[3月6日10:30.天候:曇 東京都千代田区丸の内 丸の内中央ビル2Fスターバックスコーヒー]
JR東海新幹線鉄道事業本部が入居するビルのテナントとして出店しているスタバ。
そこで善場主任は、絵恋さんに事情聴取をしていた。
善場:「……それではあなたは、お父さんが北海道にいる間、1人で行動していたのは知ってるのね?」
絵恋:「はい。でも、どこへ行ったかは知りませんし、聞いても教えてくれませんでした」
善場:「ふむ……」
リサ:「おー!この店、Wi-Fi入る!ネット使い放題」
愛原:「今時、こういう所じゃ、Wi-Fiは当たり前だろう」
リサの方は全く緊張感が無い。
善場:「今朝のお父さんの行動について、絵恋さんは何か聞いていましたか?」
絵恋:「全然聞いていません。ただ、父はよく付き合いでゴルフに行ってたりしてるので、それだと思いました」
善場:「メイドさんに事情は聴いてくれた?」
絵恋:「は、はい。ダイヤがそれを知っていました。6時ぐらいに、父がタクシーで出て行く所を見たそうです」
愛原:「タクシーで?ハイヤーじゃないんだ?」
絵恋:「そのようです」
善場:「どこのタクシー会社?」
絵恋:「それが、いつもと違う会社だったそうです」
愛原:「社長が契約しているタクシー会社は、日本交通だよね?」
さいたま市では100%出資の子会社、日本交通埼玉であるが、しかしタクシーチケットなど相互利用が可能である。
絵恋:「そうです。うちのメイドはそんなにタクシーには詳しくないのですが、屋根に『大宮』と書かれた看板のタクシーだったそうです」
愛原:「大宮!」
恐らく地元のタクシー会社で、『大宮』と名の付く会社だろう。
しかし、何だって社長はハイヤー契約しているタクシー会社ではなく、全く無関係のタクシー会社を予約したのだろう?
さいたま市という所は、基本的にタクシーは流し営業を行っていない(さいたま市のタクシー会社の中には、採用情報に『東京都内と違い、流し営業は行いません』と謳っている所もある)。
駅やホテルなどのタクシー乗り場や、繁華街で客待ちしているタクシーを拾うか、或いは予約して来てもらう方式である。
ましてや今日は日曜日。
それも、社長が乗ったのは早朝だ。
ただでさえ都心でもタクシーが少ない日なのに、ましてや住宅街をタクシーが流し営業しているとは思えない。
ということは、社長はあえてタクシーを予約した可能性が高い。
愛原:「多分、『大宮自動車』か『大宮交通』のどちらかですね」
私は自分のスマホで検索してみた。
善場主任は自分のスマホを取ると、どこかに連絡した。
そして、私が今言ったタクシー会社に行って、聞いてくるように指示を出した。
愛原:「どうして社長は日本交通にしなかったのでしょう?」
ハイヤーも基本的には事前予約制だから、急な利用には対応していないことが多い。
なので社長も急用にはハイヤーを利用できず、止む無くタクシーを呼んだのだろう。
それにしても、普段からハイヤー契約をしている会社の方が予約もサービスもスムーズだろうに、どうしてだろう?
善場:「2つ考えられます。本当に急な予約だったので、いかにハイヤー契約をしている会社であろうが、すぐには配車できなかったことです。もう1つは……なるべく足が付かないようにしたのかもしれません」
愛原:「うわ……何か後者っぽい。タクシーに乗って、どこに行ったのでしょうか?」
善場:「タクシー会社を突き止めて、それからですね。絵恋さん、本当に心当たりは無いの?」
絵恋:「無いです」
と、その時、私のスマホが震えた。
何らかの通知だ。
LINEではない。
チラッと見ると、それはニュースアプリの通知。
何か速報が来たようだ。
愛原:「えっ!?東北上空で飛行機がハイジャック!?」
善場:「日本の航空機でですか?」
愛原:「そのようです」
私はニュースアブリを起動させた。
愛原:「成田空港発、新千歳空港行きの中国夏冬航空がハイジャックされた!……って、何で中国の航空会社が日本の国内線を?」
善場:「恐らく、子会社の日本法人でしょうね。確か、サマー・ジャパンとか言いましたか。海外の航空会社でも、現地法人を設立して国内線航空機を飛ばすことはできるのです」
愛原:「それでも、国内線で中国の飛行機はやだなぁ……」
善場:「まあ、あまり中国の航空会社は国際的な評価は芳しくないですからね」
愛原:「でしょうなぁ……」
善場:「とにかく、普通のハイジャック事件なら、私達の出番はありません」
しばらくして、善場主任のスマホにまた連絡。
善場:「えっ、斉藤社長の足取りが掴めた?大宮駅ですって?分かったわ。今度は大宮駅の監視カメラの解析をお願い」
愛原:「早っ!」
善場:「元々、監視カメラの画像から社長の足取りは追えていたようです。社長は午前6時前、地元のタクシー会社を利用して大宮駅西口まで行っています。運転手の証言では、その後そのまま真っ直ぐ大宮駅構内に入ったとのことです」
愛原:「なるほど。でも、素直に電車に乗ったとは限りませんね?東西自由通路があるから、そのまま東口に抜けたかもしれません」
善場:「確かに。ですので、急いで駅の監視カメラの画像を確認する必要があります」
絵恋:「ねぇ。だったら、もう行っていい?私の話はもう終わったでしょ?」
リサ:「サイトーはお父さんのこと、心配じゃないの?」
絵恋:「心配なんかしてないわ。警察……だか公安だか知らないけど、善場さんって、本当はそういう関係の人なんでしょ?」
善場:「警察とも公安とも違いますが、しかしまあ、似たようなものです。愛原所長と違うのは、私は国家公務員だということです。意味が分かりますね?」
愛原:「私のような民間の探偵は、クライアントから依頼が無いと動けないが、国家公務員はそんなの無くても動けるということさ」
絵恋:「そんな人達から追われるなんて、どんな悪い事したのよ。もう知らない」
愛原:「まあ、確かに社長の行動は怪しいけど……」
すると、また私のスマホにニュースアプリから速報が届いた。
愛原:「うわっ!ロシアに墜落したって!?こりゃマズいな……」
善場:「墜落ということは、乗員乗客の安否は絶望的ということですか。また、仮に生存者がいたとて、あのロシアとは……」
愛原:「ウクライナと戦争中だで?そこへ日本人満載の中国の旅客機が突っ込んで行ったということは……」
善場:「外務省の人達には、徹夜して頂くことになるでしょう。では、話の続きです」
外務省関係が他人事ということは、善場主任が所属する国家機関とは外務省が管轄しているわけではないということが分かった。
やはり、総務省とか内閣府辺りだろうか?
JR東海新幹線鉄道事業本部が入居するビルのテナントとして出店しているスタバ。
そこで善場主任は、絵恋さんに事情聴取をしていた。
善場:「……それではあなたは、お父さんが北海道にいる間、1人で行動していたのは知ってるのね?」
絵恋:「はい。でも、どこへ行ったかは知りませんし、聞いても教えてくれませんでした」
善場:「ふむ……」
リサ:「おー!この店、Wi-Fi入る!ネット使い放題」
愛原:「今時、こういう所じゃ、Wi-Fiは当たり前だろう」
リサの方は全く緊張感が無い。
善場:「今朝のお父さんの行動について、絵恋さんは何か聞いていましたか?」
絵恋:「全然聞いていません。ただ、父はよく付き合いでゴルフに行ってたりしてるので、それだと思いました」
善場:「メイドさんに事情は聴いてくれた?」
絵恋:「は、はい。ダイヤがそれを知っていました。6時ぐらいに、父がタクシーで出て行く所を見たそうです」
愛原:「タクシーで?ハイヤーじゃないんだ?」
絵恋:「そのようです」
善場:「どこのタクシー会社?」
絵恋:「それが、いつもと違う会社だったそうです」
愛原:「社長が契約しているタクシー会社は、日本交通だよね?」
さいたま市では100%出資の子会社、日本交通埼玉であるが、しかしタクシーチケットなど相互利用が可能である。
絵恋:「そうです。うちのメイドはそんなにタクシーには詳しくないのですが、屋根に『大宮』と書かれた看板のタクシーだったそうです」
愛原:「大宮!」
恐らく地元のタクシー会社で、『大宮』と名の付く会社だろう。
しかし、何だって社長はハイヤー契約しているタクシー会社ではなく、全く無関係のタクシー会社を予約したのだろう?
さいたま市という所は、基本的にタクシーは流し営業を行っていない(さいたま市のタクシー会社の中には、採用情報に『東京都内と違い、流し営業は行いません』と謳っている所もある)。
駅やホテルなどのタクシー乗り場や、繁華街で客待ちしているタクシーを拾うか、或いは予約して来てもらう方式である。
ましてや今日は日曜日。
それも、社長が乗ったのは早朝だ。
ただでさえ都心でもタクシーが少ない日なのに、ましてや住宅街をタクシーが流し営業しているとは思えない。
ということは、社長はあえてタクシーを予約した可能性が高い。
愛原:「多分、『大宮自動車』か『大宮交通』のどちらかですね」
私は自分のスマホで検索してみた。
善場主任は自分のスマホを取ると、どこかに連絡した。
そして、私が今言ったタクシー会社に行って、聞いてくるように指示を出した。
愛原:「どうして社長は日本交通にしなかったのでしょう?」
ハイヤーも基本的には事前予約制だから、急な利用には対応していないことが多い。
なので社長も急用にはハイヤーを利用できず、止む無くタクシーを呼んだのだろう。
それにしても、普段からハイヤー契約をしている会社の方が予約もサービスもスムーズだろうに、どうしてだろう?
善場:「2つ考えられます。本当に急な予約だったので、いかにハイヤー契約をしている会社であろうが、すぐには配車できなかったことです。もう1つは……なるべく足が付かないようにしたのかもしれません」
愛原:「うわ……何か後者っぽい。タクシーに乗って、どこに行ったのでしょうか?」
善場:「タクシー会社を突き止めて、それからですね。絵恋さん、本当に心当たりは無いの?」
絵恋:「無いです」
と、その時、私のスマホが震えた。
何らかの通知だ。
LINEではない。
チラッと見ると、それはニュースアプリの通知。
何か速報が来たようだ。
愛原:「えっ!?東北上空で飛行機がハイジャック!?」
善場:「日本の航空機でですか?」
愛原:「そのようです」
私はニュースアブリを起動させた。
愛原:「成田空港発、新千歳空港行きの中国夏冬航空がハイジャックされた!……って、何で中国の航空会社が日本の国内線を?」
善場:「恐らく、子会社の日本法人でしょうね。確か、サマー・ジャパンとか言いましたか。海外の航空会社でも、現地法人を設立して国内線航空機を飛ばすことはできるのです」
愛原:「それでも、国内線で中国の飛行機はやだなぁ……」
善場:「まあ、あまり中国の航空会社は国際的な評価は芳しくないですからね」
愛原:「でしょうなぁ……」
善場:「とにかく、普通のハイジャック事件なら、私達の出番はありません」
しばらくして、善場主任のスマホにまた連絡。
善場:「えっ、斉藤社長の足取りが掴めた?大宮駅ですって?分かったわ。今度は大宮駅の監視カメラの解析をお願い」
愛原:「早っ!」
善場:「元々、監視カメラの画像から社長の足取りは追えていたようです。社長は午前6時前、地元のタクシー会社を利用して大宮駅西口まで行っています。運転手の証言では、その後そのまま真っ直ぐ大宮駅構内に入ったとのことです」
愛原:「なるほど。でも、素直に電車に乗ったとは限りませんね?東西自由通路があるから、そのまま東口に抜けたかもしれません」
善場:「確かに。ですので、急いで駅の監視カメラの画像を確認する必要があります」
絵恋:「ねぇ。だったら、もう行っていい?私の話はもう終わったでしょ?」
リサ:「サイトーはお父さんのこと、心配じゃないの?」
絵恋:「心配なんかしてないわ。警察……だか公安だか知らないけど、善場さんって、本当はそういう関係の人なんでしょ?」
善場:「警察とも公安とも違いますが、しかしまあ、似たようなものです。愛原所長と違うのは、私は国家公務員だということです。意味が分かりますね?」
愛原:「私のような民間の探偵は、クライアントから依頼が無いと動けないが、国家公務員はそんなの無くても動けるということさ」
絵恋:「そんな人達から追われるなんて、どんな悪い事したのよ。もう知らない」
愛原:「まあ、確かに社長の行動は怪しいけど……」
すると、また私のスマホにニュースアプリから速報が届いた。
愛原:「うわっ!ロシアに墜落したって!?こりゃマズいな……」
善場:「墜落ということは、乗員乗客の安否は絶望的ということですか。また、仮に生存者がいたとて、あのロシアとは……」
愛原:「ウクライナと戦争中だで?そこへ日本人満載の中国の旅客機が突っ込んで行ったということは……」
善場:「外務省の人達には、徹夜して頂くことになるでしょう。では、話の続きです」
外務省関係が他人事ということは、善場主任が所属する国家機関とは外務省が管轄しているわけではないということが分かった。
やはり、総務省とか内閣府辺りだろうか?