報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「鬼娘ミキ」

2025-03-10 20:36:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日16時15分 天候:曇 東京都八王子市高尾町 京王高尾山温泉・極楽湯]

 https://www.youtube.com/watch?v=9yAl2ZEbGkY&t=636s(BGM)

 内湯から露天風呂に移動したリサと美鬼。
 露天風呂にも利用客はいたが、内湯より声が響くことはない。

 美鬼「あー、いい湯だべしゃねェ~」
 リサ「……おい!」
 美鬼「冗談だべしゃ。まあ、いい湯なのは間違いねェべ」
 リサ「それとこれとは話が別。で、オマエは人を食ってるのか?」

 すると美鬼はリサの耳元で囁いた。

 美鬼「生きている人間を殺して食っていたのは、100年以上の前の事だ。今は、死んだ人間の肉を食う」
 リサ「!」
 美鬼「ひいじっちゃん、ひいばっちゃんの世代だべ。実際に殺して食っていたのは」
 リサ「ゲロった。先生に言う」
 美鬼「ちょっと待つっしゃ」
 リサ「じゃあ、どうやって死んだ人間を肉を調達するんだ!?」
 美鬼「シーッ!声がデケェべ!」

 美鬼はリサの口を塞いだ。

 美鬼「うちの村は山奥だべしゃ。よそから来た人間がクマに襲われたり、猪に襲われたり、遭難したり、崖から落ちたりして死んだりは毎年あるんだべ。どうやっても助からない人間のみ、村の者が食う。……聞いたこと無ェが?死体すら見つからず、そのまま山で行方不明になってる人間のニュースって……」
 リサ「あるね」
 美鬼「うちの村では……まあ、そういうことなんだべしゃ。これは誓って言えるけンど、あたしを含めて、襲って食うような事はしてねェよ」
 リサ「骨は残るはずだ。骨は?まさか、わたしみたいに骨までバリボリ食ってるわけじゃないだろう?」
 美鬼「リサは骨まで食うのけ!?」
 リサ「いや、骨まで食いたくなる時はあるよ」
 美鬼「骨は村で供養してるっつー話だ」
 リサ「話だって、ミキは見たことないの?」
 美鬼「ンだ。昔、あたしが、『残った骨はどうしてンだ?』って、じっちゃんに聞いたことばある。したらじっちゃん、『骨はワシら年寄りが、責任を持って供養している。若いオメー達は気にしなくて大丈夫だべしゃ』って言われた。『どこさ骨は埋めてんだ?』って聞いたら、『オメーも歳を取ったら分かるようになる。今は余計なこと考えンな』って言われたな」
 リサ「何だか怪しいな」
 美鬼「うん。それはあたしもそう思う。多分、骨ば埋めている場所が、バレたらマズいとでも思ってんだべ」
 リサ「疚しいことをしているという自覚はあるわけか」
 美鬼「ま、ンなところだべな」
 リサ「……因みにわたしにも、お裾分けとかしてくれるの?」
 美鬼「お、リサも興味あるのけ?」
 リサ「わたしも鬼だから」
 美鬼「村さ来る時、教えてけれ。あたしから、じっちゃんさ頼んでみる」
 リサ「分かった」

 互いに瞳を赤く光らせ、牙を覗かせる。

 美鬼「遊びさ来てける時季によっちゃ、新鮮な人間の肉が手に入るかもしんねぇべしゃ」
 リサ「いやいや。肉は腐る直前が1番美味しいんだよ?」
 美鬼「さすがは転化組だべ」

 それから大浴場から上がり、体や髪を拭いた。
 どちらもショートカット、ショートボブの髪型なので、髪を巻いたりはしていない。
 リサの方が肩まで伸びているので、ヘアゴムで後ろを縛ったりしていたが。

 リサ「先生の方が先に上がってるだろうから、少し急ごう」
 美鬼「そう?まだ電車の時間でねェがら、大丈夫なんでね?」
 リサ「いや、そういうわけにはいかない!」
 美鬼「?」

 2人は服を着て、女湯から出た。
 マッサージチェアの置いてある休憩コーナーに行く。

 愛原「う……そこそこ……」

 愛原はマッサージチェアに座って、肩や腰を揉んでもらっていた。

 リサ「ん!?先生がナンパしていない!?」
 美鬼「はあ?あんな真面目そうな先生が、ンなことするわけねェべ?」
 リサ「してたの!今までも何度も!」
 美鬼「そ、そんなんけ?まあ、人は見かけによらねぇっつーしな」
 リサ「先生!」

 リサはマッサージチェアの上から愛原を覗き込んだ。

 愛原「ん?おお、リサか。やっと上がったのか」
 リサ「うん!良かった。今日は他の女に声掛けてない!」
 愛原「やだなぁ。天丼は2回までだよ。ハハ……」

 美鬼は周りを見渡した。
 賑わってはいるのだが、この周りには若いのは男しかおらず、女性は明らかに愛原よりも年上の人達ばかりであった。

 美鬼「単に、若い女が周りにいねェだけなんでねェの?」
 愛原「キミ達がいてくれて良かったよ……」
 リサ「でしょ?でしょ?わたしに感謝して!」

 リサは愛原の前に顔を突き出した。
 そして、軽くキス。

 リサ「きゃっ
 美鬼「何だべ、これ……」
 愛原「ちょっと待ってな。もう少しでマッサージチェア終わるから。何だったら、下に自販機コーナーがあるから、ジュースでも飲んで待ってて」
 美鬼「あー、ンじゃ、そうします。風呂上がりっつったら、牛乳だべね」
 リサ「それもそうだ」

 リサと美鬼は階段を下りて1階に向かった。

 

 美鬼は牛乳入りの瓶を買ったが、リサはスポーツドリンク。

 美鬼「リサは牛乳にしないのけ?」
 リサ「わたしは牛乳飲んでも、背が伸びないんだよねぇ……」
 美鬼「ふーん……。ま、人の肉ば食ったら、デカくなれるべ」
 リサ「ほおほお……」

 愛原に知られたらマズい会話を、2人の鬼娘はしていた。

 美鬼「クマやイノシシの肉でも大丈夫だべ」
 リサ「そうか。クマや猪も出るって言ってたもんね。鹿もいるんじゃないの?」
 美鬼「いる」
 リサ「さすがに愛原先生には、人肉は食わせられないよ?」
 美鬼「分がってる。……あと一応、愛原先生の事もちゃんと村の皆にも言っておかねェと」
 リサ「何で?」
 美鬼「いや……。兄ちゃん達が、余所者さ行方不明にしてしまったら、リサに申し訳無ェ」
 リサ「ねぇ!本当に襲ってないんだよね!?ガチで先生に言うよ!?」
 美鬼「た、大丈夫だ」
 リサ「鬼はすぐウソをつくって言うからなぁ……」

 リサは美鬼達の村に行く時は、絶対に愛原を守ろうと思った。

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