Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

スピーチレス

2005-06-10 00:16:03 | Fish On The Boat
その昔。
自分の時間がたくさんあった頃の一時期です。
一匹のうさぎを追いかけて穴ぐらを探すような毎日を過ごしていました。
僕は少しませていたので、うさぎの穴ぐらの奥には不思議の国が広がっていることを知っていて、
それが目的だったのです。
竜巻にあえて襲われてみるのも一つの手段であることをやはり知っていましたが、
ちょっと過激な方法であるため、敬遠していました。受身であるぶん、てっとりばやくはあるのですが、
できるだけ、事前のリスクが少ないほうがよかった。

そして、ある日、突然、待ち焦がれていたチャンスをつかみました。
穴ぐらを発見したのです。
その先に何があるのか、大体の見当はついてはいます。
しかし、もしかすると、その先は無数の骸が転がっている世界である可能性もあるのです。
それでも、ここまで来た以上、引き返す気持ちは何グラムも持ち合わせていません。

レツゴー・・・。

足の運ぶまま、吸い込まれていくまま、その先を、その先をずっと目指しました。
穴ぐらの景観はだんだん変わっていきます。まず光が届かなくなり、
内部の起伏が少しづつゆるやかになる。足の裏の接する地盤の感触だけが頼りになるのです。
踏みしめることによって、奥へ進んでいることをなんとか知覚する。
一歩一歩前へ足をだしているのだから進んでいるのだろう、という程度ではあります。
手探りして、どんどん周囲が狭くなっていくことを知って、最終的には這って先を目指します。
漆黒につつまれているためか、時間感覚がつかめなくなる。
どれだけたったか、どれだけ進んだか、本当にわからなくなったとき、その道は終わりました。

そして眼前に広がった世界。
それは・・・・、まったく何も無い世界。
僕はひっくり返るでもなく、ただただそこで、あぐらをかいたのでした。
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