報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「週末くらいは穏やかに」

2024-11-11 12:11:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日19時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 愛原「ご馳走様。俺は腹一杯だが、リサはどうだ?」
 リサ「腹八分目って言うからね」
 愛原「やっぱりそうか……」
 リサ「あっ、洗い物はわたしがやるー」
 パール「そうですか。それでは、私は先生に食後のコーヒーを……」
 愛原「悪いな」

 もちろん、自分の食器くらいはキッチンに持って行く。

 パール「ところで先生、思ったより長い時間、事務所にいらっしゃったようですが……」
 愛原「ああ。顧客の1人から、不動産関係の調査の話があってね。今は高橋がいなくて人手不足状態だから、あんまりすぐには受けられない感じだとは話したんだけど……」
 パール「もしアルバイトが必要なら、私の知り合いを紹介しますよ?マサほどの人脈はありませんが、何人かくらいなら頼めます」
 愛原「ありがとう」
 リサ「わたしも『魔王軍』手配するー!」
 愛原「高校生のバイトじゃ、色々と制約があるからなぁ……」

 コーヒーメーカーで作ったコーヒーができたので、パールはそれを入れてくれた。
 事務所の方では顧客にすぐに出せるよう、ネスカフェバリスタを設置しているが、家用はコーヒーメーカー。

 愛原「ありがとう」
 パール「実は先生、私、金曜日にマサの所に面会に行きました」
 愛原「ああ、何か言ってたね、LINEで。どうだった?」
 パール「マサは相変わらずでしたが、手紙を出したそうです、こちらに」
 愛原「金曜日に出したから、月曜日に届くのか?」
 パール「はい。それを読んで頂きたいとのことです」
 愛原「拘置所は手紙の検閲をするから、あんまり変な事を書いていると差し止めされるぞ」
 パール「そこはギリギリのチキンレースでしょう」
 愛原「面会の時、何か言ってなかったか?“コネクション”の事とか?」
 パール「そこは何も……。私もそれとなく、『先生方がその辺りを気にしてる』と言ったのですが、マサのヤツ、目を泳がせるだけで、何も言いませんでした」

 真相を話すと、例え拘置所でも消されるってか。

 パール「あと、『アネゴに“青いアンブレラ”に来ないかって勧誘されたことがある。先生にバレると思って断ったけど、むしろ受けてた方が良かったのかもな』と言ってました」

 実は私、高野君が“青いアンブレラ”のメンバーだと分かった時、もしかして高橋も……?と、疑ったことがある。
 だが、そんな証拠は全く見つからなかったし、面と向かって高野君に聞いたが、堂々と否定されたので信じていた。
 ただ、あの時の高野君、含みのある表情をしていたが、そういうことだったのか。
 『高橋は“青いアンブレラ”のメンバーではない。けども、誘ったことはある』と。
 “青いアンブレラ”は表向き、“赤いアンブレラ”が世界中に蒔いてしまったバイオテロの種を回収し、発芽していたらそれを引き抜き、草木になっていたらそれを伐採するという活動内容である。
 つまり、バイオテロが発生したら、それを鎮圧しに行ったり、それを起こそうとするテロ組織があったら、それを潰しに行ったりするのが目的だ。
 そう、BSAAと活動内容が被るのである。
 BSAAは今や国連軍の一派となっているが、“青いアンブレラ”は世界的な民間軍事会社に過ぎない。
 そして当然ながら日本では、民間軍事会社の存在は認められないので非合法である。
 現時における世界的なバイオテロ組織である“コネクション”とは、敵対関係になるはずだ。
 噂では、“コネクション”の総帥も元“赤いアンブレラ”らしい。
 もし高橋が“コネクション”のメンバーだったとしたら、“青いアンブレラ”に移るということは……あー、裏切り行為で殺処分か。

 愛原「まあ、“コネクション”も裏切り者には厳しいだろうからな、それは仕方が無い」

 仮に例え闇バイトだったとしても……ん?
 闇バイトってさ、基本的に単発、短期のバイトじゃないか?
 私が高野君に聞いたのは、だいぶ前の話だぞ?
 その時から既に高橋が“コネクション”の関係だったとしら……闇バイトどころじゃないかもなぁ……。

 愛原「あいつは暫く、拘置所に入っていた方が安全かもしれん」
 パール「先生?」
 愛原「どうせ日本の裁判ってのは遅いんだ。もちろん執行猶予が付くように努力はするが、安全の為にもな……」

 私はコーヒーを口に運んだ。
 それにしても高橋のヤツ、どんな手紙を送って寄こすのだろう?

 愛原「リサ、後で『足ツボ』マッサージよろしく」
 リサ「りょーかい!」

 リサが唯一、人間の血肉を摂取することを黙認されている行為。
 指先を変化させて、血中老廃物と血液を摂取するのである。
 こちらとしては、多少血液を吸われても何がどうなるというわけでもなく、結果的には老廃物は吸い出されて、血液はサラサラになっているという寸法だ。
 但し、酔っ払っている場合は別。
 血中アルコールをリサも吸い取ることになる為、リサ自身も酔っ払う。
 そして、“鬼ころし”以外の酒を摂取すると悪酔いして、想定外の変化を起こしてしまう為、禁止されている。

[同日22時00分 天候:晴 愛原家3階リビング]

 
(画像はBluesky“こんいろ保存会”様より)

 リサ「お風呂出たよー」
 愛原「おーう」

 バスルームからリサが出て来た。
 体操服とブルマは換えたのだろうか?
 見た目は同じ色合いだが……。

 愛原「入浴剤、どうだった?」

 私は足柄サービスエリアで、お土産用の入浴剤を買っていた。
 箱根湯本温泉のそれをモチーフにしたものらしい。

 リサ「うん、本物の温泉に行きたくなった」
 愛原「そうか。まあ、本物の温泉自体は先日、既に入ってるんだがな」
 リサ「ああ、あれ。まあ、そうだねぇ……」

 富士宮市内で一泊したスーパーホテルには大浴場があり、しかも天然温泉とのことなのだが、リサ的には拘束されていた場所から出たばかりということもあり、疲労の方が強くて、あまりゆっくり入れなかったようだ。

 愛原「高橋に執行猶予が付いて、無事に出て来られたら、お祝いに皆で温泉旅行にでも行くか」
 リサ「いいねぇ!」
 愛原「というわけで、次は俺が入ることになるな」
 パール「どうぞ、ごゆっくり」
 リサ「わたしの残り湯、楽しんでねw」
 愛原「何だそりゃ……」

 私は呆れながらバスルームに向かった。

 リサ「あ、でも、わたしは先生の残り湯に浸かりたかったなー」

 という言葉を背にしながら。

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