新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

4月7日 その2 大久保通りに出てみれば

2020-04-07 14:08:45 | コラム
緊急事態発令の前日の様子を見たくて:

ただそれだけの理由で、ある程度の危険を冒して大久保通りに出てみた訳ではない。生活必需品的な食材が不足したというので、家内と共に出掛けてみたのだ。勿論というか何と言うべきか、外国人どもがどれほど出歩いているか、相変わらず業務スーパーで買い漁っているかには、興味も関心もあったのだ。午前11時過ぎの大久保通りには予想したよりも人出が少なく、意外なほどイスラム教徒に出会わなかった。だが、相変わらず北京語と思しき言葉で話している若者には何人も出会った。

業務スーパー店内の状況はと言えば、ごく普通の混雑振りで案外に外国人が少なかったが、当方のお目当てだった商品の幾つかは欠品状態になっていた。全般的に言えば、小池都知事が何と言おうと焦りまくって籠一杯に詰め込んでいる者が半分くらいだっただろうか。それでも、キャッシュレジスターへの行列は普段よりも短く、瞬く間に順番が回ってきた。彼等外国人がまともに小池都知事の言に従っているとは思えないが、あれほど沢山いたイスラム教徒たちは何処に行ったのかと思ったほど出会わなかったのだった。

暫くこの通りに出てこなかった僅かの間に変化が起きていた。それは、JR新大久保駅の前に通りの両側にあった日拓のパチンコ屋の駅の反対側の店が、ゲームセンターに変わっていたのだった。パチンコ屋は小池都知事が自粛を要請した業種に入っているが、まさか日拓は今日あるを予想して早めに手を打った訳ではあるまいが、通りの雰囲気が多少静かな方向に変わったことは否めないと思う。

尤も、我が家から大久保通りに向かう横丁の雰囲気が静かになったのは、あれほど沢山ある日本語学校も休校中であるからかと思いつつ、帰りにサンパークホテルの食堂を覗いてみれば、昼飯時だったのにも拘わらず、2~3組しか入っていなかったのは、不要不急の外出を避けている人たちが多いのかなどと疑ってみた。私は問題は山手線と西武新宿線のガードの向こう側になる“Koreatown”に一斉休校が続く高校や中学の女性とたちがどれほど群がっているかだと思っている。あれほど脳天気に群を為して出歩いては、感染源の追跡不能の感染者が出ても不思議ではないと憂うのだ。

とは言って見たものの明日以降に、敢えて火中の栗を人ってしまいかねない危険性をともなうKoreatownの視察に出掛けていく度胸はない。だが、どうなっているかと様子を見に来たい衝動には駆られるのだ。小池都知事も自粛を促すのであれば、彼女らにはもっと強烈に語りかけて頂きたいと思うのだ。


アメリカという格差社会の考察

2020-04-07 10:12:09 | コラム
ビジネスの世界を離れて考えれば:

アメリカという国で、ビジネスの世界における学歴と裕福な家庭に生まれ育っただけで生じる格差、身分の違い、属する階層の違いは、昨日(前回)も含めてこれまでに何度も語って来た。そこで今回は、そこから出来る限り離れて、私がアメリカで経験もしたし、見たり聞いたりしてきた多くの階層とその間の違い(格差というのか)を振り返ってみようと思う。因みに、「格差」を和英辞典で見ると“difference”や“gap”や“disparity”などが出てくる。

ビジネスの場から離れるとは言ったが、先ずはその場での経験から。私は合計して言わば一部市場上場の2社で22年半勤めたのだが、本社機構内ではたった一度の経験以外には、ついぞアフリカ系の社員か管理職に出会ったことはなかった。南アメリカ系の移民だったのだろう人たちの子弟には会ったかも知れないが、所謂ヒスパニックは本社機構内にはいなかった。尤も、カリフォルニア州の工場には現地採用者にはスペイン語族もいれば、ヒスパニックもいたが、アジア系には出会わなかった。

本社には一時期2名の日本国籍の社員はいたが、結局は長続きしなかった。これは人種差別とと考えるよりも、所詮は英語力の問題の方が大きく影響していたと看做す方が当たっているかも知れない。中国系もインド系もいたと記憶するが、他の事業部のことなので、彼等がどれだけ長続きしたかは定かではない。このような人事体制になっていることを格差というのか差別というのかは、私には解らない。だが、私のように外国人でMBAでもない者が、本社の機構の中に組み込まれて、永年勤続者になるのは容易ではないと思う。

アメリかでは今やその人口が3億3千万人を超えたと聞いている。これは一寸した驚きで、私がウエアーハウザーをリタイアした1994年頃には2億6千万人と言っていたのだから。その7千万人もの増加の大半を白人が占めているとは到底考えられない。それは、今では「アメリかでは何れ所謂少数民族(minorities)の数が白人を超えるのは確実だ」と言われている。その“minorities”の内訳はアフリカ系、アジア系(中国、韓国、日本、東南アジア等々)、イスラム教国系、ヒスパニック、インド系と誠に多種多様であり、その者たちが支配階層であるビジネスの世界以外の分野を占めているのだ。

このような出身国別の見方を離れてみれば、職種別という分析の仕方がある。先ずは“union card”という職能別労働組合員であることを示すカードを持っている、法律によって身分が保証されている、トランプ大統領が言われた“working class”と言う階層がある。組合員たちは時間給制であるし、彼らの居住地帯がある。その他には「プーアホワイト」と言われている貧困層があると聞くが、私のようにサラリー制の会社組織に属していた者には、先ずこの層の人たちと会うことも語り合うこともないと言って誤りではあるまい。

これらの階層に属する者たちが、如何に頭脳明晰であって学業成績が優秀であっても、先ず大手の企業の社員として入ってくることはないと聞かされて来た。分かりやすく極端な表現をすれば、労働組合員の家庭に生まれれば、そこから脱出して大手企業のサラリー制の社員になれることは極めて希だということ。その点はこれまでに何度も述べてきたことで、会社とは全く異なる法的に保護された組合員が別組織である会社側に移籍することは例外的にしかあり得ないということだ。

労働組合員たちは法律で保護されているし、年功序列で時間給が増額されるので、何もいつ何時“You are fired.”となる危険性が高い会社員になる必要はないと言えば分かりやすいか。これを差別というのか?通常はサラリー制の会社側に属する者たちが、組合員たちと親しく膝つき合わせて語り合うことはほとんどないと言って良いと思う。我が国のように先ず入社すれば組合員であるという制度とは違うのだ。

今日のように全世界からの合法・非合法の移民が増えてしまったアメリかでは、それまではアフリカ系や一部のヒスパニックたちの職場であった仕事場に、より勤勉なアジア系の移民が侵入(参入?)した為に職を失った者たちと韓国系の間に、ロスアンジェルスで乱闘が起きたことがあった。また、「空洞化」という現象が騒がれたが、これはアメリカの組合の強力な賃上げ闘争に遭った各種の製造業が生産拠点を安価で質の高いな労働力を求めて海外に出て行った為に起きたこと。それだけに止まらず。アメリカの質の低い労働力が急速に「国際競争力」を失ったので、デトロイトのように衰退した産業が出てきたのだ。

私はアメリカという国の辛いところは、「これまでに懐深く世界から下層階級を形成するしかない移民を受け入れてしまったことがと思って眺めてきた。その結果でもないが、少数派である支配階層、最初から立身出世の確率が低い中間層、労働者階層、更に多種多様な少数民族たちが形成する種々雑多な階層というような構成になっていることだ」と思っている。しかも、その階層間では縦にも横にも移動は先ず起こらないのだと見ている。

ここに採り上げた労働者階層から先が従来は民主党の支持基盤であったのだが、トランプ大統領が「アメリカファースト」の大スローガンの下にラストベルトで職の不安定に苦しむ層の為に“job”(これを雇用と訳すのは誤りである)を増やして失業者を救ったことが、彼の確固たる支持率の源泉になっていたと思う。即ち、3億3千万人の半数近くを占める支配階層でも中間層でもない連中の支持を確保するのが再選への道だと、賢明にも読まれたのだと見ている。換言すれば貧富と身分の「格差」に喘いでいる者たちに救いの手を差し伸べられたと思って見ている。

但し、私の22年半の経験の中では本当に極貧の世界に沈んでいる人たちの実態というか居住地には入れたこともないので、如何なる生活をしているかは話に聞いただけだ。それでも1978年だったかに、一般人は絶対に足を踏み入れないと聞かされたシカゴのアフリカ系の居住地内をバスで通過したことがあった。それは凄まじい雰囲気で車窓から見ているだけでも恐ろしかった。そういう相互に相通じていない多くの階層によって形成されているアメリカを統治される大統領は、どの階層に焦点を絞ってアピールされれば効率的に統治できるかに腐心しておられるのだろうと思っている。

私は実際に労働組合の連中と何度も交流し、語り合い、何故品質向上に励まねばならないかを説いて聞かせたが、英語も良く解らず、識字率も高くない者たちがいると知るまでは、その物わかりの遅さに苛立ったものだった。こういう経験は我が国のように教育程度が高く、労働力の質が高く且つ均一な国にいては到底理解できないだろう。第一に、経験できる訳がないのだ。このような経験をした私は、アメリカを「格差社会」と簡単に決めつけるのは如何なものかと思うのだ。その階層間の差を如何に賢明に活かして能率を上げていくかを考える法が先決だと思うので。