チェック:人気作家・東野圭吾が原子力発電所を題材に1995年に発表した傑作小説を、堤幸彦監督が映画化した社会派サスペンス。最新鋭の大型ヘリを手に入れたテロリストが、日本全国の原発の停止を求め稼働中の原発上空でホバリングさせるテロ事件を描く。困難な直面に立ち向かうヘリコプター設計士を江口洋介、原子力機器の設計士を本木雅弘が演じ、初めての共演を果たす。東日本大震災による原発事故を経験した日本において、改めて社会と人間の在り方を問う衝撃作。(シネマトゥデイより)
ストーリー:1995年夏、愛知県の錦重工業小牧工場から防衛庁へ納品する最新の設備を搭載したヘリコプターが、正体不明の人物によって奪われてしまう。やがて遠隔操作されたヘリは稼働中の高速増殖炉の上空でホバリングを開始し、テロリストが日本全国の原発停止を求める犯行声明を出す。さらに、ヘリ内に子供がいることがわかり……。(シネマトゥデイより)
東野圭吾作品の映画化である。もう何年か前に読んだ作品だが、その時もヘリコプターが乗っ取られ、原発の下に落下させるという内容が、まさに9.11のテロを予想させる内容だけに、さすが東野圭吾は先見性のある凄い作家だと思ったものだった。ただ、ヘリに残された少年の救出シーンやヘリが原発の上でホバリングしているシーンなど、作品が出た当時は映画化が難しいとされていただけに、今回出版されてから20年ぶりに映画化されたという点は感慨深い。
この作品では、稼働している原発に航空機やヘリが墜落したときの危険性がどれだけのものなのかという事、テロリズムに対する日本の危機管理は大丈夫なのかという事、技術者は、ただ技術の向上を目指すだけでどんな事に使われるかということは考えなくていいのかという事、わかっていても声を上げない一般市民の事、親と子供の関係はどうあるべきなのかという事など、いろんなテーマが含まれ、一級のエンターテイメント作品になっていた。
前半は、ヘリに残された少年を救うために、自衛隊員が空中で決死の救出作業を行うシ-ンにハラハラドキドキする。この辺は、特に映像化が難しかったシーンだったのだろう。そして後半は、タイムリミットを迎えヘリが原発の真下に落下していくシーンだ。果たしてどうなるのか(原作読んで知ってはいるが…)?とにかく、最後までハラハラドキドキさせてくれた。
キャストは、江口洋介と本木雅弘のダブル主演といってもいい。この二人の年齢を重ねた渋みが一段と作品の重みを感じさせてくれる。また、脇を固める國村隼、柄本明、石橋蓮司、佐藤二朗、光石研、竹中直人、仲間由紀恵などのベテラン俳優も多数出演している。そして、最近売り出しの綾野剛や向井理なども重要な役で出演しており、豪華キャストが勢ぞろいしている。久々に、見に行ってよかったと思える邦画作品だった。