何時もの通りでここ新宿区百人町は静かな選挙だった:
もう30年以上もこの街に住んでいるが、衆議院だろうと参議院だろうと、選挙期間中はこの界隈は静かなままで、滅多に選挙カーなど入ってこない。以前にも述べたことで「テレビや新聞が騒ぎ立てている選挙戦などは、何処か余所の国での催し物では」と思うほどだ。幾ら多くの方に褒めていただく記憶力を以てしても、過去に、K党の街宣車が何を間違えたのか、山手線の線路側の細い道に入ってきたことがあったかなという程度。
当初はここ25階建ての俗に言う「タワーマンション」が3棟並んでいて合計576戸もあり、更に道路を隔てた山手線の更なる外側にはここよりも戸数が多いだろうとみている大公務員宿舎があるのだから、さぞかし「大票田だ」とばかり候補者たちが群がって押し寄せるとばかり思っていた。所が、期待に反して、何時でも静かで長閑な状況は変わらないのだった。静かなことは結構だが「何故なのか」と、大いに不審に感じていた。
しかも、住民の政治意識は決して低くないようで、投票所に行けば何度が入場のための列の最後尾に並ばねばならないことになっていた。今回の参議院議員選挙の場合でも並ばせられた。出口調査なるものに出会ったことは、先頃の衆議院選挙で初めて経験した。思うに、この地区には元からの新宿区の住民が少なく、公務員宿舎の住民の方々は異動の時期が来れば次の任地に赴かれてしまうのだろうから、地元意識が希薄な人たちの集団だろうかなと考えていた。
ところが、ある事情通に聞けば「この一帯は確かに票田ではあるが、組織票が期待できない地域なのである。誰かボス的な存在がいて票の取り纏めをする地方とは非常に趣を異にしているので、候補者たちにとっては魅力がないのであろう」とのことだった。即ち、政治意識が高いことが必ずしも集票には結びつかないということのようだった。確かに、過去30有余年の間に一度もこの地域から立っておられる候補者のご尊顔を拝したことがなかった。
何方だったか権威ある評論家が「議員たちは地元のために働くのではなく、お国のために懸命に働くべきである」という、極めて尤も至極な指摘をされていた。だが、ここ新宿区百人町界隈には地元を代表して活動してくれている議員さんがおられるとも思えないのだ。元ヴァレーボール選手や芸能人の当選者に何を期待すれば良いのだろうか。