新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

12月6日 その2 商社マンと懇談した

2016-12-06 14:27:30 | コラム
値崩れしても荷動きが鈍い紙流通市場他

商社マンとは暫くぶりの懇談だったので話題は多かった。その中から主立ったものを抜粋してみよう。

紙流通市場の動向:
これについては今更語り合っても仕方があるまいと合意したが、印刷用紙の値崩れが続くがそうだからと言って売れている訳でもないという市況だそうだ。特に輸入紙は¥104に迫る円安となっても需要が盛り上がることもなく、某アジアの大手メーカーの日本支社ではリストラを開始したと言われている良し。その辺りは先ほど私が採り上げた世界の印刷用紙の生産の分析が示している通りだろう。要するに製紙産業の先行きは益々暗いものになってきたということ。情けない言い方だが、最早需要低迷の流れを変える手段があるのかと言うことにもなる

トランプ次期大統領:
矢張りこれが話題となった。と言うのも、あの選挙が終わってからは顔を合わせていなかったからだ。彼にとってもまさかのトランプ氏の当選だったが、これもマスコミが持て囃すことは当てにならないという証拠となったに過ぎないのだと思っている由。同感だし、私のアメリカの知り合いでトランプ氏の当選を予想していた者はいなかったと、あらためて確認した。今後アメリカ市場がどう変わっていくかは、現実にトランプ氏が大統領に就任するまでは見通しは立つまいという辺りで意見が一致した。

IR法案:
お互いに疑問ではないのかと考えが同じだったことにIR法案というかカジノがある。彼もカジノに将来性があるとは見ていなかったが、私は20世紀中にパック旅行でのグランドキャニオンの帰りに立ち寄ったラスベガスで、日本人のガイドに「最早ラスベガスはギャンブルの街ではない。年間に3,000万人も訪れるお客様の30%がカジノを目当てにしており、70%は観光と2ヵ所ある(当時)アウトレットモールでの買い物を楽しみにしている」と教えられた。

先頃、何処かの局に出た専門家がラスベガスを訪れる観光客が4,000万人と言っていたが、カジノ目当ての30%が変わらなければ観光と買い物目当ての人数は2,800万人ではないか。そうであるならば、我が国でも宿泊設備だけではなく、アウトレットモールを何カ所かに設ける方が観光客誘致の早道ではないのかという話になった。現に、私は市内のバスの一日券を買って、アウトレットモールを梯子して回っていた。

スマートフォンは景気回復の阻害条件か:
これが最後に話題となった。彼は「出向先で会社負担の端末を持っており、会社の固定電話にかかったものもそれに転送される仕組みになっているので、会社に出勤していようといなかろうと同じことという時代である」と言っていた。即ち、今や出勤する必要がない時代であるという意味だ。更に言えば「朝は9時までに出勤し17時まで拘束という制度に何処まで意義があるかという問題」だと言いたいのだそうだ。

それは私の在職中のPCなどなく、四六時中本部から固定電話に呼び出されて、土曜日も日曜日もさらには昼夜の別などなかった時代と実質的に変わっていないことになる。固定電話がスマートフォンに置き換えられただけのこと。少し論旨を飛躍させれば、電通のようなお客様(「クライアント」ではないよ「クライエント」が英語の発音だが)のご都合次第では何時お呼び出しがかかるか解らないのだから「9時→17時」という勤務時間を設けて残業を云々することに意味はないのではないかとなった。厚労省さん、電通さん、如何でしょうか。

また、彼はスマートフォンの月間の費用を¥30,000程度と仮定して考えると、若者が通話やアプリケーション等の利用の他に有料のゲームまでやっていれば、幾らアルバイト等で稼いでも、彼らが電話代以外に出費出来る金額など知れたものではないか。故に、安倍政権が幾らバズーカを撃っても個人消費が盛り上がりにくいと危惧すると語っていた。私は月間の出費がどれほどになるか知り得ようがないので、¥30,000平均というアイデイアを得たことは大いに有り難かった。私は嘗て今日のガラケーを20世紀最悪の開発商品と非難したが、アップルは21世紀での最悪の商品をこの世に送り出したことになると考えていると締めて終わった。


2015年の世界の紙・板紙の生産統計から

2016-12-06 08:56:08 | コラム
世界のICT化の進捗状況を印刷用紙の生産量から見れば:

ここまでは人口一人当たりの消費量から各国のICT化の進み具合を計ってきたが、今回は印刷用紙の生産量からその当たりを推し量ってみようと思う。

東欧の諸国までも含めた欧州の42ヶ国:
ここでは総生産量の106,526 tonと対前年比で+0.3%ではあったが、印刷筆記用紙は30,742 tonで対前年比△2.5%と13年度の△1.9%よりさらに下がり、構成比は28.9%だった。新聞用紙は8,611 tonと対前年比△7.7%と下げ幅が増大し,構成比は8.1%だった。即ち、この2印刷媒体向けの紙は構成比の合計こそ36.9%だったが、数量的には一層の落ち込みだった。

北米(アメリカとカナダ):
総生産量は82,992 tonだった。その中で新聞用紙が5,218 tonで対前年比が△11.7%とマイナス成長が続き全体に占める率は6.3%だった。印刷筆記用紙が17,568 tonで前年比△5.5%とあって、印刷媒体向けの紙の減少が続いていたのだった。両品種の構成比の合計は27.5%となっていた。北米では欧州よりも印刷媒体向けの紙の構成比率が低いのだった。

我が国:
総量が26,855 tonで対前年比△2.1%だったではあった。中でも新聞用紙は3,033 tonと△4.6%と低下傾向が続き、構成比では11.3%を占めて北米と欧州よりも高いのが印象的だった。成長率は△4.6%ではあっても、未だに新聞大国の感は否めなかった。印刷筆記用紙8,893 tonで構成比は33.1%でも△3.7%とマイナス成長で、残念ながらICT化の先進国の一角を占めている事を立証していた。構成比の合計では44.4%と14年度からほぼ横ばいの45.0%と、ここでも北米・欧州よりも高い。未だ書籍と雑誌類がそれほど衰退していないのか。なお、ここに掲げた数字はRISIのそれではなく、日本製紙連合会発表の統計資料による。

アジア(我が国を含む30ヶ国):
総生産量が184,690 tonと対前年比+1.0%の成長だった。新聞用紙は9,019 tonと対前年比△9.1%と大きく落ち込んで構成比は4.9%とこの地域での新聞の普及未だしの感がある。印刷筆記用紙は47,771 tonで対前年比△1.9%で構成比は25.9%だった。両品種の合計は30.7%と北米を上回ってはいたが、低めだった。これを成長の余地があるとみるのか、ICT化が進んでいるとみるかは微妙なところかと思う。

総括:
先進工業国では明らかにICT化が進み、印刷媒体向けの紙の需要が衰退していたが、その他の地域ではその行く末を見守っていく必要があるのではないかと感じた次第だ。例えば、中国などではもしも生活水準が一層上がり、都市部と農村部感の格差が解消される時期が来れば、ここに分析した2品種の需要が急増し、その原料を賄う為に全世界から原料を買いまくられれば、途方もない供給不足の事態が生じるかも知れないのだ。私はその事態の発生を恐れている。

参考資料:紙業タイムス社刊 FUTURE誌 12月5日号