報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「太平山美樹の上京」

2025-02-26 20:28:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月15日10時45分 天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅→大江戸線1020B電車・先頭車内]

 

 今日は秋田県より、太平山美樹が上京してくる日である。
 往路は飛行機で来るとのことで、私とリサで羽田空港まで迎えに行くことにした。
 羽田空港までのルートはいくつかあるが、取りあえず森下駅から都営大江戸線に乗ることにした。
 菊川駅からは1駅だけである為、自宅から森下駅までは徒歩で移動した。
 今日は学校も休みである為、リサも一緒に行く事にした次第。

〔♪♪♪♪。まもなく、4番線に、大門、六本木経由、光が丘行き電車が、到着します。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 太平山美樹の目的は、8月に行われる予備校主催の合宿に申し込む為。
 私もリサの為に申し込みに行く。
 案内パンフレットによれば、合宿中の服装は学校の制服らしいとのことで、リサにも学校の制服を着させている。
 群馬に行った時と違い、一応ポロシャツではなく、半袖ながらブラウスを着させた。
 美樹にもそう伝えてある。
 都営新宿線より小型の、8両編成の電車がやってきた。
 昼間だからか、そんなに車内は混んでいない。

〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕

 何なら、硬い座席に腰かけることができた。
 小型の車両なので、圧迫感はある。
 電車の中は、冷房が効いて涼しい。
 短い発車メロディが流れる。

〔4番線から、大門、六本木経由、光が丘行き電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 電車のドアとホームドアが閉まる。
 都営新宿線と違って大江戸線はワンマン運転なので、車掌からの発車合図のブザーは鳴らない。
 その代わり、ホームに立ち番の駅員がいて、駅員が運転室のカメラに向かって発車合図のライトを振る。
 それから、電車がインバータ制御のモーター音を響かせて発車した。

〔次は清澄白河、清澄白河。半蔵門線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 愛原「飛行機の中の方が静かだろうなぁ……」
 リサ「そう?」

 大江戸線はトンネル断面が狭く、カーブも多い為、電車の走行音が車内によく響く。
 窓なんか開けていたら、尚更である。
 昔の東京の地下鉄は冷房化が遅れていた為、夏は全部の窓を全開にして走行していた。
 カーブの制限速度ギリギリで走行したりしていたので、地上の電車よりもスピード感があったという。

 愛原「それにしても懐かしいよ。『1番』が襲ってきたこともあったな」
 リサ「あったね。未だにムカつく思い出だよ」
 愛原「実力だけで言えば、リサよりも強い」
 リサ「悪かったね」

 斉藤元社長の理屈で言うなら、『転生の儀』を回避するには、材料となった鬼の血。
 その鬼よりも強い鬼の血を飲めばキャンセルされるだろうとのこと。
 ただ、それって、私が人間を辞めることにも繋がりかねない危険な話だ。
 まずは、誰が鬼の血を提供したのか突き止める必要がある。
 美樹は否定しているが、美樹の親戚筋を当たれば、詳細を知っている者に当たるかもしれない。

[同日11時01分 天候:晴 東京都港区浜松町 都営地下鉄大門駅→東京モノレール浜松町駅]

〔大門(浜松町)、大門(浜松町)。浅草線、JR線はお乗り換えです〕

 森下駅から電車で凡そ15分。
 乗り換え先のモノレールがある大門駅に到着する。
 これは近辺にある増上寺の総門の通称から取られた。
 浜松町駅とは隣接している為、岩本町~秋葉原の乗り換えよりも楽である。
 電車を降りると、改札階までエスカレーターで上がる。
 電車が出て行くと強風が巻き起こる為、リサはスカートの裾を手で隠した。
 ブルマかスパッツは穿いていないのだろうか?
 スパッツは夏は蒸れるから、あまり穿きたくないとのこと。

 鉄道会社が違うからか、地下鉄の駅から一旦外に出ることになる。
 外は夏の日差しが照り付けていた。

 愛原「地下鉄の駅の方が涼しいなぁ……」
 リサ「全くだね」
 愛原「こう暑いと食欲も湧かないなぁ……」
 リサ「え?そんなこと無いけど?」
 愛原「そ、そう?」
 リサ「うん。ミキが到着するの、ちょうどお昼時だよね?お昼食べから、新宿に行くよね?」
 愛原「はい……」
 リサ「ミキも鬼だから、いっぱい食べるよ?」
 愛原「だよね……」

 暑さ、特に日差しから逃げるように、モノレールの駅の中に入る。
 モノレールは基本的に高架線を走るということもあり、駅も上層部にある。
 エスカレーターに乗ってキップ売り場の前を通るが、もちろんモノレールも交通系ICカードが使えるので、そのままキップ売り場は素通りで改札口を通過する。

 愛原「えーと……11時20分発、空港快速、羽田空港第2ターミナル行き、あれだな」
 リサ「ふむふむ。普通の快速と、どう違うの?」
 愛原「空港ターミナルの駅にしか止まらない快速という意味さ。これ以外にも、もう少し停車駅のある区間快速なんかもある。……まあ、この時間帯は走っていないみたいだけど」

 空港快速と各駅停車が交互に発車するようだ。
 こうすることで、基本空港ターミナルにしか用の無い旅行客と、そうでない地元客を棲み分けさせているのだろう。

〔まもなく、空港快速、羽田空港第2ターミナル行きが、参ります。ご注意ください。この電車は、途中、羽田空港第3ターミナル、羽田空港第1ターミナル、終点羽田空港第2ターミナルに止まります〕

 ホームに接近放送が鳴り響く。
 東京モノレール羽田空港線は複線であるが、浜松町駅構内は単線になっている。
 また、ホームは乗車ホームと降車ホームに分けられている、2面1線の構造になっている。
 やってきた電車は、最新型の10000系。
 眩いヘッドライトを光らせて入線してきた。
 そして、車内には多くの乗客を乗せている。
 先に降車ホーム側のドアが開き、そこから乗客がぞろぞろと降りて行った。
 やはり、外国人が多い。
 それから、乗車ホームのドアが開いて、乗車が始まる。
 6両編成のワンマン運転。
 やはり、空港ターミナルにしか止まらない快速を避けて、次の各駅停車を待つ乗客は、ホームに残った。

 愛原「この電車だと、ものの18分で終点に着く。早いもんだ」
 リサ「そうだね。終点まで?」
 愛原「ミキが乗った飛行機は、ANAだろ?ANAは第2ターミナルだよ」
 リサ「そうなんだ。修学旅行じゃ、ANAには乗らなかったからね」
 愛原「それもそうか」

 確か、スカイマークとソラシドエアだったかな。
 スカイマークはLCCではないのだが、あえてHCCたるJALやANAを避けた感はある。

 愛原「じゃ、俺達も乗るか」
 リサ「うん」

 モノレールはあまり混んでいなかった。
 私達も乗客の一部となるべく、モノレールに乗り込んだ。

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