[12月23日10時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
愛原「いよいよ、今日でリサ達の2学期の終業式です」
善場「今日、沖縄から我那覇絵恋さん達が上京してくるのですね?」
愛原「その予定です。LCCで来るらしく、到着は成田です」
善場「承知しました」
愛原「リサの話では、絵恋さんに付いてくるのは、『四天王兼副総督』です」
善場「なんとも陳腐な役職ですね。で、どんなコですか?」
愛原「名前が斉藤早苗」
善場「斉藤……?」
愛原「はい。写真だと、このコですね」
私はスマホの画面を善場主任に見せた。
これは我那覇絵恋さんが撮影したものをリサのスマホに転送し、そこから更に私のスマホに転送されたものである。
善場「うーん……」
見た目はリサに雰囲気が似ているコだった。
だからこそ、絵恋さんも仲良くできたのかもしれない。
善場「斉藤早苗……」
愛原「どうかしましたか?」
善場「何か、引っ掛かる名前ですね」
愛原「ですよね。斉藤という苗字はけして珍しくはないですが、絵恋さんの旧姓や斉藤玲子の……」
善場「あ、いえ、そこではないです」
愛原「えっ?」
善場「何か、キーマンとしての人物の名前に、似たような人物がいたような気がしたのですよ」
愛原「そうなんですか。リサは知りませんかね?」
私はリサにLINEを送ってみたが、終業式の最中なのか、すぐには返信は来なかった。
善場「それで、これから迎えに行かれるのですね?」
愛原「はい。向こうも終業式が終わってから、那覇空港に向かうようですが、実際の所は向こうを夕方に離陸する飛行機のようです」
善場「ということは、成田に到着するのは夜ですね。そこからマンションに向かうのですか?」
愛原「いえ。さすがに夜も遅くなるので、成田空港近くのビジネスホテルに1泊してから戻ろうと思います。幸い東横インのカードは持っているので……」
善場「ああ、そうですか……」
善場主任は半ば呆れた様子で、お茶を啜った。
もう少し高級なホテルに泊まれんのかい、と言いたげな顔だ。
善場「んんっ?!」
愛原「えっ!?」
善場「ああーっ!」
その時、善場主任がいつものポーカーフェイスとは違う表情を見せてくれた。
年に1回あるかないかだ。
愛原「ど、どうしました!?お茶に何か異物でも!?」
高橋「お、俺、何もしてないっスよ!?」
善場「斉藤早苗って、あれです!白井伝三郎の同級生で、“トイレの花子さん”だったコ!」
愛原「ああっ!」
高橋「あいつか!」
私達の脳裏に、夏用の半袖セーラー服を着て、白い仮面を着けた“トイレの花子さん”が浮かんだ。
正体は白井伝三郎の高校時代の同級生。
イジメを苦に東京中央学園の旧校舎女子トイレで首吊り自殺。
それ以来、白井が旧校舎の壁に仕掛けた特異菌によって、幻覚症状に陥った学校関係者達の前に“幽霊”として現れるようになる。
遺体そのものは火葬されて都内の墓地に埋葬されていたが、その骨壺を白井が強奪。
自身が開発した新薬と、公一伯父さんが開発した化学肥料を合成し、骨からでも遺体を蘇生させる妙薬を開発した。
どういう原理なのかは不明だが、白井はどうも『転生の儀』を行ったらしい。
即ち、白井は斉藤早苗の体を乗っ取ろうとしたわけである。
方法は違うが、似たようなことをしようとした人物が過去にもいた(直近では2011年のアレクシア・ウェスカー)から、アンブレラ界隈では珍しいことではないのかもしれない。
噂では、アレクシア・ウェスカーの『転生の儀』は成功したとされている。
そして、日本では白井の『転生の儀』が成功しているとされている。
その白井が乗っ取っているはずの斉藤早苗が、ここに来ようとしている……!
善場「愛原所長!私も同行します!どこのホテルですか!?」
愛原「と、東横インです。成田空港の」
善場「私も予約します!」
愛原「で、ですが、もう部屋は満室になっていますよ?」
善場「な、何ですって!?因みに、どの部屋に泊まるかは……」
愛原「いや、分かりませんよ。特に、指名買いをしているわけではありませんので」
善場「分かりました」
善場主任は自分のスマホを取り出し、どこかに電話していた。
ま、まさか、ここで何がしかの国家権力を発動するつもりだろうか?
善場主任は、しばらく電話でどこかと話をしていた。
それから、ようやっと電話を切る。
善場「愛原所長」
愛原「何ですか?」
善場「成田空港への足は、確保されていますか?」
愛原「いえ、まだです。予定としては都営新宿線で本八幡まで行き、そこから京成線で向かおうと思っていますが……」
善場「分かりました。それでは、往路のみ私共で車を出しましょう。それで、一緒に向かいましょう」
愛原「いいんですか?」
善場「はい。ただ、私がエージェントであることが向こうにバレては大変です。同じホテルには泊まりますが、空港到着後は別行動としましょう。それでよろしいですか?」
愛原「あ、はい。分かりました。……1つ、質問よろしいですか?」
善場「何でしょうか?」
愛原「『魔王軍沖縄支部』が上京したら、ウィルス検査をするとリサには伝えてあるんですよ。そして、そのことは既にリサから向こうにも伝わっているはずです。斉藤早苗は、それを100も承知で来るということになりますが、それについてはどうお考えですか?」
善場「要は自然な形で会えば良いのです。私が空港や同じホテルにいることは不自然でしょうが、検査場でもある浜町のクリニックやこの事務所にいること自体は不自然ではないでしょう。ウィルス検査を指示したのは私ですし、私は愛原所長のクライアントです」
愛原「なるほど」
善場「今しがたBSAAにも連絡しました。もしも斉藤早苗がその姿をした白井伝三郎であるなら、それを確認次第確保します」
愛原「そ、それで、私達の対応としては?」
善場「何も知らずに対応してください。愛原所長方は斉藤早苗を、そのまま斉藤早苗本人だと思って接してください。けして、白井伝三郎に正体が知られているとバレてはいけません」
愛原「わ、分かりました。というわけだ。分かったな、高橋?」
高橋「うス……」
そのことはリサにも伝えておかなくてはならないだろうが、下手にLINEしてその履歴を斉藤早苗が見たりしたらマズいので、リサが帰宅時に口頭で伝えることにした。
愛原「いよいよ、今日でリサ達の2学期の終業式です」
善場「今日、沖縄から我那覇絵恋さん達が上京してくるのですね?」
愛原「その予定です。LCCで来るらしく、到着は成田です」
善場「承知しました」
愛原「リサの話では、絵恋さんに付いてくるのは、『四天王兼副総督』です」
善場「なんとも陳腐な役職ですね。で、どんなコですか?」
愛原「名前が斉藤早苗」
善場「斉藤……?」
愛原「はい。写真だと、このコですね」
私はスマホの画面を善場主任に見せた。
これは我那覇絵恋さんが撮影したものをリサのスマホに転送し、そこから更に私のスマホに転送されたものである。
善場「うーん……」
見た目はリサに雰囲気が似ているコだった。
だからこそ、絵恋さんも仲良くできたのかもしれない。
善場「斉藤早苗……」
愛原「どうかしましたか?」
善場「何か、引っ掛かる名前ですね」
愛原「ですよね。斉藤という苗字はけして珍しくはないですが、絵恋さんの旧姓や斉藤玲子の……」
善場「あ、いえ、そこではないです」
愛原「えっ?」
善場「何か、キーマンとしての人物の名前に、似たような人物がいたような気がしたのですよ」
愛原「そうなんですか。リサは知りませんかね?」
私はリサにLINEを送ってみたが、終業式の最中なのか、すぐには返信は来なかった。
善場「それで、これから迎えに行かれるのですね?」
愛原「はい。向こうも終業式が終わってから、那覇空港に向かうようですが、実際の所は向こうを夕方に離陸する飛行機のようです」
善場「ということは、成田に到着するのは夜ですね。そこからマンションに向かうのですか?」
愛原「いえ。さすがに夜も遅くなるので、成田空港近くのビジネスホテルに1泊してから戻ろうと思います。幸い東横インのカードは持っているので……」
善場「ああ、そうですか……」
善場主任は半ば呆れた様子で、お茶を啜った。
もう少し高級なホテルに泊まれんのかい、と言いたげな顔だ。
善場「んんっ?!」
愛原「えっ!?」
善場「ああーっ!」
その時、善場主任がいつものポーカーフェイスとは違う表情を見せてくれた。
年に1回あるかないかだ。
愛原「ど、どうしました!?お茶に何か異物でも!?」
高橋「お、俺、何もしてないっスよ!?」
善場「斉藤早苗って、あれです!白井伝三郎の同級生で、“トイレの花子さん”だったコ!」
愛原「ああっ!」
高橋「あいつか!」
私達の脳裏に、夏用の半袖セーラー服を着て、白い仮面を着けた“トイレの花子さん”が浮かんだ。
正体は白井伝三郎の高校時代の同級生。
イジメを苦に東京中央学園の旧校舎女子トイレで首吊り自殺。
それ以来、白井が旧校舎の壁に仕掛けた特異菌によって、幻覚症状に陥った学校関係者達の前に“幽霊”として現れるようになる。
遺体そのものは火葬されて都内の墓地に埋葬されていたが、その骨壺を白井が強奪。
自身が開発した新薬と、公一伯父さんが開発した化学肥料を合成し、骨からでも遺体を蘇生させる妙薬を開発した。
どういう原理なのかは不明だが、白井はどうも『転生の儀』を行ったらしい。
即ち、白井は斉藤早苗の体を乗っ取ろうとしたわけである。
方法は違うが、似たようなことをしようとした人物が過去にもいた(直近では2011年のアレクシア・ウェスカー)から、アンブレラ界隈では珍しいことではないのかもしれない。
噂では、アレクシア・ウェスカーの『転生の儀』は成功したとされている。
そして、日本では白井の『転生の儀』が成功しているとされている。
その白井が乗っ取っているはずの斉藤早苗が、ここに来ようとしている……!
善場「愛原所長!私も同行します!どこのホテルですか!?」
愛原「と、東横インです。成田空港の」
善場「私も予約します!」
愛原「で、ですが、もう部屋は満室になっていますよ?」
善場「な、何ですって!?因みに、どの部屋に泊まるかは……」
愛原「いや、分かりませんよ。特に、指名買いをしているわけではありませんので」
善場「分かりました」
善場主任は自分のスマホを取り出し、どこかに電話していた。
ま、まさか、ここで何がしかの国家権力を発動するつもりだろうか?
善場主任は、しばらく電話でどこかと話をしていた。
それから、ようやっと電話を切る。
善場「愛原所長」
愛原「何ですか?」
善場「成田空港への足は、確保されていますか?」
愛原「いえ、まだです。予定としては都営新宿線で本八幡まで行き、そこから京成線で向かおうと思っていますが……」
善場「分かりました。それでは、往路のみ私共で車を出しましょう。それで、一緒に向かいましょう」
愛原「いいんですか?」
善場「はい。ただ、私がエージェントであることが向こうにバレては大変です。同じホテルには泊まりますが、空港到着後は別行動としましょう。それでよろしいですか?」
愛原「あ、はい。分かりました。……1つ、質問よろしいですか?」
善場「何でしょうか?」
愛原「『魔王軍沖縄支部』が上京したら、ウィルス検査をするとリサには伝えてあるんですよ。そして、そのことは既にリサから向こうにも伝わっているはずです。斉藤早苗は、それを100も承知で来るということになりますが、それについてはどうお考えですか?」
善場「要は自然な形で会えば良いのです。私が空港や同じホテルにいることは不自然でしょうが、検査場でもある浜町のクリニックやこの事務所にいること自体は不自然ではないでしょう。ウィルス検査を指示したのは私ですし、私は愛原所長のクライアントです」
愛原「なるほど」
善場「今しがたBSAAにも連絡しました。もしも斉藤早苗がその姿をした白井伝三郎であるなら、それを確認次第確保します」
愛原「そ、それで、私達の対応としては?」
善場「何も知らずに対応してください。愛原所長方は斉藤早苗を、そのまま斉藤早苗本人だと思って接してください。けして、白井伝三郎に正体が知られているとバレてはいけません」
愛原「わ、分かりました。というわけだ。分かったな、高橋?」
高橋「うス……」
そのことはリサにも伝えておかなくてはならないだろうが、下手にLINEしてその履歴を斉藤早苗が見たりしたらマズいので、リサが帰宅時に口頭で伝えることにした。