ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫) | |
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アスキー・メディアワークス |
第4巻は、図書館で借りるとしたら相当後になりそうだったので、つい購入してしまった。この巻では、江戸川乱歩の作品を取り上げていると知ったので、早く読みたくなってしまったのだ。文庫本だから、購入するにあたっての高値感はない。
今までの巻では、著者が違う数冊の作品を取り上げていたが、この第4巻では、すべて江戸川乱歩の作品・著書である。取り上げられた作品は、『孤島の鬼』『少年探偵団』『押絵と旅する男』であるが、小説中では『二銭銅貨』のトリック、『人間椅子』『大金塊』の趣向も明かしている。
江戸川乱歩と言ったら、日本の探偵小説の大御所である。このペンネームはアメリカの文豪エドガー・アラン・ポーをもじったものであるのは有名な話だ。子供のころ読んだ『少年探偵団』シリーズで、明智小五郎と怪人二十面相の対決に心を躍らせ、推理小説、ミステリー小説のファンになってしまったといっても過言ではない。自分の蔵書の中で揃っているのは、唯一「江戸川乱歩全集」だけだ。
さて、『ビブリア古書堂の事件手帖』ではどんな味付けで「江戸川乱歩」を取り上げていたのかというと、江戸川乱歩の膨大なコレクションを持つ人物から、それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいという依頼をビブリア古書堂の二人が受けて、立ち向かうという話だ。金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいる。そして、今まで謎の人物だった栞子の母が登場し、美しき女店主とその母の二人の知恵比べの様相を呈してくるというのがポイントだ。
まず最初は、栞子にカバーがかけられた江戸川乱歩の初版本が示される。依頼主は、本に触れずに書名を回答することを求める。これは依頼にあたっての鑑定眼のテストであり栞子は『孤島の鬼』だと見事正解する。『孤島の鬼』がどんな話だったかは、まったく覚えていないが、こんな風に乱歩作品が登場してくるのが面白い。
次に登場するのは「少年探偵団」に関するエピソードだ。登場人物が子供時代「少年探偵団」ごっこをして遊んでいたという話や、BDバッジを集めていたなんて言うのは懐かしい。Bは Boy、Dは Detectiveの略で「少年探偵」を表す。小学生の時、「少年探偵団」シリーズを読み漁ったものだが、今でもあの怖い表紙が懐かしい。「青銅の魔人」とか「妖怪博士」等おどろおどろした傑作が一杯あった。夜になると、暗闇からこれらのキャラクターが出てきそうで、昼間の明るい時でないと読めなかった。それでも、怖いもの見たさに,何冊もよく読んでいたものだ。
最後は、『押絵と旅する男』を絡めた暗号解読に至るまでのお話だ。栞子がトリックを見破り暗号解読までに至るが、その後の顛末まで含めて江戸川乱歩の傑作『二銭銅貨』そのものだという。確かに江戸川乱歩へのオマージュと言える作品になっているようだ。『二銭銅貨』も何十年前に読んでいたはずだが、もうどんな話だったか覚えていない。もう一度読み直してみたくなった。
暗号を解読して、金庫を開けると『押絵と旅する女』という原稿が入っていた。どうやらこれは乱歩ファンのコレクターが恋人の為に書いたもので、乱歩直筆の原稿ではなかったというオチなのだが、これで一件落着ではなかった。実は、その原稿の中には、乱歩直筆の『押絵と旅する男』が本当に入っていたかもしれないという栞子の母親の指摘で、物語はさらに続いていく。
古書を巡る栞子と母親との関係がさらにどうなっていくのだろうか。そして、大輔との関係はさらに深まるのか。このシリーズも第4巻で中盤を終えたらしい。今後も、どんな古書を絡めたお話になっていくのか気になる面白い作品である。