新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

12月17日 その2 あらためて我が国の英語教育の問題点を探る

2021-12-17 16:46:05 | コラム
矢張り問題があるのではないか:

私はこれまでに何度も我が国の学校教育に於ける英語の問題点を色々と指摘して来た。だが、悲しいかな「何とかの遠吠え」と同じで、一向に教育の現場には反映されなかった。その点では、私だけではなく、心ある有識者の方々が「小学校から英語を教えようとする愚策」も公の場で指摘されたが、この点も文科省には馬耳東風の如きである。

そこで、今回は私が気付いた「我が国の英語教育の問題点」の中から簡単な例を幾つか挙げてみようと思う。

*ある四大私立大学の学生が「“swearword”って何ですか」と反応した:
3年ほど前のことだったが、大学卒業後には海外の去る著名な競技の本部に就職したい希望があるという壮大な希望を持つ学生を紹介されたことがあった。彼はその為には何はさて措き英語の力を付けねばならないと自覚していた。紹介者は「英語の力を試してあげて欲しい」と言われたので、簡単なことを2~3質問してみた。

最初に「“swearword”とはどういう言葉を指すか承知しているか」と尋ねてみた。これはやや意地が悪い質問であり、私は学校では教えていないと承知していたのだから。

矢張り、キョトンとした表情で「何のことですか」が答えたのだった。そこで、更に理解していないだろうと承知の上で「スラング(=slang)との区別が付けられるか」とも尋ねてみた。これも“swearword”(=汚い言葉)も我が国の学校教育の英語では、こういう言葉があるとは教えていないようなのだ。

“swearword”は一定以下の階層に属する人たちや、そういう言葉を日常的に多用する階層の者たちと交流があると、自然に覚えて使ってしまうと言うか、使いたくなる魅力がある性質なのだ。重要なことは「この種の言葉を日常会話などに使ってしまうと、それは自分から私は無教養ですと告白したのと同じになってしまう」危険性がある点なのだ。その為に、知識階級や支配階層に属する人たちには相手にされなくなる危険性が非常に高くなってしまうものなのだ。

“slung”は屡々この「汚い言葉」と混同されて「下品だ」と錯覚されているのだが、それは誤りなのだ。「スラング」とは「隠語」か「ある業種乃至は集団で使われている符牒か隠語等」のことであり、決して品格に乏しい言葉ではないのだ。簡単な例を挙げておくと「ドル」(米ドル)のことを“dollar”ではなく“buck”というようなものだ。また、タクシーの運転手=taxi driverは“cabby”などと言うようなこと。

最早、私には現代の中学から大学までの英語教育の実態を知る機会もないが、こういう語法があることを教育課程の何処かで教えておくべきだと思っている。そうしておかないと、何も知らずにアメリカでもUKにでも「語学留学」などと称して出掛けていった場合に、「swearwordは使っても真似てもいけない言葉である」とは知らずに、格好が良いようだなどと錯覚して使ってしまうようなことになる危険性が高いのである。

また、話は違うが“you know”にも触れておこう。私がこれまでに何度も「native speakerたちが使うからスマートな語法だと思って使うと、知識階級とは看做されなくなる」と警告してきたphraseである。これを言葉の間に挟むと「これでnative speakerの仲間入りが出来た」とか「何となく格好が良いな」と錯覚して使ってしまう危険性が高い。ハッキリ言えば「使ってはならないphrase」なのである。何度も言ってきたことで、you knowと言うと「私は有能でありません」と広言したのと同じになってしまうのだ。これも、学校では教えていないと、経験上解っている。

始めから「swearwordは真似ても使ってはならない」と、学校教育で教えられていれば気安く使ってしまう危険性も薄らぐとは思うのだが。しかも、困ったことに、我が国では未だに「俗語」(「隠語」か「符牒」)である“slang”を、汚いか下品な言葉(swearword)と混同している人たちが多いのである。私はスラングが「汚い言葉」とは違うというような教育を学校でしておくべきだと信じている。でも、教えるべき先生方がハッキリとご存じでなければ、どうにもならないだろうが。

*アクセント:
多くの競技の国際試合の試合開始前に、厳かに対戦する両国の国歌が独唱されるか演奏される。その際には「国歌演奏につき全員ご起立を」と英語のアナウンスも流れる。ここでは「細かい揚げ足を取るな」と批判されそうなことを言うが、英語では例えば“National anthem of Japan”のように言う。この表現自体には何の問題もないのだが、アクセントの付け方が困るのだ。それは多くの場合に、男性の声でのアナウンスでは、“of”にハッキリとアクセントを置いてしまっていた。これはアメリカやUKなどの支配階層には軽蔑されかねないおかしなアクセントなのだ。

私が敢えて指摘したことは「“of”は前置詞であるから、アクセントを置いて発音しないのが普通に正確で正しいアクセントのつけ方」であり、聞こえるか聞こえないくらいに「オフ」か「フ」程度に言えば十分なのである。

あのアナウンサーのように声高らかに「ナショナルアンセム・オブ・ジャパン」とはしない方が、品格の程を示せるのである。このようなアクセントの付け方は中学校辺り(いや、今日では小学校か)で、初めて英語を教える時に正しく仕付けておかないと身に付かないのである。ましてや、それが教養の程度を示すことになるとは、子供たちには想像も出来ないだろう。

このような教育が正確に出来ていないからこそ、JRを始めとする多くの鉄道会社の車内放送に、クリステル・チアリのような出鱈目なアクセントを付けた英語を流して恥じないのである。この事は何度も摘した。また、海外に住んでおられるある同胞の方も、帰国された際に「“Please change your trains here for ~ line.”のような場合に、アクセントを置いてはならない “for”を「フォーア」のように言っているのは異常で恥ずかしい」と厳しく指摘して下さった。私は彼女の発音は国辱的な英語であると何度も指摘したが、彼女を起用する鉄道会社は増える一方だ。英語教師の方々の一層の正確な英語の勉強と奮起を促したい。

*文法:
TOEICなどなしょうもないテストに現を抜かしている暇があれば、もっと正確に誤りがないような文法の教え方をすべきだと、敢えて指摘しておきたい。小売店や食堂等で「営業中」と言いたくて“OPEN”というカンバンをぶら下げておくのは良いが、未だに方々で見かける誤りに「閉店」と示したくて“CLOSE”という札を下げている店が多いのは困る。これは、何とも情けない英文法の教え方の産物だろう。既に「閉じている」のだから、過去形の“CLOSED”となるべきだという、最低限の「現在形」と「過去形」の常識的な区別が出来ていないのには、笑う前に悲しくさせられている。

それともう一つに「午前10時」と言いたくて“AM 10:00”というように日本語の語順でAMを前に持ってきている看板が誠に多いのも情けないのだ。この辺りも、学校教育の英語で「初歩の初歩」として叩き込まれているべきことではないのか。AMとPMは時刻の後に表示されるべきものなのだ。

間違っているという点では、“GRAND OPEN”も同じ文法的な誤りである。“open”では動詞の原形であって、ここでは動名詞(=gerund)にして“OPENING”でなければならないのだ。敢えて言えば、英語教師の方々は英文法の講義で何を教えておられるのだろうか。往年の上智大学の音声学の権威、千葉勉教授は厳しく我々学生に教え込まれた「文法的な誤りを犯すことは、知識階級ではないと看做されるので、厳重に注意すること」だった。

以上は2018年10月26日に論じたことを加筆訂正したものである。


責任の取り方の問題

2021-12-17 08:11:17 | コラム
「頂門の一針」12月17日号で:

轟晃成氏が「人間社会考察」として、「責任をとる」とは如何なる事かを述べておられた。これを読んで、言うなれば触発されて、この事とは直接結びついてはいないかも知れない出来事を思い出した。

それは我が社でかなり軽率なというか、我が国の方々が“human error”即ち、人為的な失敗と表現される事故が起きた時のことだった。偶々こちらに来ていた副社長がその得意先に出向いて「早速本部の担当者と工場に厳命して可及的速やかに改善策を講じることと、現場の係長を辞めさせることにしたので、最早この種の過ちは再発しません」と言って謝罪した。

ところが、担当部署の部長さんには「その対策は誤りである。過ちを犯した者を馘首してはならない。彼をその地位に止めて何故過ちを犯したかを追及させて『失敗から学ぶこと』を経験させるべきだ。貴方方は直ぐにクビにするという短絡的な措置を講じるが、それは最善の策ではないと知るべきだ」と、理路整然と解き明かされたのだった。言い方を変えれば「アメリカ式に辞めさせることが責任の取り方ではないだろう」と説諭されたのだった。我が副社長はそれを聞いて反省し、係長を十分に説諭して留任させ、二度と同じ事故を起こさないようにした。

これだけのことなのだが「責任をとらせる」ということの考え方に、このような我が国とアメリカ式の間に違いがあると学習した出来事だったので、30数年も経った今になって取り上げてみた次第だ。