新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

一寸事情があってあらためて纏めてみました

2020-10-10 09:41:48 | コラム
アメリカの製造業の会社では何故新卒を定期採用することはないのk、銀行・証券会社はしているのに:

非常に長い見出しですが、実はこれでほぼ答えになっていると言えます。90年代に入ってからだったか、最大の取引先の部長さんをWeyerhaeuserの本社にご案内したことがありました。記憶では、折角だからと副社長兼事業部長との会談の後でかの有名なる(今では売却してしまったのが痛恨です)本社内を案内しました。何分にも土地が幾らでもある国だし、我が社の広大なる自社の敷地内ですから、横には150 mほどの長さで僅か5階建て。館内にはジムも、大きなCafeteriaも売店も床屋もあるのです。そこにいる人員は社長も入れても800人くらいだったか。

一回りした後でその社内でも有名は秀才の部長さんから、先ずで質問は「先ほどから気になっていることは、この会社には若い人を1人も見かけなかったこと。それは何故ですか」だった。これは英語で言う”Very good question“でした。答えの半分くらいは見出しにあります。この点が我が国の企業社会との大きな違いです。彼等は「4年生の大学の新卒を採用し、一堂に集めて講義したり教育するような手間暇をかけることはしない」のです。

それは「各事業部の部長乃至は本部長(GM)に運営、営業と販売(sales and marketing)、製造、総務、経理、人事等々の全ての権限が与えられているので、彼または彼女が事業の発展、規模の拡大、新規事業への進出、馘首またはリタイア等により生じた空席か欠員の補充等々によって、会社内からか、他社からの引き抜きか、手元にある外部の採用希望者から送られてきている履歴書の中からか、ヘッドハンターに依頼する等々で、これと思う人物を呼び寄せて面接し、学歴、それまでの経歴と業績、手腕、人格等を評価して、年俸等の諸々の条件を話し合いで決めて採用します。

事業部内での人員には先ず絶対と言って良いほど、それぞれの部員の仕事が重複していることは原則ありません。各部員が単独で担当し2人でテイームになっていることはあり得ないでしょう。また全員の経歴と経験が年齢はバラバラですから、彼等の中に偉さの順番がなく言わば横一線です。だが、人員が増えれば全員が直接にGMから指示され、また報告を上げていてはGMがそれでなくとも多忙なのが一層多忙になるので、何名かが選ばれてグループ長になって中間に入ることがあります。GMが能力を認めた者はグループには入らずに直接に報告し、指示を得ます。

要するに、我が国とは余りにも異なる「中途採用の集団」が形成されているのです。では、4年制大学の新卒者はどうするのかといえば、在学中から狙いを定めておいた会社でパートタイムででも働いて入社を勧誘されるのを待つか、中小企業に就職してそこで腕を磨いて業界内でも目立つ存在になって大手からの引き抜きを待つか、直接売り込みをかけるか、履歴書を目指す会社の特定の事業部のGMに送付しておくか、銀行・証券会社か会計事務所等で4年間働いた後でビジネススクールに入学しMBAを取得して幹部候補生として迎えられるかのどれかを選びます。Ph.D.でも結構。

また、同じWeyerhaeuserでも、地方の工場は全く別法人のような存在。そこで幹部は本社機構から派遣された者たちが占めていて、中間層となる事務員や技術者は全て地方採用であって、本社機構には組み込まれ事はないでしょう。即ち、そこに就職して何とか頭角を現せば、もしかして本社機構に引き上げて貰える場合も偶にはあるという程度です。また、念の為に確認しておけば、工場の現場の工員は全て職能別労働組合員ですから、会社側とは法律的にも別個な存在であり、会社側に移ることもこれまた本当に極めて例外的です。要するに社会的に階層が違うのです。

という次第で、本社機構に大学から推薦されて入社することはないでしょう。だが、大学教授から転身してきて部長職に就いた例は何名か見ていました。また、21世紀の現在ではある一定の規模の上場会社で出世して生き長らえようと思えば、最低でも一流の私立大学(例えば東海岸のIvy League校か、西海岸のスタンフォード大学等)のMBAではないと難しくなってきていると聞かされています。即ち、見事なばかりの学歴社会です。興味がある事実は、例えば「ハーバードの教授になりたければ、ハーバードに行くな」であり、教授たちを同じ大学出身者で固めないのだそうです。