《解説》 WOWOWより
3.11東日本大震災以降、日本のエネルギーのあり方は変貌した。以降、大きな期待とともに注目されているのが“自然エネルギー”。中でも地球の中心にあるマグマの熱を利用する 「地熱発電」は、安全性が高く二酸化炭素の排出も少ない。日本は地熱資源量世界第3位にも関わらず、充分に活用できていないのが現状だ。そんな地熱発電は、今後のエネルギー問題を大きく解決しうるひとつの手段として期待が寄せられている。未来を担うエネルギーを開発しようと地熱発電に魂を懸ける人々を軸に、彼らの情熱に打たれ葛藤する外資系ファンドのエリート女性社員、さらには権益を狙うファンド社長や政治家らのスリリングな人間模様を描いたのが、連続ドラマW「マグマ」だ。原作は「ハゲタカ」を大ヒットさせた真山仁。主演には、NHK連続テレビ小説「カーネーション」の好演が話題となったばかりの尾野真千子を迎える。停滞する日本の中、未来への夢に挑む人々の熱い思いが湧き上がる!
《あらすじ》 WOWOWより
外資系ファンドに勤める妙子(尾野真千子)は、社長の待田(津田寛治)に、買収したばかりの不振企業の再建を任される。その企業は、地熱エネルギーを供給・開発している「日本地熱開発」という地方の小さな会社だった。左遷ではないかと不満に思いながらも、事業を立て直すべく乗り込んだ妙子は、現社長の安藤(谷原章介)に経営状況を厳しく追及。社員リストラと赤字部門閉鎖による合理化を発表し、長年研究に命を燃やしてきた所長の御室(長塚京三)らの猛反発を受ける。収益性を確保し、企業を立て直すという信念のもと突き進む妙子。しかしやがて「日本の未来を担うエネルギーを開発する」という御室らの思いと、地熱発電の可能性を知るにつれ、自分の果たす役割を見つめ直すようになる。そんな中、日本地熱開発の前には、利権を狙うやり手政治家の龍崎(石黒賢)や、原子力発電を推進する大学教授・宇田川(大杉漣)らが立ちふさがる。
毎回良質な作品を放送しているWOWOWの連続ドラマシリーズの「マグマ」が先日最終回を迎えた。原作は、既に2006年に出版されているという事で、まさに時代の先端を行っていた作品であり、今回のドラマ化は、まさにピッタリのタイムリーな作品となった。プロデューサーは「東日本大震災後、電気はあって当たり前のものではなくなった。どのエネルギーを選ぶのか、視聴者に選択肢を広げて欲しいという思いでつくった」という。リアリティーを重視する上で、震災前に書かれた原作を、現状に合わせて書き直した部分もあったという。ドラマ中では、原子力発電を推進する大学教授がやけに嫌なイメージに描かれていたり、原発再稼動に疑問を呈するような台詞が出てきたりして、ここまでやっていいのと思うくらいの演出だった。もちろん、これを批判するつもりはない。地上波放送では、スポンサーのご意向で内容が捻じ曲げられるドラマが多い中、さすがWOWOWは違うぞと思わせる意欲的な作品に仕上がっていたと思う。
このドラマを見て、改めて日本のエネルギーをどうやって確保したらいいかというテーマを真剣に考えなくてはならないと思った。火力、水力、原子力を中心とした現状の発電以外に、太陽光や風力、地熱といった自然エネルギーがどれぐらい代替できるか大いに議論、研究を進めていかなければならない。このドラマでは地熱発電が取り上げられ、いままで日の目を見なかった古くて新しいエネルギーを見直す機会になったともいえる。
いまの所、再生可能エネルギーとしては太陽光や風力が脚光を浴びているが、火山大国日本は地熱資源量で世界三位であるという。この地熱という隠れたエネルギーは、高い安全性を誇り、環境にも優しく実用化されれば最も安定した電力を得ることが出来るという事も初めて知った。それなのに、何故今まで地熱発電が普及しなかったかというと「電力会社が原発という神の火を手に入れ、後戻りできなくなったこと」そして「有力な地熱エリアが国立公園内にあることと温泉街との利害関係という二つの大きな障害が大型地熱発電所建設を阻んでいる」と原作では解説している。結局は「環境省、温泉組合、電力会社」が地熱発電を阻害している三悪であるというのである。ドラマでは、こういった諸々の問題を乗り越え、高温岩体発電という世界初の地熱発電の方法でタービンを回すことが出来たところで終わる。恋愛みたいな話は一切なくリアルで社会性のある骨太なドラマであった。
主演はNHKテレビ小説「カーネーション」の尾野真千子。最近いろんなドラマで見かけるようになったが、このドラマでは地熱発電に夢をかける技術者の熱意にうたれ会社を立て直そうとする熱き女性社長を演じている。キャリアがある女優さんだけに、感情を抑えたいい演技であった。その他の出演者も、WOWOWではお馴染みの長塚京三、石黒賢、大杉漣などの個性的な俳優が揃っている。また、他のドラマでは気障な役が多い谷原章介が、やけに真面目でカッコいい青年実業家で登場しているのも注目だ。そして、ちょい役だがこれまたWOWOWではお馴染みの上川隆也が友情出演しているのも面白い。まったく美味しい役で、ほんの数カットの登場であった。
おまけとして、通常の地熱発電と高温岩体発電の違いをWOWOWのHPから転載する。これで、地熱発電とはどんなものかがわかるであろう。
水力発電は、水が流れる落差で、水車と繋がっている発電機を回す。火力や原発は、水を蒸気にして、その勢いでタービンと繋がっている発電機を回す。つまり、水を沸騰させるコンロの役割をするのが火力なのか原子力なのかという違い。
地熱発電の場合は、地球の中にある天然のコンロ(=マグマ)を使う。地下にはマグマによって高温になった地下水が溜まっている。そこに、深い井戸を掘ってパイプを通してやると、地下から熱水が噴き上がって、地表に出た時には蒸気になる。地熱発電は、その水蒸気でタービンを回して電気を起こす。
ドラマの中に登場する高温岩体発電は、地熱発電の発電方式のひとつ。地上から水を勢いよく流し込み、その水圧によって高温の岩盤に亀裂を入れて人工的な水溜りをつくる。その水溜りがマグマに熱せられて熱水になる。
例えると、マグマが火で、岩盤がフライパンのようなイメージだ。その熱いフライパンに水を入れると蒸気があがって、タービンを回すことができる。化石燃料を一切使わないからCO2の排出もほぼゼロ。天候にも左右されず24時間365日安定供給できる。しかも、日本は世界第三位の地熱資源国で、原発約20基分にあたる資源量が眠っているといわれている。
とっちーさんは色々御活躍でTVを見る時間はないかと思いきやちゃんとチェックしてますね。
たしか、以前「ハゲタカ」が好きな小説だとコメントくれましたよ。
「マグマ」はドラマだけで原作は読んでませんが、
読めばきっと面白いことだろうと思います。
地熱が、日本の未来を救うエネルギーになって欲しいものですね。