報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「6月6日に雨ザーザー降ってきて」

2015-06-08 10:21:26 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月6日10:00.天候:雨 敷島エージェンシー 敷島孝夫&井辺翔太]

「今日は朝から降ってるねー」
 敷島は珍しく今日は事務所にいて、一海に入れてもらったコーヒーを飲んでいた。
「はい。今日1日は雨のようです」
「そうか。まあ、ボーカロイドは雨に濡れても大丈夫だから。ただ、衣装が濡れるからやめろって何度も……特にリンには注意しまくった記憶がある」
「そうですか」
「大丈夫どころか、火照った体を冷やすのにいいとか昔ミクが言ってたな。あの時は、そんなに冷却装置も性能が良くなかったからかも。今はだいぶ改良されたから、そんなこともないと思うけどね」
「はい」
 それでもライブの時などは、1曲終えるごとに冷却しないといけないという難点がある。
 だからプログラムでは、最初に全員歌わせた後は交替でソロやデュエットを行い、最後にまた全員で歌うという手法を取っている。
「それで、彼女達の方は?」
「まだ、ユニット名は決まっておりません。私にも考えてほしいとの申し出がありました」
「はははは(笑)、そうか。そうきたか。じゃあ、そうしてあげるといい」
「分かりました」
「……と、もうこんな時間か」
 敷島は壁の時計を見た。
「何か?」
「ああ。俺には俺で、やることがある」
「そうでしたか」

[同日11:00.東京都心大学 敷島孝夫、平賀太一、シンディ、エミリー]

 広い大学構内にある研究棟の会議室。
「失礼します」
「ようやく現れましたな?」
 室内にいるのは、平賀の他に2人の中年男性。
「警察幹部が自らやってこられるとは、そろそろ泣きが入りましたかな?」
 敷島はニヤッと笑って椅子に座った。
「昔、都営バスを勝手に乗っ取った罪でしょっ引いてもいいんだぞ?」
「あれは緊急避難です」
「どこがだw」
「鷲田警部……いや、もう警視になられましたか。あとは村中……課長代理」
 平賀も口を挟む。
「東京決戦の時は、お世話になりましたね」
「全く。あの時は色々と大変だった。まさか、あの時に使用されたテロ・ロボットが、今度は正義の味方気取りで、しれっと稼働しているとは……」
 鷲田警視はシンディを侮蔑するように見た。
「彼女は見た目はほぼ同じですが、あの前期型とは全く違いますよ。一応、贖罪の意味で、その時のメモリーは残してありますが」
 と、敷島は言った。
「それに、私らに泣きついてきたってことは、その昔テロ活動していたこいつらに出番だってことでしょう?」
 更にそう続ける。
「泣きついて来た、とは言ってくれるねぇ」
 村中が苦笑いした。
「KR団の捜査が進んでいるとは思えませんもん。でも、何か掴んだんですね?」
 敷島の言葉に鷲田が頷く。
「ああ。どうやら、キミ達の見解が間違っていたようなので責任を取ってもらおうと思ってな」
「は?」
「えっ?」
「マルチタイプはここにいる2機だけとの見解のようだが、それが間違いのようだ」
「未夢みたいに後継機として製造されたものの、テストに失敗して用途変更したロイドならいますよ?」
「そういうことじゃないんだ」
 村中が言う。
「ここにいるコ達の姉妹機、或いは本当の後継機なのかは知らないが、それが存在していることが明らかになった」
「ええっ!?」
 村中の言葉に、エミリーやシンディも顔を見合わせる。
「どんなヤツですか?」
 鷲田がシンディを指さした。
「東北工科大学で拾ったとされる髪飾り。あれは髪飾りを模したセキュリティ・トークンだったが、その解析が先ほど終わった」
「それで、解析結果というのが、マルチタイプが他にもいるって話ですか?」
 と、平賀。
「ああ。それも外国から、近日中に日本に移送されてくるらしい。恐らくは、KR団が引き取る手筈になっているはずだ」
「それで、私らに何をしろと?」
「KR団を一網打尽にするのはいいが、その際にマルチイプを起動されて兵器に使われたら大変だ。予め先に船に乗り込み、そのマルチタイプが起動しないように電源を落とすなりしてもらいたい。マルチタイプの力を敵に回してしまうと、命がいくつあっても足りん」
 鷲田は最後にニヤッと笑った。
「『毒には毒を持って制す』だな。くれぐれも、『血で血を洗う』ことにはならんように」
「引き受けてもらえますか?」
 村中が念押ししてきた。
「いいでしょう。ただ、船の情報とかは頂きたいですね」
「それはもちろん提供する」
 中村は大きく頷いた。

[同日14:00.同大学・客員教授研究室 平賀太一、敷島孝夫、エミリー、シンディ]

「やれやれ……。とんでもない話、引き受けてしまいましたな」
 敷島はエミリーに入れてもらったお茶を啜りながら言った。
「我々の行動に対して、色々と免除してくれる条件ですからねぇ……。本来なら、マルチタイプに銃火器を取り付けている時点で違法ですから」
「まあ、そりゃねぇ……」
「とにかく、船の情報をもらったら、こちらも作戦を立てましょう」
「そうですね」
「しかし、マルチタイプが他にもいたとは……」
「十条博士が新たに製造したのかもしれませんね」
「てことは十条の爺さん、やっぱり国外逃亡中か」
「……かもしれません」
「その船に乗っていたりして?」
「有り得なくはないですね」
「よし。捕まえて手柄を立てよう」
「でもさ……」
 それまで壁側に立っていて、腕組みをしていただけのシンディが口を出した。
「ドクター十条がいるってことは、その……キールもいるってことなんじゃないの?」
 シンディはエミリーをチラッと見ながら言った。
 エミリーは体が数秒ガクガク震えた。
「まあ、その可能性も無くはないけど……」
「でしょう?アタシが行くわ。姉さん、もしキールがやってきたら、戦えないでしょうから」
「……いいえ。私も・行きます」
「エミリー!お前……」
 平賀が言った。
「じゃあ、こうしましょう。船の情報が無いからまだ何とも言えませんが、シンディが船内調査を積極的に行ってもらう。エミリーはそのサポートということで」
「そうですね。それで行きましょう」
 敷島はポンと手を叩いた。
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