萌えてばかりもいられない!

そんなに色々なことにやたらと深い造詣などいだけないから適当に綴っていこうかしらん

雷神の筒 読了

2011-08-24 05:31:44 | プチ萌え
あとがきを読んで、『まじ?そこまで』と感じてしまうほどの小説でした。

信長の色々な功績というか考えや着想のいくつかは、この小説の主人公、橋本一巴(いっぱ)の進言によるものという構成で描かれているので、どこまでこの人物の来歴があるかということに触れられたあとがきの内容を見て愕然とした。まぁいい意味で。

信長に鉄砲指南した様子が幾度か出てくるのと、弓矢の名手と戦場で対決した人物であることまでが文献に書かれていて、そこから先の消息が出てこないので、「生かした」形で石山本願寺落城までを描いたということらしい。

しかも山本兼一氏の着眼は、

・塩硝という火薬の輸入経路や自国内生産に到るまでの過程に着目したり、(多分予測した上での創作(フィクション))

・鉄砲・大砲への製造の変遷をこの橋本一巴の発想で転がしたり、

・長篠の戦い、三段構えの鉄砲隊というものを疑って別の戦場風景を描いたり、

ということから、鉄砲隊の創設者という位置付けの男を描くことで、その周辺への創作を容易にしたという感じであった。

いっしん虎徹で描かれた江戸時代よりも、戦国ものの方が好きではあるが、職人と軍人では少し書き方が違っていて、私は山本兼一氏の描く職人の風景が好きなのだと明確に体感できた。

ただ、この雷神の筒で描く「鉄砲」という武器が、どのような人物にどのような欲を齎し、どのような時代に「偶々(たまたま)」着弾したのかという点で面白い読み物である。そして上にも書いた「長篠の戦い」とは、持つ者と持たざる者の戦いなのではないという部分を、物語の途中(後半ではあるが)で丁寧に描いて世に示したかったという作者の想いに触れることが出来たのは良かったと思う。





以前にも書いたが、本当に膨らませる、歴史書の端に出てくるような人物を。いい意味で、この作家は!

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