[1月16日13時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]
予定通り、昼食にはスーパーで売られていたアルミ容器入りのインスタントの鍋焼きうどんを食べた。
そして、午後イチに善場はやってきた。
部下と一緒かと思ったが、どうやら1人のようである。
コートは着ていたが、その下はいつも通りの黒いスーツであった。
善場「こんにちは。今日はお時間を取って頂き、ありがとうございます」
愛原「いえいえ。主任こそ、こんな足元が悪い中、お疲れ様です」
愛原は善場を迎え入れると、応接コーナーへと案内した。
そして、高橋に温かいコーヒーを入れるように命じた。
リサは相変わらず、学校のジャージ姿であった。
着替えるのが面倒なだけである。
除雪作業でズボンの足首部分が濡れたが、元々が乾きやすい素材で造られたジャージなので、たたでさえ暖房が効いて乾燥しやすい室内ではすぐ乾いた。
リサはジャージのズボンだけ脱いで、下はブルマ姿になろうとしたが、さすがに事務所内ではズボンを穿いておくように愛原に言われた。
愛原の命令は絶対なので聞いた。
パールは、『ジャージのズボンを穿いても、ブルマのスジが浮かび上がり、それはそれで男の目を惹き付ける』と言ったので、尚更納得した。
愛原は、慌てて否定したが。
愛原「リサは同席させますか?離席させることもできますが?」
善場「構いません。離席させたところで、ダクトの中に潜んで盗み聞きしようとするでしょう」
リサ「そんなこと……!」
善場「やろうと思えばできるのがBOWだからね」
リサ「むー……!」
善場「その割には、未だにダクトの中を対策しないBSAAなのです」
愛原「こういう小さいビルならともかく、都心にあるような超高層ビルとかだとキリが無いですよ」
善場「現実はそういうものです」
善場は大きく頷いた。
善場「それでは本題に移りましょう」
高橋「コーヒーお持ちしたっス」
愛原「ああ。そこに置いてくれ」
リサ「わたしには!?お兄ちゃん、わたしには!?」
高橋「オメーはコーヒー飲まねーだろうが。自分でジュースでも入れやがれ」
愛原「さっき飲んでたじゃないか。全く飲まないわけじゃないよ。いいから高橋、入れてやれ」
高橋「先生が仰るのなら……」
リサ「さすが先生」
リサは愛原の助けに感激し、隣に座る愛原の腕にしがみついた。
善場「仲が宜しいですこと」
リサ「夫婦だから!」
愛原「いや、まだ結婚してないし」
善場「実は、そのことなのです」
愛原「えっ!?」
リサ「ほお!?」
善場「愛原所長は、『リサが人間に戻れたら結婚してやる』旨の発言をされましたね?」
愛原「ええ、まあ。記憶にはあります」
リサ「人間に戻れる方法、見つかったの!?」
しかし、善場は無表情のままだ。
善場は基本的にポーカーフェイスである。
善場「もしも愛原所長がその発言を撤回されないのならば、リサは愛原所長と結婚することは不可能でしょう」
愛原「ええっ!?」
リサ「そ、それって……!」
高橋「ほらよ、コーヒー。つまり、人間に戻れねぇってことか」
善場「研究機関の研究により、リサを第2形態以降までの変化を完全に抑える手段は見つかりました。しかし、どうしても今の化学力では、リサを完全に人間に戻す方法が無いことが分かりました」
愛原「……そうですか……」
リサ「…………」
リサは茫然とした。
善場「私の場合、確かに表向き、人間に戻ったことにはなっています。しかし、まだ超人的な力を持っていることには変わりありません」
高橋「霧生市で見せたな、ねーちゃん。明らかに体に突き刺さった鉄筋なのに、引き抜いたら、血が噴き出たが、すぐに止まった上に、みるみるうちに傷跡残さずに消えちまった。そこはリサと同じだ」
善場「はい、そうです。こんなの、普通の人間ではありえません。しかし、Gウィルスが形を変えて遺伝子に深く食い込んでしまっている為に、今の化学力では、どうすることもできないのです。ましてやリサは、Gウィルスと共に何十年も生きて来ました。たった数年の私とは、そもそもキャリアが違うのです。これ以上の変化を防げるというだけでも、私は相当な進歩だと思っています」
愛原「これ以上、人間に近い状態には戻せない。だけど、これ以上、化け物になることもない、と」
善場「はい」
愛原「寿命はどうなるんですか?“鬼滅の刃”だと、鬼は不老不死のようですが……」
善場「これに関しても、まだ研究段階で何とも言えません。私と同じような状態にあるシェリー・バーキン氏は、既に40歳近い年齢となっていますが、未だに見た目は20代くらいだと言われております」
愛原「マジか……」
善場「Gウィルスの遺伝子のごく一部が体の中に入り込んでいるというだけで、そのような状態なのです。確かに私も、肌トラブルの経験は大卒後、全くありません」
高橋「おいまさか、リサみてーに人を食いたいとかなんてことは……」
善場「いえ、さすがにそれは無いですよ。それはバーキン氏も同じです」
愛原「そうですか……。まあ、仕方が無いですね」
リサはチラッと愛原を見た。
愛原「せめて、食人衝動だけでも治せればいいのですが……。あとは見た目が鬼であったとしても、電撃とかは使えないようにするとか……」
善場「未だに研究の段階とか言いようがありません。本来ならば、このことが分かった時点で、リサには研究機関に戻ってもらうのが正しい選択なのですが……」
リサ「ヤダ!わたし、ここにいたい!」
愛原「……と、本人たっての希望ですが?」
善場「ええ、分かっております。ここで無理やり連れて行こうもなら、東京が霧生市のようになってしまいます。アメリカだと、ルイジアナ州のベイカー農場周辺ですね」
愛原「エヴリンですか……」
善場「エヴリンも、研究所に行きたくなくて暴れたのが始まりですから……」
リサ「エヴリンは嫌いだけど、その気持ちは分かる」
愛原「では、リサをこれ以上変化させない処置だけお願いします」
善場「もちろん、準備は進めています。準備ができ次第、またお知らせ致します。そうですね……。リサの春休みに合わせる形になれば良いかと考えております」
リサ「どっちみち、研究所には行かないといけないわけね」
善場「まあ……。でも、強制連行だと、愛原所長には会えなくなるわけよ。春休みに素直に来てくれれば、愛原所長も一緒でいいのよ」
愛原「リサを暴走させない為です。浜町でも藤野でも、どこにでも行きますよ」
善場「ありがとうございます。詳細が分かりましたら、またお知らせ致します」
善場そう言って、事務所を後にした。
リサ「はー……。結局、人間に戻れないのか……」
愛原「がっかりするなよ。今の技術では、の話だよ。今後、技術が進めば、また話が変わって来るかもしれんよ?」
リサ「そうかな……」
愛原「そうだよ。医学は常に進歩しているんだ。昔は不治の病とされた癌も、治るようになったんだからな」
リサは第1形態の鬼の姿になった。
リサ「ちょっと昼寝してくる。寝たら、全部夢かしれない」
高橋「現実逃避かよw」
愛原「ああ、うん。ゆっくり寝ておいで。あまり寝すぎて、夜寝られなくなるのには注意な?明日は学校あるだろうから」
リサ「分かってるよ。夕飯までには起きるよ」
愛原「そうしてくれ」
リサはエレベーターに乗ると、自室のある4階へと向かった。
予定通り、昼食にはスーパーで売られていたアルミ容器入りのインスタントの鍋焼きうどんを食べた。
そして、午後イチに善場はやってきた。
部下と一緒かと思ったが、どうやら1人のようである。
コートは着ていたが、その下はいつも通りの黒いスーツであった。
善場「こんにちは。今日はお時間を取って頂き、ありがとうございます」
愛原「いえいえ。主任こそ、こんな足元が悪い中、お疲れ様です」
愛原は善場を迎え入れると、応接コーナーへと案内した。
そして、高橋に温かいコーヒーを入れるように命じた。
リサは相変わらず、学校のジャージ姿であった。
着替えるのが面倒なだけである。
除雪作業でズボンの足首部分が濡れたが、元々が乾きやすい素材で造られたジャージなので、たたでさえ暖房が効いて乾燥しやすい室内ではすぐ乾いた。
リサはジャージのズボンだけ脱いで、下はブルマ姿になろうとしたが、さすがに事務所内ではズボンを穿いておくように愛原に言われた。
愛原の命令は絶対なので聞いた。
パールは、『ジャージのズボンを穿いても、ブルマのスジが浮かび上がり、それはそれで男の目を惹き付ける』と言ったので、尚更納得した。
愛原は、慌てて否定したが。
愛原「リサは同席させますか?離席させることもできますが?」
善場「構いません。離席させたところで、ダクトの中に潜んで盗み聞きしようとするでしょう」
リサ「そんなこと……!」
善場「やろうと思えばできるのがBOWだからね」
リサ「むー……!」
善場「その割には、未だにダクトの中を対策しないBSAAなのです」
愛原「こういう小さいビルならともかく、都心にあるような超高層ビルとかだとキリが無いですよ」
善場「現実はそういうものです」
善場は大きく頷いた。
善場「それでは本題に移りましょう」
高橋「コーヒーお持ちしたっス」
愛原「ああ。そこに置いてくれ」
リサ「わたしには!?お兄ちゃん、わたしには!?」
高橋「オメーはコーヒー飲まねーだろうが。自分でジュースでも入れやがれ」
愛原「さっき飲んでたじゃないか。全く飲まないわけじゃないよ。いいから高橋、入れてやれ」
高橋「先生が仰るのなら……」
リサ「さすが先生」
リサは愛原の助けに感激し、隣に座る愛原の腕にしがみついた。
善場「仲が宜しいですこと」
リサ「夫婦だから!」
愛原「いや、まだ結婚してないし」
善場「実は、そのことなのです」
愛原「えっ!?」
リサ「ほお!?」
善場「愛原所長は、『リサが人間に戻れたら結婚してやる』旨の発言をされましたね?」
愛原「ええ、まあ。記憶にはあります」
リサ「人間に戻れる方法、見つかったの!?」
しかし、善場は無表情のままだ。
善場は基本的にポーカーフェイスである。
善場「もしも愛原所長がその発言を撤回されないのならば、リサは愛原所長と結婚することは不可能でしょう」
愛原「ええっ!?」
リサ「そ、それって……!」
高橋「ほらよ、コーヒー。つまり、人間に戻れねぇってことか」
善場「研究機関の研究により、リサを第2形態以降までの変化を完全に抑える手段は見つかりました。しかし、どうしても今の化学力では、リサを完全に人間に戻す方法が無いことが分かりました」
愛原「……そうですか……」
リサ「…………」
リサは茫然とした。
善場「私の場合、確かに表向き、人間に戻ったことにはなっています。しかし、まだ超人的な力を持っていることには変わりありません」
高橋「霧生市で見せたな、ねーちゃん。明らかに体に突き刺さった鉄筋なのに、引き抜いたら、血が噴き出たが、すぐに止まった上に、みるみるうちに傷跡残さずに消えちまった。そこはリサと同じだ」
善場「はい、そうです。こんなの、普通の人間ではありえません。しかし、Gウィルスが形を変えて遺伝子に深く食い込んでしまっている為に、今の化学力では、どうすることもできないのです。ましてやリサは、Gウィルスと共に何十年も生きて来ました。たった数年の私とは、そもそもキャリアが違うのです。これ以上の変化を防げるというだけでも、私は相当な進歩だと思っています」
愛原「これ以上、人間に近い状態には戻せない。だけど、これ以上、化け物になることもない、と」
善場「はい」
愛原「寿命はどうなるんですか?“鬼滅の刃”だと、鬼は不老不死のようですが……」
善場「これに関しても、まだ研究段階で何とも言えません。私と同じような状態にあるシェリー・バーキン氏は、既に40歳近い年齢となっていますが、未だに見た目は20代くらいだと言われております」
愛原「マジか……」
善場「Gウィルスの遺伝子のごく一部が体の中に入り込んでいるというだけで、そのような状態なのです。確かに私も、肌トラブルの経験は大卒後、全くありません」
高橋「おいまさか、リサみてーに人を食いたいとかなんてことは……」
善場「いえ、さすがにそれは無いですよ。それはバーキン氏も同じです」
愛原「そうですか……。まあ、仕方が無いですね」
リサはチラッと愛原を見た。
愛原「せめて、食人衝動だけでも治せればいいのですが……。あとは見た目が鬼であったとしても、電撃とかは使えないようにするとか……」
善場「未だに研究の段階とか言いようがありません。本来ならば、このことが分かった時点で、リサには研究機関に戻ってもらうのが正しい選択なのですが……」
リサ「ヤダ!わたし、ここにいたい!」
愛原「……と、本人たっての希望ですが?」
善場「ええ、分かっております。ここで無理やり連れて行こうもなら、東京が霧生市のようになってしまいます。アメリカだと、ルイジアナ州のベイカー農場周辺ですね」
愛原「エヴリンですか……」
善場「エヴリンも、研究所に行きたくなくて暴れたのが始まりですから……」
リサ「エヴリンは嫌いだけど、その気持ちは分かる」
愛原「では、リサをこれ以上変化させない処置だけお願いします」
善場「もちろん、準備は進めています。準備ができ次第、またお知らせ致します。そうですね……。リサの春休みに合わせる形になれば良いかと考えております」
リサ「どっちみち、研究所には行かないといけないわけね」
善場「まあ……。でも、強制連行だと、愛原所長には会えなくなるわけよ。春休みに素直に来てくれれば、愛原所長も一緒でいいのよ」
愛原「リサを暴走させない為です。浜町でも藤野でも、どこにでも行きますよ」
善場「ありがとうございます。詳細が分かりましたら、またお知らせ致します」
善場そう言って、事務所を後にした。
リサ「はー……。結局、人間に戻れないのか……」
愛原「がっかりするなよ。今の技術では、の話だよ。今後、技術が進めば、また話が変わって来るかもしれんよ?」
リサ「そうかな……」
愛原「そうだよ。医学は常に進歩しているんだ。昔は不治の病とされた癌も、治るようになったんだからな」
リサは第1形態の鬼の姿になった。
リサ「ちょっと昼寝してくる。寝たら、全部夢かしれない」
高橋「現実逃避かよw」
愛原「ああ、うん。ゆっくり寝ておいで。あまり寝すぎて、夜寝られなくなるのには注意な?明日は学校あるだろうから」
リサ「分かってるよ。夕飯までには起きるよ」
愛原「そうしてくれ」
リサはエレベーターに乗ると、自室のある4階へと向かった。
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