、元仲間に言わせると、高橋の車の中では歌のCDは掛けないという暗黙のルールがあったそうである。
 『下越のヤンキー』と呼ばれた高橋は、『下越のジャイアン』とも呼ばれたそうな。

 愛原:「新潟でも歌いまくってたのか?」
 高橋:「いや何か、俺が車に乗ろうとすると、皆して歌のCDを切るんスよ。何なんスかね?」
 愛原:「そういうことだよ」
 高橋:「え?」
 愛原:「もういいから、さっさと流してくれ」
 高橋:「あ、はい」

 高橋に背中を流してもらった後、他の部分は自分で洗う。
 その後で、やっと入浴できる。

 愛原:「うーむ……。本物の温泉は素晴らしい」
 高橋:「全くです」
 愛原:「露天風呂もあるんだよな。後でちょっと出てみよう」
 高橋:「夜とかだと、もっと雰囲気あるんじゃないスか?」
 愛原:「そうかもな。作戦が上手く行けば、帰って夜にまた入ることもできるだろう」
 高橋:「さっさと店長のヤツ、ぶっ殺しましょーや」
 愛原:「おい、作戦内容勝手に変えるな。店長は普通の人間っぽいから、倒さなくていいの。それより、店長からあの店の土地とかについて聞くんだよ」
 高橋:「は、はい」

 内湯に入った後は露天風呂に移動する。

 愛原:「“天空の湯”っていうの。いいねぇ」
 高橋:「女湯は“かぐやの湯”って言うらしいですよ」
 愛原:「ほおほお。“東方永夜抄”だな」
 高橋:「空をぉ~鳳凰が往くぅ~♪昇るゥ~不死の煙ィ~♪」

 うわ、またこいつ歌い出しやがった。
 確かにヘタクソ!

 オヤジ:「うるせって言ってんだろぉ!!」
 愛原:「すいませんすいません!」

 ところが、だ。
 女湯の露天風呂はここから凄く反対側にあるはずなのに、後で合流したリサが言うには、『お兄ちゃんの歌声がしたと思ったら、周りの女の人達が「イケボ、イケボ♡」「歌ってる人、絶対イケメン💛」って騒いでた』という。
 何だそりゃ。
 男が聴けばジャイアン並みのヒドい歌声なのに、女性が聴けばイケボなのか。
 何ちゅう異能だ。
 イケメン最強だな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「道の駅やたて峠」

2021-04-22 14:45:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日13:30.天候:曇 秋田県大館市 道の駅“やたて峠”]

 国道7号線を更に北上し、そろそろ青森県との県境に辿り着こうとした時、その道の駅は見えて来た。

 愛原:「ここだ、ここ」
 高橋:「ここですね」

 車は道の駅“やたて峠”の駐車場に入った。
 道の駅に温泉施設が併設されている所は存在するが、ここはそれだけでなく、宿泊することもできる。
 いっそのこと、泊まってしまおうかとも考えた。

 高橋:「着きました」

 高橋は車を建物近くの駐車場に止めた。

 愛原:「善場主任から返信だ」
 高橋:「何て?」
 愛原:「『情報ありがとうございます。所長方はなるべく現場から離れてください』とのことだ」
 高橋:「姉ちゃん達、動くってことですかね?」
 愛原:「かもしれんな」
 高橋:「現場からなるべく離れろって、どういうことっスかね?」
 愛原:「分からんが、なるべく俺達も巻き込みたくないってことなんじゃないのかな?」
 高橋:「どうします?もっと離れますか?」
 愛原:「そうだな……。いや、ここでいいだろう。ここもここで、それなりに離れてるからな」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「いざとなったら、青森県まで逃げればいい」
 高橋:「はい」
 愛原:「一応、待避場所はここでいいか聞いてみよう」

 私は再びメールで、道の駅“やたて峠”にいることを伝えた。

 愛原:「これでいい。行こう」
 高橋:「はい」

 私達は道の駅の建物“大館矢立ハイツ”の中に入った。

 愛原:「まずは作戦会議兼食後のお茶だ」

 館内にあるレストランに行く。
 リサはまたもや食欲が湧いたのか、食事のメニューの方を見ていた。

 愛原:「こらこら。さっきラーメン食べたばっかりだろ」
 リサ:「はーい……」
 愛原:「デザートだったら食べていいから」
 リサ:「ほんと!?じゃあ、馬肉煮込み定食!」
 高橋:「それはデザートじゃねぇ!」

 私達はレストランに入ると、空いているテーブル席に座り、そこでコーヒーなどを注文した。
 因みにリサは、『森のミニパフェ』の中のラズベリーパフェを所望した。

 愛原:「善場主任がどう動くのかは置いといて、俺達の作戦はこうだ。あのラーメン屋の閉店直後を狙って行く。あの店長や店員達も住み込みってわけでは無さそうだから、どこからか通勤しているはずだ。店長が出て来たら、店長の後をつける。そして店長が家に着いたら、話を聞くんだ」
 高橋:「姉ちゃん達の作戦に鉢合わせしたら?」
 愛原:「協力を求められれば協力するし、足手まといになるようなら退くさ」
 高橋:「分かりました。あのラーメン屋は20時閉店のようです」
 愛原:「分かった。20時きっかりに店長が帰るとは思えないから、その20時に行こう。但し、駐車場に車は入れない。怪しまれるだろうし、そもそも駐車場から閉めるだろうからな」

 ラストオーダー後に客が入って来ないようにする為の常套手段だ。
 私も警備員時代、とあるショッピングセンターの駐車場で働いていた時、そのようにしたものだ。

 高橋:「歩いて行くんスか?それだと少し遠いですけど……」
 愛原:「いや、途中まで車で行くさ。途中に陣馬駅ってあっただろ?あそこは無人駅みたいだが、一応駅前広場もある。駅前に車……それも、どこかの業者の車っぽいライトバンが止まっている分には怪しくないだろう。もしかしたら、JR関係者に見えるかもよ」
 高橋:「なるほど。あの駅からだったら、何とか歩いて行けそうっスね」
 愛原:「だろ?それで行こう」
 高橋:「分かりました。で、どうします?まだ時間ありますけど……」
 愛原:「取りあえず温泉入るか?」
 高橋:「いいっスね。泊まりは……どうします?」
 愛原:「それな。どうしようかな……。ここに泊まってもいいんだが……或いは飛行機で帰ることを考えれば、大館市内とか北秋田市内に泊まった方がいいし……」
 高橋:「ま、そもそも部屋が空いてるかどうかって感じっスけどね」
 愛原:「まあな」

 私達はおおかた今後の行動について確認すると、レストランを出た。
 試しにフロントに行ってみて、部屋が空いているかどうかを聞いてみた。
 コロナ禍とはいえ、週末だから空いていないのではないかと思った。
 すると、部屋は空いているという。
 和室が1部屋に洋室ツインが1部屋。
 シングルは無いので、私達が和室に泊まって、リサがツインって感じか?
 それとも、やはり市街地に宿泊先を求めるべきか?
 どうしたものか……。
 まあ、いざとなったらここに逃げ込めばいいからな。
 私は一応、ここの宿泊施設に泊まることを決めた。

 リサ:「私、先生と一緒の部屋でいいよ?」
 愛原:「さすがにJKになったオマエと一緒の部屋っていうのはなぁ……」
 リサ:「私は気にしないよ?家族だし」
 愛原:「うーん……しかし……」
 リサ:「私が暴走しないように監視するのも、先生の仕事なんじゃないの?」
 愛原:「オマエ、暴走する気か?」
 リサ:「しないよ。しないけど……分からない。私、たまに寝ぼけるから」
 愛原:「ああ、そうだな」

 確かに1度、寝込みを襲われたことがある。
 本人はBOWとして人間を襲う夢を見ていたらしいのだが。
 襲われる直前にリサが目を覚ましたことで、事無きを得た。

 愛原:「分かった、分かった。じゃあ、一緒の部屋だ」
 リサ:「やった!」

 私は和室の部屋を1つ確保した。
 まだチェックインの時間ではないので、道の駅そのものを探索することにした。
 一旦、建物の外に出る。

 高橋:「追って来ているという感じはしないっスね?」
 愛原:「そうだな。ここまで来れば安全なのかもしれない」

 地方とはいえ、一桁番号の国道ということもあり、交通量は多い。
 オレンジ色のセンターラインが引かれた2車線の道路を長距離トラックなどが多く行き交っている。
 平日はそんなトラック野郎達の休憩所となるのだろう。
 今でも大型駐車場には、大型トラックが何台か止まっている。
 車の中で休んでいるのか、彼らしき姿を館内で見ることはなかった。
 それでも誰かが私達を付けていると危険なので、周りを確認することにした。
 そういう時、リサがいると役に立つ。
 彼女によると、今のところ私達を追って来ている者はいないようである。
 私達を怪しみはしたが、速やかに店の外に出たことで、警戒を解除したのだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする