報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「修学旅行3日目の昼」 2

2022-03-07 20:01:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月25日11:00.天候:曇 福島県耶麻郡猪苗代町 猪苗代湖遊覧船乗り場→会津バス3号車→野口英世記念館]

 遊覧船が無事に接岸して、東京中央学園の生徒達はバスに戻って行った。
 出発は11時なので、トイレに行ったり、湖畔で写真を撮ったりする。
 国道49号線は作者が20代だった頃、トラックドライバーの時に、起点から終点まで走り通した国道の1つである。
 冬場に走ると、同じ福島県でも東西で気候が違うことに驚かされたものだ。
 会津地方では大雪、中通りと呼ばれる郡山市近辺では曇で積雪はややある程度、しかし浜通りと呼ばれるいわき市近辺は晴れで積雪など全く無い。
 グーグルマップストリートビューで見ると分かるが、この辺りは今は晴れているものの、冬場は大雪に見舞われることもあり、吹雪で視界が無くなると通行止めになる旨の標識がある。
 同じ国道でも、いわき市近辺では考えられない標識である。

 リサ:「先生!」

 その時、リサが血相を変えてバスから降りて来た。

 愛原:「どうした?」
 リサ:「これ!これが、わたしの席の上に!」

 リサが手にしていたのは、1枚のメモ用紙だった。
 私はそれを手にして読んでみた。

 愛原:「『今は何もしないから、気にしないで』?」

 赤ペンで書いてあるが、字はきれいでもなければ汚くもない。

 愛原:「これは……」

 私はバスの乗務員達に聞いてみた。
 私達が遊覧船に乗っている間、バスの乗務員達は留守番しているはずだからである。
 しかし、乗務員達は不審な人物はもちろん、学校関係者が乗り降りしているのを見ていなかった。
 運転手もバスガイドも、トイレや喫煙などでバスから降りることはあったが、もし誰もいなくなる場合は乗降ドアを閉めておくという。
 ただ、コロナ対策として窓は少し開けておくらしい。
 それでも、普通の人は出入りできない。
 私達が乗っているバスはスーパーハイデッカーと言って、通常の高速バスよりも更に一段客席が高い位置にあるタイプなのだ。
 必然的に、窓の位置も地面から高い位置にあるわけである。
 普通の人は、窓から出入りはできまい。
 因みにこの3号車では、バスに残留した生徒はいない。
 となると、やはりこれは、人外の誰かがやったということになる。

 バスガイド:「皆様、遊覧船は如何だったでしょうか?猪苗代湖は有名な湖ではございますが、実際に湖の上に出るという機会はなかなかございませんので、貴重な体験をなされたと思います。それでは次は、およそ5分で野口英世記念館へと参ります。今や1000円札の顔として有名な野口英世博士は、この福島県が出身となってございます。その福島県の中でも、生家が保存されているのは、ここ猪苗代町の野口英世記念館でございます。……」

 バスは時間になると、出発した。
 私はリサが受け取った怪文書を写真に撮り、それを善場主任へのメールに添付した。
 メールを送っている間、バスは次なる目的地に到着した。
 遊覧船はオプショナルツアーのようなものだが、メインはここである。
 野口英世記念館だけでなく、他にも民俗資料館やドライブインまで様々ある。
 また、国道を挟んで反対側には『世界のガラス館』もあり、ここも見学できる(※現実には3月10日まで平日閉館とのこと。取材時は2月24日までだったので、その後、延長されたようである)。
 その為、ここでの滞在時間は3時間も取られていた。
 もちろん、昼食もここで取ることになる。
 バスを降りて、リサに確認を取って見る。
 バスの中では、違和感は感じないそうだ。
 なので、違和感の主は1号車か2号車にいるらしい。
 だが、1号車や2号車に乗っている生徒に聞いても、知らないコは乗っていないとのこと。
 実際私も、それらのバスに乗っている生徒や関係者を見たが、怪しい者はいなかった。
 こういう時、推理小説では、最も怪しくない者が実は真犯人というのがデフォである。
 但し、最も怪しくない者を真犯人として追い詰めるのは難しい。
 確たる証拠を見つけないと、まず自白しない。
 但し、作品によっては、結構序盤には既に犯人が分かっている。
 しかし、証拠が無い。
 なので、その証拠集めをしていくというタイプもある(その証拠を集めて行くうちに、共犯者や余罪被害者を見つけることもある)。

 愛原:「善場主任からだ」

 私はバスを降りると、電話に出た。

 愛原:「はい、愛原です」
 善場:「善場です。昨夜は、ありがとうございました」
 愛原:「こちらこそ、お疲れ様です。それより、今の状況なんですが……」
 善場:「はい。リサが何者かの存在を感じているものの、その存在を確認できないばかりか、そこから怪文書が送られたというものですね?」
 愛原:「そうです」
 善場:「『今は』という枕詞が気になります。この『今』とは、どの時点の事を指すのかによって、警戒の度合いが変わってきます」
 愛原:「善場主任は、リサの言葉を信じるのですね?」
 善場:「リサの発言がウソだった場合、リサは愛原所長の信用を傷つけることになります。リサは頭が良いですから、そういう馬鹿な事はしないと思いますよ」
 愛原:「それもそうですね」
 善場:「リサが違和感を覚えたのは、どのタイミングですか?」
 愛原:「今朝の朝食の時点だそうです。今朝はホテルのレストランで朝食バイキングだったのですが、そこの会場からだそうです」
 善場:「それが、今でも付いて来ていると……」
 愛原:「はい」
 善場:「分かりました。相手の正体が分からない以上、こちらも出方を伺う必要があります。引き続き、警戒を続けてください。何か少しでも変化があったら、また連絡をお願いします」
 愛原:「分かりました」

 私は電話を切った。

 愛原:「待てよ。1人多いのなら、名簿と照らし合わせればいいはずだ」

 私は1号車に向かった。

 大沢:「愛原さん、どうしました?」

 1号車にいる、観光会社のツアコンである大沢さんを訪ねた。

 愛原:「すいません。生徒さんがバスに戻る時、点呼を取ってますよね?」
 大沢:「ええ。置き去りがあってはマズいですから、必ず名簿と照らし合わせて確認するようにしています」
 愛原:「数が合わないなんてことはないですよね?」
 大沢:「当たり前じゃないですか。1人でも足りなかったら、バスは出発させませんよ」

 と、大沢氏は笑って答えた。

 愛原:「では、1人多かったら?」
 大沢:「は?」
 愛原:「足りなかったらマズいですが、1人多かったらどうしますか?」
 大沢:「な、何を仰るんですか、愛原さん?」
 愛原:「どうやら今、このツアーは1人多い状態のようです」
 大沢:「ええっ!?で、でも、1人多いってどういうことですか?いや、名簿ではちゃんと数は合ってますよ?」
 愛原:「その名簿、初日の物と同じですか?」
 大沢:「同じですよ?東武浅草駅を出発する時点から使用しているものです」
 愛原:「ということは、初日から1人多い状態で出発してしまったのかもしれませんね」
 大沢:「一体、さっきから何を仰ってるんですか?」
 愛原:「いや……そんなことはないか」

 もしそうなら、リサの違和感がもっと先に発生していなくてはならない。
 名簿と照合した人数は合っている。
 そして、生徒達は互いに顔と名前は知っていて、例えボッチの生徒でも、知らない者が乗り込んできたとあらばすぐに分かる。

 愛原:「失礼しました。もしも名簿の人数と、実際の人数が合わないことがあったら、すぐに仰ってください」
 大沢:「はあ……」
 愛原:「ちょっと、車内の写真を撮っていいですか?できれば、生徒さん達が乗っている状態も含めて」
 大沢:「今はいいとは思いますが、乗っている状態の写真は先生に聞きませんと……」
 愛原:「あ、それもそうですね」

 私は空車状態のバスの写真をデジカメで撮った。
 そして、2号車と3号車の写真も撮った。
 それから画像を確認したが、この時点では怪しい者は写っていなかった。
 まあ、当たり前である。
 今、このバスにリサは違和感を感じていないのだから。
 問題は、生徒達全員が戻って来た時だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「代替修学旅行3日目の昼」

2022-03-07 15:15:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月25日09:30.天候:晴 福島県会津若松市 会津若松ワシントンホテル→会津バス3号車]

 バスガイド:「それでは皆様、出発致します」

 東京中央学園の団体は、ホテルを出発した。

 絵恋:「リサさん、バスの中に違和感はある?」
 リサ:「いや……無い」

 リサは首を振った。
 2人はジャージから制服に着替えていた。
 だが、リサのことだ。
 スカートの下にはブルマーでも穿いているのだろう。

 絵恋:「そう。何だったんだろうね?」
 リサ:「さあ……」

 バスガイド:「バスはこれより、国道49号線に入り、猪苗代湖へと向かいます。……」

 愛原:「高橋、オマエさぁ、あんまり調子に乗ってると、パールにバレた時に大変なことになるぞ?」
 高橋:「『流血の惨を見る事、必至であります』かね?」
 愛原:「と、思うよ」
 高橋:「せ、先生。どうかその点は内密に……」
 愛原:「俺はいいけどさ、こういうのはどこかでバレるぞ?」
 高橋:「マジっすか……」

 バスガイド:「……猪苗代湖では、遊覧船が不定期で運行されておりますが、本日は東京中央学園の皆さんの為に特別に運行してくれることになってございます。冬場で少々寒いとは思いますが、思い出作りの1つに是非ご活用下さいませ。……」

 愛原:「だってLINEでオマエのケツ写真流出した時点で、アウトみたいなもんじゃん」
 高橋:「いや、しかし、先生……」
 愛原:「俺がリサ達のブルマ写真、何でスマホじゃなくて、デジカメで撮ったと思う?デジカメはネットに繋がってないから、流出の恐れが無いんだよ。それをオマエは自分のケツ写真、スマホで撮った時点でイエローカードだし、しかも更にそれをLINEで流した時点でレッドカードなんだよ。恥を知れ!」
 高橋:「サーセン……いや、すいません……」

 バスガイド:(何だか賑やかな人達ね……)

[同日10:00.天候:晴 福島県耶麻郡猪苗代町 遊覧船乗り場→遊覧船はくちょう丸船内]

 バスは猪苗代湖畔を走行した。
 あいにくと進行方向右手に見える為、左側に座っている私達は少々見えにくい。

 バスガイド:「お待たせ致しました。まもなく、遊覧船乗り場に到着致します」

 乗り場には公衆トイレ付きの駐車場があり、そこにバスは乗り入れる。
 平日で、本来は遊覧船の運航日では無い為か、駐車場に車は殆ど駐車されていなかった。

 絵恋:「まんま白鳥ね……」
 愛原:「まあ、遊覧船の外観は概して派手なものだよ」

 バスを降りると、寒風が私達を襲った。
 因みに遊覧船への乗船は強制ではなく、例えば船酔いしやすいなどの理由で、バスに残る生徒も少数ながら存在する。
 そんな少数派も一度はバスを降りて、公衆トイレに行ったり、湖畔を眺めたりする。
 尚、乗り場の正式名称は『地方港湾翁島港』という。

 リサ:「!?」
 絵恋:「どうしたの、リサさん?」
 リサ:「また、違和感がする」
 絵恋:「ええっ!?」
 リサ:「向こうから……」

 リサが指さした所には、先に到着した1号車と2号車のバスがいる。
 1組と2組が乗っていたわけだが、当然一部を覗いて既に下車していた。

 リサ:「どこにいる……?分からない……」
 絵恋:「あ、怪しい人はいなさそうだけど……」
 リサ:「うん、いないと思う。でも、これだけは言える」
 絵恋:「なに?」
 リサ:「ついて来てる。ホテルの中だけじゃなく、わたし達に」
 絵恋:「ええ……?」

 桟橋に向かい、停泊している遊覧船に乗り込む。
 いくら湖とはいえ、風で波立っていることもあり、それで船が少し揺れている。
 なので、足元がふらつきやすいので、乗り降りには注意だ。
 乗り込んで左手のスペースは船橋になっていて、乗客は入ることはできない。
 客室は2層構造になっていて、1階席、2階席両方とも乗ることができた。
 船室には進行方向に向かって、2人席が並んでいる。
 シート生地はモケットではないが、明らかに形状は路線バスの2人席である。
 一応、座席の背中にはテーブルが付いていた。
 観光バスや高速バスに、よく設置されているタイプである。

 高橋:「おう、リサ。船底の倉庫で『メーデー、メーデー』叫ぶんじゃねぇぞ?」
 リサ:「うん、わたしはしない。でも、もしかしたら別のヤツがするかも……」
 高橋:「あぁ?」
 愛原:「遊覧船でメーデーさんが潜めるような倉庫、あるかい」

 意味が知りたい方は、“バイオハザードリベレーションズ メーデーさん”で検索してみよう。
 但し、かなりホラーなので、ご注意のほどを……。
 そして、遊覧船は出港した。
 桟橋にもいたが、遊覧船の後を追うように水鳥が飛来してくる。

 リサ:「おー!美味しそう!」
 鳥:「クェッ?!」

 慌てて逃げ出す鳥達だった。

 愛原:「狩るなよ!食うなよ!」

 寒いので、殆どの生徒は船室にいたが、中には甲板に出ているツワモノも。

 リサ:「どこだ?どこにいる?」

 リサは違和感が船の中からも感じたらしく、船内をあちこち歩き回った。
 といっても、湖上の遊覧船である。
 定員が200名にも満たない規模の船では、探索時間など風の一吹きである。
 外側から船橋の中も覗いてみたが、操舵室に船員がいるだけである。

 リサ:「おかしい」
 絵恋:「ねぇ、どうしたの?」

 船内には船員と、東京中央学園の関係者しかいない。
 それの貸切運行なのだから当たり前だ。

 リサ:「誰かが学園関係者に化けて潜入している?」
 絵恋:「ええっ!?」
 リサ:「でも、他のクラスのコの顔と名前なんていちいち知らない……」
 絵恋:「ねぇ。先生は……見たことある人達ばかりだけど……」

 リサは意を決して、他のクラスの生徒に聞いてみることにした。
 どこのクラスにも、ボッチはいるものである。
 リサはボッチの生徒を捕まえて聞いた。

 リサ:「ちょっと失礼。わたし、3組にいた愛原リサっていうんだけど……」
 女子生徒A:「はあ……」
 リサ:「あなた、何組?」
 女子生徒A:「2組ですけど……」
 リサ:「2組に、転校生とかいる?」
 女子生徒A:「いませんよ?」
 リサ:「見覚えの無いコがいつの間にかいたりとかは?」
 女子生徒A:「いいえ……?」

 もちろん、この生徒が違和感の元ではない。
 リサは他にも、1組だった生徒にも聞いてみたが、答えは似たようなものだった。

 リサ:「一体……どういうことだ?」

 ボッチでない生徒の中にいる?
 しかし、だとしたら……どういうことだ?

 リサ:「……エブリンか。あいつなら、特異菌を使って、そういう記憶操作とかできそうだ」

 リサが正体を特定できないBOWとは、一体如何なる存在なのだろう?
 私は船が入港したら、善場主任に報告してみることにした。
 リサの違和感の元がこの船を襲う危険性はあったものの、結局何事も起こらず、船は再び翁島港に入港したのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「代替修学旅行最終日の朝」

2022-03-07 11:15:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月25日07:00.天候:晴 福島県会津若松市 会津若松ワシントンホテル(リサと絵恋の部屋)]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。

 リサ:「うぅん……」

 リサは手を伸ばしてスマホのアラームを止めた。

 リサ:「サイトー、朝。……あれ?いない」

 しかし、バスルームからシャワーの音がした。

 リサ:「何だ……」

 リサも起き上がって、バスルームのドアを開けた。

 絵恋:「きゃっ!リサさん!?」
 リサ:「サイトー、どうした?朝からシャワーなんて」
 絵恋:「寝汗かいちゃったから、シャワー浴びたの」
 リサ:「寝汗?そんなに暑かった?」

 寝る時はそのまま体操着とブルマーで寝た。
 なので暖房は強めにしていたのだが……。

 絵恋:「温度じゃなくて、変な夢見ちゃってね……」
 リサ:「変な夢?」
 絵恋:「リサさんがもう1人いる夢」
 リサ:「ほお?」

 リサは目を見開いた。
 その時、瞳の色が金色に光る。

 リサ:「それじゃサイトーは、もう1人のわたしと宜しくヤればいい。わたしは愛原先生と宜しくヤらせてもらう」
 絵恋:「夢の中のリサさんも、そう言ったのよ!」
 リサ:「おー!?奇遇!」
 絵恋:「だけどもう1人のリサさん、私の耳元でこう言ったの。『さて、本物はどっちでしょう?』」
 リサ:「おー!軽くホラー!で、どっちが本物だって?」
 絵恋:「そこで目が覚めたの!」
 リサ:「おおっ?続きが気になるなー」
 絵恋:「そういうことってあるの?」
 リサ:「うん。少なくとも、わたしの知ってるアンブレラならやりかねない。わたしだって、ぶっちゃけ“花子さん”の亜種みたいなものだから」

 旧校舎に括られていた女子生徒の幽霊。
 白井伝三郎の同級生でもある。

 絵恋:「それもそうか……」
 リサ:「やっぱり気になるな。サイトー、眠らせてあげるから、もう一回見てきて」

 リサは拳を振り上げた。

 絵恋:「ええーっ!?」

 その時、スマホのアラームがまた鳴る。
 どうやら、完全にオフにしたのではなく、スヌーズにしてしまったようだ。

 リサ:「うるさいから止めて来る」

 リサは自分のベッドに戻った。
 絵恋は心底ホッとした。

[同日08:00.天候:晴 同ホテル最上階レストラン“ガスライト”]

 顔を洗ったりした後、2人は朝食会場へと向かった。
 さすがに今は、ジャージに着替えている。

 愛原:「おう、リサ。起きたか」
 リサ:「! 先生、おはよう」
 絵恋:「おはようございます」

 リサは朝食会場に入ると、何だか違和感を感じた。
 愛原が、ではない。

 絵恋:「昨夜の画像ですけど、あくまでリサさん用ですからね?それ以外には使わないでくださいよ!?」
 愛原:「分かってるって。(消すもんかー)」
 絵恋:「リサさん、早く御飯食べよ!……リサさん、どうしたの?」
 リサ:「あ、いや……。何でもない」

 朝食はバイキング形式である。
 リサはいつものように、好きな料理(といっても殆ど全部だが)を皿に山盛りにした。

 リサ:「……?」
 写真部員:「失礼。食べているところ、1枚!」

 写真部員が写真を撮りにくる。
 但し、リサが感じた違和感は、このカメラマンでもない。

 新聞部員:「失礼!食べているところ、1枚!」

 かといって、この新聞部員でもない。
 何だか業務が被っているようにも見えるが、新聞部員は、あくまでも修学旅行特集号を発行する為の取材であるし、写真部員は修学旅行での模様やそこで見つけた風景写真を撮る部活動の一環でもある。
 また、やはり部員として好きな事をしているということもあり、写真撮影技術は上手いもので、彼らが撮った写真を安く買うことができる。
 これ以外にも、プロのカメラマンが同行しているが、リサが感じた違和感はそのカメラマンでもなかった。

 リサ:「皆、熱心だなー」
 絵恋:「便乗してるだけよ」
 淀橋:「リサさん、おはよう」
 小島:「おはよう」
 リサ:「おー!」
 小島:「ちゃんと、愛原先生が来た時、言われた通りにしたよ」
 リサ:「ウム!また、大腸の血を寄生虫に吸い取らせるから」
 小島:「ありがとう!」

 潰瘍性大腸炎を患っている小島奈々は、下血や下痢の症状に悩まされていた。
 しかし、リサに『捕食』され、ウィルスや寄生虫を植え付けられた結果、劇的に症状は改善した(同患者である作者は経験したことがないが、治療法の1つに、豚の寄生虫を植え付けるというものがある)。
 生物兵器として忌み嫌われるゾンビウィルスと、それの感染寄生虫であるが、たまには役に立つこともあるということ。
 もっとも、リサのような、しっかりとした使役者がいるからできることである。
 そうでなければ、今頃この感染者達はゾンビになっているだろう。
 因みに小島奈々の腸内で出血した血液を吸った寄生虫は肥大化した上、動きが鈍くなる為、腸の蠕動に抗うことができず、そのまま大便と一緒に排出される。
 で、新たに寄生虫をリサからもらうというものだ。

 学年主任:「コロナ対策の為、1つのテーブルには4人までです!いいか!?」

 料理を盛ったリサは、テーブルに着いた。
 周りを見渡したが、違和感の原因が全く分からない。
 どういう違和感かというと……。

 リサ:「すぐ近くにBOWがいる」
 絵恋:「えっ?」
 リサ:「でも、臭いはしない。普通は臭うのに」
 絵恋:「わ、私はリサさんの匂い好きよ」
 リサ:「そういうことじゃなくて……。昨日の鬼斬り爺さんだったら分かるかな……」
 淀橋:「別に、怪しいヤツはいないみたいだけど……」
 リサ:「そう、見当たらない。だけど、気配は感じる」
 絵恋:「まさか、ダクトの中とか?」
 リサ:「!」

 リサは天井を見上げた。

 リサ:「いや……。私も変化した時は、ダクトを移動することがある。もしも他のヤツがダクトを移動したりしたら、わたしはすぐに分かる」
 小島:「そっかぁ……」
 愛原:「やあやあ、皆さん。食事風景を1枚」
 リサ:「さっき、新聞部と写真部にも撮られたよ?」
 愛原:「俺は俺で、報告書に載せる写真だよ。斉藤社長がすっごく気にしててね」
 絵恋:「お父さんが?」
 愛原:「絵恋さんのわがままで、皆に迷惑掛けてないかって」
 絵恋:「ちょ、ちょっと……!」
 愛原:「はは、冗談冗談」
 絵恋:「もう……!やめてくださいよ」
 リサ:「先生、お茶目」

 リサはついに、レストランで感じていた違和感の原因について、特定することはできなかった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする