新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

10月1日 その2 アトキンソン氏の中小企業整理論に思う

2020-10-01 09:15:37 | コラム
現状と実態を何処までご承知なのだろうか:

私はアトキンソン氏の主張を否定するものではないが、対策なり何なりを具体的に提案して貰えなければ、折角の建設的なはずのご意見も絵に描いた餅のようなものになりはしないかと危惧している。欧米人が言ったからと言って畏まって聞くべきことかどうかを考えても良いのではないか。彼はこれは文化比較論でもあるとご承知なのだろうか

ここで余談ではあるが私の経験を語ってみようと思う。それは、1988年に我が社の洋紙部の副社長以下の幹部約30名ほどと、2週間かけて我が国でデミング賞受賞の工場を数多く訪問して、その優れたTQCの実践法を学ぶ視察をしたことがあった時のことだった。その際にはかのトヨタ自動車のカンバン方式も実際に現場で見学する機会も得た。工場側から丁寧な説明も聞けたし質疑応答にも十分の時間を取って貰えた。

質疑が終わってから後でのアメリカのビジネスマンたちの率直な感想は「何だ。結局は運送会社の協力と犠牲の上で成り立っているだけのことじゃないか」だった。要するに中小の運送会社が懸命の努力をしてトヨタ側が指定する時刻に部品を納入しているという協力の上に成り立っている方式だと、彼等アメリカ人は理解したのだった。また、別の会社では親会社や得意先の納入指定時刻に合わせる為には、極端な場合はその為に早めにトラックを現場に到着させて、その時刻になるまで工場の周囲を回っているという話も聞けた。中小企業が果たす役割がこの辺にあったのだ。

この辺りが私が常に言っている「現場で実務を経験していない人が、分かったような顔で物を言わないで欲しい」なのだ。特に、私は英連合王国の親会社対下請けの事情は知らないが、、アメリかでは工場の生産の現場から会社側に転進してきた社員は先ずいないし、工場の現場を経験した管理職も経営者もいないのだ。我が国の方が現場を経験した管理職も経営者もいるのとは大違いだ。アトキンソン氏は我が国の工場の現場や、下請けの中小企業の実態を何処まで仔細に視察してこられて物を言っておられるのだろうか。問題はこの辺りにあると思う。


アメリカの大統領選挙

2020-10-01 08:30:52 | コラム
トランプ大統領対バイデン元副大統領の討論会:

実は、実況中継があると承知はしていたが、見ても聞いてもいなかった。と言うのも、如何なる状況になるかは大凡の見通しが立っていたし、夜になれば「報道1930」とPrime Newsに専門家が登場されて解説があると承知していたからだ。それ以外に正直に言えば、ここ数年ほどはめっきりと英語の聞き取り能力が衰えてきたので、悔しい思いをしたくなかったという私的な事情もあった。一寸だけ弁解をお許し願えば、英語の世界を離れて26年も過ぎれば、獲得形質だった英語の能力が衰えるも仕方があるまいと割り切っている。

午後7時半から聞きだした両方の番組で聞いた限りでは、結果はほぼ予想通りだったと思う。予想はドナルド・トランプという方のこれまでの約4年間の言動を見ていれば、あのような攻撃的というか司会者の制止を無視してまでもバイデン氏の発言に割り込むことは十分に予測できていた。しかし、バイデン氏についてはほとんど予備知識も何もないので、巷間流布されている認知症のような状態が果たして出てくるのかには関心はあった。残念ながら?そういう状況は出ていなかったと思う。

結果については色々な批評が出ていて「史上最悪」だの何のと様々である。木村太郎氏は「トランプ氏の完敗で、バイデン氏は十分に準備をして臨んできたし、屡々原稿に目を落としていたのがその表れ」という批評だったが、そういう意味ではトランプ氏は「朝飯前」(“piece of cake”)とでも軽く考えていたのではないかと疑わせる批評だった。中林早稲田大学教授は「トランプ氏はアメリカファーストを標榜されているが、実態は『自分ファースト』ではないのか」と決めつけられたが、私は以前からこう指摘して来た。

Prime News側では手嶋龍一氏がかなり手厳しくトランプ大統領の批判をされていたが、明治大学のアメリカ通の海野教授は明快な判定は下さなかった。但し、両方の番組に共通していた見方は「1回目では判定は下せない」という点と「トランプ大統領の税金問題に対する説明は不十分だ」という辺りだろう。トランプ氏はビジネスマンであれば節税(脱税ではない)をするのは当然だという説明は私には不十分だと聞こえた。気になったのは、手嶋氏が「トランプ氏には史上最強とも言われている強力な弁護団が付いていて、この点に関しては鉄壁の守りがある」と指摘された点だ。

どちらの局で誰が言ったことか記憶は曖昧だが「トランプ大統領が少しくらいこの討論会で少しくらいやり込められたからと言って、岩盤のラストベルト等の支持者の層がトランプ大統領不信に陥ることはないだろう」と指摘していたのが印象的だった。即ち、トランプ大統領はその点を意識してバイデン氏を責め立てているのだという解説のようだった。一寸だけ私の感想をも言わねばと思うが「余り印象的な中身がない討論会だった」と「バイデン氏は失点がほとんどなかったのでは」いう辺りだ。