新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

“トランプ流”の総括

2019-08-14 15:11:23 | コラム
13日のPrime Newsにはやや驚かされた:

「“トランプ流”の総括」とは何が言いたいのかという興味で、Prime Newsを最後まで聞いていた。ゲストスピーカーは木村太郎氏、宮家邦彦氏、中林美恵子氏だった。先ず意外だったのは、中林美恵子氏が鮮明にトランプ氏批判の意見を述べられた事だった。私は中林さんは豊富な政府とアメリカ議会に関する情報をお持ちとは承知していたが、批判的な意見を言い出す事がないお方だと思っていた認識を覆されたのは、アメリカの保守派には反トランプ的な傾向が益々著しくなってきた事かと勝手に理解した次第。

現に私が交信しているW社の管理職以上の人たちにはトランプ大統領の支持者は皆無なだけではなく、概ね激しい批判派が多いのだ。その辺りを木村氏やかなりの数の専門家が「アメリカの二分化」という辺りに現れていると思う。私は長い間お世話になったアメリカを懐かしんで言うのではないが、アメリカが変わってしまいつつある事は決して歓迎出来る事態ではないと受け止めている。その辺かというか分化を起こしたのがトランプ大統領であると、私流に総括出来るとも考えている。“I do miss good old America, I really liked.”とでも言って置こうか。

宮家邦彦氏と同じ外務省出身の専門家岡本行夫もかなり強烈且つ鮮明にトランプ大統領批判を展開してこられた。特に岡本氏はトランプ大統領を無知・無能呼ばわりまでされていた。宮家氏も躊躇う事なく「トランプ大統領は外交などやっていない」と仏頂面で言われたほどの批判派だと認識している。木村氏は宮家氏ほど直接的な表現でトランプ大統領批判はされなかったが、「やっている事全ての根本には『アメリカファースト』があり、選挙対策でありナルシズトだ」と表現された。私は「アメリカファースト」ではなく再選を第一義に置く「自分ファースト」だと見ている。

お三方の意見を最も象徴的に表していた事の一つが、宮家氏が言われた「トランプ政治には“P”即ち“person”という彼自身があり、それとは別個に動く“O”即ち“organization”という官僚組織があって、共に理解し合わず、Oが何か進言してもPは滅多に聞き入れも採用もしないという状態が続いている」との点だった。即ち、Oは何とかPに何とか勉強して貰って事を丸く収めようとするが機能していないで、Pは何も知らぬままに事を起こしてしまうという解説だった。

私はトランプ大統領の就任直後から「この方は何もご存じではないのか、あるいは全てをご承知でありながら知らん振りをしておられるのが読み切れない。だが、多くの彼が巻き起こした旋風を見るとご存じではないのではと危惧させられる」と何度も指摘したし、W社の同僚たちの評価と認識はこれほど穏やかのものではなかった。W社ジャパンの90歳になられたアメリカの経済界の事情に精通された長老も「俺でさえ、知っているのか知らないのが判定出来ない」と慨嘆されていた。

昨夜のお三方のご意見を総括してみれば「知らないのだ」と断定されたのにも等しい批判ばかりだった。私は寧ろ「そこまで言っても良いのか。フジテレビはそこまで割り切ったのか」と思わせられていた。宮家氏などは「トランプ流の外交などない。彼がやっている事は外交ではない」とまで言われたほどだった。木村氏は「トランプ氏は巧妙に民主党の数多い大統領候補に名乗りを上げた連中を批判しアレクサンドラ・オカシオ(英語読みでは「オケイシオ」だが)・コルテス等を左翼に追い込んでいる」と指摘されたが、確かに再選に向かっての作戦が着々と進行しているようだ。

私はPrime Newsのような番組の視聴率がどれほどあるかなどは知らないが、日常生活で「アメリカという国はそも如何なる国か」や「アメリカの政治の実態」などに余り関心がない一般の視聴者が昨夜のような話を聞いても「トランプ大統領が我が国にとってご信頼申し上げるべき大統領なのか」または「素晴らし世界を変えようとしておられる大政治家なのか」または「安倍総理を自分の都合だけで利用してきた大統領か」などは判断する材料にはならないと思って聞いた。我が国とは全く異なったシステムで動いている国でありそこの大統領なのだなどと解る訳はないと思う。

お三方は一般人とは異なる世界に住んでおられて、アメリカを経験し且つ十二分に観察してこら方なのだと承知していないと、かえって迷わされるだろうとさえ危惧した。私には興味深い2時間弱だったが、それは20年以上も彼ら支配階層の世界に片足の爪先くらいは突っ込んできたので何とか理解出来る素地があったので、面白かったと言えるのだ。結論めいた事を一言だけ言えば「我が国の政治家を見ているような視点からトランプ大統領を理解しようとしたり、批判しようとしても無駄だ」と言う事。それは彼は規格外であるから。