報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「久しぶりの帰宅」

2024-11-08 20:41:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日14時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 タクシーが家の前に到着する。
 パールがガレージを開けていてくれたようだ。
 タクシーには一旦、ガレージに入ってもらうことにした。

 愛原「お世話様でした」

 私が料金を払っている間、リサが先に降りてタクシーの後ろに回り、ハッチを開けて荷物を降ろしたりしている。

 運転手「ありがとうございました」
 愛原「どうもお世話様」

 私が料金と領収証を受け取るのと、エレベーターからパールが降りて来るのは同時だった。

 パール「先生、お帰りなさいませ」
 愛原「ああ、ただいま」
 パール「本日はもう車の出入りは無いのですよね?」
 愛原「そうだよ」
 パール「では、シャッターはお閉めします」
 愛原「ああ、頼む」

 タクシーが出て行くと、パールはシャッターを閉めた。

 リサ「先生、荷物持ってくよー」
 愛原「ああ。まずは3階に持って行こう」

 私達はエレベーターに乗り込んだ。
 そして、3階に向かう。
 エレベーターを降りると、リビングに向かった。

 愛原「ん?」

 

 リビングのソファの上には、リサの下着が重ねて置かれていた。
 どうやら、洗濯はされているらしい。

 リサ「あれ?何でわたしの下着がここに?」

 その下着には見覚えがあった。

 パール「小笠原から御帰還された先生の荷物の中に入っておられたのです」
 愛原「そうだそうだ、リサ。勝手に俺の荷物の中に入れるんじゃねーよ」
 リサ「先生が寂しがるといけないと思ってぇ……」
 愛原「ま、おかげで船旅は退屈しなかったがな……」
 リサ「え!?」

 リサは目を丸くした。

 リサ「今、何て言ったの!?ねぇ!今、何て言ったっちゃ!?」

 リサは興奮して、第一形態の鬼姿に戻ってしまった。

 愛原「な、何でもない。ほら、パールにも土産がある」
 リサ「ねぇ!退屈しなかったってことは、わたしの下着、使ってくれたってこと!?」
 愛原「静かにしろ。パール、足柄で買って来た酒だ。飲み過ぎは良くないが、高橋の事は、これでも飲んで気を紛らわせるんだ」
 パール「お気遣い、ありがとうございます。マサにも差し入れできたら良かったのですが……」
 愛原「さすがに酒は禁止だからな。それは無理だろう」
 パール「ですよね」
 リサ「着替えてくるね」
 愛原「ああ」
 パール「洗濯物があったら、籠の中に入れといてください」
 リサ「分かったー」

 リサはエレベーターに乗って、自分の部屋のある4階に向かった。

 愛原「リサの制服とかは洗っといた方がいいのかな?」
 パール「ブラウスとかは洗濯機で洗えますけど、スカートはクリーニングに出す形になりますね」
 愛原「やっぱりそうか。俺が留守の間、何か変わったことは無かったか?」
 パール「特に無かったですが、家の前をよくパトカーが通りましたね。特にサイレンとかは鳴らしてなくて、ただ単にゆっくり通過しただけですけど」
 愛原「“コネクション”に対する警備強化かな……」

 しかし、それはいつまで続くのだろう?
 そもそも、私の頭に埋め込まれていたという記憶媒体のチップの解析結果は出たのだろうか?
 ……まあ、出たところで、私には教えてくれないか。
 何しろ、国家機密モノらしいからな。

 愛原「おっと!善場係長に到着の報告をしなくては……」
 パール「コーヒー、お淹れしますね」
 愛原「ああ、すまない」

 私は自分のスマホを取り出すと、善場係長に家に到着した旨の報告メールを送信した。
 何故だか今回は、すぐに返信が来なかった。
 まあ、こちらはちゃんと報告したのだから問題無い。
 メールで思い出した。

 愛原「パール。ちょっと俺は、下の事務所にいる」
 パール「何かございましたか?」
 愛原「昨日、留守の間に、顧客からメールとか来てるかもしれないだろ?ちょっとチェックしてくる」
 パール「では、コーヒーは下のコーヒーメーカーでお淹れします」
 愛原「悪いな」

 私とパールはエレベーターを呼び戻し、2階へと下りた。
 これならリサも、私達が2階にいることが分かるだろう。

 愛原「ああ、やっぱりだ。色々来ている」

 中には不必要なダイレクトメールとかもあったが、多くが小口契約の顧客からだった。
 何だか知らないが、不動産関係者から、事故物件の調査依頼がよく来るようになったのだ。
 多くがその原因として、建物の構造に欠陥があるだとか、隣人・ご近所トラブルが元だとか、現実的なものばかりであり、怪奇現象が原因という物はほぼ無いのだが。
 高橋やパールの知り合いにバイトを紹介してもらっていたのだが、高橋が逮捕されてしまった以上、もうそのツテは使えないだろう。
 しばらくは私が個人で引き受けるしか無いのだが、そうなると人手が足りないので、細々と受ける形になるだろう。

 愛原「返信だけで1時間くらい、時間を潰せそうだ」
 パール「では、やはりコーヒーはここでお淹れした方が良さそうですね」
 愛原「ああ、そうだな」

 何十通か来ている。
 こんな零細探偵事務所に、これだけメールが来るなんて凄いと思う。
 もちろん、無関係なダイレクトメールは除外するがな。
 そんな時、気になるメールがあった。
 それは、公一伯父さんからのメールだった。

 『よお、学。リサの鬼のとしての力を強化したいのならば、ここの酒蔵へ行け。“鬼剛し”という酒があるぞ。もちろん、人間が飲んでも美味い酒じゃがな。他には“鬼封じ”という酒が……』

 最初は興味を持ったが、よくよく読んでみると、リサをダシにして自分が酒を飲みたいだけではないかと思ってしまうような内容だった。
 何にせよ、今すぐ必要な物ではないな。

 パール「コーヒーです」
 愛原「ありがとう」

 私は公一伯父さんのメールは無視し、他の顧客からのメールに対する返信を行った。

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