沈まぬ太陽 文庫 全5巻 完結セット (新潮文庫) | |
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山崎豊子といえば、『白い巨塔』『華麗なる一族』『大地の子』『沈まぬ太陽』等、実在する事件や社会問題、権力の暗部などを扱った作品が多く、代表作のほとんどが映画化やドラマ化されている大ベストセラー作家だ。作品の名前を聞けば、ほとんどの人が聞いたことがあるはずで、作品を読んでいる人も多いだろう。
今まで、このような大ベストセラー作品は、あえて読んでこなかった私だが、『沈まぬ太陽』が、来月からWOWOWで開局25周年記念として全20話で放送されることになったと知って驚いた。この作品は、日本企業の労使問題や日航機墜落事故を一つのモデルとして描かれたもので、作品発表当時は日本航空の反発が大きく、2009年に映画化されたものの完成させるまでは、大変な苦労があったらしい。ましてや、テレビドラマ化なんてスポンサーのシガラミがある民放では、まず映像化不可能だとさえ言われていたという。それが、全20話という長さで、完全ドラマ化されるというのは凄い。こういった社会派ドラマを積極的に制作しているWOWOWのドラマは、良質な作品が多いのも事実だ。
まだ、ドラマの放送は先だが、やはり原作を改めて読んでみたいと思い、第1部の「アフリカ編」から読み始めている。なぜ最初が、アフリカというと、主人公の恩地元が、アフリカに左遷され象狩りをしているところから始まるからだ。国民航空ナイロビ営業所に勤務する恩地は、なぜアフリカにいるようになったかが、回想形式で描かれる。恩地は、国民航空の労働組合委員長として友人の副委員長の行天四郎とともに、死亡事故が起きるほど劣悪な労働環境の改善を目指し経営陣と激しく対立する。その結果、組合委員長に任期を終えたあと、「現在の流刑」にも等しい左遷人事に晒されカラチ、テヘラン、そしてナイロビへと海外の僻地に足掛け8年に亘る海外赴任が続いている。その間、母親と死別、家族と別れる等、不遇なサラリーマン生活が続くが、友人の行天四郎は、価値観の違いから恩地と袂を分ち出世街道を進んでいく。信念を曲げずに生きていくことが、いかに大変なことかという事を思い知らされる内容だ。
第2部「御巣鷹山篇」では、国民航空機が起こした「国航ジャンボ機墜落事故」の遺族対応係として家族を事故によって失った人々へ誠実に対応する恩地の姿と遺族の悲しみが描かれ、第3部「会長室篇」では、国民航空の再生措置として関西の紡績会社会長、国見正之が会長に据えられる。国見会長は誠実に仕事をこなしてきた恩地を会長室の部長に抜擢する。恩地は会社の上層部と戦い、社内の腐敗体質の様子が描かれていくという。
全て読み終わったわけではないが、サラリーマンにとっては、非情でやりきれない内容が続くようだ。決してハッピーエンドでは終わるような話ではないだろうが、現代の私たちに「働くこと」「生きること」の意義を問いかけるものになるに違いない。WOWOWでは、恩地元を上川隆也、行天四郎を渡部篤郎が演じ、その他豪華キャストが出演する。一通り原作を読み終えた上で、ドラマを楽しんでみたいと思っている。