報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「予期せぬ滞在」

2020-07-19 16:12:06 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月5日20:45.長野県長野市 JR北陸新幹線573E列車11号車内→JR長野駅 視点:稲生勇太]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、長野です。篠ノ井線、飯山線、しなの鉄道線、長野電鉄線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。長野の次は、飯山に止まります〕

 稲生:「先生、申し訳ありません。申し訳ありません」

 何故か稲生が半泣き状態でイリーナに謝っている。
 だがそんなイリーナは稲生に叱責をするわけでも、説教をするわけでもなく、むしろばつの悪そうな顔で言った。

 イリーナ:「いいのよ。私も油断したわ」
 マリア:「はぁ~。私が占えば良かった!」

 マリアだけが不機嫌そうな顔をしている。
 一体、何が起きたのか?
 鉄ヲタの読者は冒頭の時系列を見て、何かに気づくだろう。
 列車番号573Eとは、“はくたか”573号のことだが、その列車がそんな時間にどうして長野駅へ?と。

〔「大変長らくお待たせ致しました。まもなく長野、長野です。到着ホーム11番線、お出口は右側です。本日は北陸新幹線内におきまして、落雷による停電の影響を受けました関係で、およそ1時間遅れでの到着でございます。お急ぎのところ、大変ご迷惑をお掛け致しました。深くお詫び申し上げます。当駅で、後から参ります“かがやき”515号の待ち合わせを行います。……」〕

 マリア:「バスはもう無いんだよね?」
 稲生:「はい。せめて、もう一本早い“あさま”にしとけば良かったーっ!」
 イリーナ:「まあ、過ぎたことを喚き立ててもしょうがないわよ。仕方がないから、この町で一泊しましょう。勇太君、ホテルは取ってくれたんだよね?」
 稲生:「あ、はい。それはもう……」

 稲生はスマホ片手に、そこは抜かりなくやっていた。
 列車は制限速度ギリギリの速度で下り副線ホームに滑り込んだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。長野、長野です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。……」〕

 稲生達は列車から降りた。
 降りると、湿っぽい空気が包み込んで来た。
 列車の車体は雨で濡れている。

 稲生:「『駅から一番近いホテルで』ということで、ホテルメトロポリタンですが、いいですか?」
 イリーナ:「ええ、大丈夫よ」
 マリア:「絶対、高いホテルだ」
 イリーナ:「スイートはダメよ。スイートはダンテ先生がお泊りになる部屋で、私が泊まるなんて恐れ多い……」
 稲生:「分かってますよ。(『スイートは御法主上人猊下様がお泊りになる部屋だから、恐れ多い』みたい)」
 マリア:「なに笑ってんの、勇太?」
 稲生:「あ、いえ、何でも!スタンダードシングルとツインにしておきましたので、ご安心ください」

 稲生はスマホの画面を見せた。

 マリア:「それでもワンスターホテルの『デラックスルーム』よりも、更に高級だ」
 稲生:「そりゃ、シティホテルとビジネスホテルを比べるのはねぇ……」

 新幹線改札口を出る。

 稲生:「先生、少し買い物して行っていいですか?」

 稲生は駅構内にあるNEWDAYSを指さした。

 イリーナ:「いいよ。さすがに私物は自費でお願い」
 稲生:「もちろんです」
 マリア:「私も何か買おうかな……」

 マリアは衛生用品のコーナーで生理用品を見ていたが、そこで稲生がサッとコンドームを手にしたのが分かった。

 マリア:(予備のショーツも一応、買っておこう)

 こうして2人は買い物を済ませ、宿泊先のホテルに向かった。

[同日21:00.ホテルメトロポリタン長野 視点:稲生勇太]

 稲生:「明日のバスは9時50分発と11時ちょうど発があります。前者だと八方バスターミナルに着くのが11時5分、後者だと12時15分です。どちらにしますか?」
 イリーナ:「9時50分の便にしましょう。そしてランチを食べた後、午後はお休み」
 マリア:「でしょうね。だったら、11時の便でもいいくらいですけど……」
 イリーナ:「このホテルだと、チェックアウトの時間は何時?」
 稲生:「12時だそうです」
 イリーナ:「あら、エレーナのホテルよりゆっくりなのね。だったらいいわ。11時の便にしましょう」
 マリア:「屋敷の人形達にも伝えておきます」

 マリアは水晶玉を取り出した。

 フロントマン:「それでは、こちらのシートに御記入をお願いします」
 稲生:「あ、はい」

 稲生がフロントの前に立ち、ボールペンを走らせる。

 フロントマン:「ありがとうございます。お支払いは如何なさいますか?」
 稲生:「あ、カードでお願いします」

 稲生はイリーナから預かったプラチナカードを渡した。

 フロントマン:「かしこまりました」

 カードでの支払いが終わると、フロントマンが鍵を渡してくる。
 レストランにおける朝食の案内もあった。
 1Fのレストランが朝食会場なのだという。
 コロナ禍前はバイキングスタイルだったろうが、フロントマンの話しぶりからして、コロナ対策で変わっているらしい。
 因みに夕食は、既に駅弁で済ませていた。

 フロントマン:「ごゆっくりお過ごしくださいませ」

 3人はエレベーターに乗り込み、客室フロアへ向かった。

 イリーナ:「明日はゆっくり出るんだから、ゆっくり過ごしていいからね?私も疲れたし……」
 稲生:「あ、はい。ありがとうございます」
 マリア:「勇太は部屋で待ってて」
 稲生:「うん」

 先にそれぞれの部屋に向かう。
 稲生はシングルルームだが、ベッドは明らかにダブルサイズはある。
 部屋に入ると、荷物を置いた。

 稲生:「……うん。先にお風呂入っておこう」

 マリアも入浴してから来るだろうからと、稲生はそうすることにした。

 稲生:(屋敷に帰るはずが思わぬアクシデントか……。魔界で何かあったのかな?)

 稲生は広い浴槽にお湯を溜めながらそう思った。
 今日中に屋敷に帰れないのは残念だったが、それでもマリアと一晩過ごせるという事実は変わらない。

 稲生:「さて、その前に夕勤行だ」

 そのことも忘れないところが、稲生の真面目なところである。
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“大魔道師の弟子” 「雨の東京駅」

2020-07-16 20:15:09 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月5日17:30.東京都千代田区丸の内 丸の内中央ビル2F・スタバJR東京駅日本橋口店 視点:稲生勇太]

 JR東京駅で最も北部に位置する出入口。
 JRバスなどの高速バスの到着ターミナルがあり、駅構内入ってすぐの広場は団体ツアーの待ち合わせ場所として使用されている。
 もっとも、このコロナ禍においては、かつて団体客でごった返していた頃の面影は全くと言って良いほど見当たらない。
 そんな広場やバスターミナルを見下ろす位置に構えているスタバ。
 そこに稲生とマリアはいた。
 地下街でのショッピングを終え、イリーナを待つべく、ここで時間を潰している。
 ここから霞ケ関まで向かう高級車に乗ったのだが、到着もここだと知らされていたからだ。
 外はあいにくの雨。
 未だ梅雨が続いていることを物語っている。
 この雨で新型コロナウィルスを洗い流してもらいたいものだが、実際に屋外の壁や地面に付着したウィルスは雨で洗い流せるらしい。
 しかしその自然の力を持ってしても、未だにウィルスの猛威は収束の兆しを見せることはない。

 稲生:「今のナレーション、先生の名前が出て来なかったら、まるで、とある探偵さんの日記みたい。バイオハザードと戦うヤツ」
 マリア:「収束するか、その兆しが見えた所で続きを始めたかったんだけど、なかなかそうならないから、始めるに始められないらしいよ?」

 雲羽:「あ~、早くコロナ終わってくんねぇかなぁ……。愛原学、書けねーよ……」
 AD:「シッ!カントクの声が入ってしまいます」
 雲羽:「こんなんで、本当に“バイオハザード8”出せるんかね?」
 AD:「知りませんよ!」

 マリア:「久しぶりにショッピングしたら疲れた……」
 稲生:「マリア、楽しそうだったね」
 マリア:「そりゃもう。いつもは屋敷で引きこもりだからねぇ……」
 稲生:「今すぐ使わない物は後で送れるから便利だ。どうせ届けに来るの、エレーナに決まってるだろうけど」
 マリア:「リリィにも手伝わせるかもね」
 稲生:「あー、そうかも」

 リリィもホウキ乗りになるらしく、エレーナの指導を受けてホウキを乗りこなす訓練をしているそうだ。
 地下街は東京駅一番街だけでなく、八重洲地下街にも向かった。
 マリアは自分の服(主に室内着)の他、新しい下着も購入した。
 さすがにそういう女性下着店にまで稲生は入って行けなかったが、マリアと入れ替わりに入って来た日本人女性と思われる客が、普通に彼氏らしき男性を連れて入ったのには驚いた。
 稲生が買い物したのはスマホ関係。
 充電器とかスマホカバーとかSDカードとか。
 あと、これはマリアの提案なのだが、ヘアーサロンにも行った。

 稲生:「すっかり忘れてたけど、おかげでサッパリした」
 マリア:「魔道士になると、髪の伸びも遅くなるから、ついつい忘れがちになるんだよね」
 稲生:「そういえばそうだ」
 マリア:「で、気が付いた時には結構伸びてたりとか」
 稲生:「確かに」
 マリア:「魔道士の中には、魔獣に対し、スポット契約の報酬に自分の伸びた髪の毛を切って渡すというのもあるみたいだよ」
 稲生:「そうなんだ」
 マリア:「中には魔道士の血肉を欲しがる魔獣とかいる。でもそんな要求、真に受けてたら、命がいくつあっても足りないからね。自分の血をコーヒーカップ半分の量とか、さっきみたいに髪の毛とか、そういう所で妥協してもらう交渉とかするよね」
 稲生:「なるほど……。! そ、そういえば……」

 稲生はかつて一緒に暮らしていた妖狐の威吹を思い出した。

 稲生:「あいつも最初は僕を食べる気満々だったんだよなぁ……。『霊力の高い人間の血肉を食らえば、その分、自分の妖力向上に繋がる』とか言って」
 マリア:「妖怪の考えることは、洋の東西を問わないみたいだね」
 稲生:「そうみたいだ」

 そんなことを話していると、ロータリーに黒塗りのセンチュリーが止まった。
 リアガラスがスモークではなく、白いレースのカーテンであることから、政治家の車っぽい。

 稲生:「先生が到着されたみたい」
 マリア:「よし。早速行こう」

 稲生とマリアは飲んだコーヒーの紙コップや、スイーツの皿を片付けると、階段を急いで下りた。
 上がるのにはエスカレーターがあるが、下るのは階段しか無い。

 議員秘書:「どうぞ、先生」
 イリーナ:「ありがとう」

 助手席に乗っていた議員秘書が先に降りて、後ろから降りたイリーナに傘を差し出す。
 日本橋口には屋根が無いので、雨の日はバスやタクシー、ハイヤーを降りたら急いで駅講内にダッシュしないといけない。

 稲生:「先生、お疲れさまです」
 マリア:「仕事は終わりですか?」
 イリーナ:「やっと終わったよォ……。久しぶりに働いたねぇ……」
 議員秘書:「本日はありがとうございました。どうかお気をつけて」
 イリーナ:「見送り、ありがとう」

 駅構内に入る。

 マリア:「報酬とか、相当稼いだんじゃないですか?」
 イリーナ:「内緒よ。それより、買い物は済んだ?」
 マリア:「はい。おかげさまで」

 マリアはイリーナにゴールドカードを返却した。

 イリーナ:「髪を切ったのね。うん、特に大きく髪形は変えず、毛先を揃えてカットしてきれいにしたってところか」
 マリア:「勇太が、この髪形が好きなので」
 イリーナ:「そうかい?私もプラチナかブランドに染めようかねぇ……」
 マリア:「ジンジャーは御嫌いですか?」

 白人と一口に言っても、マリアのようなブロンドもいれば、エレーナのようなイエローもいるし、イリーナのような赤毛もいれば、アナスタシアのような黒髪もいる。
 で、この中で一番コンプレックスを抱きやすいのは赤毛だという。
 実際、“赤毛のアン”でも、主人公が自らの赤毛に対してコンプレックスを抱いている発言がある。
 で、その赤毛の女性に対して、『ジンジャー』というあだ名が付くのも、それが理由だ。

 稲生:「僕は先生の赤毛、素敵だと思います」
 イリーナ:「おお~!勇太君がそう言うなら、このままでいいかね!」
 マリア:「勇太の発言でキャンセルするなら、迷わないで……」

 マリアはイリーナに苦言を呈そうとしたが、ふとあることに気が付いてそれを引っ込めた。

 マリア:(私も髪形を変えようかどうか悩んだ時、勇太が『このままでいい』と言ってきて、何故かそうしなくちゃって思ったんだ。何だろう、これ……?)
 稲生:「先生、そろそろ乗り場に行きましょう」
 イリーナ:「あー、そうだね。案内よろしく」
 稲生:「はい、こっちです」

 3人の魔道士は八重洲北口改札に向かった。
 日本橋口にも改札口はあるが、東海道新幹線はともかく、それ以外の新幹線乗り場にはホームへ上がるのに階段しか無い為、イリーナに気を使ってのことだった。

 ベルフェゴール:「少しサービスしてるのかい?アスモ」
 アスモデウス:「あの契約者、稲生勇太ってコ、素晴らしいわよ。もうそろそろ『言霊』を発するだけで、女の言う事を聞かせるくらいの力を持ってる。これは将来面白いことになりそうよ」

 英国紳士の姿に化けた悪魔ベルフェゴールと、キャバ嬢の姿に化けている悪魔アスモデウスは、そんなことを話しながら魔道士達の後ろを歩て行った。
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“大魔道師の弟子” 「イリーナの仕事」

2020-07-16 15:29:38 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月5日10:30.東京都千代田区丸の内 JR東京駅 視点:稲生勇太]

 東京駅に到着した稲生達は東京駅の構内に入った。
 そして、そのままJR東海の『JR全線きっぷ売り場』に向かおうとした。
 実はJR東日本の“みどりの窓口”よりも近い所にあり、機能的にはJR東海版“みどりの窓口”(というか、まんまそれ)なので、そこでもJR東日本のキップは買えるからだ。
 しかしそこで、稲生達は思わぬ歓迎を受けた。

 政治家秘書:「イリーナ先生の御一行様ですね!?」

 30代ほどのスーツを着た男が前に現れた。
 名刺を両手に、恭しくロシア語で挨拶してくる。
 男は、とある政権与党に所属する国会議員の秘書を名乗った。

 政治家秘書:「先生の御噂はかねがね伺っております!」

 男は自分が秘書を務める国会議員から、是非ともイリーナと会いたい旨を伝えるよう命令されてここに来たことを申し出た。

 イリーナ:「英語で結構」
 秘書:「で、では!?」
 イリーナ:「あなたの『先生』はどこにいらっしゃるの?」
 マリア:「師匠、私達はこれから……」
 イリーナ:「ついでにちょっと稼いでから帰りましょうよ」
 稲生:(プラチナカード使い過ぎた?まさかね……)
 秘書:「ありがとうございます!日本橋口に車を待たせてありますので、ご案内させて頂きます!」
 イリーナ:「このコ達もいい?私の弟子なんだけど……」
 秘書:「はい、もちろんです!」

 イリーナ達を待ち構えていた以上、稲生やマリアも同行していることは把握済みなのだろう。

 稲生:「先生、もう一泊されるんですか?それとも、夕方の新幹線とか?」
 イリーナ:「夕方の新幹線でいいわ」
 稲生:「分かりました」

 稲生はスマホを取り出した。

 マリア:「勇太、歩きスマホはダメだよ」
 稲生:「おっと、そうでした。先に帰りの新幹線を予約したいんですけど、いいですか?」
 秘書:「後で私共の方で御用意させて頂きます」
 イリーナ:「グランクラス以外でお願いね」
 秘書:「グランクラス以外ですか」
 イリーナ:「ファーストクラスは、私の先生が乗るの」
 秘書:「あの大先生も御来日で!?」
 イリーナ:「コロナ禍でそんなのムリに決まってるじゃない」
 秘書:「し、失礼しました!」
 稲生:(大師匠様ならそんなの関係無いと思うけど……)

 因みにイリーナ、マリア、エレーナは国籍がそれぞれ違う為、いかに永住者の資格を持っているにせよ、一度帰国してしまったら、コロナ禍が終わるまで再入国できない。
 もちろん帰国する理由が無いので、そのまま滞在している。

 イリーナ:「まずは報酬の話からさせてもらうわね」
 秘書:「それはうちの先生に……」
 イリーナ:「分かってる」
 稲生:(こういう恩を売り付けて、マリアの永住権を確保したのかな?)

[同日12:00.東京都千代田区丸の内 JR東京駅 視点:稲生勇太]

 タクシーが赤レンガ造りの外観で有名な東京駅丸の内口に到着する。
 そこから降りて来たのは稲生とマリアだけ。
 タクシーチケットで料金を払う。
 霞ケ関から乗って来たので、大した額の料金ではなかった。

 マリア:「私達の出る幕、無かったね」
 稲生:「議員会館に行ったまでは良かったんだけどね」

 タクシーを降りて、東京駅構内へ入る。
 イリーナの噂を聞きつけた他の議員からも依頼が殺到し、稲生達はしばらくその対応に忙殺された。
 このコロナ禍、どのような政策を取れば良いのかの内容が殆どだったが、中にはまだ立場的には一般人に近い稲生が聞いてはダメな政治の闇について占って欲しいという依頼もあった。
 そして、午後には総理官邸や都庁にまで行かないといけなくなり、さすがに稲生とマリアは離脱することにした。

 稲生:「総理官邸って、なに?こっちの安倍総理だよね?向こうの安倍総理じゃなくて」
 マリア:「いや、そりゃそうでしょ」
 稲生:「僕達はちょっとこの辺りで時間でも潰してましょ。幸い、八重洲地下街とか営業再開したみたいなんで」
 マリア:「師匠から借りたカードで、ちょっとした買い物ならできるしね」
 稲生:「そうそう」
 マリア:「その前にランチにしたい」
 稲生:「何にしようかな?何が食べたい?」
 マリア:「今のうちに日本食にしたら?明日から、また食べられなくなるよ?」
 稲生:「あー、そうか」

 屋敷では、どうしてもイリーナやマリアの好みに合わせた食事になってしまうので、日本食がなかなか出て来ない。
 たまに稲生専属メイドを買って出ているメイド人形のダニエラが、夜食におにぎりを作ってくれることがあるくらいだ。
 あとはたまに買い出しに行った時、インタスタントの味噌汁を買うとか……。

[同日12:30.東京駅一番街B1F 仙台牛タン炭火焼「杜」 視点:稲生勇太]

 店員:「お待たせしました。2名様のお待ちの稲生様!」
 稲生:「あ、はい」
 店員:「お待たせしました。こちらへどうぞ」

 昼時なので少し混んでいた。
 それでもコロナ禍前は大混雑だったことを考えると、だいぶ空いている。
 で、店内を見ると満席ではない。
 コロナ対策でソーシャルディスタンスが取られていた。
 それでも2人はテーブル席へ案内された。

 マリア:「まさかの牛タンとはね」

 緑色の布マスクを着けていたマリアが笑みを浮かべ、椅子に座ってマスクを外す。

 稲生:「さすがに屋敷ではどうあっても食べれないから」
 マリア:「いいアイディアだね。うん、いいアイディアだ」

 マリアもニッと笑いながら、出された冷水を口に運んだ。

 稲生:「先生に内緒でって思うけど、カードの履歴で分かっちゃうか」
 マリア:「いいんじゃないの?師匠はきっと接待で、これよりもっといい物御馳走されてるよ」
 稲生:「なるほど」

 イリーナがその気になればもう一泊するところなのだろうが、そこまでの気は起きなかったようだ。
 イリーナが1回の占いに掛ける時間は20分前後。
 街角や『占いの館』にいる占い師だと、その時間でだいたい見料5000円くらいが相場。
 しかしイリーナの場合は本当に当たる為、そんな安値ではない。
 いや、依頼料そのものは相場の10倍程度なのだが、それ以外の経費で更にもらう。
 例えば先ほどのタクシー代。
 それと……。

 稲生:「いいのかな?僕達もグリーン車に乗っちゃって……」
 マリア:「その方が師匠を起こしやすいし、だいいち、この場合の費用はクライアントが出してくれてるんでしょ?だったら問題ない。師匠が出すのなら、私達はエコノミークラスに乗らないといけないけどね」

 稲生は秘書から帰りの新幹線のキップをもらった。
 イリーナの依頼通り、グランクラスではなく、グリーン車であったが、それは稲生とマリアの分も含まれていた。
 弟子の身分であれば、師匠より下のランクの席に座らなくてはならないのは常。
 但し、国際線の場合、プレミアムエコノミーが設定されている場合、こちらを充ててくれる場合もある(イリーナ組のように、弟子の一部にマスタークラスがいる場合など)。

 稲生:「この辺、上下関係を感じるね。えーと……何がいいかな。やっぱり定番の定食かな」
 マリア:「仙台に行った時に食べたヤツだね」
 稲生:「そうそう」
 マリア:「どれがお勧めなの?」
 稲生:「僕は味噌味がいいかな。こっちは塩味ね」
 マリア:「分かった。じゃあ、私は塩味」
 稲生:「了解」

 稲生は定食を2つ注文した。

 稲生:「先生はどれくらい稼いで来られるんだろうね」
 マリア:「さあね」
 稲生:「アメリカのトランプ大統領も、占いとか受けてるのかな?」
 マリア:「アメリカを拠点にしている組が依頼を受けたことがあるって言ってたよ」
 稲生:「マジか。もしかして、イギリスも?」
 マリア:「ルーシーから、ベイカー先生がロンドンに何度も足を運んだって聞いた」
 稲生:「このコロナ禍、どんな対策が正解なのか分からないからねぇ……」
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“大魔道師の弟子” 「まずは東京駅へ」

2020-07-14 19:50:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月5日10:00.東京都江東区森下 ワンスターホテル→JR東京駅 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 イリーナ:「はい、鍵」
 エレーナ:「ありがとうございました。またのご利用をお待ち申し上げます」

 チェックアウトの時間になり、イリーナは鍵を2つ、フロントに返却した。

 イリーナ:「それじゃポーリン姉さんに払うお金、アルカディア・ゴッズを用意して待ってるから」
 エレーナ:「はい。後で取りに伺います」
 イリーナ:「ついでにプール入って行けば?」
 エレーナ:「いいんですか?あざーっす!」
 マリア:「師匠!」
 イリーナ:「まあまあ。プールでスカイクラッドもいいものよ」
 マリア:「マジですか……」

 マリアは嫌そうな顔をした。
 そこへ外に出ていた稲生が戻って来る。

 稲生:「先生、タクシーが来ました」
 マリア:「勇太には参加させませんからね」
 稲生:「えっ?何の話?」
 マリア:「何でも無い!」
 エレーナ:「おいおい、マリアンナ。稲生氏がアスモデウスを使いこなせたら、スカイクラッドどころか、ポルノのハーレムだぜ?」
 マリア:「師匠!アスモデウス以外に契約悪魔いないんですか!?」
 エレーナ:「もう内定しちゃってるから、どうしようもないよ。それより、車を待たせてるんだから、早いとこ行こうかね」

 ダンテ一門の綱領に『仲良き事は美しき哉』というものがある。
 もちろん、英語にしたらもっと別のニュアンスになるのだろうが、日本語に訳すると、正にこの武者小路実篤の名言になるのだ。
 何しろ英文が、『How beautiful it is to have good friends.』なのだから。
 その為、門内における恋愛・結婚に関しても特に制限は設けられていない。
 むしろ、日蓮正宗のそれに似た法統相続の概念まであるくらいだ。

 稲生:「こちらです」

 ホテルの外に出ると、黒塗りのハイヤーが止まっていた。
 稲生はイリーナに無断でハイヤーを予約したのだろうか?
 イリーナには、「タクシーを呼べ」と言われたが、「ハイヤーを予約しろ」とは言われていない。
 だが、よく見ると、屋根の上には東京無線の行灯がポンと乗っかっていた。

 運転手:「Please.」

 タクシーではあるので助手席の後ろのドアは自動ドアのはずだが、ハイヤーみたいに運転手が手動で外から開けた。
 しかも英語が話せるらしい。

 イリーナ:「勇太君、タクシーよね、これ?」
 稲生:「そうですよ」

 確かに助手席のダッシュボードの上には『空車』という表示器があり、ちゃんと料金メーターもあった。

 稲生:「料金も普通のタクシーと同じです」
 イリーナ:「そう」
 マリア:「師匠、予算ならありますよね?潤沢に」
 イリーナ:「あるけど、あまりダンテ先生が乗られるハイグレードカーに乗るのは忍びないわ」

 顕正会員が浅井会長の日産シーマより高い車に乗るのは忍びない、或いは法華講員が猊下様のトヨタ・セルシオより高い車に乗るのは忍びないという感覚か?
 ん?あれ?でも、どこかの講頭さんはかつてセルシオより高いベンツに乗っていらっしゃったような……?

 マリア:「大師匠様はリムジンでしょ?だったら大丈夫ですよ」

 しかしこの前の『ダンテ先生を囲む会』では、リムジンではなく、大型観光バスを貸し切って移動した(長距離移動は電車)。

 イリーナ:「そうかねぇ……」

 2人の魔女はリアシートに座り、稲生は助手席に座った。

 稲生:「東京駅までお願いします」
 運転手:「はい。東京駅ですね。東京駅のどこにしましょうか?」
 稲生:「八重洲北口でお願いします」
 運転手:「かしこまりました」

 車が走り出した。
 稲生がスマホを取り出して、何やら操作している。
 今から新幹線などの空席情報を確認しているのだろうか?
 イリーナはそっとマリアに耳打ち。

 イリーナ:「昨夜の『お楽しみ』、ちゃんと避妊したんでしょうね?」
 マリア:「あ、当たり前ですよ。勇太はちゃんとゴムを着けてくれました。も、もう切らしたみたいで、『後で買い足す』とか言ってましたけど……」
 イリーナ:「そう。それならいいんだけど……」
 マリア:「あの、一応分かってますから。結婚もしてないのに妊娠なんかしたら、そりゃ、大騒ぎになりますから」

 ただでさえ人間だった頃、性犯罪の被害者であった魔女達の集まるダンテ一門だ。
 マリアもその仲間だったが、いち早くそのトラウマから抜け出せたことが大注目されている。
 今やもう稲生とは体の関係にまで発展したことは、一部の魔女にも知れ渡っている。
 それが、『本当に恋愛の末の性行為』なのか、『やっぱり稲生の性欲の捌け口による乱暴』なのかで、周囲の対応が変わって来る。
 前者であることを主張する為にも、『その都度、避妊具を着けている』『マリアの嫌がることはしない』という暗黙のルールを設けている。

 マリア:「『レイプされて、できたんじゃないか』ってね」
 イリーナ:「面倒だけど、もっと面倒なことになるのを避ける為だから、ガマンしてね」
 マリア:「分かってますよ。私自身、勇太とまさかこんな関係になれるとは思ってもみなかったんですから」
 イリーナ:「うん、正に奇跡ね」

[同日10:25.東京都千代田区丸の内 JR東京駅 視点:稲生勇太]

 タクシーが降車場に到着する。

 イリーナ:「じゃあ、カードで」
 運転手:「ありがとうございます」

 イリーナが手持ちのクレカで料金を払っている間、稲生とマリアはタクシーを降りた。

 マリア:「どうなの?帰りの新幹線、予約は取れそうなの?」

 マリアは稲生の顔に自分の顔を近づけた。

 マリア:「今度は屋敷に帰ったら……ね?」

 上目遣いに胸元を見せながら、思わせるようなことを言う。

 稲生:「う、うん!……で、ゴメン。ずっと“厳虎独白”見てた」
 マリア:「何読んでんの!?あれでしょ!?今、コメント欄が四つ巴の状態になってるあのブログでしょ!?」
 稲生:「そうそう」
 マリア:「新幹線の空席状況とか見てよ!」
 稲生:「ゴメン」
 イリーナ:「なぁに?痴話ゲンカ?痴情のもつれ?」
 マリア:「違います!」
 稲生:「ま、まあとにかく、出札へ行きましょう」

 稲生達は東京駅の中に入った。
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“大魔道師の弟子” 「ワンスターホテルの朝」

2020-07-14 15:29:03 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月5日06:30.東京都江東区森下 ワンスターホテル 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 マリア:「……!」

 マリアが目を覚ました時、そこは稲生の部屋のベッドの中だった。
 自分は全裸で、稲生も一糸まとわぬ姿でベッドの中にいる。
 昨夜、マリアが稲生の部屋に忍んで行き、そのまま『夜の営み』と相成ったことを思い出す。

 マリア:(替えの下着、もう1つくらいあったっけ……?)

 脱がされてベッドの下に落ちている自分の下着を手に、マリアはバスルームに入った。
 黒いスポブラに同じ色のビキニショーツだが、魔界に行く時は大体こんなスポーティーな下着を着けて行く。
 魔界ではエンカウント(敵に遭遇)して戦闘に入る確率が高く、動き易さと洗濯のしやすさを選んだ為。

 マリア:「汗かいたから、このまま部屋には戻れないか……」

 シャワーで流してから部屋に戻ろうと思った。
 多分イリーナは分かっているだろうが、後でエレーナに冷やかされるのは容易に想像できた。

 マリア:「昔は考えられなかったなぁ……」

 シャワーで流した後、自分の体をミラーに映してみる。
 普通の人間だった頃に受けた暴行の傷痕は、もう全く見当たらない。
 ダンテ一門内でも、『奇跡の魔女』などと呼ばれるくらいだ。
 最初は裏切り者扱いして嫌がらせしてくる者もいたが、今は好意的に捉えてくれる者の方が多い。
 体を拭いてショーツだけ穿いてバスルームから出てくると、ライティングデスクの上に置かれた稲生のスマホのアラームが鳴った。
 何の音楽かは分からないが、恐らく稲生の趣味の鉄道に関するものだろう。
 マリアに複数回子種を発射したことで体力を使い切った稲生は、いつも寝起きが良いのに、今回はあまり良くなかった。

 マリア:「最初の一回は止めてあげよう」

 マリアはアラームを止めた。
 これで稲生が寝坊しないかどうかの懸念だが、スヌーズ機能もあることは分かっている。
 彼氏のスマホもしっかりチェック済み、ということか。

 稲生:「うう……ん……!マリア、おはよう……」
 マリア:「あ、起きた」

 マリアは稲生に背を向けた。
 上半身にはまだ何も身に付けていない。

 稲生:「別に今更隠さなくても……」
 マリア:「セックスの後は恥ずかしいの。というか、したい時以外は」
 稲生:「そういうものか」
 マリア:「そういうものなの。少なくとも、私はね」

 マリアはスポブラを着けると、近くに落ちていた稲生のボクサーパンツを本人に投げ飛ばした。

 マリア:「ほら、勇太も早く服着て」
 稲生:「セックスの後は恥ずかしいんだよ」
 マリア:「HAHAHAHA.」

 マリアは先にブラウスやスカートを穿いた。

 マリア:「……こういう服は気に入ってるけど、そろそろ別の服も着たいなぁ……なんて」
 稲生:「先生が着てるワンピース型のドレスみたいなのとか?」
 マリア:「あれ、私、似合うと思う?」
 稲生:「…………」

 多分、長身かつ出る所出ている体型の女性だからこそ似合う服なのではと……。

 稲生:「ぎ、逆に先生には、マリアのそういうJK制服は申し訳ないけど似合わないと思う」
 マリア:「そりゃそうだ」
 稲生:「だからマリアは、それが一番なんだよ!」
 マリア:「力説どうも。じゃ、私は先に部屋に戻るから、朝食に行く準備ができたら教えてよ」
 稲生:「ああ、分かった」
 マリア:「というか、今日屋敷に帰るの?」
 稲生:「? どうだろう。まだ、帰りの交通手段すら決まってないけど……」
 マリア:「部屋に戻ったら、師匠に聞いてみるよ。……起きていればね」
 稲生:「確率は高いかい?」
 マリア:「低いだろうなぁ……。ゼロとは言わないまでも」

 マリアは苦笑して首を傾げながら答えた。
 そして稲生の部屋を出て、同じフロアにあるイリーナと自分の部屋に戻った。

 イリーナ:「あら、お帰り」
 マリア:「! ただいま、戻りました……」

 部屋に入ると、バスルームからイリーナが出て来た。

 イリーナ:「この時間に帰って来るということは、勇太君と『仲良く』してきたのね。ちょうどシャワー使い終わったから、あなたも使う?」
 マリア:「あ、いえ。さっき、勇太の部屋のシャワーを使わせてもらったので、大丈夫です……」

 低い確率でイリーナが起きていたことにむしろ驚くマリアであった。
 で、閉まっている窓のカーテンを開ける。

 イリーナ:「ちょっとォ、これから着替えるんだから開けないでよ」
 マリア:「失礼しました。……うん、やっぱり外は雨ですね」
 イリーナ:「ツユの時期だから、しょうがない」

 イリーナは、明らかにマリアのよりは値段も高く、セクシーさもある下着を身に付けた。

 マリア:「今日、屋敷に帰るんですか?師匠、一晩休んだんだから、屋敷に帰るまでのMPも回復したでしょうからね」
 イリーナ:「魔法は無闇やたらに使うものじゃないのよ。さもないと、いざ本当に必要な時にMP不足で使えませんってことになったら大変だからね」
 マリア:「でも使わないと、技術向上はできません」
 イリーナ:「それはあなたみたいな修行中のコが対象よ。確かにあなたはマスターにはなったけど、まだまだ駆け出しなんだからね。むしろマリアが率先して魔法を使うようにしなきゃ。で、マリアの魔法で屋敷まで帰れる?しかも私や勇太君も連れて」
 マリア:「Sorry.I can not do it,maybe.」
 イリーナ:「勇太君に帰りの公共交通機関の選定を任せて、それで帰るしかないわね」
 マリア:「今日中に帰れるでしょうか?」
 イリーナ:「別に、もう一泊してもいいのよ。魔界のことはナスっちやマルファ、そしてポーリン姉さんに任せるしかない。もう私達にできることはないから」
 マリア:「はあ……」

[同日08:00.ワンスターホテル1Fロビー 視点:稲生勇太]

 朝の勤行を終えた稲生は先にロビーに下りて、そこでマリアとイリーナを待っていた。
 その時、フロントにいるエレーナと話す。

 エレーナ:「勇太が一人前になって、アスモデウスと本契約を結んだら、ガチで恐ろしいことになりそうだぜ」
 稲生:「えっ、そうなの?」
 エレーナ:「気づいてねーのかよ」
 稲生:「まあ、MPの上限は上がったっぽいけど……」
 エレーナ:「そういうことじゃねーぜ。アスモデウスがどんな悪魔だか知ってるよな?」
 稲生:「キリスト教に出てくる七つの大罪の悪魔の1つで、“色欲”を司るわけでしょ?」
 エレーナ:「それだけか?アンタがアスモデウスを使いこなせれば、女を食い漁ることなんて造作も無いんだぜ?」

 エレーナは口元を歪めて言った。

 稲生:「でも後で怖いことなりそうだ。そういうことも知ってて言ってるだろ?」
 エレーナ:「HAHA,知ってるならいいぜ。但し、それは普通の人間が契約した場合だぜ。魔道士が契約して使う場合は……【お察しください】」
 稲生:「怖いことは勘弁だよ。僕はマリアと一緒になれれば、それでいいんだ」
 エレーナ:「マリアンナも幸せ者だな。マリアンナに飽きたら、遊び相手として私も付き合うぜ?」
 マリア:「あぁ!?何の話だ!?」

 エレベーターのドアが開いて、マリアとイリーナが出て来た。

 エレーナ:「よぉ。『ゆうべはおたのしみでしたね』」
 マリア:「うるさいな」
 エレーナ:「羨ましい限りだぜ。私も混ぜてくれよ?」
 マリア:「アホか!鈴木と『たのしん』でろ!」
 エレーナ:「つれないなぁ……」
 マリア:「ほら、勇太!さっさと行こう!」

 マリアは稲生の腕を掴んで引っ張った。

 稲生:「は、はい!」

 そして、朝食会場であるレストラン“マジックスター”へと向かった。
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