Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

Not a second time

2004-08-06 23:03:49 | Fish On The Boat
ご報告があります。



窓から2mほどの木の上にある鳥巣のことです。
(鳥巣の記事はログを参照ください)
いえ、かつてあった鳥巣のことです。


せっせとエサを運ぶ親鳥と、子供用のビーチサンダルのような音を発して
せがむヒナの生活する鳥巣でした。

そこは彼らにとっての、世界の中心であったでしょう。



猫がよく来ました。

カラスも来たかもしれません。

30度を超す暑さの日。
台風のような暴風雨の夜。


かよわそうでありながらもたくましく、
時の流れを着実にふみしめるような毎日を送っていたのを、私は知っています。
親鳥は、西へ東へバタバタと、休むまもなくでかけていきは戻ってくる。
一所懸命という言葉がほんとうにピッタリでした。



彼らのことを書くのに「毎日」という尺度を使うのは、ちょっと違っているかもしれません。
一日ずつ、という単位ではないような気がします。
太陽の高さや、風や、周囲の音や・・・・つまり、
些細な変化ずつ、をしっかりと乗り越えるような生活だったのではないかと思えます。


そして、そこに誕生と成長があったのです。

巣であれ、ヒナであれ、営みであれ、
そこに創造があったのです。



今、
窓の外を眺めても、
巣はおろか、
松の木すらありません。

たまたまの長い留守。
そのあとに知らされた事実が、それです。



鳥たちは、叫べるだけ叫んだそうです。



悲劇がまさに起こっているそのときも、
鳥たちは、叫べるだけ叫んだそうです。


さっきまでの世界の中心には、
手足のない細長い姿の悪魔が居座っていました。


親鳥の最後の一鳴には、何がこめられていたのでしょう。
親鳥の最後の叫びには、何が秘められていたのでしょう。





流れ行く変化の中で、きっと悲しみはとけていく。


いつか、
どこかで、
また新しい営みを始めるのです。
それが成就することを祈ることにします。




そう書き終えようとして、
あの忙しそうにしていた彼らの一羽の、かすかなさえずりを聴いたのでした。
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捨テゼリフ

2004-07-25 00:57:32 | Fish On The Boat
「あいにくさま」
白ポロシャツを着たおとなしそうな青年との短い出会いを終えて、
彼を背後にしたさいに、クリクリした目を持つモノトーン模様のネコは
こんな気持ちを抱いていただろう。
たぶん。

何年もの野良生活でつちかった経験と、種としての勘に自信を持って正解だったのだ。
ネコといえど、そういった類の読みが当たれば嬉しいものだ。
たぶん。

視界にポロシャツを捉えたとき、少しだけ心拍数が上がった。
きっと、今くぐった黒い車のあるじなんだろう、と察した。
「我が道を行っていただけなんだ。何かから逃げるわけじゃなかったし、
未然に防ぐべき危険に対しての反応も感度の良い鼻にはなかったんだ。
だけど、我が道と彼の道の交点に、偶然お互いが鉢合わせちゃうことに気づいたんだよ。」
その時の気持ちを尋ねることに成功したならば、
ネコはこのようなことをニャアに込めてくれるに違いない。と願う。

ポロシャツの歩くスピードが上がった気がした。
どんなことにも、「もしも」ということがあることはわかっていた。
「もしも」を無視したがために、不幸を背負ってしまうことがあることもわかっていた。

そのネコには、猫背のさかさまのような印象を与えるヒゲが備わっていた。

一瞬立ち止まり、丸い目をさらに丸くする。
確実に道の交点でポロシャツとぶつかることがはっきりとわかったからだ。
その差、約8猫身の距離だ。
心拍数は一気に高くなっていた。

押し寄せる不幸の予感と"ヒゲ"が、ポロシャツと自らよりも先にぶつかりあい戦い始めた。


白黒模様ののら猫は、僕をみるなり、その歩様に大きな一歩を混ぜた。
右脚を大きく踏み出したその動きは猫らしくなく多少こわばっていて、
その前後のしなやかな動きゆえに、際立ってぎこちない一瞬だった。
「こいつ、急に意識したな」
素っ気無く歩いてくるので、車の手前ですれ違うかと思っていたのだが、
直前でタイミングをずらされてしまった。

運転席のドアを開ける前に、猫のほうをちらと見た。
向こうもこちらを横目で見終えるときだった。
両手は荷物でふさがっていたし、かまってやるつもりはなかったのだ。
いたずらされるとでも思ったのかな、「あいにくさま」だ。

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オトコギノ芽ニ撒ク水

2004-07-23 22:12:39 | Fish On The Boat
はるばるチャイニーズ・タイペイから来たたくさんの人と
今日もたくさんごあいさつした。

小さい   ハオ。

大きい   ハオ。

可憐な   ハ・オ。

アーセナルの10番をまとって、ベルカンプな   ハオ。

いろんな ハオ が溢れた。
みんな良い人たちなのだ。

言葉が通じなかったり、勘違いがあったり、戸惑いながら、
異国の人たちと向かい合ってかすかでもコミュニケーションをとる機会を逃さぬよう、
そして、僅かでも楽しさのコラボへ挑むよう、
全開のウェルカム気分にちょっとだけ遠慮を添えて、
あいさつをする。


という夢想に近い理想を、まだ時期尚早と内に秘めながら
あいさつをする。


屋外では夏の太陽の硬い陽射しを浴び、
屋内では湿気を多く含んだ人々の熱気に包まれる。

たくさん、汗をかいてしまう。
気が散漫になるほど。
シンプルだったものが複雑に見えてくるほどに。

これら何十分かを含んだ約8時間の連続が、
たとえ忙殺と呼ばれるようなものであったとしても、
失いたくないものがある。
たとえば、舟に乗った魚、だとか。
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ケイオス

2004-07-22 23:49:10 | Fish On The Boat
こんなこと言っても、誰も信じないかもしれない。
でも本当のことなんだ。
できれば信じて欲しいよ、
だけど無理やり「信じろ」って言ってるわけじゃないよ。
信じてもらえなくても「仕方ないな」って。
そう思うよ。
疑われたらすごく残念だけど。
いいけどさ。


そう前置きして、
僕は「ネコが横断歩道を渡った話」をし、
続けて「犬が信号待ちして横断歩道を渡った話」をした。


受け流された。

肯定の中に、あるいは背面に、
完全な否定と、侮蔑すら感じた。
そして、危うさも。


せっかく面白い話をしてみようと思ったのに。
だって、ネコが横断歩道を渡るんだぜ?
犬が信号待ちしてたんだぜ?
有り得ないようなことがあったから伝えたいんじゃないか。

君ら、芸人のテレビ見るだろ、
で、面白いだろ、
あれの面白さって、「有り得なさ」にあるって思わないかい。
おかしい気持ちや、笑いって、要はツッコミじゃない?

ツッコんで欲しかったんだよ。
笑い声でもいいし、ツッコミそのものでもいいさ。
つまり、反応が欲しかった。
そういうところから、楽しさが生まれるじゃないか。
君らの楽しさって、どういうのだい?


これだから疲れるんだよね。
こっちの顔なんてまるで見ないで、
僕の話を車の排気音でも鳴ってるかみたいな扱いしやがって。
大体、話が終わらないうちに、他の話をはじめたんだ。
いきなり「蚊帳の外」だったよ。
ジャイアンツの話なんて始めてさ。
僕がジャイアンツにも野球にも興味が薄いことを知ってるだろ。
まるっきり、輪の中から外したんだな。
「ちょっと頭冷やしなさい」ってことかよってさ。
いいんだ、そんな排他的な集まりなんてこっちからごめんだよ。
これだから低脳なやつらは嫌いなんだ。
ああいうやつらこそ、時代に流されていくんだもんね。
「現在」を彩ってるつもりで、「現在」に利用されてるだけなんだよ。
なにか話しだせばスノッブになるやつらさ。
そうだぜ、そんなやつらだったじゃないか。はは、なんて醜さだ。
何やってんだよ僕は、早いとここんな集まりから抜け出さなきゃダメじゃないか。
急に愛想をなくせば、ネコと犬の話でヘソを曲げてるんだととられちゃって不本意だから、
実行するのは2ヵ月後にしよう。
2ヵ月後からだんだんと離れていこう。そう、少しづつね。
それまでは、普段とかわらないようにっと。
決めた決めた。

そうだ、ネコと犬の話をあの娘にしてみよう。
あの娘、けっこう頭いいんだ。きっと話にのってくれるはずだ。
そうそう、話を始める前にもっと前置きをしっかり言っておこう。
「ウソじゃないんだ」ってね。これが前振りになるようならしてもいいさ。
表情とか話し振りもさ、ちょっと諦めた感じをさ、醸し出してみようかな。
でも、あの娘頭いいから芝居だと思われないようにだ。
自然にだ、自然、自然・・・・・・。


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月光アビテ眠ル鳥

2004-07-20 22:32:09 | Fish On The Boat
窓から2mほどのところに生えている木の上に、山鳩が巣を作った。

ホォーッホォーックックーとは鳴かない。
というか、ほとんど鳴声を聞かない。
何度か聞いた鳴声は、ギュイーーーーッというものだった。
それは、巣のある木を人間にいじられていたからで、周辺をせわしく飛び回りながらだった。
通常の鳴声とは違うのだろう。

しかしやっぱり、「山鳩が巣を」と書いたが山鳩じゃないかもしれない。
姿は山鳩に、おそらく似ている。

鳥はいつ、どのくらい眠るのだろう。
窓の近くに巣を構えた、隣人ならぬ隣鳥は、
夜中の2時や3時でも、吐息のような鳴声を発することがある。
擬音にするには記憶がさだかでないので、イメージからたとえさせてもらう。
人間でいえば、かすかな「あ」とか「え」などの独り言に近い。
赤子をあやす母親の、「うん」とか、「ん」も、山鳩のそれに似ている。
だが、巣にはまだヒナはいないようだ。
まさか寝言か。

確認したわけではないが、巣の中にはきっと卵が眠っているのだろう。
我が子たちの誕生を夢見てのかすかな鳴声であるかもしれない。
エサをせがむ子供たちに十分に世話をやいてやる、幸せな夢を見ている、というような。

近い将来、窓のほんの2m先から、
ピーピーピーと大合唱するヒナたちの鳴声が、
目覚ましのアラームよりも早く僕の耳に流れ込んでくることを考えると、決して
幸せな気分にはなれないのだけれど、

なにせ、

い。

何をするわけでもないのだが、見守ってあげようと思う。

最近、家の周りでネコをみかけることが多い。
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砂漠ノ人魚ノタメ息

2004-07-20 21:45:29 | Fish On The Boat
釣り上げた魚、アスファルトの上でもなお泳ごうとしていた。
腹を地につけゆさゆさと、魚体を右に左にくねらせる。

こう言うと、大ゲサかもしれない。

セクシーな光景だった。

それがほんの数秒だったとしても、
人間に蹴られて泳ぎを止めさせられていても、
きみはただの40cm超のウグイだったけれど、
僕を永遠ともいえる一瞬へと誘った。

  What A Sexy You Are!
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