毎年9月1日から3日間開催される越中「おわらの風の盆」。
この時期は、富山県八尾(ヤツオ)市内に大勢の観光客が押し寄せる。
誰もが一度は行ってみたいと思っている風の盆。
風の盆は、普通の盆踊りではない、特別な存在である。
俳句の世界では、「風の盆」は秋の季語となっていて、よく詠まれている。
なぜここまで愛されるのだろう。
日本全国どこにでもある、風の神を鎮め豊年を祈る盆踊りであったが、2003年、高橋治による「風の盆恋歌」が
発表されるや否や、たちまち全国に知れ渡り、人々が押し寄せるようになった。
この風の盆恋歌は、悲恋である。
別れ別れになった恋人同士が、30年後に再会する。
再び燃え上がった二人は、一年に一度、この風の盆の三日間だけ逢瀬を楽しむことになる。
しかし、やがて二人には哀しい結末が…
三味の音に胡弓の加わった「おわら節」の哀調を帯びた音色…
男女共に深くかぶった編み笠…
流れるようなしなやかな艶やかさをもつ踊り…
この小説と見事にマッチしてしまった風の盆。
人々はここへ、忘れ去られていたあの青春を取り戻しに行くのかもしれない…