[2月25日15:30.天候:晴 福島県郡山市 JR郡山駅・新幹線ホーム→東北新幹線“なすの”278号車内]
〔11番線に停車中の電車は、15時37分発、“なすの”278号、東京行きです。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。尚、全車両禁煙です。……〕
私達は新幹線ホームに上がった。
郡山駅のホームは2面5線である。
そのうち、2線はホームに面していない通過線である。
“はやぶさ”などの速達列車が高速で通過する。
11番線は上り始発列車のホーム。
そこに、私達の乗車する列車が停車していた。
この時点では、まだ自由席もガラガラだ。
“なすの”は、“やまびこ”の停車しない駅での需要を見越して設定された列車である。
東京中央学園の生徒達は、中間車の6号車と7号車が確保されている。
6号車は本来自由席であるが、こういう団体の予約があった場合は指定席に変わる。
往路と違い、中間車に乗ることになるので、リサのことは善場主任に報告済みだ。
リサが感じている違和感は、新幹線車内でも続いていた。
愛原:「おいおい、東京までついてくる気じゃないだろうな?」
リサ:「どうする?」
愛原:「もしも東京までついて来たなら、帰る前に善場主任に報告しよう。もしかしたら、鬼斬りを紹介してくれるかもしれんw」
リサ:「わたしごと斬られそう……」
〔「ご案内致します。この電車は15時37分発、東北新幹線上り“なすの”278号、東京行きです。終点の東京まで、各駅に停車致します。発車までご乗車になり、お待ちください。……」〕
リサと絵恋さんは、2人席に並んで座っている。
往路の特急列車と同じで、コロナ対策の為、座席を向かい合わせにすることは禁止されていた。
絵恋:「リサさん、まだお菓子余ってるよ」
リサ:「おー!」
このまま、正体は分からず仕舞いなのか……。
[同日15:37.天候:晴 JR東北新幹線“なすの”278号・7号車内]
発車時刻になり、列車は定刻通りに発車した。
発車メロディはGReeeeNの“キセキ”をアレンジしたものであった。
最近、JR東日本の発車メロディは『ご当地メロディ』を採用することが多い。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“なすの”号、東京行きです。次は、新白河に止まります。……〕
高橋:「先生、もう探さないんですか?」
座席に座った私を見て、高橋が聞いて来た。
愛原:「多分、今は闇雲に探し回ってもダメなんだろう。もし向こうが何か悪巧みを考えているのなら、絶対に向こうから仕掛けてくる。その時でいいだろう」
高橋:「なるほど。それもそうですね」
リサ:「何か、ゴメン。わたしのせいで……」
愛原:「いや、いいんだよ。怪しいのがいるのは事実だからね」
高橋:「白井が送り込んだスパイでしょうか?」
愛原:「新しいBOWでも開発したのかなぁ?」
[同日15:59.天候:晴 栃木県那須塩原市 JR那須塩原駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。宇都宮線、黒磯、矢板方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、宇都宮に止まります〕
事態が一変したのは、那須塩原駅に着いてからだった。
〔「まもなく那須塩原、那須塩原です。お出口は、左側です。那須塩原で、しばらく停車致します。発車まで、しばらくお待ちください」〕
列車は上り副線ホームに入線した。
本線上りは通過線で、ホームは無い。
〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
“やまびこ”が停車しない為、この駅からの乗車も多い。
ただ、殆どの場合、自由席に乗って行ったようである。
6号車と7号車は貸切だから、乗って来る一般客はいない。
尚、一般客用の普通車指定席は8号車である。
リサ:「……!!」
リサはバッとホームの方を見た。
2人席はホームとは反対側なので、3人席越しに見ることになる。
リサの形相に、3人席の生徒達はびっくりしてしまった。
リサ:「リン!」
愛原:「えっ!?」
ホームには、ばつが悪そうな顔をして立っている上野凛の姿があった。
愛原:「あれ!?」
リサは乗降口に向かった。
私も後を追う。
上野凛:「ど、どうも。こんにちは……」
愛原:「凛さん、どういうことだ?」
凛:「ご、ごめんなさい。多分、色々と怪しかったと思いますけど……。私、ここで降りますから」
愛原:「も、もしかして……会津若松から付いてきてた?」
凛:「はい」
リサ:「どういうことだ、コラ!?」
愛原:「リサ、落ち着け。多分、キミ1人でやったことじゃないね?」
凛:「はい。詳しくは、善場さんにお願いします」
愛原:「やっぱり善場主任か……。あんまりやる気無さそうにしていたのは、これのせいだったのか……」
列車が発車してから、私はデッキに移り、善場主任に直接電話した。
善場:「抜き打ちのような状態になり、真に申し訳ございません」
愛原:「一体、どういうことなんですか?」
善場:「上野凛の上京があと1ヶ月に迫ったことで、彼女の潜在的能力についてテストしたかったのです。彼女もまた半分人間ではありませんが、リサとはまた違った能力を秘めていることが分かりました。それがどんなものなのかをテストしたかったのです」
愛原:「昨晩ホテルにわざわざ来たのは、凛さんを連れて来る為でしたか」
善場:「そうです。ですので実質的に、テストは昨夜からスタートしてました」
愛原:「リサは完全にしてやられたようですが?」
善場:「リサを出し抜けたということで、期待値が高いです」
愛原:「リサ、だいぶ怒ってますけど?」
リサ:「ウゥウ……!!」
リサ、貫通扉の向こうから赤い瞳を光らせ、牙を剥き出しにして唸り声を上げている。
善場:「リサには詫び料として、後でクオカードを進呈すると伝えておいてください」
愛原:「わ、分かりました。一体、どんな能力だったのでしょう?」
善場:「詳しいことはまた別の機会にお話ししますが、特異菌感染者の中で、特に適合率が高い人と同じような能力が使えるようですね」
愛原:「はあ……」
善場主任としては良かったのかもしれないが、こちらはリサを宥めるのに凄い苦労させられたのだが……。
〔11番線に停車中の電車は、15時37分発、“なすの”278号、東京行きです。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。尚、全車両禁煙です。……〕
私達は新幹線ホームに上がった。
郡山駅のホームは2面5線である。
そのうち、2線はホームに面していない通過線である。
“はやぶさ”などの速達列車が高速で通過する。
11番線は上り始発列車のホーム。
そこに、私達の乗車する列車が停車していた。
この時点では、まだ自由席もガラガラだ。
“なすの”は、“やまびこ”の停車しない駅での需要を見越して設定された列車である。
東京中央学園の生徒達は、中間車の6号車と7号車が確保されている。
6号車は本来自由席であるが、こういう団体の予約があった場合は指定席に変わる。
往路と違い、中間車に乗ることになるので、リサのことは善場主任に報告済みだ。
リサが感じている違和感は、新幹線車内でも続いていた。
愛原:「おいおい、東京までついてくる気じゃないだろうな?」
リサ:「どうする?」
愛原:「もしも東京までついて来たなら、帰る前に善場主任に報告しよう。もしかしたら、鬼斬りを紹介してくれるかもしれんw」
リサ:「わたしごと斬られそう……」
〔「ご案内致します。この電車は15時37分発、東北新幹線上り“なすの”278号、東京行きです。終点の東京まで、各駅に停車致します。発車までご乗車になり、お待ちください。……」〕
リサと絵恋さんは、2人席に並んで座っている。
往路の特急列車と同じで、コロナ対策の為、座席を向かい合わせにすることは禁止されていた。
絵恋:「リサさん、まだお菓子余ってるよ」
リサ:「おー!」
このまま、正体は分からず仕舞いなのか……。
[同日15:37.天候:晴 JR東北新幹線“なすの”278号・7号車内]
発車時刻になり、列車は定刻通りに発車した。
発車メロディはGReeeeNの“キセキ”をアレンジしたものであった。
最近、JR東日本の発車メロディは『ご当地メロディ』を採用することが多い。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“なすの”号、東京行きです。次は、新白河に止まります。……〕
高橋:「先生、もう探さないんですか?」
座席に座った私を見て、高橋が聞いて来た。
愛原:「多分、今は闇雲に探し回ってもダメなんだろう。もし向こうが何か悪巧みを考えているのなら、絶対に向こうから仕掛けてくる。その時でいいだろう」
高橋:「なるほど。それもそうですね」
リサ:「何か、ゴメン。わたしのせいで……」
愛原:「いや、いいんだよ。怪しいのがいるのは事実だからね」
高橋:「白井が送り込んだスパイでしょうか?」
愛原:「新しいBOWでも開発したのかなぁ?」
[同日15:59.天候:晴 栃木県那須塩原市 JR那須塩原駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。宇都宮線、黒磯、矢板方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、宇都宮に止まります〕
事態が一変したのは、那須塩原駅に着いてからだった。
〔「まもなく那須塩原、那須塩原です。お出口は、左側です。那須塩原で、しばらく停車致します。発車まで、しばらくお待ちください」〕
列車は上り副線ホームに入線した。
本線上りは通過線で、ホームは無い。
〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
“やまびこ”が停車しない為、この駅からの乗車も多い。
ただ、殆どの場合、自由席に乗って行ったようである。
6号車と7号車は貸切だから、乗って来る一般客はいない。
尚、一般客用の普通車指定席は8号車である。
リサ:「……!!」
リサはバッとホームの方を見た。
2人席はホームとは反対側なので、3人席越しに見ることになる。
リサの形相に、3人席の生徒達はびっくりしてしまった。
リサ:「リン!」
愛原:「えっ!?」
ホームには、ばつが悪そうな顔をして立っている上野凛の姿があった。
愛原:「あれ!?」
リサは乗降口に向かった。
私も後を追う。
上野凛:「ど、どうも。こんにちは……」
愛原:「凛さん、どういうことだ?」
凛:「ご、ごめんなさい。多分、色々と怪しかったと思いますけど……。私、ここで降りますから」
愛原:「も、もしかして……会津若松から付いてきてた?」
凛:「はい」
リサ:「どういうことだ、コラ!?」
愛原:「リサ、落ち着け。多分、キミ1人でやったことじゃないね?」
凛:「はい。詳しくは、善場さんにお願いします」
愛原:「やっぱり善場主任か……。あんまりやる気無さそうにしていたのは、これのせいだったのか……」
列車が発車してから、私はデッキに移り、善場主任に直接電話した。
善場:「抜き打ちのような状態になり、真に申し訳ございません」
愛原:「一体、どういうことなんですか?」
善場:「上野凛の上京があと1ヶ月に迫ったことで、彼女の潜在的能力についてテストしたかったのです。彼女もまた半分人間ではありませんが、リサとはまた違った能力を秘めていることが分かりました。それがどんなものなのかをテストしたかったのです」
愛原:「昨晩ホテルにわざわざ来たのは、凛さんを連れて来る為でしたか」
善場:「そうです。ですので実質的に、テストは昨夜からスタートしてました」
愛原:「リサは完全にしてやられたようですが?」
善場:「リサを出し抜けたということで、期待値が高いです」
愛原:「リサ、だいぶ怒ってますけど?」
リサ:「ウゥウ……!!」
リサ、貫通扉の向こうから赤い瞳を光らせ、牙を剥き出しにして唸り声を上げている。
善場:「リサには詫び料として、後でクオカードを進呈すると伝えておいてください」
愛原:「わ、分かりました。一体、どんな能力だったのでしょう?」
善場:「詳しいことはまた別の機会にお話ししますが、特異菌感染者の中で、特に適合率が高い人と同じような能力が使えるようですね」
愛原:「はあ……」
善場主任としては良かったのかもしれないが、こちらはリサを宥めるのに凄い苦労させられたのだが……。