空色勾玉 (徳間文庫) | |
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白鳥異伝 上 (徳間文庫) | |
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薄紅天女 上 (徳間文庫) | |
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上橋菜穂子、小野不由美から始まった日本のファンタジー作家読み比べは、荻原規子までたどり着いた。上橋菜穂子の守り人シリーズや獣の奏者などは圧倒的に面白かった。また、小野不由美の十二国記シリーズは、三国志や水滸伝のような古代中国を連想させる時代背景でスケールの大きい作品だった。ただ、最後によんだ「残穢」という作品は、書評を書くのも躊躇したくなる怖い内容だっただけに、これ以上は踏み込みたくない。そして、今回、荻原規子の代表作である勾玉シリーズの『空色勾玉』(そらいろまがたま)、『白鳥異伝』(はくちょういでん)、『薄紅天女』(うすべにてんにょ)の3部作をすべて読み終えたところだ。
勾玉シリーズの『空色勾玉』は、荻原規子のデビュー作となった作品で、日本神話をモチーフにしたファンタジー小説である。以後の『白鳥異伝』・『薄紅天女』と合わせて勾玉三部作、勾玉シリーズと称されており、順番に読んだほうが物語の厚みが出てくるはずだ。いずれも、勾玉を持つ者の不思議な力をテーマにし、日本書紀や古事記を連想させるが、読みやすくワクワクするほど面白い作品であった。
『空色勾玉』作品内容(「BOOK」データベースより)
輝の大御神の双子の御子と、闇の氏族とが烈しく争う戦乱の世に、闇の巫女姫と生まれながら、光を愛する少女狭也。輝の宮の神殿に縛められ、地底の女神の夢を見ていた、〈剣の主〉稚羽矢との出会いが、狭也を不思議な運命へと導く…。神々が地上を歩いていた古代の日本を舞台に、絢爛豪華に織り上げられた、人気沸騰のファンタジー。
古事記や日本書紀をモチーフにした作品で輝の神と闇の女神の二神は、イザナギ・イザナミを連想させる。また、照日王、月代王、稚羽矢は、アマテラス、ツクヨミ、スサノオの三姉弟を想起させ、古代日本の神々が人間くさく親しみやすい文体で書かれているので、古事記を読むような難解さはない。豊葦原と呼ばれる場所がどこなのか気になった。
『白鳥異伝』作品内容(「BOOK」データベースより)
双子のように育った遠子と小倶那。だが小倶那は“大蛇の剣”の主となり、勾玉を守る遠子の郷を焼き滅ぼしてしまう。「小倶那はタケルじゃ。忌むべきものじゃ。剣が発動するかぎり、豊葦原のさだめはゆがみ続ける…」大巫女の託宣に、遠子がかためた決意とは…?ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジーが幕を開ける!日本のファンタジーの金字塔「勾玉三部作」第二巻。
「勾玉三部作」の中では、最も長編だ。ヤマトタケル伝説を下敷きにしたということで、日本全国に散らばった5つの勾玉を探し集めるというのが面白い。勾玉が全部揃うととてつもない力を得られるというのが、いかにもファンタジーっぽくっていい。ドラゴンボールとか、八犬伝でも玉を集めると大きな力が得られるお話だったが、全部揃ったらどうなるのだろうかというワクワク感が良かった。また、登場人物も魅力ある人物が多い。
『薄紅天女』作品内容(「BOOK」データベースより)
東の坂東の地で、阿高と、同い年の叔父藤太は双子のように十七まで育った。だがある夜、蝦夷たちが来て阿高に告げた…あなたは私たちの巫女、火の女神チキサニの生まれ変わりだ、と。母の面影に惹かれ蝦夷の地へ去った阿高を追う藤太たちが見たものは…?“闇”の女神が地上に残した最後の勾玉を受け継いだ少年の数奇な運命を描く、日本のファンタジーの金字塔「勾玉三部作」第三巻。
前作からさらに時代が遡り、奈良時代末期のお話となる。更級日記(特に竹芝伝説)とアテルイ伝説をモチーフにしたとされ、征夷大将軍となった坂上田村麻呂やのちの空海が登場してくるのも興味深い。京の都に跳梁跋扈する怨霊を倒すには、やはり「明玉(勾玉)を持つ天女」の力が必要となるのだ。双子のように育った阿高と藤太、兄を怨霊から護るため男装して都を出た少女・苑上(そのえ)が、それぞれの目的を果たせるのかが気になって最後まで読み進んでしまう。