[6月1日06時00分 天候:晴 小笠原諸島近海 病院船“ブルーアンブレラ”号船内・処置室]
今までさんざんっぱら眠っていたいたから、眠気など無いものだと思っていた。
だが、ボーッとした頭では、まだ眠れるらしい。
とはいうものの、現実世界には戻って来れたようで、今度は夢を見ることはなかった。
看護師「愛原さん、おはようございます」
“青いアンブレラ”だからか、青い服を着た看護師がにこやかにやってきた。
どうやら起床時間は6時らしい。
入院病棟では、だいたいこのくらいの時間が起床時間か。
看護師「具合はどうですか?」
愛原「そうですねぇ……。寝過ぎたせいか、そういう感じの頭痛が少しするだけですね。それ以外は、特に問題無さそうです」
看護師「かしこまりました。検温しますね」
愛原「ここに入院しているのは、私だけですか?」
看護師「そうですよ。本来は、入院設備の無い船なんです」
愛原「あ、そうなんですか!」
“青いアンブレラ”の設立理由や存在意義は、かつて悪の製薬会社だった頃に行ったことへの贖罪と、未だに存在する生物兵器の根絶やバイオテロ組織の殲滅であるという。
その贖罪活動の一環として、無医村医療活動を行っている。
無医村の離島などに医療を提供する為に建造されたのが、このブルーアンブレラ号であるという。
似たような活動として、社会福祉法人恩賜財団済生会による済生丸がある。
“青いアンブレラ”は、かつて悪の製薬会社だった時の傘下組織だった船会社(パラグラスライン社。現存しない)のツテを使って、中古の客船を手に入れ、それを病院船に改装したものだという。
活動内容は、先述の済生丸の活動を参考にしているとのこと。
済生丸は主に西日本で活動していることから、ブルーアンブレラ号は東日本で活動しているとのこと。
済生丸があくまでも『浮かぶ診療所』であるのと同様、ブルーアンブレラ号も、用途はそれである為、本来は入院設備は存在しない。
愛原「だから雰囲気が診察室みたいな感じなんですね」
看護師「そうです。本来ここは処置室です」
処置室に入院ベッドを持ち込み、即席の病室としているわけか。
看護師「愛原さん、血圧が少し高めですね……」
愛原「や、やっぱそうですか。最近、健康診断に引っ掛かるようになっちゃって……」
看護師「毎日、御自宅で血圧を測るといいですよ」
愛原「あ、はい。気をつけます」
本来、入院設備は無いようだが、何日も掛けて離島を回ったり、その離島に滞在することがあるせいか、スタッフ用の宿泊設備はあるらしい。
ここにいる医療スタッフ達も、元は“赤いアンブレラ”の関係者だったのだろうな。
検温や血圧測定などが終わると、朝食まではまだ時間があるせいか、洗面所で顔を洗ったり、髭を剃ったりした。
既に点滴は終わっていて、それは外されている。
ずっと眠っていたので、輸液などをされていたらしい。
で、1つ困ったのが、ずっと眠っていたせいか、体が鈍ってしまっていることだった。
長期入院患者がリハビリをするのも、何となく分かった気がする。
私の場合、2週間から3週間程度の入院ではあったが、それでも体が鈍る感覚がするのだから。
本来、1週間の入院のはずが、その2~3倍とは……。
あと、風呂にも入りたい。
眠っている間、体を拭いたりはしてくれたようなのだが……。
顔や手は洗面所で洗えたが、それ以外は……。
[同日07時30分 天候:晴 同船内・食堂]
朝食は7時半からだという。
本当の入院患者であれば、当然食事は病室まで運ばれる。
しかし私の場合、ほぼほぼ歩けるのと、入院患者食事用のテーブルが無いことから、スタッフ用の食堂で朝食を取ることになった。
もちろん、彼らと一緒ではなく、彼らが食事をした後であるから、基本的に1人だ。
但し、テレビが設置されていて、好きなチャンネルを観ることができた。
食事はさすがに、常食の病院食っぽい物が出た。
ロールパンが2つにケチャップを掛けたオムレツ、缶詰に入っていたと思われるパイナップル2切れとパック入りの牛乳だった。
……うん、パン食の常食用病院食の朝食だな。
ところで、1度の公開で何泊もするからか、船舶調理士も乗船しているのは分かるが、この船員居住区には浴室もあることが分かった。
私は何とかそこを借りられないか交渉したところ、シャワーだけなら使用しても良いとの許可が出た。
確かにバスタブもあったのだが、お湯が抜かれている為、確かにシャワーだけしか使えない状態のようだ。
[同日8時30分 天候:晴 同船内・診察室]
担当医「……うん、大丈夫ですね、愛原さん。特に先ほど入浴してみて、何か違和感とかはありましたか?」
愛原「そうですねぇ……。まあ、手術した痕というのが触ってみて分かる程度で、そこがしみるということも無かったですし、これといったものは無いですね」
担当医「分かりました。縫った後はまだ傷口が開きやすい傾向がありますので、あまりそこはゴシゴシ洗わないようにしてください」
愛原「了解しました。……それで、下船のタイミングですが……」
担当医「はい。さすがにこのまま、二見港に接岸するわけにはいきませんので、ボートに乗り換えて頂きます」
愛原「えっ?」
担当医「準備ができたらお知らせしますので、それまではこの船内でゆっくりなさっていてください」
愛原「ボートを1人で漕げと?」
担当医「いえいえ。ちゃんとこの船のスタッフが海岸までお送り致します。そこであなたの身内の方……」
愛原「愛原公一ですか?」
担当医「はい。愛原公一先生と合流して頂きます。その後の行動につきましては、愛原先生の指示に従ってください」
もう大学教授を辞めて何年も経つというのに、まだ先生呼ばわりされているのか。
今ではブッ飛んだ爺さんなのに……。
愛原「準備はどれくらいでできそうですか?」
担当医「恐らく、お昼くらいになるかと……」
愛原「本当ですか」
秘密保持の為、公一伯父さんとの個人的な連絡もできないそうだ。
そもそもが、ここ、ケータイの電波が届かない。
この船には無線の他、衛星電話も備えられているようだが、それの使用は許可されなかった。
取りあえず、いつでも下船できるよう、準備だけはしておいて欲しいと言われたのだった。
今までさんざんっぱら眠っていたいたから、眠気など無いものだと思っていた。
だが、ボーッとした頭では、まだ眠れるらしい。
とはいうものの、現実世界には戻って来れたようで、今度は夢を見ることはなかった。
看護師「愛原さん、おはようございます」
“青いアンブレラ”だからか、青い服を着た看護師がにこやかにやってきた。
どうやら起床時間は6時らしい。
入院病棟では、だいたいこのくらいの時間が起床時間か。
看護師「具合はどうですか?」
愛原「そうですねぇ……。寝過ぎたせいか、そういう感じの頭痛が少しするだけですね。それ以外は、特に問題無さそうです」
看護師「かしこまりました。検温しますね」
愛原「ここに入院しているのは、私だけですか?」
看護師「そうですよ。本来は、入院設備の無い船なんです」
愛原「あ、そうなんですか!」
“青いアンブレラ”の設立理由や存在意義は、かつて悪の製薬会社だった頃に行ったことへの贖罪と、未だに存在する生物兵器の根絶やバイオテロ組織の殲滅であるという。
その贖罪活動の一環として、無医村医療活動を行っている。
無医村の離島などに医療を提供する為に建造されたのが、このブルーアンブレラ号であるという。
似たような活動として、社会福祉法人恩賜財団済生会による済生丸がある。
“青いアンブレラ”は、かつて悪の製薬会社だった時の傘下組織だった船会社(パラグラスライン社。現存しない)のツテを使って、中古の客船を手に入れ、それを病院船に改装したものだという。
活動内容は、先述の済生丸の活動を参考にしているとのこと。
済生丸は主に西日本で活動していることから、ブルーアンブレラ号は東日本で活動しているとのこと。
済生丸があくまでも『浮かぶ診療所』であるのと同様、ブルーアンブレラ号も、用途はそれである為、本来は入院設備は存在しない。
愛原「だから雰囲気が診察室みたいな感じなんですね」
看護師「そうです。本来ここは処置室です」
処置室に入院ベッドを持ち込み、即席の病室としているわけか。
看護師「愛原さん、血圧が少し高めですね……」
愛原「や、やっぱそうですか。最近、健康診断に引っ掛かるようになっちゃって……」
看護師「毎日、御自宅で血圧を測るといいですよ」
愛原「あ、はい。気をつけます」
本来、入院設備は無いようだが、何日も掛けて離島を回ったり、その離島に滞在することがあるせいか、スタッフ用の宿泊設備はあるらしい。
ここにいる医療スタッフ達も、元は“赤いアンブレラ”の関係者だったのだろうな。
検温や血圧測定などが終わると、朝食まではまだ時間があるせいか、洗面所で顔を洗ったり、髭を剃ったりした。
既に点滴は終わっていて、それは外されている。
ずっと眠っていたので、輸液などをされていたらしい。
で、1つ困ったのが、ずっと眠っていたせいか、体が鈍ってしまっていることだった。
長期入院患者がリハビリをするのも、何となく分かった気がする。
私の場合、2週間から3週間程度の入院ではあったが、それでも体が鈍る感覚がするのだから。
本来、1週間の入院のはずが、その2~3倍とは……。
あと、風呂にも入りたい。
眠っている間、体を拭いたりはしてくれたようなのだが……。
顔や手は洗面所で洗えたが、それ以外は……。
[同日07時30分 天候:晴 同船内・食堂]
朝食は7時半からだという。
本当の入院患者であれば、当然食事は病室まで運ばれる。
しかし私の場合、ほぼほぼ歩けるのと、入院患者食事用のテーブルが無いことから、スタッフ用の食堂で朝食を取ることになった。
もちろん、彼らと一緒ではなく、彼らが食事をした後であるから、基本的に1人だ。
但し、テレビが設置されていて、好きなチャンネルを観ることができた。
食事はさすがに、常食の病院食っぽい物が出た。
ロールパンが2つにケチャップを掛けたオムレツ、缶詰に入っていたと思われるパイナップル2切れとパック入りの牛乳だった。
……うん、パン食の常食用病院食の朝食だな。
ところで、1度の公開で何泊もするからか、船舶調理士も乗船しているのは分かるが、この船員居住区には浴室もあることが分かった。
私は何とかそこを借りられないか交渉したところ、シャワーだけなら使用しても良いとの許可が出た。
確かにバスタブもあったのだが、お湯が抜かれている為、確かにシャワーだけしか使えない状態のようだ。
[同日8時30分 天候:晴 同船内・診察室]
担当医「……うん、大丈夫ですね、愛原さん。特に先ほど入浴してみて、何か違和感とかはありましたか?」
愛原「そうですねぇ……。まあ、手術した痕というのが触ってみて分かる程度で、そこがしみるということも無かったですし、これといったものは無いですね」
担当医「分かりました。縫った後はまだ傷口が開きやすい傾向がありますので、あまりそこはゴシゴシ洗わないようにしてください」
愛原「了解しました。……それで、下船のタイミングですが……」
担当医「はい。さすがにこのまま、二見港に接岸するわけにはいきませんので、ボートに乗り換えて頂きます」
愛原「えっ?」
担当医「準備ができたらお知らせしますので、それまではこの船内でゆっくりなさっていてください」
愛原「ボートを1人で漕げと?」
担当医「いえいえ。ちゃんとこの船のスタッフが海岸までお送り致します。そこであなたの身内の方……」
愛原「愛原公一ですか?」
担当医「はい。愛原公一先生と合流して頂きます。その後の行動につきましては、愛原先生の指示に従ってください」
もう大学教授を辞めて何年も経つというのに、まだ先生呼ばわりされているのか。
今ではブッ飛んだ爺さんなのに……。
愛原「準備はどれくらいでできそうですか?」
担当医「恐らく、お昼くらいになるかと……」
愛原「本当ですか」
秘密保持の為、公一伯父さんとの個人的な連絡もできないそうだ。
そもそもが、ここ、ケータイの電波が届かない。
この船には無線の他、衛星電話も備えられているようだが、それの使用は許可されなかった。
取りあえず、いつでも下船できるよう、準備だけはしておいて欲しいと言われたのだった。
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