Fish On The Boat

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『お金をちゃんと考えることから逃げまわっていたぼくらへ』

2013-12-03 22:34:58 | 読書。
読書。
『お金をちゃんと考えることから逃げまわっていたぼくらへ』 糸井重里 邱永漢
を読んだ。

コピーライター、そして『ほぼ日刊イトイ新聞』でおなじみの糸井重里さんと、
お金の神様とも呼ばれる商売上手で作家もやられていた邱永漢さんの、
お金に関する対談集です。

お金に関する対談集と言っても、「こうすればお金が儲かる!」という
啓発的なハウトゥー本ではありません。
お金とはどういうものなのか、その性質を知る邱永漢さんから出る言葉を
糸井さんが引き出して軽く咀嚼して、あとは読者が読み下すという感じの本でしょうか。
そして、話は人生観だとか人の欲望についてだとか、人間の心理や性質の話が
中心になっていきます。

もともと2001年の本が文庫化されたものですが、
その当時の糸井さんが本当にお金について知りたかったことがわかるような、
問いかけになっています。
お金について知りたいと言っても、さっぱりした感じでまったくぎらぎらしていません。
かといって、アカデミックに難しい話をするでもないのです。
邱永漢さんはもはやお金の神様であり、達観しているからそうなのかもしれませんが、
糸井さんのほうは、ちょっとお金に対する欲望が薄いようで、だからこそ、
本書のこのタイトルになったのかなぁと思いました。

ひとつ、本書に「これは!」という言葉があったので紹介させてください。
若いうちは「そそのかされて生きている段階」っていうのがそれです。
誰かの言葉に導かれて生きたり、それがミスリードだと怒ったり、
そういうの全部、「そそのかされている」んですよ。
だから、後悔するんだと邱さんは言っている。
名言です。

僕が嫌いなのは、人をそそのかすことを商売としている人です。
「私はこうやって大金を稼いだ、そのノウハウの一部を伝授しよう!」
などと、DVDや本を売ったり、セミナーを開いたり…。
もっとも嫌いなのはそういう類のそそのかしですね。

だからこそ、そういう感じではない「お金の本」である本書は読み通せたのです。
まぁ、糸井さんの本ですからね、そんな心配はしていませんでしたけども。

けして、大きな武器が眠っている本ではありませんが、
お金を考えてみたい人の、それも一般の人のきっかけになりそうな本です。
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